滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

緑の波の一年

2020-03-06 18:03:49 | お知らせ

 

観測史上もっとも暖かい冬

山の上の集落にも例年よりひと月早く春の花や鳥が戻ってきました。

この冬はこれまで経験したことのないような気持ちの悪いほどの暖冬で、そのはず観測史上最も暖たかい冬であったそうです。

先週後半からスイスでもコロナウィールスの感染者数が劇的に増え、私の仕事にも影響が感じられるようになりました。

日本からの春の視察は、ほとんどがキャンセル・延期となりました。

 

ビオホテル本

この数か月、私は「ビオホテル」についての単行本執筆に没頭していました。

昨年の5月から追加取材を重ね、あとひと月くらいでゴールに達成できそうな地点までようやくたどり着いたところです。

昨年は、エネルギーや省エネ・エコ建築の視察が多い一年で、約200人の日本からの参加者の方々を、スイスとオーストリアを中心にご案内させて頂きました。

そのような中、ブログに残される時間とエネルギーはなく、昨年の冬の投稿を今年の投稿と見間違える知人もいるほどです・・。

数か月後にもろもろの原稿課題を脱出しましたら、また投稿を再開したいと思っています。

南チロルの四つ星ビオホテル「タイナースガルテン」

 

緑の波

この一年はスイスでも、素早く、効力のある温暖化防止政策を求める若者たちによる運動やデモが、社会全体に急速に広がりました。

その結果、世代を超えた幅広い市民が、温暖化防止を最も重要な社会的な課題の一つと認識するようになり、「緑の波」という社会現象に発展しました。

まず州レベルでの選挙に大きな影響が表れ、いくつかの州や自治体では気候緊急事態宣言も採択されました。

2019年9月26日に首都ベルンで行われた国レベルでのデモで、この運動はクライマックスに達し、スイスの人口の1%以上に相当する10万人もの市民が全国から集まりました。

10月末に行われた総選挙でも温暖化問題が最も大きな争点となり、下院では緑の党や緑リベラル党が大幅に議席を増やすことに繋がりました。

 

2050年、カーボンニュートラルなスイス

このような流れの中、連邦内閣は8月末に政策目標をパリ協定に合致するように修正し、スイスが2050年までにカーボンニュートラルになることを目標に掲げました。

とはいえ、この目標の具体的な政策化はまだこれからであり、今後も市民社会からの圧力が維持されていく必要があります。

その関連では、より計画的で実行力のある気候保全政策を求める国民発議案、通称「氷河イニシアチブ」が年末に提出され、この1~2年で国民投票にかけられることになります。

国会の委員会ではCO2法改訂の審議がまだ続けられていますが、既存の暖房用オイルやガスへの課徴金とは別に、飛行機チケットへの課徴金(30~120スイスフラン)やガソリンへの課徴金値上げ(1リットルあたり10ラッペン程度)も決まりそうな感じです。

 

交通の電化、日常風景より

日常生活に近い場所でも、小さなエネルギーヴェンデのステップが観察できます。

集落のレストランのオーナーが、顧客用に二つの電気自動車の充電ステーションを設置しました。電気は100%再生可能エネルギーです。

あるいは州都のシャフハウゼン市では、既存の電気トロリーバスやディーゼルバスを蓄電池式の電気バスに転換し、そのための高速充電ステーション等を設置していく事が住民投票で可決されました。

視察先の集合住宅や産業建築でも、太陽光発電の自家消費を増やすためにも、地下駐車場に充電ステーションを設置しているところが徐々に増えてきています。

また、再取材したビオホテルの多くでも、前回の取材時にはなかった充電ステーションが設置されていました。

さらに年末にはビオホテルグループの3分1が、ホテル・レストランのカーボンニュートラル化を行っていました。

 

