滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

日常の中のビオ&フェアー

2010-08-13 18:40:38 | その他

このところ、スイスでかなり普及してきた水系の再自然化というテーマに没頭(格闘?)するうちに、あっという間に2週間ほどが過ぎてしまいました。気がついたら農家のプルーンの木の枝がどっさりと実をつけて重そうにしなっています。朝晩はすっかり涼しくなり、庭の草花も今年の激しい天候の変化のせいでかなり疲れ気味の様子です。

昨日は気分転換にパンを焼いてみました。とはいえ、前回パンを焼いたのは5年前というような私がその気になったのは、村の生協コープで美味しそうな有機無農薬の全粒粉のミックスを見つけたため。だから実は、この粉と自然酵母と水を混ぜて練っただけなのです。形はちょっと不恰好ですが、種が一杯入っていて、なかなか美味しく出来ました(当たり前か)。粉売り場には、様々な有機無農薬栽培のBIO印の粉やミックス粉の間に、BIO印の蕎麦粉も売っていたので、蕎麦掻が作りたくなりこれも購入しました。

こんな話をするのは、スイスの生協コープにはBIO(オーガニック)原料を用いた便利な食材や加工食品が充実しており、それが消費者にとってはとても有り難く、使い勝手が良いと感じるからです。村のスーパーでも、ほぼ全種類の食品・飲料製品にBIOと従来品の選択肢があります。その背景で生協コープは、こういったBIOやフェアトレードの販促のために消費者の教育に熱心です。毎週家庭に無料配布される「コープ新聞」の今週の特集もBIOでした。

ところでそんなスイスの平和な日常からは信じがたいほど、ここ最近の世界で起こっている一連の天災と人災のニュースは凄惨です。メキシコ湾の原油流出の次には中国の大連新港の原油流出事故。ロシアの森林・泥炭火災は原子力・核施設を脅かし、チェルノブイリ事故の汚染地区も燃え始めたと昨日報道されました。そして東ヨーロッパと東ドイツ、そしてパキスタンの大洪水。被災地の人々の苦しみもさることながら、世界の気候や環境、食糧供給への影響を想像すると暗澹とした気持ちになります。

8月頭にはバングラデシュで起こった縫製工場の労働者による賃上げ要求も記憶に新しいところです。労働者側が現在の賃金が月24ドルで、政府は倍増を約束したが、それでも誰も生活できないので月75ドルへの賃上げを要求。工場主は賃上げにより欧米のメーカがもっと労働力の安い地域に移ることを恐れているという報道でした。スイスのどの町にもあるH&MやZara、カーフアといった安価な量販店の衣料が、低賃金による労働力の搾取により製造されているということを、改めて消費者に意識させる事件としてスイスのメディアでは何度も取り上げられていました。

私も改めて、衣料を買うならば可能な限りフェアトレードの製品だけにしよう、そして衣料品を大切にしようと誓いました。また日本やヨーロッパでの消費者からの圧力がもっと高まり、上記のような大手の衣料品メーカや販売店こそがフェアトレードをスタンダードとし、消費者を教育する日が来ることを願います。


短信

●EU報告書、ウランが2020年には稀少に?

8月10日付けのベルナー・ツァイトゥング新聞で、EUのレポートによるとウラン燃料は今後数年で急激に少なくなり、価格が上がるという記事が小さな掲載されていた。遅くとも2020年以降にはウランは現在採掘されている鉱山だけでは今日の需要をカバーできなくなるという。このような資源減少により2003年から2007年の間急激に価格が高騰した。

●応募殺到の省エネ改修プログラム
 2010年1月よりリニューアル・スタートしたスイスの建物の省エネ改修への助成制度。6月末までに1.4万件、約101億円の助成額に相当する予想を超える応募数があった。助成される対策は外壁・屋根・窓・床下の断熱で、平均的な申請助成額は約72万円。再生可能エネルギー源などに対しては別途、州から助成金が出る。この制度では、10年間に渡り毎年、国が灯油へのCO2税の収入を用いた約110億円により躯体の省エネ改修が助成される。また同財源により約55億円が再生可能熱源の助成に用いられる。同時に州は一般財源より年約66~82億円を用いて建物の高効率設備や再生可能エネルギー、排熱利用、ミネルギーへの助成を行う。

●スイス最大規模のソーラー温水器設備が兵舎に
スイスのソーラー温水器メーカであるErnstSchweizer㈱の発表によると、同社はスイスの防衛・人民防護・スポーツ省より、DaillyLaveyの兵舎施設に国内では最大規模の743㎡の太陽熱温水器設備を設置する依頼を受注した。323枚のソーラー温水器は12の系統から成り、一つの系統がメンテナンス中でも別の系統は600kWの最大出力で運転できるという。温水タンクには90万ℓの地下水槽を使うとか。今年の10月に竣工予定で、これにより給湯と暖房補助を行なう。

●MSC認証を受けたイワシ缶詰
スイスの生協コープでは、持続可能な漁業からの魚介類を認証するMSC(Marine Stewardship Council)を持つ大西洋東北部のイワシの缶詰の販売をスイスではじめて開始した。コープ社では10年前より過剰漁業の問題への取組みの一貫として天然魚についてはMSCの魚介類を販売しており、これまでは生鮮魚、冷凍切身、缶詰などを販売してきた。また、養殖魚については、オーガニック飼育のマスやシャケ、エビなどの生鮮品や冷凍品を扱っている。(個人的にはスイスで海の幸は食べたいとは思いませんが・・)

●FSC認証の紙おむつ
上記の生協コープは、スイスで初めてFSC認証を持つ紙おむつの販売を開始した。環境に優しいノンフードの製品ライン「エコプラン」で取り扱われている。紙おむつに求められる品質においては最高の性能を求め、環境負荷は従来品よりも30%以上小さい上、手ごろな価格である。原料のセルロースは北欧産で、FSC認証を受けた、持続可能な運営がなされている森林からのもの。生産はスイス国内のコープ社の配送センターから50km離れた場所で行なわれているため、輸送路が比較的短い上、生産は100%再生可能電力で行われているそうだ。

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