滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

余剰風力とCO2から天然ガスを生産~分散型の蓄電・蓄エネに

2011-08-23 00:06:29 | お知らせ

スイスの夏は終わったと思っていたら、連日30度以上の残暑が続いています。先々週はドイツ西部のラインランド・プファルツ州に取材に行っていました。森林が続く山地、低地にはブドウ畑、そして所々に見えるウィンドファーム、いづれもスイスから見ると広大な景色に圧倒されてしまいました。同州は電気の11.2%を風力で生産しているそうです。今日はドイツ出張のお土産話です。

今回取材に行った地域は公共交通の便が悪い僻地だったため、スイスからマインツまで電車で行き、そこから駅前駐車場にあるドイツ鉄道DBのカーシェアリング車を利用しました。今回初めて知ったのですが、スイスのカーシェアリング会社MobilityとドイツのDBCarsharing社はパートナー関係を築いており、Mobilityの会員番号やカードを用いてDBCarsharingの車を予約したり、キーボックスにアクセスしたりできるのです。同様にMobility会員は、オーストリアのカーシェアリング会社の車も利用できます。こういったパートナーシップにより、国境を越えても「長距離は電車で、ラストマイルだけをシェア車」でという移動スタイルが使える便利さを実感しました。


■ガス管を再生可能な余剰電力の蓄電装置に:風力から天然ガスを合成、効率は60%

取材に行ったのは4千世帯の暮らすモアバッハ市で、旧アメリカ軍の爆弾倉庫だった敷地を再開発して再生可能エネルギーパークを作ったユニークな自治体です。パークの中には、14基の風車(各2MW)、バイオガスコージェネ、メガソーラなどの施設があり、1.1万世帯の消費量に相当する電気を作っています。



この町のことは記事で紹介するとして、その再生可能エネルギーパークの案内の中で、風力の電気から天然ガスを生産する設備のテスト運転が3月から始まり、この夏に終了したという話を聞きました(実験装置の解体が調度終わったところでした)。風力の電気で水を分解して水素と酸素を作り、この水素とパークにあるバイオガス燃焼で生じるCO2からメタンガスCH4を作る施設です。排気として出るのは酸素です。

この技術のメリットは、風力や太陽光発電の余剰電力を用いてメタンガスを作ることにより、既にドイツ中に普及しているガス網やガスタンクといったインフラを蓄電や蓄エネ
装置としてそのまま利用できることです。また比較的安い蓄電方法だといいます。効率は電気から天然ガス化の工程が60%。このガスを用いて風力やソーラーの発電量が足りない時に電・熱併給したり、あるいは直接に調理や自動車燃料に使うこともできます。

モアバッハ市での実用テストで使われたのは出力25kWと小さな装置。エネルギーサービス会社のJUWI㈱社と、産業用エネルギー貯蓄技術の会社のSolarfuel㈲会社が共同でテストを実施し、試験は無事に成功したそうです。Solarfuel社によると、2013年からAUDI社がより大規模の6.3MWの実験設備を導入する予定。商用化は2015年以降で、20MWまでのモジュール型設備が予定されています。基礎技術は、バーデンビュルテンベルグ太陽エネルギー水素研究所(ZSW)とフラウンホーファー研究所風力エネルギーシステム技術部が開発したものだそうです。

JUWI社の創始者の1人であるマティアス・ヴィレンバッハーさんはプレスリリースでこう語っています。
「エコ電力の転換は再生可能エネルギーによる100%、分散型の供給コンセプトの重要な1つの基礎です。このようにフレキシブルな蓄電コンセプトは、地域や自治体、企業をエネルギー自立させ、彼らに長期的に安定して、支払えるエネルギーを保証します。」

様々なバッテリーや揚水発電所と並んで、合成メタンガスは近々、再生可能電力を地域内で蓄電するための、現実的な選択肢となるかもしれません。

下記のサイトからソーラーフュール社のヴィデオが見られます。 http://www.youtube.com/watch?v=w_-aaIpCTCA&feature=player_embedded

