滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

カーボンニュートラルの天然ガスを販売するエネルギー会社

2010-06-14 18:52:09 | その他
この間、バーゼル近郊にある、スイスのオーガニックコスメと人智学に基く医薬品の老舗、ヴェレダ社の本社とスイス工場を見学する機会を得ました。会社のプレゼンでは、同社の原料栽培や生産手法の話も興味深かったのですが、同社の環境マネジメントや省エネルギー対策の話も負けずに興味深いものでした。

その中で、昨年よりスイス・ヴェレダ社では、熱源としてカーボンニュートラルの天然ガスを購入しているという話を聞きました。化石燃料を消費する消費者や企業が自発的にCO2オフセットするのは良くあることですが、オフセット込みのガス商品とは初耳です。

ヴェレダ社にガスを供給するのは、バーゼル市営水道エネルギー会社IWBです。同社はバーゼル市地方に熱、電力、水、熱などを供給しています。
調べてみるとIWBでは2009年からカーボンニュートラルの天然ガス商品「IWB天然ガス・クリマ(気候)」の販売を開始しています。ヴェレダ社はこの商品を選んぶことで、年1MWhのガス消費量で、250トンのCO2排出量を減らしているそうです。

「IWB天然ガス・クリマ(気候)」には、ガスの販売価格にCO2オフセット料金が内蔵されています。販売したガスによるCO2排出量は、パートナーのCO2オフセット会社であるコンペンサーテ㈱により、途上国でオフセットされるという仕組みになっています。

さらにIWB社では、オフセット・プロジェクトの持続可能性にこだわっています。オフセットを実施するコンペンサーテ㈱では、持続可能なオフセットプロジェクトを認証する世界基準「ゴールドスタンダード」を受けている再生可能エネルギーのプロジェクトの排出権のみを販売しているのです。

「IWB天然ガス・クリマ(気候)」の価格には、通常のガス価格に加えてkWhあたり0.85ラッペン(約0.7円)が上乗せされています。IWB社のホームページによると、年2.5万kWhを暖房・給湯に消費する世帯の場合、月18フラン(約1500円)が割り増しになるそうです。

IWB社は高品質のオフセット込みのガスを販売することで、スイスの中でも特に環境意識の高いバーゼル市においての顧客獲得策、あるいは顧客離れ防止策を打ち出しているのでしょう。

しかし、オフセット付きとはいっても、天然ガスが非再生可能エネルギーであり、CO2を排出することに変わりません。そのため、スイス・ヴェレダ社では、熱源の木質バイオマスへの部分的なシフトを予定しています。

今年から、ヴェレダ社の工場のすぐ近くに建設されている自治体の建物に木チップボイラーが導入され、そこから地域への熱供給が行われるようになります。ヴェレダ社では、同社の熱需要の50%に相当する熱を、この木質バイオマス地域暖房から購入する計画です。 ちなみにヴェレダ社は電気の方は「100%原子力フリー」の電力商品を購入しているそうです。

環境行動と生産現場の背景をもっと知りたい、と思わせるヴェレダ社訪問でした。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アルプス生まれの太陽光発電... | トップ | 原発新設を巡り混迷するベルン州 »
最新の画像もっと見る

その他」カテゴリの最新記事