昨日、夫の従兄弟と兄弟の集いに行って来ました。
集いの場はいつも、中央スイスのシュビーツにある、夫の祖父母が1931年ごろに移築した古い農家で、ここ数十年は従兄弟たちがバカンスハウスとして使ってきた「蜂蜜の丘の家」です。
しかし、この家、3~4年ぶりに着いてみると、なんだかすっきりと若返っているのです。太陽熱温水器もついているし。どうしたのかしら、と尋ねてみると、この1.5年ほどをかけて、従兄弟一家が、かなりの部分をセルフビルドしながら、省エネ改修を行ったのだそうです。そのお披露目が本日のサプライズだというのです。
皆でフォンデューをつついて満腹になった後、待ちかねた西側住居のお披露目。
もともと納屋と畜舎だった家の西半分を、息子たちの住宅として総改修しています。全ての屋根面、ファザードについては西・南・北を断熱改修しています。
東半分の小さなバカンス住居と東ファザードはこれから改修していくようです。
改修では、既存の木構造を活かしながら、屋根、外壁に40㎝の断熱材(セルロース)を施しています。窓は木製断熱サッシの三重ガラス。室内は明るく、素晴らしい景色を大きな窓が切り取っています。室内の雰囲気は、下の写真をご覧下さい。
目標はミネルギーP基準の家だったそうですが、熱回収型の機械換気を入れないことを選んだので、これを必用とするミネルギーの認証は受けていないそうです。でも、改修後にサーモグラフィ写真を撮って、断熱性能をチェックするといった凝り様です。
給湯と暖房はソーラー+薪で、100%再生可能エネルギーで行っています。
まず給湯は9枚のソーラー温水器で基本的にまかないます。そして暖房は、居間にある蓄熱暖炉(薪)で行っています。蓄熱暖炉はスイスの農家の伝統的な暖房装置で、東側の住居にはまだ古いものが現役で使われています。
一日一度薪をくべると、暖炉の蓄熱体に熱が貯えられ、長時間にわたり暖炉全体から熱を放射します。さらにこの家で使われているシステムでは、蓄熱暖炉の熱でお湯を温め、それで一階の床暖房や2階の温水ラジエータを温める仕組みになっています。冬にソーラーでお湯が足りなくなった場合にも、蓄熱暖炉から給湯タンクを温められるそうです。
西側住居の住面積は156㎡で、現在少し贅沢ですが3人で住んでいます。この家を暖房するのに、一年で薪の消費量が僅かに2~3㎥といいますから、エネルギーの効率は良いと言えるでしょう。
これまで少し陰気な感じのあった古びた農家が、開放的で明るく、快適で、気持ちの良い住空間に生まれ変わっているのを見て感激しました。
この建物、あと100年はここに建ち続けるだろうと想いました。
そして、一家のこの建物と場所への深い愛情を感じたのでした。
「蜂蜜の丘の家」をここまでに育てた従兄弟一家に拍手!の土曜日でした。
生まれ変わった「蜂蜜の丘の家」の写真
南東ファザード。建物は100年ほど前に移築された農家。
南、西、北ファザード、屋根が断熱改修された。
西側に住居が1つ、東側に休暇用住居が1つ入る。
西側半分はもともと畜舎、納屋だった。もともと一階部分が石造り、上部は木造。
(左)西ファザード。建物の元々の特徴を大事にしながら、新しい顔を与えた。
日除けとして簡単な雨戸が西ファザードには付けられている。
(右)東南側。大きなテラスを新設。屋根には9枚のソーラー温水器。
給湯と暖房用のお湯をまかなう。
全面改修された西側住居の一階。開放的で明るい居間・キッチン。
もと畜舎だった部分。
絶景を見せる大きな窓は、断熱三層窓。もちろん開きます。
西の窓からの眺め。
家の心臓は、居間の蓄熱式薪暖炉。
暖炉の構造体に熱が貯えられ、ゆっくりじんわり熱を放射する。
焚きつけは一日一回。昨晩焚いたのに、翌日の午後まで暖かかい。
ここからソーラータンクの温度が足りない時は、熱を蓄熱タンクに回す。
また右側のベンチや一階の床面には、暖炉で暖められた温水が回されている。
そういう操作をこなすのが右の制御装置。
西側住居の2階へ。無垢の木の温かさがとってもきもち良い空間。
右は寝室。2階は温水ラジエータで熱分配。
(左)外壁は、もともとの木造軸組みを残しながら、厚さ40㎝のセルロース断熱材を吹き込んだ。壁の厚さが分かる。
(右)書斎スペース。無垢のカラマツ床材を、自分たちの手で亜麻油で仕上た。
2階のテラスは幅2.5m。スイス人の大好きな屋外の部屋。
屋根も古い梁を活かしながら、40㎝のセルロースで断熱強化。
機械室には1200リットルのソーラータンクが2本。コスト的にもバランスの良いお湯のストックを持つことで、陽射しの乏しい季節でも給湯用水をソーラーで確保。
この日はタンク内のお湯50度、パネルから戻ってくるお湯が70度。
配管の断熱はこれからとか。
薪の消費量は一年で2~3㎥程度。それで156㎡を暖房、給湯補助。
まだ改修中の東側住居。昔の農家の内部が良く残っています。
こちらはバカンスに親戚が使う。
昔ながらの蓄熱暖炉。タイルの張られている壁とベンチ全体が蓄熱体になっている。右の黒い部分が薪をくべる場所で、同時に調理台にもなっている。
暖かいベンチは、皆が肩を寄せ合い、語り合う格好の場所。
この壁の反対側が西側住居の蓄熱暖炉になっている。
北側から見た「蜂蜜の丘の家」。周囲は果樹と牧草地。
「蜂蜜の丘の家」の前の散歩道。ミューテン山を眺める。