琉球新報 社説 森本防衛相搭乗 茶番劇はたくさんだ2012年8月6日
これほどうんざりする光景も珍しい。森本敏防衛相は、米ワシントン郊外で米海兵隊が普天間飛行場に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに試験搭乗し、「大変快適だ」とのたまった。
今回、危険性の指摘が森本氏にできると予想していたのは、1億人余の国民に1人もいるまい。茶番劇はたくさんだ。防衛官僚と米国の振り付け通りのお芝居に、国民が付き合わされるいわれはない。訪米に要した税金を返してもらいたい。
オスプレイはオートローテーション(自動回転)機能の欠如がかねて指摘されている。エンジンが停止した際、機体降下で生じる空気抵抗で回転翼を回して安全に着陸する機能のことだ。
オスプレイは固定翼のときに地面にぶつからないようにするため、プロペラの直径を長くできないから、安全に着陸するのに必要な空気抵抗が得られないのだ。しかも機体は従来機より重いから、なおさら危険なのである。
米国の技術専門家も指摘するこの問題は、回転翼機と固定翼機を兼ねるからには逃れられない構造的欠陥だ。この欠陥が「無い」と証明できない限り、安全性の実証にはならない。
それなのに森本氏は、わざわざ米国まで行き、試験搭乗までしながら、オートローテーションでの着陸をしなかった。パネッタ米国防長官から「安全性に絶大の自信を持っている」と言われると、承るばかりだった。何のための搭乗か。何をしに訪米したのか。まるで「子どもの使い」だ。
「子どもの使い」に外交交渉ができないのは当然だ。もはやこの人物に当事者能力はない。森本氏は一刻も早く閣僚を辞め、政府の当事者の席から退場すべきだ。
この人物は大臣に就任した翌日、モロッコで起きた墜落事故もフロリダで空軍のオスプレイが起こした事故も、調査結果の提供は普天間配備後でいいと許容した人物だ。
県民は実験動物ではない。県民の頭に危険が降りかかった後、事故原因が分かっても遅い。県民の生命より米国のご機嫌取りを優先する人物に、大臣たる資格はない。
森本氏は「飛行の安全をどのように確認したか説明したい」と述べた。これで何かを確認したとは噴飯物だ。沖縄に来る必要はない。市谷の防衛省にあるヘリパッドで、思うさま訓練すればよい。