参照:ソーラーフュール社 http://www.solar-fuel.net/、 ユヴィ社 www.juwi.com


■ その他のドイツ土産 

ドイツで木質バイオマスを燃料とした珍しい小型のコージェネ技術を見聞しました。熱を使うついでに電気も作るタイプのものです。

★ 家庭用のペレットのミニコージェネ
上記のJUWI社本社ビルの熱源設備で、補助熱源としてOTAG社の新製品である小型ペレットコージェネ装置が実験的に設置されていました。発電出力0.5~2kW で、熱の出力が14~18kWということで、利用エネルギーの89%が熱、11%が電気として生じます。戸立てや集合住宅の主要暖房に最適とか。バッファータンクと組合せることで、電気ピーク時に発電しながらも、お湯は無駄なく給湯や暖房に使えます。下記のサイトでこの製品のプロトタイプを紹介するヴィデオが見られます。 http://www.otag.de/de/aktuelles/artikel/110316_WDR_pellets-lion.php

★機能する小型の木質ガス化発電装置
チップを燃料とする、規模の小さな木質ガス化設備では上手くいっている事例が少ない言われ続けてきましたが、木質バイオマスエネルギーのコンサルを勤める知人の話によると、ドイツのメーカSpannerの設備は稼働時間も長く、とても良好に機能しているそうです。ネットにも10以上の竣工例が紹介されています。発電出力は30kW、熱出力は60kWの装置からあり、小ささな規模の設備でも木質バイオ発電を可能にします。(もちろん熱利用が中心ですが。) http://www.holz-kraft.de/


最近の福島効果

スイスは10月末に総選挙です。7月末に行なわれたGFSBernによる選挙前の世論調査では、エネルギーへの関心が急激に下がったとそうです。4月の調査では、環境・気候・エネルギー問題は3割の人が「一番重要な問題」と答え、関心事ナンバーワンでした。対して今回そう回答した人は18%で第二位に下落。対して第一位になったのが外国人問題です(26%)。第三位はフラン高やヨーロッパの経済危機といった経済問題(7%)。メディアでは「フクシマ効果は終わった」と報じられました。 

スイスのメディアでは日本で続く福島の被害拡大の様子はほとんど伝わってこなくなりました。そういった中、スイスの環境NGOの依頼で、福島原発第一事故の犠牲を無駄にしないために、ドイツ語圏メディアに向けた短いプレスリリース「フクシマニュース」を毎月まとめることになりました。このブログの読者の皆様の中でも、福島原発事故にまつわる情報で、是非ドイツ語圏の人々に伝えたいことがありましたら滝川までご一報下さい。


■ 被災地の省エネ・再生可能エネルギーによる復興支援を行なう人々3

ドットプロジェクトは、「Q値1以下」という次世代型の省エネ住宅を東北を中心に推進している団体です。盛岡で事務局を勤める長土居正弘さんから、このドットプロジェクトにより大槌・吉里吉里村に木造仮設小屋の第一号が完成したというお知らせを受けました。現在はボランティアの人の宿泊所として使われています。仮設小屋は約20㎡の大きさで、断熱性能や自然通風といった快適性が考慮されています。外観はガルバリウム鋼板ですが、中は木の構造が見えます。

設計・監理は岩手県の建築家の大塚陽さん。屋根と壁面・床下の断熱材はアキレス社のQ1ボード(ウレタン断熱50mm)を入れています。断熱ドアと断熱窓は、新潟県の上野住宅建材社が提供した木製サッシ(網戸付)と、シャノン社が提供した樹脂サッシだそうです。職人はノッチアート+岩手ハウスサービス社。資金は森林のくに遠野・共同機構が出資しました。

ドットプロジェクトの仮設小屋を応援したい方は下記のアドレスにご連絡下さい。
長土居正弘さん nagadoi(at)mac.com
ホームページ http://www.dot-p.com/news.html


ニュース

●ドイツ:ソーラーコンプレックス社、太陽光発電は自家消費の時代へ
南ドイツの良好な条件の屋根では2011年中ごろより、太陽光発電の電気をコンセントからの電気と同じ価格で作れるようになった。kWhあたり20~25 ユーロセントということだ。これに国が自家消費ボーナス12ユーロセント/kWhを組み合わせると、太陽光発電設備の自家消費の経済性が明確に上がる。南ドイツの市民出資による再生可能エネルギー会社であるソーラーコンプレックス社によると、この地域では住宅や産業での太陽光発電を売電用ではなく、自家消費用に設置することが非常に興味深いオプションになりつつあるという。
参照:Solarkomplex、プレスリリース

