滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

2021年のスイス木造賞とフォアアールベルク木造賞から

2022-01-13 05:13:19 | お知らせ

【木造建築散策1】
2020年2月にコロナ禍前の最後の視察で工事現場を見学した大型木造集合住宅Krokodilを再訪。既に入居が済み、中庭の緑やベランダから生活感が感じられた。スイスのゼネコンの木造部門がBIM設計、パネル製造・施工。木造8階建て、リーズナブルな家賃・価格の250世帯が入る。ヴィンタトゥール市駅裏の大規模な再開発地区の一部で、隣に木造オフィスビルも計画中。
設計:ARGE Baumberger&Stegmeier und Kilga Popp Architekten


【木造建築散策2】
ビオ(オーガニック)の種子製造・販売、品種開発を行うサティーバ社の木造新社屋。オフィス、作業所と種子保管施設を含む。ライン川に浮かぶライナウ島を取り巻く歴史的建造物に囲まれた地区の中で景観に美しく収まる。ギザギザ屋根の内側に屋根材一体型の太陽光発電が設置されている。花弁のように優雅に曲がった梁から成る空間がゴシック教会のよう。
設計:Staufer & Hasler Architekten


近況
 コロナ禍も3年目の冬となりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
 私の方は、コロナ禍により視察の仕事はなくなりましたが、昨年は様々な新しい事にチャレンジするチャンスを頂きました。

 庭や緑化の仕事では、住宅建設協同組合による二つの100世帯規模のエコロジカルな集合住宅地の植栽設計や緑化コンセプトを策定する機会を得て、多くを学びました。今年もスイスの多くの人の心の故郷になるような集合住宅や産業建築の庭を目指して研鑽を重ねてゆきます。

 その他にも、スイスで作られた反核映画の翻訳をプロの方々のご協力を得て行ったり、初のオンライン視察のための映像製作に携わったり、試行錯誤の連続でした。11月末に放映されたオンライン視察の画像が販売されるようになりましたら、またご案内します。(下、予告編)

 
 
 また、本「欧州のビオホテル」や「気候中立と持続可能性を目指したスイスの省エネ・エコ建築」をテーマとした講演も何度か行いました。現在は調査の仕事に取り組んでいます。
 来春からは、持続可能な社会づくりに取り組むこちらの専門家の方々の生の声をお伝えするウェビナーシリーズを開始する予定ですが、それについてはまた後日にご報告します。


チューリッヒ州で既存の化石エネルギー熱源の代替が禁止
 昨11月28日にチューリッヒ州では住民投票により、化石エネルギー熱源(石油・ガスボイラー)の更新を禁じる法律が、62.8%で可決しました。原則としての禁止なので、再エネ熱源のライフサイクルコストの方が明確に高い事が証明される場合や、建物所有者が熱源交換のための経済能力に欠ける場合には、例外措置もあります。再エネ熱源に交換する施主には、もちろん国と州からの助成金が出ます。

 類似の法律を以前から実施しているフリブール州やバーゼルシュタット準州では、熱源交換時にほぼ100%の再エネ率を達成しています。新築では非化石熱源が普及している今日。既存の化石熱源の廃止が温暖化政策では急務です。しかし昨6月の国民投票で、国レベルでの廃止措置を含んでいたCO2法は否決されました。そのような事情から、当分は州レベルで脱化石熱源を進めて行くことになりそうです。


Prix Lignum 2021 スイス木造賞
 昨年は、3年に一度のスイス木造賞が授与されました。国とスイスの木産業協会が共同で出している賞で、530件の応募の中から国レベルでは3つの木造建築が入賞しました。うち2作品を下に紹介します。その他、5つの地域別に約40の建物や家具が受賞しています。伴茂氏設計のスウォッチセンターといったハイテクを駆使した建築物や、上述の大型集合住宅などもある中で、今年の審査員はローテク、社会性、地域性、建築表現、普遍性といった点に重点を置いて評価されたようです

全国部門 金賞 マイエンガッセの集合住宅、2018
設計:Esch Shinzel Architekten
バーゼル市の中心地、以前作業場のあった場所に、その形を踏襲しながら建て替えが行われた。コミュニティ空間としての中庭を取り囲むようにリーズナブルな公営住宅と幼稚園が入る。シンプルでローテク、エコロジカルな木造四階建て。8世帯のメゾネット型テラスハウスと、1.5室~6.5室までの住居が混合する。天井は木・コンクリート接合スラブ。住居間の遮音性能も高い。


