壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

正月二日

2009年01月02日 20時18分29秒 | Weblog
 一月二日は、初夢・初荷・掃初め・書初めなど、さまざまな行事の始めの日。
 皇居では、一般参賀の行なわれる日でもあります。皇居新宮殿のバルコニーで、天皇はじめ皇室ご一家が、国民の年賀をお受けになる。天皇と国民とをつなぐ貴重な場となっていますが、いたずらをした者がいたので、防弾ガラスを隔てての参賀となってしまいました。
 それでも、湧き上がる「バンザイ、バンザイ」の声と、うち振られる日の丸の旗の紅は、なお純粋であるように思われます。
 今年は、天皇のご健康に配慮し、五回のお出ましとか。

        初夢になにやら力出しきりし     眸

 「一富士二鷹三茄子(なすび)」と言いますが、なかなか思う通りの夢を見ることはできません。
 昔は、大晦日の夜から元日の朝の間に見る夢を初夢と言ったのですが、今では、元日の夜から二日の朝にかけて見る夢をいったり、所により、習慣によりまちまちですが、多くの地で、二日の夜に見る夢を「初夢」と呼ぶようです。

        初夢の何に泣きしか忘れたる     剛 一

 戦後六十年余り過ぎても、われわれ日本人に限らず、未だに、異郷の空に故国を偲んで涙する人もあり、世界各地の戦乱に故郷を捨てた難民の数を思うと、一億円の当たった初夢などと、暢気なことは言っていられません。

        掃きぞめの箒にくせもなかりけり     虚 子

 「福を掃き出す」といって、元日には掃除をしない風習があり、縁起をかついで箒を手にしません。したがって、二日の掃除が、一年の掃き初めとなります。

        和を以て貴しと筆始めけり     青 畝

 掃き初めと似た言葉に、書初めがあります。
 書道はまだまだ盛んなようで、学校に限らず、書初めの展覧会があちこちで催されています。
 
        師に侍して吉書の墨をすりにけり

 江戸の昔には、「吉書あげ」といって、二日の書初めを、十五日のどんどの火に焚いて、高くあおり上げられるのを縁起がよいとしたそうですから、展覧会とは大違いです。

        初売やベストセラーを高く積み     一 世

 新年初めて販売することを、初売・売初(うりぞめ)といいます。最近、景気づけに福袋を廉価で売るところが目立って多くなりました。
 けれども、大型書店にうず高く積み上げられた、伊坂幸太郎や東野圭吾のベストセラーは、定価通りです。

        買初にかふや七色唐辛子     桂 郎

 買初(かいぞめ)は、新年に初めて物を買うこと。初売りに対することばで、デパートや商店では、この日に福袋を店頭に並べるので、これを目ざして買いに行く人の行列が、各所で見られます。
 伊坂幸太郎さんの住む仙台では、一年分の茶を買うための初買いが行なわれ、今日も、その景品の嵩とともに、テレビのニュースで放映されていました。

 行列に並ぶのが嫌いな変人は、京王百貨店新宿六階京王ギャラリーで開かれている「東京藝術大学陶芸科博士展第4回」を、ゆっくり鑑賞させていただく。
 金大容・吉田幸子・劉潤福・サブーリティムール・李恩美・朴宥貞の、皆さんのそれぞれ専門性の強い作品発表が、何とも心地よい。
 会場にいらした金大容さんと李恩美さんに、いろいろと伺い、また教えていただき、たいへん勉強になりました。
 お二人が、このまま無為自然の心で、楽しく作品作りをされるよう、心からお祈り致します。

 やはり、買初をしてしまった。金大容さんの「粉青流掛面取花器」を。炎が直接当たったところや窯変の部分が、モネの「印象 日の出」を思い起こさせたり、那智の滝に見えたりする素晴らしさ。そのうえ、形が独創的で品格があり、変人宅に置くには、もったいないような逸品です。


      買初の花器の炎色を日の出とも     季 己