原発の運転終了とベルン州電力の華麗な変身

昨12月20日には、首都ベルン近郊のミューレベルク原発が46年の稼働を経て、運転を終了しました。

同原発を所有するベルン州電力では2013年に経済的な理由により同原発の運転終了を決定。

2034年までには解体が終了するスケジュールだそうです。

長年、この老朽原発から数キロメートルの村で暮らし、廃炉を求める住民運動を間近に見て来たため、同原発の運転終了は感慨深いものがありました。

この6年間でベルン州電力は幸運にも、再生可能エネルギー時代のエネルギーサービス会社として生まれ変わることに成功しました。

今はエネルギーヴェンデの勝ち組の顔をしています。

対して、他社が運用する残りの4つの老朽原発については、運転終了の計画はまったく立っていません。こちらは社会的に大きな課題です。

 

・・・

とりとめのない更新になりましたが、この一年に強く印象に残った出来事をざっくりと振り返ってみました。

今年の視察シーズンは年後半からになりそうですが、スイスで皆さんにお会いできることを楽しみにしております。

また面白い事例を時々アップしていきますので、よろしくお願いします。

 


昨年のハイライトから

●スイスの木造高層ビル入居へ、15階建て、高さ60メートル

スイス・オーストリア・南ドイツは、現代木造の技術が非常に高い事で知られています。

近年、都市部でも中~大規模の木造建築が増えてきていますが、昨年はツーク市の近くの再開発地域に木造ハイブリッド構法による15階建て、高さ60メートルのビルARBOが竣工しました。

スイスで最も「高い」木造建築で、ルツェルン州立大学や高級オフィスが賃借人として入っています。

柱・梁は木造、スラブはプレキャストコンクリート、ファサードはガラス・金属となっています。

加重の大きな梁や柱の部分には、トウヒ集成材ではなく、構造用ブナ材が用いられているのが特徴です。

Arboのヴィデオリンク: https://www.youtube.com/watch?v=kldrezB2W2o

 

写真:奥のビルが15階建てのARBOです。手前の工事中の併設ビルも木造ハイブリッドです。

 

ARBOの建つ再開発地域は10ヘクタールの広さで、熱ゼロエミッションのエコ街区を目指しており、建物の性能はミネルギーレベル、低温地域暖房が行われています。

熱源はハイブリッドコレクター(太陽光と太陽熱の組み合わせ)と地中熱。屋上には1.2MWの太陽光発電も設置されています。

この街区にはARBOの他にも、木造ハイブリッド10階建てのオフィスビルS22やスイス版ボスコベルティカーレ風の緑化マンション、普通の木造中層マンションなどがあります。

(写真)木造ハイブリッド10階建てのビルS22。

(写真)S22の内部。構造用ブナ材の柱と梁。

 

これとは別に、ツーグ市には2024年に27階建て、高さ80mの木造ビルも竣工する予定です。

ちなみに現在スイスで最も「大きな」木造建築は、ヴィンタトゥール市にある300世帯の入る6階建て集合住宅地です。

 

 

●スイスのビオ地域ヴァルポスキァーボを紹介した記事

雑誌BIOCITYに100%ビオを目指す地域の運動を、スイス南部のヴァルポスキァーボを例として紹介しました。


BIOCITY No.78
「有機農業の谷ヴァルポスキァーボ~100%有機農業による地域発展を目指す」
https://www.amazon.co.jp/dp/490708353X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_2KFyEb5SD9B06

 


●ソーラーコンプレックス社のニュースレター日本語版

私は市民エネルギー会社ソーラーコンプレックス社のニュースレターの日本語翻訳を行っています。

下記リンクから最近のニュースレターを読むことができます。

ドイツの市民エネルギーの現場の動向が感じられます。

2019年4号
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/7443504/
2019年3号
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/7385333/
2019年2号
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/7372006/
2019年1号
http://48787.seu1.cleverreach.com/m/7303573/

 


MIT企画 5月21~26日 中欧視察セミナー「自然・景観と共生する持続可能な再エネ開発」への参加者募集中 !

