滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

ベルン市とサンクトガレン市、住民投票で脱原発の時期を決定

2010-11-29 11:04:18 | 政策
昨日は、スイスの人の言うところの「Abstimmungssonntag(国民投票の日曜日)」でした。
直接民主制のスイスでは、国・州・自治体の各レベルでの重要な法律改訂や国民イニシアチブ案、予算などについて、一年に何度も投票が行なわれます。主な投票項目については、スイスのオフィシャルな情報サイトであるスイスインフォにて日本語で読むことができます。
http://www.swissinfo.ch/jpn/index.html

私がここで皆さんにお伝えしたいのは、先日ブログにも書いたスイスの首都ベルン市の脱原発に関する投票について。
結果から言いますと、「2039年に脱原発する」という市議会案が60.6%の賛成票を得て、可決されました。
「2030年に脱原発する」という市民イニシアチブ案は、賛成票が48.8%で、ギリギリのところで否決されました。

ということでスイスの首都では、2039年までに100%再生可能エネルギーによる電力供給が行われることに決まりました。
そして住民の半数近くが、可能ならば前倒しで脱原発したいと考えていることも明確になりました。
投票率は51.4%。ちなみにベルン市の人口は12.3万人、人口数はスイス4番目の町です。

もう1つ、サンクトガレン州の州都であるサンクトガレン市でも、昨日興味深い2つの投票が行なわれました。
人口は7.3万人、人口数はスイスで7番目の町です。

ひとつ目は、ここでも同市の脱原発の時期について。
市民側からのイニシアチブ案「原発電力のない町」は、市のエネルギー会社が原発電力の購入契約を更新したり、延長したりすることを拒むものでした。この法案への賛成票は41%で、明確に否決されました。対して、市議会の対案である「安定供給を保持しながら2050年までに脱原発する」は、61%の賛成票を得て可決されています。2050年というのはかなり先の話ですが、一応、脱原発するという決断が成されたのはエネルギー政策的に重要なことです。

ふたつ目は、深層地熱暖房・発電所の建設予算について。
サンクトガレンの市民は、1億6000万フラン(約144億円)という高額の予算を、83%もの賛成票で可決しています。同市の西部に計画されているこの設備が完成すれば、市の半分の世帯(2.5万世帯)に地域暖房による熱供給を行うことができます。

しかし、計画されている量の地熱があるかどうかは、実際に掘ってみなくては分からないとのこと。予算の半分近くを占めるボーリングコストが無駄になる可能性もあり得ます(チューリッヒ市では実際にそうなりました)。事前調査により良い結果が期待されているとはいえ、サンクトガレン市民の再生可能エネルギー増産への強い意志が感じられる決断です。(スイスの多くの都市が夢見る深層地熱暖房発電については、後日ご報告します。)

バーゼル、ジュネーブ、チューリッヒ、ベルンとスイスの4大都市が脱原発の道を選びました。今後、これらの町の決断が、スイスの他の都市にどのような影響を与えていくのか、興味深いところです。


短信

●「
国際エネルギー機関IEAがピークオイルを認める」

IEA(国際エネルギー機関)が、2010年度の「ワールドエナジーアウトルックWEO」の中で、ピークオイルが達成されたことを認めている、というプレスリリースがスイスエネルギー基金より届いた。IEAはこの報告書の中で、原油産出量が2020年に一日あたり約68006900万バレルとなるだろうと予測。その値は2006年の最大量7000万バレルを下回る。2009年度の生産量は6790万バレルであった。ピークオイルとは、原油産出量が最高量に達しており、以後減少することを意味する。

参照:スイスエネルギー基金プレスリリース
http://iea.org/weo/docs/weo2010/weo2010_es_german.pdf(ワールドエナジーアウトルック、ドイツ語要約版)


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テレビで激論、「スイスに新しい原発は必要か?」

2010-11-27 15:06:27 | 政策

昨日、初雪が降りました。つい数日前までは庭のバラが最後の花を咲かせていたのが嘘のような雪景色。
ベルンは「最高」気温が-2度。天窓からしんしんと真冬の寒さが降りてきます。

さて、前回のブログにも書いたように、スイスの社会は今、「原発」をこれからどうするかについて決断する時期に来ています。その背景にある事情としては:10年後に老朽原発が廃炉になった後の電力供給の方向性、今後行なわれる原発更新に関わる住民投票や国民投票、力をつけてきた再生可能エネルギー技術の輸出産業の存在などがあります。また最近では、ロシアの放射線汚染が激しいMajakで作られた原発燃料をスイスの電力会社が購入している事実が発覚し、メディアやNGOによる電力会社のバッシングも続いています。

