こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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看護学生さんを、育てましょう。

2009-10-09 23:23:14 | 訪問看護、緩和ケア
今週は今年から新たに受け入れた、看護学生の実習がありました。
去年の春ごろ、その看護学校の先生から、実習受け入れの要請があった時、その先生が私の看護学校時代の同級生であることがわかりました。
わー!!久しぶり~こんなところで会うなんて!
そんなことも手伝って、秋に学生実習を受け入れることになりました。

とはいえ、連れてあるくのは、おもにスタッフ。
「ねえ、もうひとつ学生さんの受け入れしてもいい?」と、Sナースに囁くと、「いいじゃないですか。連れていきますよ!」との力強いお言葉。

 そういうわけで春は医学部看護科の学生さん、秋は看護学校の学生の実習になりました。

何しろうちの、ステーションのほとんどがお母さんなので、若い学生さんは娘みたいで、みんなすごくかわいがってくれます。
だから、今までの学生さんの口コミで、実習場所としては、かなり評判いいようです。

今週は、台風で1回お休みになってしまいましたが、今日の最終カンファレンスでは、それなりに在宅で感じてほしいことを、ちゃんと受け止めていたようです。

火曜日の朝、Uさんの奥さんから電話があり「、痰が絡んで、苦しそう。」とのことで、吸引器をもって担当が訪問しました。事前に了解を取ってあったので、学生さんも一緒に。

吸引と、座薬で少し落ち着いたUさん。
前回は具合がすぐれず、シャワー浴介助が出来なかったため、学生さんやご家族と、みんなでシャンプーしたり、清拭したりしたそうです。

Uさんは奥さまと二人暮らし。
当初、奥さまが仕事の時は、一人でお留守番をしていました。
Uさんは、大の焼酎好き。
何も食べなくても、焼酎さえあればご機嫌の方でした。
排泄の感覚がなくなり、奥さまの帰宅後の介護負担も大きくなり、安否確認の意味もあって、訪問看護が開始されました。
訪問すると、焼酎をちびちびやりながら、野球観戦をしていました。
ですから、具合がかなり悪くなっても、焼酎は必ず飲んでいました。

その日の朝も、焼酎は少量飲んだそうです。

そして、痰がからんでの訪問。

その時の学生さんの感想は「最初、腕も硬く縮めていて、辛そうな表情だったのが、座薬を入れてからすごく穏やかになって、身体をきれいにした後は、すっかり腕の緊張も取れて、とても穏やかな良いお顔をしていました。そして、さっぱりとしてとても気持ちよさそうでした。」と言うものでした。

でも、午後から2件の訪問実習へ行っている間に、Uさんは眠るように逝ってしまたのです。

訪問から戻った実習生は、かなり衝撃を受けたようでした。
その間に、担当看護師が、奥さまと、泊まり込んでいた娘さんと一緒に、エンゼルケアを行い、奥さまが用意した素敵なお洋服を着て、旅の支度を終えました。


翌日の朝のカンファレンスで、担当からその時の様子などの報告と、簡単な振り返りがあり、学生さんにも「在宅での看とりを、どう感じました?」と振ってみました。
「午前中伺った時は、まだそんなに悪いとは思わなくて、ケア後に本当に穏やかな表情をされていたので、帰ってから亡くなったと聞いてびっくりしました。
病院実習中に、一緒に行っていた学生の患者さんが急変して亡くなったのですが、
その時は先生や看護師さんがバタバタして、除細動やいろいろな処置をして亡くなりました。
でも・・・Uさんは、ご家族のそばで、あんなにも静かに亡くなられた。
これが在宅なのだと思いました」

学生さんがいるときに、こういう場面に出くわす事はあまりないので、とてもよい経験になったと思います。

自分の部屋で。
大好きな焼酎を最後まで飲んで。
妻や娘の気配を感じて。
痛みや苦しみは、最小限にとどめて。

それがご本人の望みでした。
そして、それはかないました。

そういう世界があることを、これからの世代の彼女たちへ伝えることが、今の私達の使命なのだと思います。

春に来た看護科の学生さんが、カンファレンスでこんな感想を言いました。
「私が、一番感じた事は、担当の看護師さんと、ご家族がお互い尊敬しあっているのだなと、言うことです。それがとても大切なのだと感じました」

すごいですよね。
短い実習ですが、ちゃんと学んでいてくれて、すごくうれしかったですよ。

その時は、10年近いお付き合いの患者さんで、奥さまが長年介護をされ、今年になって、末期がんが見つかった患者さん宅での会話を聞いた感想のようでした。

「おくさん、がんばってますよね。本当に偉いと思います。誰もができることではないです。
でも、無理しないでくださいね、私たちにできることはしていきましから!」
「大丈夫よ~!だって皆さんがいつでも来てくれるから、安心していられるんですもの。本当にありがたいと思っているのよ。」

こんな会話をしていたのを、聴いていてキャッチできたんですね。

めぐみ在宅の小澤先生も言っていました。
小澤先生の講演を聞いた高校生が、感想文の中で「一生懸命支えようとしている、先生が一番支えが必要だとおもいました。」そんなことを書いたそうです。

これに衝撃を受けて、これ以来小澤先生のキャッチフレーズと言うか、座右の銘は

「誰かの支えに
 なろうとする人こそ
 一番、支えを必要としています。」

と言うものになりました。
相鉄瀬谷駅の、ホームの広告看板に、書いてありますよ。

たしかに、学生さんの受け入れは、面倒かもしれないけれど、こんな風に一生懸命学ぼうとする学生さんたちの声を聞くことは、自分たちの振り返りにもなると思います。

日本の未来のためにも、学生さんたちを育てなくてはなりません。