2019-03-13 08:50:57 | お知らせ

ミット・エナジー・ビジョン社では、52126日に南ドイツにて、下記の募集型視察セミナーを開催します。

テーマは「自然・景観と共生する持続可能な再エネ開発」です。

 

近年、日本では再生可能エネルギー開発による自然・景観破壊への批判の声が多くの地域で聞かれるようになっています。

本セミナーでは、地域から受容される、自然や景観に配慮した地域主体の再エネ開発の事例を見学し、その背景にある制度を解説します。

また、エネルギー大転換にとって重要な視点である、「セクターカップリング」や「省エネ改修」についても紹介します。

参加をご希望の方は弊社にメールでご一報ください。

 

開催期間:2019521日(火)~526日(月)

場所:ドイツ南部

費用:12700 ユーロ、チューリヒ空港集合・解散、宿泊費シングル利用6泊分込

申し込み:info@mit-energy-vision.com

プログラム詳細:https://www.mit-energy-vision.com/

 

プログラム概要

521日(火)チューリヒ空港・到着日                 

1630分頃    スイス・チューリヒ空港に集合

・貸し切りバスで南ドイツのホテルに移動、自己紹介・夕食

泊:ラドルフツェル市など

 

522日(水)ボーデン湖北部、環境共生型の野立て太陽光と風力開発事例 (滝川薫)

・環境団体の解説による自然推進型の野立てソーラーパークの見学

・地域企業の協働による森林内ウィンドパークにおける自然代替対策見学

・市民エネルギー会社ソーラーコンプレックスでのレクチャー:事業者側から見た持続可能な再エネ開発と自然保護対策、自然保護団体とのコラボ

泊:フライブルク

 

523日(木) ドイツの都市計画制度と持続可能な再エネ開発 (村上敦)

・ドイツの都市計画制度の解説

・入植地の外に再エネ(ソーラー・風力等)を設置した場合の自然保護法と都市計画法の関係から、回復しなければならない自然価値についての制度の解説

泊:フライブルク市

 

524日(金)   黒い森地方、農村地域における風力開発と自然景観保護   (池田憲昭)

・黒い森農村地域でのウィンドファーム開発と自然景観保護に関する現地視察

・専門家によるレクチャー:ウィンドファーム開発と自然景観保護~法的な枠組みと南西ドイツでの議論、実践

:フライブルク

 

525日(土) フライブルク、省エネ改修・熱供給・セクターカップリング (村上敦)  

・ヴァインガルテン住宅地における団体の再生、省エネ改修と地域熱供給の視察

・セクターカップリングについてのレクチャー

・フライブルク市にて半日自由行動

泊:フライブルク

 

526日(日)   持続可能な森林と木質バイオマスエネルギー 、総括   (池田憲昭)

・森林バイオマスエネルギーの可能性と課題・問題に関する現場視察とレクチャー

・最終ワークショップ

泊:フライブルク

 

527日(月)チューリヒ空港へ移動、解散(お客様のみ)

・貸し切りバスがホテルに出迎え、チューリヒ空港へ移動

・チューリヒ空港到着、解散、各自チェックイン

 

参加費用のなかには、コーディネート、専門ガイド、レクチャー、専門通訳、外部講師、現地交通費、6泊の宿泊(朝食付き)が含まれています。

現地集合、現地解散のセミナーです。日本・スイス往復の飛行機、ならびに集合・解散前後の現地移動・宿泊、旅行保険等は各自で手配下さい。

 

 


2019年2月、ドイツの市民エネルギー企業家ベネ・ミュラー氏の日本講演会

2019-01-19 17:14:02 | お知らせ

今日は、日本での講演イベントのお知らせです。

南ドイツの市民エネルギー会社のパイオニア、ソーラーコンプレックス社の創設者、経営者の1人であるベネ・ミュラー氏が、2月に日本に訪れ、計7回の講演を行います。

そのうち下記の講演会については、一般公開されますので、ご興味のある方は是非お越し下さい。

①~⑤については、私が通訳を行います。

 