そういった背景の下、11月19日(金)のスイスの国営放送の夜の番組「アレーナ」では、「スイスに新しい原発は必要か?」というテーマが取り上げられました。75分に渡り名司会者レト・ブレンヴァルド氏の下、推進派と反対派が激論を交わします。

推進派代表は、大手電力AXPO社CEOのマンフレッド・トゥールマン氏。中立から推進派よりからは、エネルギー庁長官のヴァルター・シュタインマン氏。反対の立場は、再生可能エネルギー産業の経団連であるクリーンテック経財連盟理事のニック・べグリンガー氏。そしてNGOスイスエネルギー基金代表のユルグ・ブリ氏が出演しました。それぞれの後方に応援団(?)として、4人ずつの国会議員たちが着いて時々横槍を入れます。

この種の討論会は、講演会やシンポジウムで何度も見てきたので目新しいものではないのですが、「アレーナ」では双方共に、画面から火花が飛び散ってくるような激しさでした。議題は再生可能電力のポテンシャルや課題、原発の安全性と廃棄物の最終処分地の問題、そして経済性などに及び、双方の論点・弱点などが確認できて勉強になりました。

その中、4人中3人に共通する理解としてあったのが、早かれ遅かれ100%再生可能エネルギーで電力供給していかねばならないこと。そして高放射性廃棄物の処分地の問題はまだ解決していないこと。またエネルギー庁長官が、2050年までにはスイスは再生可能エネルギーで100%エネルギー供給できると発言し、原発なしでその転換を図るのは非常な努力を伴うが不可能ではない、という立場を採っていたのが興味深かったです。

推進派は、再生可能電力が安くなるまで、もう一世代原発を更新しようと言います。「安く、既存の技術であり、今すぐ安定供給を実現できる。再生可能もやってるが、原発なしでは不可能」という意見。対して、脱原発派は、「放射線汚染の面からもクリーンでないし、ゴミの問題が未解決。新設された頃には再生可能電力のが安くなっている。経済的にも再生可能な未来へ直行すべき」という意見。

この番組の狙いは、視聴者に様々な立場からの意見を聞かせ、2013~14年に行なわれる予定の原発更新に関する国民投票までの意見形成のきっかけを作ることでしょう。ちなみに、スイスで人気の大衆新聞「ブリック」の読者投票では、11月15日の時点で70%の人が「新しい原発はスイスには要らない」と投票しています。対して、エネルギー庁の長官は番組の中で原発は賛成と反対の市民が今のところ40%ずつだとコメントしており、私もそう感じます。 

こちらで番組アレーナが見られます。雰囲気だけでもどうぞ。
http://www.videoportal.sf.tv/video?id=01a01107-8a45-4196-b285-37dec62d188f

日本のテレビでも日本の原子力発電と電力供給の未来について、様々な角度からオープンかつ活発な議論を行なっていって欲しいと思いました。


短信

●フライブルグ市でシンポジウム「エネルギー自立する自治体」、2011年4月
各国政府が温暖化対策の目標を合意できないでいる現状の傍らで、ドイツやオーストリア、スイスの自治体の間では、再生可能エネルギーによるエネルギー自立の運動がダイナミックな波のように動き出し、事例も増えてきている。2011年4月7日~8日には、ドイツのフライブルグ市で専門家を対象としたシンポジウム「エネルギー自立する自治体」が開催される。自治体が自らの手で再生可能な熱と電力の生産と供給を行い、エネルギー効率を高めるための具体的かつ実際的な方法が、ドイツの政策を背景として紹介される。
サイト:
www.energieautonome-kommunen.de

 ● グローバル・エナジー・バーゼル~持続可能なインフラストラクチャーのためのファイナンシングサミット、2011年1月
2011年1月11~12日にかけてスイスのバーゼルでは、持続可能なインフラストラクチャーのための資金作りをテーマとした、グローバル・エナジー・バーゼルの国際会議が開催される。世界から政治、経済、科学、福祉、メディアからの代表者が集まる予定。このイベントを後援するのは、ニューヨーク市の市長Michael Bloomberg氏およびにC40Cities Limate Leadership Group、そしてバーゼルシュタット州知事のDr. Guy Morin氏。議題の中心は、建設と都市開発、輸送とロジスティック、再生可能エネルギーを基盤とした持続可能なエネルギーシステムと需要制御。
サイト:
http://globalenergybasel.com/