●ドイツ:20MWのソーラーパークを5週間で竣工
ザクセンアンハルト州の旧軍飛行場に、ドイツでも最大規模に属するソーラーパークZerbst1と2が完成した。Schletter㈲会社による第一施工段階は5週間で竣工。Q-Cell社により実現されたこのプロジェクトの最終出力は46MWpになる。施工会社はGPSを用いて、くい打ち作業を2週間で終了。並行して架台の施工を始めた。設備の一部は旧着陸滑走路に施工されたため、Schletter社は特別な固定システムを採用。架台とモジュールの施工時間は4週間だった。今回施工された部分の出力は20MWだ。
「厳密な設計とジャストインタイムの納入、スピード施工のために最良化されたシステムがあってこそ守れたスリムな施工期間です」と、同社のプロジェクト代表者フランツ・シャーバーさんはは語る。
出典:SchletterGmbHプレスリリース

●ドイツ全量買取制度:国民の上乗せ料金への理解大
ドイツ人の80%が、再生可能電力買取ために上乗せされている料金3.5ユーロセント/kWhについて、「適切」あるいは「少なすぎる」と考えている。ドイツ再生可能エネルギー機関の依頼を受けて、世論調査研究所TNCInfratestが行なった調査の結果から、この意外な事実が判明した。調査は1002人を対象として7月14日~15日にかけて行なわれた。同時に近所の再生可能エネルギー設備に対する受容度等についても調査された。
出典:ドイツ再生可能エネルギー機関AEE


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汚泥と廃材で冷暖房するショッピング&ビジネスセンター

2011-08-04 20:52:27 | 再生可能エネルギー

■日本語版「原発に反対する100個の十分な理由」

ドイツの市民電力会社であるシェーナウ電力のサイト「原発に反対する100個の十分な理由」が、日本語で読めるようになりました。是非ご覧になってみて下さい。ドイツ事情も多いですが、論点が短くまとめられています。

http://100-gute-gruende.de/pdf/g100rs_jp.pdf (日本語訳)
http://100-gute-gruende.de/index.xhtml  (原文)

この翻訳は、在ドイツ・ジャーナリストの村上敦さんの献身的な監修により、村上さんとサポーターの方々の翻訳ボランティアで実現したものです。

■スウォッチグループ代表もジーメンス・スイス社長も脱原発推進

さて、8月1日はスイスの建国記念日でした。記念日には大統領が国民に5分ほどのメッセージを語りました。今年の大統領(スイスでは大臣が毎年交代で大統領を務める)のミシュリン・カルミ・レさんはそのスピーチの中で、「スイスは戦後最も難しい時期にあり、内閣は直面する問題を解決し、国民の心配を真剣に受けとめる。その一例として再生可能エネルギーと効率的なエネルギー利用による段階的に脱原発を決めた。」という主旨の言葉を述べています。

新聞各誌でも有名人のメッセージがいろいろと載っていましたが、なかでもソンターグスツァイトゥング新聞に掲載されていたニック・ハイェック氏のインタビューが目立ちました。彼はスウォッチグループの創始者ニコラス・G・ハイェック氏の子息で、コンツェルンの運営代表者です。スウォッチグループはスイスの時計メーカコンツェルンで、スウォッチ以外にもオメガやブレゲ等の19ブランドを傘下に置いています。2010年度の純益は900億円。部品から仕上げまで国内で行ない、スイスのものづくり文化の維持に経営的創造力をつくす企業です。また燃料電池の開発にも取り組んでいます。

ニック・ハイェック氏は、ソンターグスツァイトゥング新聞にて、スイスの脱原発とそれに反対するスイスの経団連について、次のように答えていました。(下記引用)

