滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

3月26日(火)SJS第10回ウェビナー「オーガニックワイナリー・レンツの持続可能なワイン造り」

2024-01-28 03:47:42 | お知らせ







今日は、3月26日(火)に開催予定のSJS第10回ウェビナーについてご案内します。
第10回目はエコ・ビオ企業をテーマとし、スイスのオーガニックワイナリー・レンツのオーナーで、トップレベルの醸造家として著名なローランド・レンツさんにお話し頂きます。

東スイスのトゥールガウ州にあるワイナリー・レンツでは、30年前よりオーガニック・ワイン造りに取り組み、ビオディナミ認証(Demeter認証、有機認証の中でも最も厳しい基準)を受けたワインを製造しています。

 



同ワイナリーでは、地力を豊かにする農法×生物多様性×耐菌性のある強健な品種×品種の多様性×混合栽培により、生命力の強いブドウ園を実現。それにより温暖化時代においても、経済的にも安定した運営と、高品質で個性的なワイン造りを達成しています。

そのワインは国内外で多くの賞を受賞し、2023年には欧州で最も厳しい環境基準を持つオーガニックワイン販売会社デリナートにより、ヨーロッパで最も優れた「生物多様性ワイナリー」に選出されました。エネルギー自立型ワイナリーとしても知られています。



本ウェビナーのポイント
・ビオディナミ認証のワイン造りからの経験
・耐菌性品種PIWI:ブドウの95%を強健な耐菌性品種に転換、育種活動
・動植物の生物多様性の促進:ブドウ畑の15%を生物多様性面積、そのネットワーク化
・エネルギー自立:省エネ、太陽光発電、排熱利用、地熱、蓄電池でエネルギー自立
・混合栽培、パーマカルチャー





日時:2024年3月26日(火)、17時~18時30分
ZOOMを使用し、逐次通訳の生中継にてお届けします

参加費:一般1000円、学割 500円

お申込みはこちらから:http://ptix.at/8x19V8

【講師プロフィール】ローランド・レンツ
ワイナリー・レンツの経営者。国家資格ワイン醸造マイスター。持続可能なワイン造り・農業のビジョンを掲げ、実践。スイスのオーガニックワイン業界を牽引する。その生物多様性とエネルギー自立に関する取り組みは、スイスでも非常にユニーク。



主催:SJSスイス-日本サステナビリティ交流会   
後援:JIA環境会議、JIA関東甲信越支部/杉並地域会

 



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木造ハイブリッド24階建てビルの現場を訪問

2024-01-09 01:13:56 | 建築


あけましておめでとうございます。
能登地震の被災地の皆様にお見舞い申し上げます。

昨年は、温暖化の進行や終わりの見えない戦争が続く中、スイス社会では未来への悲観的な雰囲気が漂っているように感じましたが、太陽光発電ブームを始めとしたポジティブな発展もありました。

個人的には、昨年は日本のコロナ規制が緩和された事により、秋口から続々と常連の視察セミナーのお客様たちが戻ってきて下さり、身動きが取れないほどでした。ご参加下さった方々にも、ホスト側の方々共にも、多くの出会いと学びの機会を頂き、心より感謝しております。緑化設計の仕事についても、いくつかの公共空間や複合施設の緑化プロジェクトが竣工し、大型屋上庭園の設計に携わる機会も頂き、充実した一年となりました。

高さ75mの木造ハイブリッドビル
視察がひと段落した昨年の11月中旬に、チューリッヒ近郊の木造ハイブリッド高層建築の現場見学会に参加しました。レーゲンスドルフ駅裏で開発中の新街区Zwattの一部を成す建物で、設計は建築設計事務所ボルツハウザー・アルキテクテン社、木造エンジニアはB2Kolb社、施工は大型ハイブリッドを得意とする大手の木造会社エルネ社が手掛けています。


写真:Boltshauser Architekten展示パネルより

総高75m、24階建てのうち、下3階はコンクリート造で770㎡のオフィスや商業施設が入ります。その上に21階分の木造ハイブリッドの賃貸住宅156世帯が乗っかる形となっています。建物の背骨を成す階段室はコンクリート造。柱と梁は国産のブナ集成材。そして木の梁の上に薄いコンクリートのスラブが敷かれています。外壁パネルも木造です。木とコンクリートを組み合わせたスラブパネルも、木造の外壁パネルも、事前で工場で製造するプレファブパネル構法となっています。