 

京都市 2019年2月8日() 13:0014:30 

講演会 「再生可能エネルギーによる地域経済の活性化~地域における温暖化防止と付加価値創造の両立」

場所:京都大学 法経東館2F 法経三番教室(みずほ講義室)

お申込み : 不要、定員有

問い合わせ: https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/blog/student/20832/

主催者: 京都大学大学院経済学研究科・経済学部 諸富研究室

 

明石市 2019年2月9日(土) 14:00~16:30 (開場13:30)

講演会「市民による再生可能エネルギー~地域経済への付加価値創出と温暖化防止を考える」

場所:アスピア9F、子午線ホール

お申込み:不要

入場料:500円

問い合わせ:saieneakashi@freeml.com

主催者:NPO法人再生可能エネルギー明石

  

③ 秋田市 2019年2月11日(月)15:30~17:30(開場15:00)、懇親会17:45~19:30

講演会「再エネは誰のため? ~100%再生可能 欧州のエネルギー自立地域から学ぶ」

場所:パーティーギャラリー イヤタカ

お申込み:要、018-828-2108(定員あり)

ホームページ

https://kosecret1322.wixsite.com/mysite-3?fbclid=IwAR1H4sWXuk07uI10eCjPYA3egkimQA0EU3zM-tAAyIqnLOqKXol_DstC3cw

申し込みフォーム

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdIJuWJft8fRYfRA_32WYCBD5TUoGftBuNdr8J4XhtCval7iA/viewform?fbclid=IwAR3uBGJsTAyyAuWPJFXOGG2FpCcWBi-Q9cUTDFeEW2Yi5uxIKd-6rowGTpk

入場料:講演会無料、懇親会6000円(同会場)

主催者:オノプロックス、あきた電力、共催:株式会社むつみワールド、後援:秋田中小企業同友会

 

④ 能代市 2019年2月13日(水) 14:30~17:00、懇親会

講演会「ソーラーコンプレックス社とそのプロジェクトから再生可能エネルギー利用による地域経済への付加価値創出を考える」

場所:旧料亭金勇

お申込み:要、Tel 0185-52-9606, Fax 0185-54-2124, nisi93@nisikata.co.jp (西方設計)

入場料 :無料

懇親会:17:00~19:30、5000円

主催者:能代住宅再生可能エネルギー委員会、(社)新木造住宅技術研究協議会秋田支部

 

⑤ 市川市 2019年2月14日(木)13:00~17:30 (12:30開場)

自然エネルギー×地域経済シンポジウム「自然エネルギーで地域は元気になる」

場所:千葉商科大学、7号館、702号室

お申込み:要、千葉商科大学ホームページの下記案内・専用フォーマットから

http://www.cuc.ac.jp/social_contribution/news/2018/0214.html

参加費:無料

共催:千葉商科大学 / 一般社団日本シュタットベルケネットワーク

 

⑥ 東京都 2019年2月18日(月)18:00~20:00

JIA環境セミナー「再生可能エネルギーの必要性と可能性・デザインのモチベーション~自然の力でデザインする」

場所:建築家会館ホール

お申込み:要・定員有、Tel03-3408-7125、Fax03-3408-7129、skitazawa@jia.or.jp(JIA北澤)

参加費:1500円

主催:公益社団法人 日本建築家協会 JIA環境会議


CO2課徴金、交通燃料にも導入なるか?