 「誌:つまり、あなたは内閣が提案した脱原発を歓迎するということですね?あなたもメンバーになっている経団連エコノミースイスは原発時代の終わりが決定的なものかどうか疑っています。
ハイェック:私は全面的に脱原発を後押しします。それが唯一の正解です。未解決の最終処分場の問題だけでも考えてみてください。でも私は、内閣が今、素早く全権委任したコーディネーターを指名することを望みたいですね、このプロジェクト代表者が、全ての新しいエネルギープロジェクトを始めたがっている人々を、官僚的な障害を乗越えられるように助けるんです。

誌:経団連は原子力というオプションを維持したがっています。
ハイェック:私は経団連の脱原発に反対するキャンペーンに怒りましたよ。この金は節約できたものです。経団連はロビー活動についてについて考えるのをやめて、その分新しい解決策を積極的に支持すべきです。我々は反対することをやめ、もっと脱原発がスイスにとって1つの成功ストーリーになるように努力しなくてはなりません。

誌:なぜ?
ハイェック:脱原発は、スイスにとって強大な革新の波をもたらすでしょう。我々は新しい解決法を探し、エネルギーの効率的利用を大幅に改善することを強いられます。私はスウォッチグループの中でこのことを試験させました。そして我々の工場にはまだ大きな省エネポテンシャルがあることが分かりました、我々は既に早くから省エネ対策を実施してきたのにもかかわらず。脱原発は我々のツーリズムにとっても良いのです。人々は原発を見るために我々の国に来るのではない。ツーリストが見たイのはゲスゲン原発ではなく、アイガー北壁だ。
(訳註:ゲスゲン原発はスイスの主要都市であるチューリッヒとベルンの間にあり、電車からよく見えるため。)

誌:他の経済界人は脱原発は経済にとって持続可能ではなく非常に高くつくと主張しますが?
ハイェック:いいや、ほとんどの企業家にとってそれは大きなチャンスです。短期的にはたぶんエネルギーコストが上がる。だがそれは大きな問題ではない。フラン高の効果の方がずっとひどいですね。」

ソンターグツァイトゥング誌の同じ号では、ジーメンス・スイスの社長シグフリード・ゲルラッハ氏のインタビューも紹介されていました。同社長はその中で「我々は脱原発で得する側だ」と断言。「我々は100%得します。ガス発電所のタービンの納入者としてだろうが、ソーラーや風力設備の部品や、あるいは省エネ型モーターや建物設備技術によっても。」だそうです。

インタビュー出典:Sonntagszeitung,7月31日付


■汚泥と廃材で冷暖房するバーゼルのシュトゥッキセンター

今日は、汚泥と廃材燃焼からの廃熱を地域の冷房と暖房に利用している事例を紹介します。バーゼル駅からトラムで15分ほど、高速道路が交差する工場地帯に旧シュトゥッキ染色工場の巨大な敷地はあります。1984年から閉鎖されていたこの敷地は、再開発により2009年に床面積3.2万㎡の大型ショッピングセンターとホテル、ビジネスパークとして生まれ変わりました。設計はバーゼルのスター建築家であるディーナー&ディーナー。367m×115mという大きな白い箱状の建物を覆うファザード緑化が目を惹きます。



このシュトゥッキ・センターは、スイスでは最大規模の吸収式冷凍機を使って、廃熱を利用して冷暖房を行なっています。熱源となるのは、同じ敷地の中にある2つの施設。1つはバーゼルの下水処理場が運営するプロレノ㈱の汚泥焼却場。もう1つは産業廃棄物の焼却場を営むヴァロレックサービス㈱。これらの会社は、敷地の再開発計画に賛成する条件として、焼却場の廃熱利用を挙げました。

産業廃棄物の処理会社の方は、通年して63度という低温の廃熱を出しています(4.5MW)。また汚泥焼却場の方は、冬期はバーゼル州営エネルギー会社の地域暖房網に熱を売っていますが、熱需要の少ない夏期には9000MWhの余剰熱がありました。それをシュトゥッキセンターの冷房用に活用したというわけです。

設備の設計はエンジニア事務所のDr.Eicher+Pauli。実現と運営は州営エネルギー会社のIWB社が請負っています。投資はIWB社が1200万フラン、バーゼルの環境エネルギー局が200万フランを助成し、プロレノ社とヴァロレック社も資金参加しました。