写真:中央の建物が半分ほど建設が進んだ木造ハイブリッド高層ビル

広葉樹集成材のスケルトン構造
この建物で特徴的なのが、国産ブナの集成材を柱と梁に使っている点です。スイスの森林でトウヒに次いで二番目に多い樹種が広葉樹のブナ。伝統的には主に燃料材に使われる事が多かったのですが、8年前くらいから、その強度を活かして大型建築の構造材に利用する動きが広がってきました。



スイスでも森林所有者や木材産業のイニシアチブで国内にブナ集成材工場が作られた事により、国産のブナ材による高層建築が実現できるようになりました。針葉樹よりもずっと細い材で足り、空間を節約できるのが利点です。この建物ではスプリンクラーが設置されているため、美しいブナの柱と梁をあらわしにできています。

写真:フロアを仕切った後の空間。賃貸住宅となる。

1週間でワンフロアを組み立て
工事現場は、約5日でワンフロアが組み立てられており、スピーディーに進行していました。その際にコンクリ造の階段室と木造部分が同時進行で施工されている点が珍しかったです。フロアのパネル組み立てをしている間に、上階の階段室のコンクリを打っているという意味です。(普通は階段室が出来上がってから木造パネル組み立てます。)

写真:建設中の最上階、階段室の建設が同時進行

11月中旬の見学時には、10階くらいまでが組み立てられたところでした。残りもあと3か月程度で上棟する計算です。最終的にはワンフロアあたり8世帯の賃貸住宅が入りますが、見学時には間仕切りのない状態の、スパンの大きな、フレキシブルな空間を見る事ができました。出来る限り同じサイズのスラブパネルを利用できるように空間構成を工夫しているそうです。



構造体からの排出量を26%削減
H1プロジェクトでは、建築設計コンペでの条件が持続可能性・温暖化対策でした。木造ハイブリッド構法を採用する事により、コンクリート造で同じ建物を建設した時と比較すると、構造体の製造による温室効果ガス排出量を26%削減できたそうです。加えて木造の構造体に1500トンのCO2を固定したとの説明でした。



庇部分には日射遮蔽を兼ねた太陽光発電が設置される設計で、屋根と庇からの発電量で電力消費量の4割弱を生産します。地階部分のファサードは版築になるとか。竣工後の姿を見るのが楽しみです。


写真:Boltshauser Architekten展示パネルより

木造高層化を巡る競争は続く
スイスでは、もはや木造6~8階建てくらいまではあまり珍しくなくなった感があります。そもそも高層建築自体が少ないのですが、ディベロッパーや木造会社、建築家やエンジニアたちの木造高層建築への野心はまだまだ尽きず、複数のプロジェクトが国内でも進行中です。


写真: Arbo。大学やオフィスが入る賃借ビル。奥の高いビると手前の中層ビルが木造ハイブリッド。これらの建物もエルネ社が手掛けた。

ちなみに現在スイスで一番高い木造ハイブリッド建築は、ロートクロイツ村のArboです(15階建て、高さ60m、2019)。まだ開発中のものでは、ヴィンタトゥール市内の再開発地に建設予定のRoket(33階建て、100m)が最大規模となります。隣国のオーストリア・ウィーンには世界で二番目に高い木造ハイブリッドのHoho Wien(24階建て、高さ84m、2019)があります。その隣には高さ113mのDonaumarina Towerが計画されています。


写真:Hoho Wien。ホテルが入っている。世界で二番目に高い木造ハイブリッドのビル。


☆ウェビナーのお知らせ☆
2024年1月23日(火)ペーター・シュルヒ教授ウェビナー
「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」

第9回SJSウェビナーのテーマは、建築の脱炭素にとって最も重要なテーマのひとつである省エネ改修です。講師には第2回SJSウェビナーでもお馴染みの、スイスの建築家ペーター・シュルヒ教授(ベルン州立大学建築学部)をお迎えします。

日時       :2024年1月23日(火)、17:00-18:50頃、ZOOM生中継
講演       : ペーター・シュルヒ教授、「持続可能な建築の考え方と実践2~改修編」
参加費    :1000円(学生500円)
お申込み: http://ptix.at/FZ6Cup










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