©Prix Lignum 2021, Foto: Kurt Frey



全国部門 銀賞 ザンクトガレン州の農業センター、2019
設計:Andy Senn
メインストリームの省エネ建築では設備技術が増える中、ローテクを旨とした地場材による木造の学校建築と寮。建築的解決と手動操作により省エネ、快適・健康、長寿命な建築を目指す。木質バイオマス・温水パネルヒーターによる暖房設備や太陽光発電以外は設備機器や自動化技術を入れていない。配管を表面に出し、メンテナンスを容易にしている。この建物は2020年にスイスとリヒテンシュタインがアルプス地方の持続可能な発展に寄与する建築に授与する「Constructive Alps」を受賞し、昨年は持続可能な建築会議でも注目を浴びていた。




©Prix Lignum 2021, Foto: Seraina Wirz, Zürich


フォア―アールベルク木造賞2021
 2021年には、お隣オーストリアのフォアアールベルク州でも木造賞も授与されました。これは、優れた木造建築による地域づくり知られる同州で、建築家や設計者、木造会社などがメンバーになっている「フォアアールベルク木造アート協会」が隔年で出している賞です。地元の設計、施工、建具が用いられた建物が競い合います。前述のスイスの木造賞では対象にならないような、小さな芸術的な建物も表彰の対象となっているのが特徴です。こちらの審査員の視点にも、今年は前述の賞に共通する部分が多く見られます。いろいろな部門での表彰がありますが、ヴィデオのある2作品を下に紹介します。

戸建て部門賞、ブロンス村のエラー邸
設計:Inauer – Matt Architekten
vorarlberger holzbau_kunst: Zimmerei Heiseler - Berghaus Eller

グローセス・ヴァルサー谷の伝統家屋を解釈した、土地消費の少ない、美しい小さな家。モミ材の建具がフォアアールベルクの職人技を存分に見せてくれる。

産業部門佳作、ヒッティサウ村の畜舎改修
設計:Georg Bechter Architektur & Licht und Design
vorarlberger holzbau_kunst: dr´ Holzbauer - Georg Bechter Licht & Architektur+Design  

同賞では佳作だが、オーストリアの環境省が授与する「持続可能性&建築賞2021」で4つの入賞建築のひとつに選ばれた建物。建築設計事務所・照明メーカの事務所兼工房。木造の畜舎をスケルトンまで解体し、一階はコンクリート造、二階より上は木造・ストローベイル断熱で改修。室内は版築床、粘土壁、ウールマットを施した天井など自然建材で仕上げた。南側は懐かしのウィンターガーデン。ゆらゆらした板張りファサードがユニーク。エネルギー源には、ファサードの太陽熱、屋根の太陽光、ヒートポンプを組み合わせた。熱源は家畜糞尿タンクを改築した氷蓄熱層。


 その他、「スイスソーラー大賞2021」やスイスエネルギー庁による「金のワット賞2022」でも興味深い建築やエネルギー施設の事例が表彰されていますが、それについてはまた別の機会にご報告します。



【資料編】
その他の受賞建築に興味のある方は下記から写真や説明をご覧になれます。

スイス木造賞
つの地域別の入賞建築・家具など40点を見る事ができます。

フォアアールベルク木造賞
・地域への付加価値価値創出部門、ドリス&ミヒァエル・カウフマン邸、集成材を用いず、向かいの山の無垢材で構成

・集合住宅部門、エルナ邸、農家建築の学生寮への改修

・増改築部門、グローセンビュントの古民家改修

・公共建築部門、ケンネルバッハ村の幼稚園

・産業建築部門、DIN安全技術社オフィス


©Kurt Hoerbst, Foto: BMK




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11月25日(木) オンラインエコバウツアーのご案内

2021-11-18 19:33:11 | お知らせ
 

来週11月25日(木)に、イケダコーポレーション様の主催によるオンラインエコバウツアーが開催されます。下記リンクからお申込み頂く事ができます。


 長き伝統のあるイケダコーポレーション社のエコバウツアー。現地視察が不可能である中、今年はオンラインツアーという形で実行される事となりました。 

 当日は、私の方でセレクトさせて頂きましたスイスのエコ建築の先進事例や現場をプロが撮影したヴィデオを、解説を交えながら皆さんと視聴致します。

 質疑には、木とスイス本漆喰と藁断熱でできた集合住宅の建築家で、ストローベイル建築のパイオニアであるヴェルナー・シュミットさんも参加される予定です。

 ふるってご参加下さい!