設計は困難を重ねたといいますが、2009年1~9月の間に施工されて運転開始。2009~2010年の夏冬の運転は順調だそうです。こうしてシュトゥッキのビジネス&ショッピングセンターが消費する19GWhの冷と暖は、IWB社により全て廃熱により供給されています。

大型消費者と大型生産者が近くに居たという稀な好条件ではありますが廃熱利用の模範事例です。こういった廃熱利用は、自治体のエネルギー計画により効率的に実施していくことが可能です。

参照:Energeia, Dr.Eicher+Pauli AG
リンク: www.eicher-pauli.ch


■ 日本での全量買取制度、蓋にご注意!
日本の国会での再生可能電力の全量買取制度の審議の進行模様が、環境エネルギー政策研究所のサイトで報告されています。その7月29日の報告の中に、全量買取制度の賦課金(サーチャージ)に上限を設け、それをkWhあたり0.5円に設定することが国会で議論されているとありました。その上限では、再生可能エネルギーの電力生産に占める割合はたった4%しか伸びないそうです。

環境エネルギー政策研究所 ISEPのプレスリリース(7月29日) http://www.scribd.com/doc/61180085/ISEP%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%9AFIT%E6%B3%95%E6%A1%88%E5%AF%A9%E8%AD%B0%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9-4

スイスは2009年にドイツの全量買取制度のミニ版を導入しましたが、その際に今日本が議論している上限を取り入れました。それにより2008年に買取募集開始後まもなく予算が底つきました。以来すべての再生可能電源について買取を受けられるまで3~4年待ちという状態が続いています。この法律に定められた上限、「蓋」がスイスで再生可能電力の増産が進まない原因となってきました。

脱原発実現の焦点もこの「蓋取り」にかかっているという有様です。秋に上院が脱原発を決めればこの蓋は間もなく取れそうですが、それまで貴重な時間が失われ続けます。当時、強靭な原発推進派のいたスイス国会では、この「蓋」をつけることによってのみ、全量買取制度が国会で可決されたという過去があります。しつこいですが、「ドイツの成功に倣うなら、サーチャージに蓋はつけるな」がスイスの教訓です。

スイスのエネルギー条例(Energieverordnung)のリンクで、スイスの全量買取制度のエネルギー源別・出力別の買取条件を見ることができます。下記のリンクは2010年度の改訂版。またバイオマスについては、発電効率についても条件が設けられています。 http://www.admin.ch/ch/d/as/2010/809.pdf


■被災地の再生可能エネルギーによる復興に携る人々2

★埼玉県小川町の桜井薫さん(自然エネルギー事業協働組合レクスタ代表理事):
雑誌コンフォルトの今号に、桜井薫さんの被災地での支援活動が掲載されていました。桜井さんは、私が10年以上前スイスエネルギー庁が発行していたレポートをまとめた冊子を製作した時に、初めて購読してくださった方の1人です。コンフォルトによりますと、これまで桜井さんは被災地に通い、ボランティアで仮設住宅や避難所に小型の太陽光発電設備と蓄電池のセットを設置しています。またこれとは別のプロジェクトでは、寄付金を活用して仮設住宅に系統連携型の太陽光発電設備を設置しています。レクスタのサイトによりますと5月13日時点で、避難所20件、公共施設3件、半壊住宅20件、外灯30灯のプロジェクトが進行中だそうです。桜井さんの活動は「つながり・ぬくもりプロジェクト」を通じて応援できます。
www.tsunagari-nukumori.jp
www.rexta.or.jp

★盛岡市の太陽熱温水器の岩岡重樹さん(アトム環境工学社長):
盛岡市にあるアトム環境工学社は、ドイツの太陽熱温水器システムや独自の地中熱ヒートポンプシステムを用いて、建物に合わせたエネルギーシステムを設計する会社です。岩岡さんはメーカの支援を得て、仮設住宅や避難所に太陽熱温水器を設置しています。石巻の避難所ではドイツと中国のベンチャー会社リノリッター社のタンク付き温水器(300ℓ)を4枚設置。毎日200人がシャワーを浴びられるそうです。同様の施設を、釜石や遠野の避難所や学校にも設置。同時に、女性でも安心して利用できる鍵のかかるシャワーブースも提供しているそうです。岩岡さんの活動の応援については、下記からお問合せ下さい。
http://www.ajic.co.jp/index.html