2019-01-01 07:11:56 | 政策


写真:
2018年のスイスソーラー大賞ノーマンフォスター・ソーラーアワード第一位を受賞したピラトゥス社の飛行機製造工場。木造のプラスエネルギー率114%のZEB建築。屋根には1.05メガワットの太陽光発電がきれいに収まっている。写真 ©Schweizer Solarpreis 2018

スイスの排出量削減の問題児、交通分野
スイスに住んで長くなりますが、住民として、ガーデナーとして、2018年ほど温暖化の影響が日常的に差し迫って感じられた年はありませんでした。アルプス北部では150年の観測史上、最も暖かい年となったそうです。スイスの一年の平均気温は、すでに2度も温暖化しています。

そのような中、温暖化防止対策には待ったなしの全力投球が必要であることは、スイスの大多数の住民が頭と体で理解しているはずです。しかし年末の国民議会(下院)では、パリ協定の目標を達成するための具体的な対策を定めるCO2法の改訂の審議にて、右派と左派の政党の間で全くコンセンサスを築くことができず、法案が否決されてしまいました。

スイスのCO2排出量の削減目標は2030年までに90年比でマイナス50%。閣僚案では、国内削減は30%以上とされています。現在の排出量を分野別で見ると、熱分野が36%、交通分野が33%を占める二大重点分野になっています。(ちなみに発電分野の占める割合は電源構成が水力と原子力であるため8%弱です。)全体としては、スイスでは90年比で人口が毎年1%前後成長を続け、GDPが50%近くも成長していますが、同時にCO2排出量は11%減っています。とはいえ2020年までの目標はマイナス20%ですから、目標は達成していません。

達成できない大きな理由が交通です。上記のような成長にも関わらず、熱分野では目標路線で3割近くの削減が行われていますが、交通分野では5%も増えてしまっており、熱分野での成果を相殺してしています。そして道路交通に関する削減対策は、昔から最も合意が難しい分野です。

CO2課徴金(炭素税)という優れた制度
このような削減成果の差が生まれる理由の一つとして、熱分野では進歩的な規制強化と並んでCO2課徴金(CO2税)が導入されているのに、交通燃料は規制も遅くCO2課徴金もない特別扱いがなされてきたという事情があります。

CO2課徴金は、スイスでは削減目標を達成するための最も重要な政策ツールの一つです。化石熱源(暖房用オイル、天然ガス等)には、2008年から導入されており、現在、暖房用オイルでは1リットルあたり25ラッペン(27.5円)が課金されています。削減量が目標路線でないと課徴金額が上がる仕組みです。当初はCO21トンあたり12スイスフランで始まりましたが、現在では96スイスフラン、最大で120スイスフランまで上げられる法律です。今回の改訂では、この上限がさらに上がる予定です。CO2課徴金が導入されてから10年間に、化石熱源分野からの排出量は15%減りました。

化石熱源からのCO2課徴金収入は、一年で12億スイスフラン(約1320億円)になります。基本は税制中立を旨とする制度なので、企業には年金費用経由で、国民には健康保険経由で還付されています。ただ収入の3分1は、建物の省エネ改修への助成金財源に用いられてきました。また、政府の機関と省エネ協定を結び、実際に約束した省エネを実施している企業に対してはCO2課徴金の減免処置がとられます。このような仕組みにより、企業排出分の半分にあたる企業が、省エネ協定を結んでいます。省エネする世帯や企業は損をせず、企業・住民への還付により公平感のある制度として、スイスでは今のところ広く受容されています。

交通燃料を巡る20年来の議論
この優れた制度やそれに類似したものを交通分野にも導入しようという政治的な動きは、この20年来に何度かありましたが、右派やネオリベラル経済派の反対によりことごとく撃沈されてきました。その過程については、昔の拙著「サステイナブル・スイス」にも紹介しました。その後、効果的なCO2課徴金の代替策として、交通燃料の輸入業者が排出量の一部(今は10%)を相殺する義務が課されました。相殺のための費用は、ガソリンやディーゼルに上乗せされています。