【見学プログラム】
・バーゼルシュタット準州の環境エネルギー局の新庁舎~木造ハイブリッド8階建てZEB、エコ認証
・木造会社シェアホルツバウ
・ボンバサイの集合住宅地~藁断熱・本漆喰・木造のコミュニティ型集合住宅地








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シャフハウゼン駅前のバス充電ステーションが完成

2021-10-14 17:32:48 | お知らせ


北スイスのブナ林の紅葉は始まったばかりですが、今朝は屋根に軽い霜も降り、80年代に建てられた我が家は暖房が必要な季節になりました。

大好評であった視察の仕事がなくなって二回目の夏は、はじめてのオンライン・エコバウツアーのための企画と撮影・製作手配に翻訳や、こちらもはじめての反核映画の日本語翻訳チームの調整・取りまとめ役、それからビオホテル本のオンライン講演会などに取り組んでいました。緑の分野では、エコ集合住宅地の招待コンペのための緑地デザインや(第一ラウンドでは私たちの参加するチームが第一位に選ばれました)、ランドスケープアーキテクトへの植栽コンサルタントなどを行っていました。

イケダコーポレーションさんによる初のオンライン・エコバウツアーについては、11月末頃に公開される予定となっていますので、どうぞお楽しみに!

さて今日は、シャフハウゼンの市バス電化のお話です。シャフハウゼン州の州都であるシャフハウゼン市(人口3.7万人)の駅前では、市バスのロータリーを電気バス時代にアップデートするための工事が続いていたのが、この夏にようやく完成。12の充電アームが姿を現し、市バス電化への大きな一歩が成し遂げられました。



2年前、シャフハウゼン市では市バス会社の提案を受けて、電化戦略が市議会およびに住民投票で可決されました。それを受けて、すべてのバス車両(トロリーバスやディーゼル)を2028年までにバッテリー式の電気バスに交換し、充電ステーションを建設する計画が進行しています。現在は一路線がバッテリー式の電気バスで運行されていますが、この年末までに15台のバスが交換され、既存のトロリーバスを合わせると車両ストックの半分が電化されることになります。

シャフハウゼン市では、電気バスにとって「幸運な」環境が整っており、それが経済的であったことも、全面的な電化がスムーズに決定した要因になっています。「幸運な」環境とは、市バスのほぼすべての路線が駅前で交わる8の字型になっていて、駅前に1時間に2回バスが戻ってくる時刻表になっていること。そのため駅前にまとめて高速充電ステーションを設置すれば、通常の時刻表の枠内で充電が行えます。日中は駅前で85%まで高速充電し、夜間に車庫で満タンに充電する事でやりくりできるそうです。

さらなる「幸運」として、駅から1km離れた場所に市営電力のライン川の河川発電所があり、そこから駅前まで既存の地下路を介して直接送電線を引いて来れたこと。駅前の郵便局の地下室に変電設備やパワコン設備を置ける地下空間があったこと。さらに駅のある位置が、町の中でも地理的に一番低い場所であるため、回生ブレーキでバッテリーを充電した後に、残量だけを充電すれば良い点などがあります。


写真:12の充電アームがずらりと並ぶ駅前。右側は郵便局の建物。その地下室に充電関連の設備が収められている。

シャフハウゼン市は、エネルギー都市制度とEEA(ヨーロピアン・エナジー・アワード)のゴールド認証を持ち、ヨーロッパでもトップレベルの総合的なエネルギー政策を実施している自治体とされていますが、それに相応しい先進プロジェクトです。国の気候政策は6月にCO2法が国民投票で否決され迷走感がありますが、地域レベルでは少しずつ進行している事が目に見える嬉しい出来事でした。




写真:車両と充電システムは、スペインのIriza e-moblilty社製。内装はスイスでデザイン・製造された国産材の曲げ木を使ったベンチを採用。明るく静かな車内。12mタイプと2両連結の18mのバスの2タイプがある。