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首都ベルン、脱原発の時期を決める投票前のメディア作戦

2010-11-20 20:39:37 | 政策
スイスの首都であるベルン市とその市営エネルギー会社では、原発との契約の切れる2039年に脱原発を行うことを昨年より計画しています。市営エネルギー会社は、それまでに100%再生可能エネルギーによる電力の安定供給は可能だ、とテレビや新聞で発表しています。

この政策的転換のきっかけを作ったのは、2008年に市に提出された住民イニシアチブ案「エネルギー転換ベルン」です。緑の党が中心となり作成、署名を集めました。このイニシアチブ案では、ベルン市営エネルギー会社に20年以内に100%再生可能エネルギーによる電力供給を行なうことを求めます。別の言葉で表せば、2030年までに脱原発せよ、という意味でもあります。

そして来る11月29日には、この2039年に脱原発するというベルン市のプランと、2030年までに100%再生可能な電力供給をという住民イニシアチブ案の両方が、住民投票にかけられます。どちらでも再生可能エネルギーの時代への転換が加速することに変わりないので、環境団体たちは両方に「Ja」(賛成)票を入れるよう、呼びかけています。
(直接民主制のスイスでは、住民(あるいは国民)イニシアチブ法案が住民投票にかけられた結果は、法的拘束力を持ちます。)

これとは別に、ベルン市を州都とするベルン州では、2012年の2月に同州にあるミューレベルグ原発を更新するか否について、住民の意見を伺う投票が行なわれる予定です。

そんな背景の下、この一ヶ月ほどベルン州にある我が家にも何度か、再生可能エネルギーに関する情報誌が新聞と一緒に織り込まれてきました。いづれも住民投票を前に、市民への十分な情報提供を行なおうというメディア側の意欲が感じられる充実した内容です。

その1つが、ベルン州の4大誌が協力して発行した別冊新聞「再生可能エネルギー」。
14ページの内容は、ベルン市の脱原発と100%再生可能エネルギーの電力供給計画の話題が中心。そのほか、風力、太陽光、生ゴミと下水バイオガス、木質バイオマス、省エネ改修に関する情報提供を行なっています。ベルン市で建設中のゴミ&木質バイオによる地域暖房・発電施設や、ソーラーエネルギー分野の先端で活躍する地域企業の紹介もあります。

もう1つが、「スイスのための新エネルギー~100%再生可能」というA4版の40ページの冊子。
一週間前に新聞と一緒に届きました。「100%再生可能エネルギーなスイスを作ることは既に今日可能だ」というメッセージを伝えます。発行元を見るとバーゼルのクラーテクスト連盟とあり、製作費の75%がバーゼル・シュタット州のエネルギー助成基金から出資された、と書いてあります。エディトリアルはバーゼル・シュタット州の5人の国会議員が共同で署名しています。

なぜバーゼル・シュタット州が出資する雑誌が、ベルン州の家庭に配布されるのでしょう?
その事情は編集後記に小さな文字で書いてありました。バーゼル・シュタット州は70年代から州の法律の中に原子力利用に反対すること、再生可能エネルギー供給を促進すること等を取り込んでいます。厳密には同州は、「あらゆる法的、政治的手段を用いて、州内およびにその周辺に核分裂原理による原子力発電所(中略)が建設されないように努力する」義務を負う、のだそうです。これを行動に移したのが、今回ベルン州で配布された冊子、というわけです。

冊子のメイン記事は100%再生可能エネルギーによるスイスのエネルギー供給のシナリオについて。もちろん焦点は今回の住民投票を意識して、電力供給になっています。それから著名な専門家たちが語る「100%再生可能は可能である」というインタビュー。各再生可能エネルギー源の個別紹介に、プラスエネルギーハウスのルポ。2025年までに再生可能電力に切り替えるドイツのミュンヘンの事例紹介も忘れません。 バーゼル・シュタット州のエネルギー会社は、100%再生可能な電力の供給を行っていますから、説得力はあります。

さて、このメディア作戦、どう功を奏すでしょうか。ベルン市民はどう決断するのでしょうか。月末に住民投票の結果をお伝えします。


短信
その他にも、この1ヶ月間、下記のようなエネルギー関係の情報誌が一般家庭に配布された。

●エネルギー庁の「持ち家主のための別冊版」
国のエネルギー行動計画でエネルギー庁が指揮をとる「エネルギー・シュバイツ」。ここが発行する「持ち家主のための別冊版」は年2回、全国の持ち家主120万世帯に配られる。10月に発行された秋号は、家主に役立つ省エネ情報満載。断熱・省エネ改修についての情報提供や施主の体験談、事例紹介、賢い方法を手取り足取り。三層断熱サッシの説明には一面を裂き「ベターなだけでなく、より安い」と説得。さらに、サッシの施工方法で施主として注意すべき点まで示す。トップ効率の省エネ家電は分野別に紹介をした上で買い替え時期をアドバイス。銀行からの融資情報も3ページに渡る。最後は、「化石時代からの脱出は始まった」というタイトルのエネルギー庁副長官のインタビュー。分かりやすく魅力的な誌面となっている。ちなみにエネルギー・シュバイツの別冊版シリーズは、自治体向けと中小企業向け、持ち家主向けの3種類が発行されている。
http://www.bfe.admin.ch/bauschlau/index.html?lang=de&dossier_id=02080
(ダウンロードできます)