今回のCO2法改訂では、その相殺義務量が90%に嵩上げされる案となっています。そのために上乗せ額が上がるわけですが、それに9円程度の上限額を設ける案が議論の的になりました。それでは少なすぎるという左派と、それでは多すぎるという右派の間で。CO2法改訂案については、来年の上院での審議に持ち越されます。総選挙を控える中、交通分野に効果の高い課徴金が導入されることはあまり期待できませんが、少なくとも上乗せ金額が上がることは確かでしょう。

増加する太陽光の自家消費コミュニティ
このように国レベルでは相変わらず発展が遅々としていますが、今年も地元、地域、中小企業レベルではたくさんの勇気づけられる新しい発展が見られました。例えば太陽光発電の自家消費コミュニティの数が2000にも増え、各地で普及してきていること。これまでは集合住宅地や商業ビルにて、屋根からの電気を建物内・敷地内の消費者に販売するタイプが多かったのですが、2018年からは所有者の異なる隣り合う敷地間でも、太陽光発電からの電力を売買することができるようになりました。

地元シャフハウゼンの州営電力会社では、大きな体育館の屋根に太陽光を設置して、周辺の集合住宅地にその電気を販売するだけでなく、その電気で地中熱ヒートポンプを動かして、熱も契約販売するプロジェクトを実現しました。また別の事例では、小さな地区単位で複数の太陽光設備から複数の電力消費者に、相互に電力を融通するタイプのコミュニティも出てきました。電気自動車や蓄電池も投入しながら自家消費を最良化するコミュニティも増えています。

現在、各州で施行が進められている建物分野の州の省エネ規制改訂では、新築では熱に100%の再エネが義務化されているほか、太陽光発電の利用が基本的に義務化されていることも、こういった自家消費コミュニティの普及に貢献する要素となっています。

2018年も多数の方々に、スイス・南ドイツ・オーストリアでの視察セミナーにご参加頂きました。これらの参加者の皆様の、地域に密着した持続可能な地域づくりやエネルギーヴェンデの取り組みを、2019年もスイスから応援しております。


● 最近の記事
建築知識ビルダーズ 2018年34号巻頭特集スペシャル解説1・2
「H.カウフマン 持続可能な木造建築の先駆者」
「フォアアールベルクが木造・エコ建築の最先進地域である理由」
長年通い続けているフォアアールベルク州の取り組みを紹介した記事です。
こちらのリンクからご注文いただけます。 



●本「進化するエネルギービジネス」のアマゾンでの発売
2018年に出版しました共著本「進化するエネルギービジネス」(新農林社)を下記のアマゾンリンクからご購入頂けるようになりましたご注文はこちらから



●ソーラーコンプレックス社のニュースレター翻訳

南ドイツの市民エネルギー会社であるソーラーコンプレックス社の2018年のニュースレターを日本語で読むことができます。下記リンクをご覧ください。
夏号 
秋号
冬号 


新著出版のお知らせ 「進化するエネルギービジネス~100%再生可能へ!ポストFIT時代のドイツ」(新農林社)

2018-04-02 13:42:13 | お知らせ

昨年から取り組んできた新しいエネルギー共著本がようやく出版に漕ぎつけました!!

2014年頃からずっと温め続けてきた企画です。日本で再生可能エネルギーの仕事に携わる幅広い方々に読んで頂きたいという願いを込めて、ドイツ・スイス在住のジャーナリスト・専門家5人が全力で取り組みました。

 

タイトル:「進化するエネルギービジネス100% ~100%再生可能へ! ポストFIT時代のドイツ」
出版社:新農林社
著者:村上敦、滝川薫、西村建佑、梶村良太郎、池田憲昭

ISBN-13:978-4880280950



概要

ポストFIT時代に突入した、「ビジネスとしての欧州再エネ」の新側面に迫る!自然と調和する持続可能な発電設備のデベロップメントから、自家消費、直売、VPP、系統の柔軟化、デジタル化、セクターカップリングまで。欧州在住ジャーナリストがエネルギー自立の進化を現場からレポート。分散型エネルギー社会実装によって変容するエネルギービジネスはどこへ向かうのか?