【日常からのその他諸々】
  • 集落の木質ボイラー更新と木造集合住宅プロジェクト
前回紹介した私の暮らす集落に計画されているマッシブな木造3階建ての集合住宅は、現在はコンクリートの工事がほぼ終了したところです。基礎や地下のボイラー室、チップサイロ室、チーズセラー、階段室などが姿を見せています。予定からは遅れましたが、間もなく新しいチップボイラーが運転開始。11月初旬には木造部分のパネルの組み立てが終了する予定です。また追って写真でご報告します。

  • 第二世代の木質バイオマスボイラーへの交換
地元のクレットガウ谷の多くの村では、20年くらい前からチップボイラーによる中心街の地域熱供給が行われています。第一世代のボイラーが寿命に達し、大気浄化政令を満たせなくなっているため、いくつかの村では設備リニューアルが進められています。私の住む人口800人のジブリンゲン村も同様の状況で、先日の村の住民会議(直接民主制なので住民の多数決で決めます)でリニューアル予算が可決しました。約1億円をかけて、新しいチップボイラーと蓄熱タンク、大気浄化フィルターが来年の夏に設置される予定です。


【最近の記事】
A-Plug誌に全三回の連載記事が掲載されました。下記からご覧になる事ができます。(要会員登録)

・第一回 気候中立政策における建築の省エネルギー化 -スイスの現状と課題-(前編)
 
https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1066

・第二回 気候中立政策における建築の省エネルギー化 -スイスの現状と課題-(後編)
 
https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1067

・第三回 スイスにおける現代木造建築の潮流https://aplug.ykkap.co.jp/communities/119/contents/1082


【インスタグラム】
book.biohotelにて、ビオホテル本のインスタグラムを行っています。


【本のご案内】

本「欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ」、ブックエンド社、滝川薫著



ビオシティ87号 「オーストリアのエネルギー自立と持続可能な地域づくり」、ブックエンド社




共著本「エネルギー自立と持続可能な地域づくり~環境先進国オーストリアに学ぶ」、昭和堂
編著者: 的場 信敬、平岡 俊一、上園 正武
共著者:上園由紀、歌川学、木原浩貴、久保田学、滝川薫、手塚智子、豊田陽介、渕上佑樹



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ソーラーコンプレックス社ニュースレター2021年夏号

2021-08-24 03:42:13 | お知らせ
 ソーラーコンプレックス社のニュースレター2021年夏号の日本語翻訳版を掲載します。
 同社は、2000年に南ドイツのボーデン湖地域で、市民出資により設立された再エネ専門のエネルギー会社です。
 今号からは、この一年が同社の歴史の中で最高の業績となったこと、そして絶好調の太陽光事業の様子が伝わってきます。

Bilder : www.solarcomplex.de
原文:http://48787.seu1.cleverreach.com/m/7755702/

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こんにちは

 気候保全に関しては、ゆっくりと、しかし着実に、風向きが変わりつつあります。その際に法廷による判決が重要な、道しるべとなる役割を担っています。

 ドイツの連邦憲法裁判所が、2019年の気候保全法は若者の基本的人権と両立しないため改善されなければならない、という判決を下したことは注目を集めました。

 この法律では2030年までの削減対策しか予定されていないため、気候温暖化の危険がその後の時代、すなわち若い世代に不利になる形で引き延ばされている、と裁判官はしています。

 その時点で2度以下に温暖化を抑えるためにはより劇的な対策が必要となり、それはその時代に生きる人々の自由権を侵害するものである、と。

 オランダにおけるシェル社への判決もゲームチェンジャーになりえます。初めて巨大コンツェルンに対して、パリ協定の目標を遵守し、排出量を2030年までに45%削減することが義務付けられました。

 この判決は象徴的な性格を持ち、企業も人権を尊重し、そのために気候を保全しなければならないということを示しています。

 この二つの判決からは、生きる価値のある未来が、基本的人権として認められるようになってきていることが見えてきます。


感謝とソーラーコンプレックスなご挨拶と共に

フロリアン・アルムブルスター、ベネ・ミュラー、エバーハルト・バンホルツァー


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2020年はソーラーコンプレックスの社史上で最高業績を達成
 
 2020年のバランスシートが無限定適性とされたため、下記をご報告します:

