社説:政治献金疑惑 何を信じろというのか
いったいどうなっているのか。鳩山由紀夫民主党代表、与謝野馨財務・金融・経済財政担当相の政治献金疑惑である。民主党にとっては、西松建設のダミー団体による献金で公設第1秘書が起訴され代表を辞任した小沢一郎氏に続くもので、党が受ける打撃は深刻だ。総選挙を目前に控え、与野党を代表する議員たちの献金疑惑は国民の政治不信を増幅させるばかりだ。
与謝野氏の疑惑は、商品先物取引会社「オリエント貿易」など5社のダミー団体から1億円を超える政治献金を受けていたというもので、渡辺喜美元行政改革担当相も同じ方法で4000万円近い献金を受けていた。幹部社員ら約250人の給与から天引きしてダミー団体の寄付金に充て、同社は天引きした分を社員の給与に補てんしていた。つまり寄付金は全額会社が出していたのであり、政治資金規正法で禁止された企業献金そのものではないのか。しかも社員は所得税の一部を控除される優遇税制まで利用していたという。
ダミー団体を使った迂回(うかい)献金は西松建設事件と同じ構図で、ほかの企業や議員の間でも行われてはいないか、という疑念すら浮かぶ。
共産党を除く各党は国から年間計300億円を超える政党助成金を受けている。どれだけ法改正をしても抜け道が作られる企業・団体献金はやはり全面禁止するしかないのではないか。その意味では、民主党が西松事件の反省から、企業・団体献金を3年後に廃止する政治資金規正法改正案を提出し、個人献金中心に切り替える方針を打ち出したことは評価できる。
ところが、その直後、鳩山代表の個人献金に虚偽記載があったことが判明した。すでに亡くなっていたり、実際に寄付していない約90人から個人献金193件、計2178万円を受けたと政治資金収支報告書に記載していたというのである。これらは05年以降のものだけだ。
鳩山代表の説明によれば、献金があまりに少ないので「大変だ」と思った公設秘書が鳩山代表から預かっていた個人資産を献金に充て、個人献金を集めた実績を水増しする目的で虚偽記載したという。鳩山代表は公設秘書を解任し、民主党は説明責任を果たしたとしているが、それで済むだろうか。総選挙によって政権交代が起きれば首相になる立場である。04年以前の献金に問題がなかったのかも含め納得できる説明が必要だ。
さらに、与謝野財務相、渡辺元行革担当相など疑惑を招いている議員は総選挙の前に国民に十分説明し、各党は政治資金改革についてマニフェストに盛り込み、国民に信を問うべきである。