ご購入方法:

アマゾンでの販売開始はまだこれからですが、現在、下記の方法でお求め頂くことができます。

① 下記のオンラインショップから注文できます。

新農林社 www.shin-norin.co.jp/shop/24_5494.html

楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/15415890/

TSUTAYA      http://tsutaya.tsite.jp/item/book/PTA0000VUJM3

② 書店での取り寄せ。1週間程度で書店に届くようです。

 

この本は「100%再生可能へ!」シリーズの第三弾となります。

第一弾である2012年出版の共著本「欧州のエネルギー自立地域」(学芸出版社)では、欧州中部で広がる地域や市民たちが中心となったエネルギー自立の運動を紹介しました。また第二弾である2014年の「ドイツの市民エネルギー企業」(学芸出版社)では、地域主体・地域密着の再エネ事業体の形について紹介しました。シュタットヴェルケや市民エネルギー協同組合、市民エネルギー企業等についてです。そして地域にとって、より大きな経済的付加価値を生み出すようなエネルギーヴェンデ(大転換)の在り方と意義について報告しました。

これらの本から数年が経ち、日本ではFIT導入による再エネ電力の拡張も進みはじめました。同時に、欧州中部のエネルギーヴェンデも次のステージへと進化しています。そのような中、「100%再生可能へ!」シリーズの第三弾である本著では、次の2点を報告しています。

第一部では、「再エネ開発と自然保全の両立」というテーマを扱います。人も自然も持続可能な社会作りのための再エネです。このテーマは一見ビジネスと関係ないようですが、地域社会から再エネ事業が理解を得て、持続可能に拡張を続けて行くためには不可欠な側面です。日本での自然破壊型の太陽光発電の大型設備の話題が時折聞こえてくる中、本書では持続可能で、地域の自然を促進するような開発のための具体的な計画や管理の事例を紹介しています。

第二部では、「ポストFIT時代の再エネビジネス」というテーマを扱っています。ドイツやスイスでは安価な再エネを活用したFITに頼らない再エネ事業が増えてきています。ただ作る時代を終え、需要と供給をマッチングさせるエネルギーヴェンデが進行中です。直売制度、直接消費、蓄電、バーチャル発電所等について、豊富な具体例を交えて解説します。最後には、100%再エネ時代のビジョンである、電力・熱・交通の分野が融合してゆくセクターカプリングについて紹介しています。

このように今伝えておきたい事を1つの本に盛り込んだ結果、かなり幅広いテーマを包括する贅沢(?)な本になりました。再エネ事業の次の一歩、そして持続可能な方向への進化のために、参考にして頂ければ嬉しい限りです!!

 


お知らせ

 

● 新エネルギー新聞のウェブサイトに本著の内容を紹介する記事が掲載されています

共著者の村上敦さん等による、本著の内容を紹介する連載記事の全文を、下記リンクからご覧になることができます。

http://www.newenergy-news.com/%E3%80%90%E7%9F%AD%E6%9C%9F%E9%9B%86%E4%B8%AD%E9%80%A3%E8%BC%89%E3%80%91%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%83%88fit%E3%81%AE%E3%80%8C%E5%88%87%E3%82%8A%E6%9C%AD%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%AB%E3%81%8B/

 

● 本著の内容をテーマとした視察セミナー(6月)への参加者を募集中です

6月21日~26日にドイツにて、本著の内容をテーマとした視察セミナー「ポストFIT~持続可能な再エネビジネス」をミット・エナジー・ビジョン社が開催します。現地集合、現地解散のプログラムになっています。プログラム詳細・お申込み方法は下記リンクよりご覧ください。

https://www.mit-energy-vision.com/

 

● 「滝川薫のウェブサイト」が開通

私の活動を紹介するウェブサイトを作成しました。下記リンクからご覧になることができます。写真をご提供下さった皆様に感謝致します。

www.takigawakaori.com