 バランスシートの総額は大きく成長し、6780万ユーロから7080万ユーロになりました。最も大きな項目は固定資産で、5520万ユーロから5990万ユーロに増えています。売り上げは1450万ユーロから1850万ユーロに上がり、税・利子・減価償却(EBITDA)を差し引いた後の利益は31万ユーロから62.3万ユーロに向上しました。

 2020年はこれまでの20年の社史の中で最高業績の年となりました。
経営陣は前年度と同様に資本金への4%の配当を提案する予定ですので、株主には喜んでいただけます。この良好な成果には様々な要素が寄与しました。

 ただ売り上げと成果にとって決定的であったのは、太陽光設備の需要が大幅に伸びた事です。ソーラーコンプレックスはゼネコンとして、主に手工業会社向けに太陽光設備を設置してきました。ソーラー電力のコスト低下は、エネルギー市場を根本からがらりと改革しています。

 今年度もソーラーコンプレックスでは、前年度と同程度の安定した売り上げと成果を見込んでいます。





初の20代設備

 ソーラーコンプレックス社が建設した最初の太陽光設備は2001年5月に稼働した、シンゲン市にあるフリードリッヒ・ヴェーラー・ギムナジウムの18kW設備です。

 この設備は稼働20年を迎え、2022年末には買取が終了します。稼働20年後に再生可能エネルギー法による買取期間から脱する設備は、業界では「20代設備」と呼ばれています。
 
 私たちの初の「20代」は技術的にまだ大変良好な状態で、20年前とほぼ変わらない発電量があります。ですので運転を継続するために、私たちはシンゲン市と電力供給契約を交わしました。

 今後は太陽光からの電力は学校の中で直接消費され、非常にお得な条件でシンゲン市に販売されます。


シンゲン市の市長ベルンド・ホイザーとソーラーコンプレックス社の取締ベネ・ミュラーが、ギムナジウムの屋根の上で電力供給契約に署名。
www.solaroffensive.info  



ソーラー増設戦略は全速力で

 自社の屋根からのソーラー電力が欲しい、という手工業会社からの需要は高止まりしています。私たちは今年の屋根置き設備の目標を7メガワットから10メガワットに引き上げました。7メガワット以上の受注量が既にあるためです。





ソーラーパーク

 2021年の第一四半期には、ガイジンゲン町近くの高速道路沿いに750kWのソーラーパークを作りましたが、このタイプのものはこれが最後になるでしょう。

 将来的なソーラーパークは、買取価格が低下しているため、より規模の大きなものとなる上、再生可能エネルギー法の枠内ではもう売電しません。複数の3メガワット以上のソーラーパークが事前計画の段階にあります。





ソーラー電力ダイレクト

 私たちは新しいビジネスモデルをスタートしました。ソーラー電力ダイレクトです。その際、(建物所有者ではなく)ソーラーコンプレックス社が他者の屋根上の太陽光発電に投資し、ソーラー電力を建物内に直接に供給します。ダイレクトというわけです!

 もちろん系統から購入する電力よりも大幅に魅力的な条件で。投資したくない方、できない方(例えば予算が厳しい自治体など)といった、すべての方に興味深いサービスです。





シュルッフセー村の熱供給網

  弊社にとって最大規模となるシュルッフセー村の熱供給網は竣工しました。完工式がまだですが、コロナ規制が許容次第、ご招待します。





ホイゼルン村の熱供給網

 ホイゼルン村(シュルッフセーの隣の自治体)でも、夏は太陽熱温水器で、冬は木質バイオマスという、同じコンセプトの熱供給網を建設します。

 プロジェクトのためのBプランが役場で策定中です。暖房センターと太陽熱温水器のフィールドに必要な土地は確保しました。このようなチャンスは二度とないため、今、ガラスファイバーの埋設も一緒に行うことが計画されています。





ユングナウ村の熱供給網

 これまでに150件以上の接続契約を結ぶことができました。素晴らしい成果です。熱供給網と一緒にガラスファイバーが埋設され、電線を地中下する予定であることに加えて、一部では水道管の改修も同時に行うため、調整に手間がかかっています。そのため建設開始は2022年に引き延ばしとなりました。コンセプトはシュルッフセー村と同じです。夏は大面積の太陽熱温水器、冬はチップボイラーです。





