滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

ランデンハウス菜園だより(暑中お見舞い)

2016-08-12 10:50:03 | その他

暑中お見舞い申し上げます。

北スイスの山の上では、日差しや空気の中に早くも秋を感じる季節となりました。

ブログで皆さまにお伝えしたいことがたくさんありましたが、仕事と庭、日常を回していくことで精いっぱいの日々がまだ続いています。

 

ランデン山の菜園では、春から夏にかけて50㎡の温室の建設、土や装備の準備、作付けなどを行っていました。菜園用の温室は、ガラス製のものは高価で手が届かないので、ポリカーボネート製のものを選びました。6mm厚の複層ボードで、U値は3.5くらいだそうです。

 

写真:レストラン・ランデンハウスのテラスから見た400㎡の菜園と温室。まだまだ理想の状態からは遠いですが、一歩ずつ構築中です・・。コンポストはレストランとも共用し、菜園に有機物を利用しています。この日は遠くまで見えませんでしたが空気が澄んだ日にはアルプス山脈が一望できます。

これにより標高840mでの野菜の栽培期間を数週間延長し、またこの標高では収穫が難しいトマトやナスのような野菜やぶどうのような果物の栽培を可能にし、さらに冬の間を通して(雪の影響を受けずに)耐寒性のある種類のサラダや常菜、ハーブ類を作ることが目的です。鉢で育てるレモンやいちじく、宿根草の苗などの越冬にも使う予定です。収穫は、自給用だけでなく、集落の人や、お隣さんで、大家さんのレストランにも使って頂きたいと考えています。ぶどうは、特に耐病性のある16品種を夫が選別して植えました。今後の品種の比較が楽しみです!

  
この温室の断熱性能では、厳寒期には完全に霜を除けることは難しいと思われます。ゼロ度以下にならない温度管理を目指していますので、現在、オフグリッドの蓄電池付き小型太陽光発電と組み合わせた循環換気・簡易暖房の導入も検討しています。値段に換算したら、ものすごく高い野菜になってしまいそうですが、楽しさ・美味しさ・生活の質に加えて、山の上で暮らしていくための経験を集めたいという好奇心があります・・。

初夏には、私たちの暮らす集落の中庭の植栽を一新し、自宅の玄関回りの雰囲気を改善しました。まだまだ若い植栽ですが、集落の住民の皆さんも(わずか3世帯+従業員ですが)喜んで下さっているようです。大きな眺望と長いハイキング・マウンテンバイク道の途中にある大家さんのレストラン・ホテルのランデンハウスは、この地域の多くの人々にとって「故郷の中のちょっと良い場所」です。ただレストラン・ホテルというのは非常に競争が厳しく、仕事量も多い業界で、周辺の緑地環境や菜園のことまで手が回らないのが実際です。私たちは、その周辺環境の質の向上に、庭づくりを通して貢献したいと考えています。

 

追伸:この夏は、大家さんが自宅を改修中です。窓を複層断熱(右下)から断熱三層窓(上・左下)に交換。地元の木工会社が窓を作り、施工します。


   

 

●最近の新エネルギー新聞への寄稿記事より

新エネルギー新聞に毎月ニュースを寄稿しています。下記リンクにニュースバックナンバーを転載していますので、ご覧ください。

 

ドイツ:住民参加で電力自立率500%超す、ヴィルポーツリート村(上)

http://blog.livedoor.jp/eunetwork/archives/48189905.html

 

ドイツ:オーデンヴァルト・エネルギー協同組合(EGO~プロフェッショナルな市民エネルギーの模範例」

http://blog.livedoor.jp/eunetwork/archives/47929894.html

 

ドイツ:バーデン‐ヴュルテムベルク州が風車からの低周波音を独自調査

http://blog.livedoor.jp/eunetwork/archives/47781201.html

 

●フェイスブック

フェイスブックをはじめました。よろしくお願いします!

https://www.facebook.com/people/Kaori-Takigawa/100006456505690

 

●短信

 

スイス: 300世帯の入る木造集合住宅、建設開始

ヴィンタトゥール市では、スイスでこれまで最大規模の木造集合住宅の建設が開始された。「Sue&Til」という名の同集合住宅は、スイスの持続可能な社会の目標像である「2000W社会対応型」。2000W社会とは、一次エネルギー消費量が3分1の社会づくりを目指したビジョンだ。

同プロジェクトでは総6階建てのうち、2階以上が木造構造。300世帯が入る。施主・投資家は保険会社Allianz Suisseで、ゼネコンImpleniaが建設を手掛ける。プロジェクトは、建築家チームとヴィンタトゥール市との協働に基づき開発された。竣工は2018年の予定。ヴィンタトゥール市には、このほかにも151世帯の入る大型の木造エコ集合住宅「ギーセライ」が2013年に竣工している。

http://www.proholz.at/architektur/detail/baustart-fuer-bislang-groessten-holzwohnbau-in-der-schweiz/

参照:www.proholz.at

 

スイス: 製薬会社ロッシュの立体駐車場ファサードに400kWの太陽光発電

バーゼル近郊のカイザーアウグスト村にある製薬会社ホフマン・ラ・ロッシュの工場に併設された立体駐車場にファサード一体型の太陽光発電設備が設置された。高速道路A2 沿いに建つ7階建ての駐車場の建物の長さは170メートル。その外壁に日よけのような形で、美しいデザインで収まっている。駐車場のファサードと屋根に設置された設備の出力は合計633kW。うち400kWがファサード設置で、ファサード統合型としてはスイスで最大規模。設備の設計はBENetz社が手掛けた。スイスでは野立て太陽光発電は一部の例外を除いて行われていないため、建物一体型、屋根置き型の設備が最も一般的だ。太陽光の電力生産に占める割合は現在約2%になっている。

写真:http://www.benetz.ch/index.php?option=com_content&view=article&id=109&Itemid=517

参照:www.ee-news.ch

 

オーストリア: 野立てソーラーを養蜂と自然保護に利用

ウィーンの都市エネルギー公社であるウィーン・エネルギーでは、多くの市民出資発電所を運転している。ウィーン23区には同社最大の野立て市民ソーラー発電所が立地する。サッカー場2つ分の大きさのこの発電所では、パネルの下の緑地について自然保全・推進型のデザインと管理を行うことによって、質の高いビオトープを作り出している。2年間の生態系モニタリングにより、発電所内での数多くの動植物、昆虫の生息が確認されており、その中には希少種も少なくない。

この発電所で、ウィーンエネルギー社では、今年からミツバチ推進プログラムも開始した。地元の養蜂NPOと協同で、10箱の養蜂ボックスを設置。10万匹のミツバチを飼っている。パネル下の緑地の一部をミツバチ用として、草刈りを段階的に行うなど特別な運用を行う。この発電所からは、1年で100kgの蜂蜜の収穫が予定されている。

同メガソーラーは600人のウィーン市民の出資により実現されている。ウィーンエネルギー社ではこのほかにも25の市民発電所を実現しており、これまでに6000人の市民が270万ユーロ以上を出資してきた。同社では、再エネの増産にあたり、市民参加と自然保護を2つの柱に掲げている。

参照:Wien Energieプレスリリース

 

 

 


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