「俺って、優しいなぁ~~~」
上機嫌で山ちゃん先輩がニマニマしてる。
「えっと、先輩はやっぱり出来た神、ですよね?」
言葉を選びながら、僕は先輩を誉める言葉を送った。
「でしょ、でしょ~~」
良い子と僕の頭を撫でる先輩。でも打って変わって、隣に立って一言も発しない慎吾さんに対してつまらなそうに言う。
「肝心のこっちは、お礼もなんもないんだからね~~」
心外と愚痴をこぼすのを宥めつつ、僕は心配そうに慎吾さん=神を見つめていた。
さっきから。
慎吾さんは、ジッと何かを考えるような様子で眸を閉じている。
僕も何かあるのかと耳をそばだててみるものの、別段何も感じ取れない。
「それじゃ先に神社行って、レディ達を宥めておくからね」
「喧嘩しないような、うまい言葉でも用意してきなねぇ」と言った後、消える寸前に。
「まぁ慎吾なら、女あしらう言葉の一つや二つ、得意だよね!!」
慎吾さんが側にあったクッションを投げつけた時には、すでに山ちゃん先輩は空中に溶け込むように消えた後だったので、壁に当たって転がるだけだった。
僕はそれを拾ってまた元の場所に戻すと。
「……じゃあ、俺達も行こうか」と慎吾さんが部屋を出て行こうとしていた。
僕は慌てて声をかける。
「あの! 僕が神社まで運んでも、いいですよ?」
自分のテリトリーに戻るのはとっても簡単なんだ。
そこに慎吾さんを一緒に連れて行く事は下手にどっかにテレポートするより楽なんだ。
僕の言葉に少し考えた後、「ありがとう」と言いながら、慎吾さんは優しく僕の頭を撫でてくれた。
「でも、歩いて、行く」
その言葉には絶対の意思が感じられた。
「……うん、じゃあ僕も、一緒に歩いていく」
そう言葉を繋ぐと。
「……構わない。けど、小さくなって、肩の上に乗ってくれる?」
僕は素直に頷いて小さくなると、慎吾さんの肩に乗っかった。
月も見えない新月時。
神社までの短い道のりにも、ちゃんと街灯が所々存在している。
田舎の事だから、街中のような明るさが足りない感じだ。
闇が濃いのか、街灯の光を飲み込み拡散させてしまうのか。
それでもアスファルトに影を落とす位の明るさのはずなのに、ちょっと先が見え辛い。
さすがに、おかしい。
僕はちょっと異様な雰囲気をやっと感じ取って、耳と尻尾を小刻みに揺らす。
僕は自分の結界が曖昧な雰囲気になっている事にやっと気が付いた。
神社を中心に、この小さな田舎町を覆う守りのそれが、なんか歪んでいるのを感じとる。神社には山ちゃん先輩と、他に強い存在が感じられる。でもそっちは先輩の結界が張り巡らされているのが感じられるけど。
「……慎吾、さん?」
不安が声を震わす。
「……大丈夫だ。迅は、俺が護るから」
慎吾さんと言葉にホッとしつつも、不安が消えない。
チリ~~~~~ン!!
ギョッとした。
不意に前の方から、鈴の音が響いたから。
今までなんの気配も感じられなかったのに、いきなりそれは、現れた。
黒い影のような存在。
異様としか言葉に出来なかった。
存在力は神並みだ。
でも人型をしているが、どうも神とは違う異質な力を放っている。
黒い手の先には小さな鈴が一つ、糸に吊るされてか細く音を鳴らす。
ぞわっと。
背筋が泡だって、耳や尻尾の毛が逆立つ。
「迅、俺から絶対離れるなよ」
「はい」
慎吾さんはすでに人格を神に切り替えているようだった。
フワッと、慎吾さんと僕を包むように風がまとわりつく。
「オ、オマエ、西風王ノ、後継者、カ?」
片言の日本語。
これは?
「そうだ。と、言ったら?」
慎吾さんが言葉を返す。
「……ココデ、消エロ!」
奴が右手を広げた。
僕は怖くなって慎吾さんにしがみ付いた!!
だって。
その右手には……。
大きな目が開いて、ギョロリと黒いだけの虹彩のない瞳を回して。
こっちに焦点を合わせると。
……ニヤ~~~と、歪んで微笑んで見せたのだ!?
つづくんだわ、もう。
久しぶりに続き書いたね。書いてる人も忘れかける展開だわよ、ほほほ。
本当はすんなりいかせる予定だったのになぁ。まぁ、こういうの大好きだから。
イチルキイラストも色塗らないと。本当、やりたい事後手後手ごて……。
ごめんなさい。
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