設計委託

 弊社では下記の依頼主による設計委託に感謝し、協働できる事を嬉しく思っています。
・ドルンハーン市:既存の熱供給網の拡張計画
・シグマリンゲン市:グラフ・シュタウフェンベルク兵舎の用途転換用地における太陽熱温水器の設計
・ボーデン湖水道供給目的連合:再生可能エネルギーによる熱供給設備の計画



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集落のカーボンニュートラル化プロジェクト~裏山の木で地元の職人が作るマッシブな集合住宅

2021-08-01 21:24:45 | お知らせ
 北スイスは雨ばかりの冷夏が続いています。晴れ間が短く、庭や畑に出られない日ばかりで、温室の有難さを実感する日々です。今年の前半は、出版やその他のプロジェクトで息つく暇がありませんでしたが、ようやくひと段落ついてブログに戻ってきました。

CO2法改定案が国民投票で否決
 まず、昨6月13日の国民投票の結果をご報告します。こちらは環境問題の側面からは、とても残念な結果となりました。

 国会で何年もかけて審議された末に、昨年末に決議された改訂版CO2法が、化石エネルギーロビーの総勢力によりレファレンダムにかけられ、51.6 %の否決票で却下されてしまったのです。「富裕層しか車に乗れなくなる」といった、ネガティブ広告が大々的に展開されました。

 この法律は、オイルロビーの代弁者であるスイス国民党を除く、すべての政党が可決を支持していましたが、下記のような不幸な条件が重なりました。これにより既存のCO2法やCO2税は継続できても、2030年までの排出量-50%という目標は達成できない可能性が大きくなりました。

 不幸な条件とは、同じ日に環境関連の投票が三つ重なった事です。他の二件は、農業のエコロジー化に関する国民イニシアチブ案でした。一つは合成農薬の利用を国産・輸入品共に禁止する法案、もう一つは農薬を利用し、産業的畜産を営む農家への助成金を段階的にカットするという法案でした(40%が可決票)。

 しかし、スイスの農家の16%は有機農家ですが、残りは慣行農家ですから、農家と農薬ロビーによる猛烈な反対キャンペーンが農村地域で展開されました。これにより、スイス国民党の支持層が厚い農村地域の住民が熱心に投票した結果、環境関連は全部まとめて否決しようという行動が採られたそうです。

 こういった行動の背景には、2019年の総選挙でフライデイ・フォー・フューチャー運動により巻き起こされた「緑の波」に対する保守派有権者のリベンジもあると言われています。農業のエコロジー化については今後も政策転換のチャンスは多くあるでしょうが、CO2法改訂についてはまったなしです。

 国民の忘れやすさ、巨大な資金力を持つロビー団体による広告力という、直接民主制の弱点をを改めて見る結果となりました。


集落のカーボンニュートラル化プロジェクト

集落のモデルと納屋建替部分の立面図

 そのような中でも、地域の民間レベルでのエネルギーヴェンデは静かに進行しています。私たちが住んでいる集落のカーボンニュートラル化プロジェクトがその一例で、現在、工事が進行中です。

 集落は、村から5㎞離れた山の上にあり、大家さん家族が住むレストラン・ホテル棟と、賃借人が住む農家・住宅棟、それからバイオダイナミック農家(有機農法の一種)の牛舎とチーズ工房の建物群から成ります。ホテル・レストランは、地域住民が大切な人と食べに来たり、企業が会議で使うような料理店となっています。

 これまで集落では、ホテル棟に入る薪ボイラーと太陽熱温水器を組み合わせた熱源から、地下配管を介して、農家・住宅棟に熱(温水)を供給していました。ですが古い薪ボイラーが大気浄化政令(排ガス規制)を満たせなくなった上、頻繁に故障するので、新しい熱源に交換する必要が生じていました。

 同時に、農家に併設する納屋も修繕・改修が必要な状態でした。そのため、この納屋をエコロジカルな木造三階建ての複合建築に建てえ、そこに新しい熱源を設置して、集落に熱供給を行うというプロジェクトが作られました。森に囲まれた集落であるため、建物についても、エネルギーについても、自治体の森林資源を生かした、地域への付加価値創出を最重視した内容になっています。

