滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

アルプス生まれの太陽光発電設備の新技術

2010-06-13 00:44:27 | 再生可能エネルギー
最近、新聞で2つの面白い太陽光発電パークの話題を見かけたのでご紹介します。

1つめは、6月2日付けのDerBund誌で紹介されていた、雪崩防止柵を利用した太陽光発電パーク。
プロジェクトのモンタージュ写真はこちらから見られます。
http://www.derbund.ch/wissen/technik/Das-groesste-Solarkraftwerk-der-Schweiz-/story/11044726

同誌によると、グラウビュンデン州の標高1420mにある山村St.Antönien(サンクト・アンテ二エン)で、巨大な雪崩防止の構造体の上に太陽光パネルを固定した設備が2011年に実現されます。このような構造は、スイスでも初の試みです。

利点は、これまで雪崩防止にしか役立たなかった建造物が、発電にも利用できるようになること。設置される太陽光パネルの大きさは3万㎡で、年350万kWh、約1200世帯分の電力を供給する見込みです。
人口360人のこの村では、売電収入のほか、観光客の増加にも期待を寄せています。

アルプスでは日射量が多く、雪の反射もあるため、太陽光発電では平地の二倍の発電量が得られます。この設備の設計を手がける会社の代表者は、DerBund誌の取材に応じて、
「スイスには500kmの雪崩防止構造物があるが、うち200kmを利用するだけでも2万世帯分の電力が発電できる」と、コメントしています。

建設費用は約2000万フラン(約16億円)。自治体サンクトアント二エン村では、株式会社を設立して、投資者を探し始めたところです。また、この設備では野生動物への影響を避けるために、反射防止のコーティンクを行なったパネルが採用されるそうです。

もう1つの面白い話題は、6月4日付けのWork誌に紹介されていたテンナ村のスキーリフトのケーブルに固定する太陽光発電システム。

その背景には、ケーブルを用いて光発電パネルを固定するソーラーウィング社の新技術があります。
大きな特徴は、パネルの角度を季節や時間帯に応じて、1~2軸の方向に向かって回転することができる点。スイスの気候下での発電量は、2軸回転で25~30%も上がるそうです。

チューリッヒの応用科学大学とソーラーウィングズ社が共同開発した技術で、固定技術はケーブルカーのメーカのBartholet社が担当しました。伝統あるケーブルカーの技術を光発電に転用したところが面白いと思いました。

これまでの事例としては、ドイツにあるロンツァ社の廃棄物埋立地跡に、1軸回転の発電パネルが設置されており、200世帯分の電力を生産しています。
また、今年の3月には、スイスの断熱材メーカのフルムロック社の屋外倉庫の上に、2軸回転の設備が実現され、30世帯分の電力を生産しています。

フルムロック社の設備は、下記のサイトでビデオとウェブカムが見られます。
http://www.flumroc.ch/de/flumroc/solar.php


©www.flumroc.ch

さて話を戻しますと、グラウビュンデン州の山村テンナ村で進行中の「ソーラーリフト」のプロジェクトでは、2軸回転型のパネルをスキーリフトの上部に固定する計画です。スキーリフトが消費する3倍のエネルギーを、ソーラーパネルで生産できる計算だそうです。


©www.skilift-tenna.ch

スキーリフトのプロジェクト
http://www.skilift-tenna.ch/

システムを紹介したテレビ番組
http://3.ly/solartv
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