滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

シャフハウゼン駅前のバス充電ステーションが完成

2021-10-14 17:32:48 | お知らせ


北スイスのブナ林の紅葉は始まったばかりですが、今朝は屋根に軽い霜も降り、80年代に建てられた我が家は暖房が必要な季節になりました。

大好評であった視察の仕事がなくなって二回目の夏は、はじめてのオンライン・エコバウツアーのための企画と撮影・製作手配に翻訳や、こちらもはじめての反核映画の日本語翻訳チームの調整・取りまとめ役、それからビオホテル本のオンライン講演会などに取り組んでいました。緑の分野では、エコ集合住宅地の招待コンペのための緑地デザインや(第一ラウンドでは私たちの参加するチームが第一位に選ばれました)、ランドスケープアーキテクトへの植栽コンサルタントなどを行っていました。

イケダコーポレーションさんによる初のオンライン・エコバウツアーについては、11月末頃に公開される予定となっていますので、どうぞお楽しみに!

さて今日は、シャフハウゼンの市バス電化のお話です。シャフハウゼン州の州都であるシャフハウゼン市(人口3.7万人)の駅前では、市バスのロータリーを電気バス時代にアップデートするための工事が続いていたのが、この夏にようやく完成。12の充電アームが姿を現し、市バス電化への大きな一歩が成し遂げられました。



2年前、シャフハウゼン市では市バス会社の提案を受けて、電化戦略が市議会およびに住民投票で可決されました。それを受けて、すべてのバス車両(トロリーバスやディーゼル)を2028年までにバッテリー式の電気バスに交換し、充電ステーションを建設する計画が進行しています。現在は一路線がバッテリー式の電気バスで運行されていますが、この年末までに15台のバスが交換され、既存のトロリーバスを合わせると車両ストックの半分が電化されることになります。

シャフハウゼン市では、電気バスにとって「幸運な」環境が整っており、それが経済的であったことも、全面的な電化がスムーズに決定した要因になっています。「幸運な」環境とは、市バスのほぼすべての路線が駅前で交わる8の字型になっていて、駅前に1時間に2回バスが戻ってくる時刻表になっていること。そのため駅前にまとめて高速充電ステーションを設置すれば、通常の時刻表の枠内で充電が行えます。日中は駅前で85%まで高速充電し、夜間に車庫で満タンに充電する事でやりくりできるそうです。

さらなる「幸運」として、駅から1km離れた場所に市営電力のライン川の河川発電所があり、そこから駅前まで既存の地下路を介して直接送電線を引いて来れたこと。駅前の郵便局の地下室に変電設備やパワコン設備を置ける地下空間があったこと。さらに駅のある位置が、町の中でも地理的に一番低い場所であるため、回生ブレーキでバッテリーを充電した後に、残量だけを充電すれば良い点などがあります。


写真:12の充電アームがずらりと並ぶ駅前。右側は郵便局の建物。その地下室に充電関連の設備が収められている。

シャフハウゼン市は、エネルギー都市制度とEEA(ヨーロピアン・エナジー・アワード)のゴールド認証を持ち、ヨーロッパでもトップレベルの総合的なエネルギー政策を実施している自治体とされていますが、それに相応しい先進プロジェクトです。国の気候政策は6月にCO2法が国民投票で否決され迷走感がありますが、地域レベルでは少しずつ進行している事が目に見える嬉しい出来事でした。




写真:車両と充電システムは、スペインのIriza e-moblilty社製。内装はスイスでデザイン・製造された国産材の曲げ木を使ったベンチを採用。明るく静かな車内。12mタイプと2両連結の18mのバスの2タイプがある。


【日常からのその他諸々】
  • 集落の木質ボイラー更新と木造集合住宅プロジェクト
前回紹介した私の暮らす集落に計画されているマッシブな木造3階建ての集合住宅は、現在はコンクリートの工事がほぼ終了したところです。基礎や地下のボイラー室、チップサイロ室、チーズセラー、階段室などが姿を見せています。予定からは遅れましたが、間もなく新しいチップボイラーが運転開始。11月初旬には木造部分のパネルの組み立てが終了する予定です。また追って写真でご報告します。

  • 第二世代の木質バイオマスボイラーへの交換
地元のクレットガウ谷の多くの村では、20年くらい前からチップボイラーによる中心街の地域熱供給が行われています。第一世代のボイラーが寿命に達し、大気浄化政令を満たせなくなっているため、いくつかの村では設備リニューアルが進められています。私の住む人口800人のジブリンゲン村も同様の状況で、先日の村の住民会議(直接民主制なので住民の多数決で決めます)でリニューアル予算が可決しました。約1億円をかけて、新しいチップボイラーと蓄熱タンク、大気浄化フィルターが来年の夏に設置される予定です。


【最近の記事】
A-Plug誌に全三回の連載記事が掲載されました。下記からご覧になる事ができます。(要会員登録)

・第一回 気候中立政策における建築の省エネルギー化 -スイスの現状と課題-(前編)
 
https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1066

・第二回 気候中立政策における建築の省エネルギー化 -スイスの現状と課題-(後編)
 
https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1067

・第三回 スイスにおける現代木造建築の潮流https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1082


【インスタグラム】
book.biohotelにて、ビオホテル本のインスタグラムを行っています。


【本のご案内】

本「欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ」、ブックエンド社、滝川薫著



ビオシティ87号 「オーストリアのエネルギー自立と持続可能な地域づくり」、ブックエンド社




共著本「エネルギー自立と持続可能な地域づくり~環境先進国オーストリアに学ぶ」、昭和堂
編著者: 的場 信敬、平岡 俊一、上園 正武
共著者:上園由紀、歌川学、木原浩貴、久保田学、滝川薫、手塚智子、豊田陽介、渕上佑樹



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