 新しい熱源には、ベース負荷に小規模なチップ・コージェネで担い、冬期のピーク時には小規模なチップボイラーと組み合わせる設備が計画されています。これに加えて農家の牛舎の上には、大きな太陽光発電を追加で設置する計画です。これらにより集落の住民や事業体が必要とする熱、電力、そして交通の一部も、自給自足+カーボンニュートラル化していきます。

 
集落の建物を結ぶ地域熱供給網のリニューアルの様子


裏山の木で地元の職人が作るマッシブな木造複合建築

 納屋のあった場所に新築される木造建物には、一階が催事場と農家直売店、地下部分には新しいチーズ倉庫と機械室、二階が農家の住宅、最上階が賃貸住宅が入ります。

 この建物を作るための木は、科学的にも長持ちする事が証明されている伝統的な真冬の新月伐採。今年の2月頭の新月時に、300㎥のトウヒが自治体のフォレスターにより周辺の森で伐採され、地元の製材所で製材されました。

 また構法にはマッシブな木造建築が選ばれましたが、特殊な機械は用いず、地元で作れる材(普通の角材や板材)で構成するために工夫されています。

 構造壁は無垢の角材を並べ、その片側に板を斜めに張って固定した、厚さ14㎝のマッシブな壁パネルです。その外側に間柱を立て、24㎝のセルロースと木質繊維断熱材の断熱層が入ります。その外に12㎝の背面通気層と無垢の板材の外壁がつけられます。断熱性能は法規レベルの普通のものです。



壁構造(左手前)と屋根(奥)、スラブ(右)のモデル、出資者用に展示されている

 スラブは板材を寄せ合わせてダボで固定したマッシブなパネル、屋根はラーメン構造のパネルで、こちらはスイスで良く見られる構造です。瓦は古い納屋のものを再利用しています。景観保全地帯に隣接しているので、太陽光発電は牛車の大屋根に設置されます。

 木材の利用量の多いマッシブな木造建築は、木という貴重な資源の無駄使いという意見を持つ専門家は少なくありません。しかし、木材の豊富なアルプス地方の伝統建築様式である校倉建築の流れを汲むもので、私たちの集落のような森に囲まれた地域では有意義な構法です。対して森林の少ない地域では、伝統的に木材を節約的に使用するハーフティンバー建築が多く、それはラーメン構法やハイブリッド構法に引き継がれ、現代木造のメインストリームとなっています。

 木造パネルの現場組立てはこの秋から始まり、内装を冬の間に行い、来年の中頃には入居となるそうです。来年春には完成するので、その後は集落住民で新しい催事空間を運営し、セミナー・イベント等により、地域の「出会いの場」を盛り上げていかねばなりません。


地域住民の出資で建物と設備を実現

 集落をカーボンニュートラル化するというビジョンは大家さんや建築家が持ち続けてきたものですが、熱源を含む総工費は3.5億円。とても大家さん家族だけでは実現できない規模であり、社会的性格の強いプロジェクトです。

 そのため大家さんが土地を提供し、この場所の自然を愛し、ここの有機農家やレストランを応援したいと考える地域の人々が建設協同組合を作り、共同出資して実現することになりました。

 また太陽光発電設備についても、シャフハウゼン州で活動する市民エネルギー協同組合が実現し、そこから電力を集落の住民や事業体が購入する「自家消費コミュニティ」の手法で、計画が進められています。

 建設協同組合の理事は村の村長です。地域の憩いの場であるこの集落が長く存続し続け、エコロジカルな模範となって欲しい、そんな地元の人たちの夢のかけられたプロジェクトです。



お知らせ 

● ビオシティ87号 「オーストリアのエネルギー自立と持続可能な地域づくり」
同タイトルの共著本著者のグループで、専門書の内容を分かりやすく、豊富なカラー写真を交えながら紹介しています。私もエネルギー自立運動の歴史やウィーンで建設が進む新しい街区ゼーシュタットの解説などを寄稿しています。


 
● 8月23日(月)ビオホテル本のオンライン講演会のご案内
中小企業同友会いわて様の主催により、出版を記念したオンライン講演会が8月23日(月)に開催されます。下記からチケットを購入する事ができます。


● 好評発売中:本「欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ」
出版社から直接注文する↓
アマゾンから注文する↓


● ビオホテル本のインスタグラムを始めました
book.biohotelにて、本では紹介していないホテルや写真も掲載していきます。



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