ニュース

●ソーラーエネルギーを利用するホテル紹介サイト
業界団体スイスソーラー連盟では、ウェブサイト上でソーラーエネルギーを利用するホテルのリストとインターアクティブな地図を掲載。今のところ70のホテル、53のユースホステル、18の山小屋が掲載されており、設備内容の説明やホテルサイトへのリンクもある。ホテル業界では売上げの3%がエネルギー代。スイスソーラーでは、今後エネルギー価格高騰が予測されるため、ホテル業界でのソーラーエネルギー利用を推進している。1m2の太陽熱温水器で60~80ℓの灯油を節約できる。観光産業が盛んなスイスでは、ホテルにおける省エネと再生可能エネルギーの推進は、競争力を維持していくために重要な課題である。
http://www.swissolar.ch/de/solarhotels/karte-der-solarhotels/

● 30%省エネ型の耕耘機研究
フラウンホーファー工具機械工学研究所では、省エネ型の犂の水平刃を開発している。摩擦を最小化することにより、僅かな力で土中を耕すことができ、トラクターの燃料を節約できるという。開発中の犂の水平刃は、ダイアモンドに似た炭素コーティングで覆われており、バターをナイフで切るように土を鋤ける。
炭素コーティングはDLCと呼ばれる非常に硬い素材で、コンピューターのハードディスクを保護するためにも使われている。犂やまぐわによる耕作で、土中に伝えられるエネルギーのうち50%は、土と犂の刃との摩擦により失われる。実験では、DLCコーティングを施した犂の刃はこの摩擦を半分以上減らし、犂を引く機械の燃料消費を30%減らすことができた。
DLCコーティングは、土や砂、石の摩擦によっても剥げない。問題は、器具に使われている鉄が土中で変形しやすく、より硬いDLCコーティングの下地として適していないこと。そのため現在プロジェクトパートナーは、硬度の高い犂の刃の新素材をフィールドテストしている。窒化鋼やガラスファイバーで強化したプラスチックや硬金属の炭化タングステンなどである。これに成功すれば省エネ型の磨耗しない犂の水平刃の実現は間近だという。
出典:フラウンホーファー工具機械工学研究所プレスリリース

●ドイツ:市民出資が再生可能エネルギーの受容度を高めるツボ
北海から10km離れた人口9300人の町二ーヴュラーは、再生可能エネルギーへの市民参加が進んでいる。この地域にある風力パークの90%以上が市民風車で、これはドイツでもトップの割合だ。
「市民の資金参加が受容度を高める」と市長のヴィルフリード・ボックホルトは語る。「ひとびとが設備と自己同一化することができなければいけません。」そのためニービュラー市の市議会は、風力およびソーラーパークは市民の手によってのみ実現されるべきであることを決定した。それにより価値創出の大部分が自治体に留まる上、住民が温暖化防止に積極的に貢献できるようになる。
二ーヴュラーの市民風力パークには、市とその周辺の住民のみが資金参加できる。約900人の市民と市は共同で300万ユーロを投資。残りの投資コストは地方銀行の融資でまかなった。2011年5月に竣工した市民風車パークは、一年に47GWhのエコ電力を生産する予定だ。それにより1.3万世帯分の電力を供給することができる。
「市民出資の設備は、小さな投資家にも、その金を地域内で環境的に投資する可能性を与えます。どの出資者にも、どこに金が投資され、どのようなメリットがあるのか、見ることが出来ます。これにより自治体は、住民にエネルギーシフトを共にデザインするという準備を目覚めさせることができるのです。」と、ドイツの再生可能エネルギー機関代表のフィリップ・フォーラー氏は語る。
出典:ドイツ再生可能エネルギー機関

● グリュッツィ誌で紹介頂きました
スイスの日本人コミュニティ誌「グリュッツィ」の2011年夏号(54号)はスイスの脱原発特集でした。その中で私の活動とブログをご紹介頂きました。編集者の野嶋篤さん、どうもありがとうございました!
www.intercultura-gruezi.ch


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