●住宅&エネルギーメッセ新聞
11月には先日報告したベルン市の「住宅・エネルギーメッセ」の案内誌は180万部発行。やはり各家庭に配られた。48ページの冊子の内容は、省エネ建築と断熱改修、再生可能エネルギー源に木造建築とメッセの広告。エネルギー庁長官や各政党代表者、ベルン州のエネルギー大臣へのエネルギー政策へのインタビューも載っている。ミネルギー・P基準とプラスエネルギーハウスというトレンドをしっかり伝えている。

●生協コープの広報誌「ヴェルデ」
10月の生協コープの広報誌に折り込まれていた「ヴェルデ~オーガニックとサステイナビリティのための冊子」。これはコープ社の広告だが、衣食住に関わる同社のオーガニックな製品づくりの背景情報も豊富だ。住に関しては、同社が販売する高度な省エネレベルのミネルギー・P基準の住宅が取り上げられている。その購入者としてスイス人と日本人の若々しい夫妻が紹介されていた。
http://www.coop.ch/pb/site/nachhaltigkeit/node/64675495/Lde/index.html

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CO2オフセットに積極的な旅行業界~NPO MyClimateの旅行業界賞

2010-11-18 19:45:38 | 交通

昨月の日本帰国の際に、いつものようにNPOのCO2オフセット団体MyClimateに、フライトにより生じるCO2をオフセット(相殺)してもらいました。価格は1人あたり東京とチューリッヒの往復で150フラン程度。CO2排出量は4t強です。オフセットしたとはいえ、4t排出したことには変わりません。WWFのCO2計算機で計算すると、私の生活から出るCO2排出量のうち、飛行機がダントツに大きく、その次に暖房(灯油)と消費行動が来ます。


旅行業界は大きなCO2排出に関わっているため、スイスの旅行業界には顧客にオフセットを提供する会社が増えています。MyClimateでは、11月3日に同団体のパートナーの中で特に積極的にオフセットを行っている団体を表彰しました。

オフセット込みの「ベストな解決策」として表彰を受けたのが、スイスのユースホステル連盟。2008年より宿泊客は宿泊により生じるCO2排出量を一泊50ラッペン(45円)という手軽な上乗せ価格でオフセットできます。そして、なんと半分以上の宿泊客がこの機会を利用しているというから驚きです!

Sunstar Hotelsは、世界で初のカーボンニュートラルのホテルチェーンとして表彰されました。2008年に同社は、全てのCO2排出量をオフセットすることを決定。宿泊客が何も考えなくても自動的にCO2がオフセットされる上、オフセットのために宿泊費が上がることはなかったそうです。さらにこのホテルでは、宿泊客の到着・出発の旅路をオフセットするサービスも提供しているということ。

また初のカーボンニュートラルの観光局であるチューリッヒ観光局や、旅行会社のクオー二も表彰されています。クオー二社では、今年の秋から新しい広告キャンペーン「Save the Beauty」を実施、飛行機によるCO2のオフセットを積極的に消費者に売り込んでいます。また社内の出張フライトもオフセットしています。

スイスではほとんどの大手旅行会社や数百の小規模な旅行会社で、CO2オフセットが提供されるようになった今日。MyClimateの経営者ルネ・エスターマンさんはプレスリリースの中でこう語っています。
「旅行業界が温暖化問題を本当に真剣に考えるなら、旅行商品へのCO2オフセットの統合を大幅に改善していく必要があります。今日の顧客は気候保全込みの旅行を期待するようになってきています。」

私は、スイスに環境視察に訪れる方々に、フライトのCO2オフセットをお勧めしていますが、なかなか真に受けてもらえません。日本の旅行会社さんにも、お客様にフライトや宿泊をオフセットするオプションを積極的に与えて、説明して欲しいなと思います。


参照:
http://www.myclimate.org/


短信
●スイス国鉄の路線検索でCO2排出量が比較できる新機能
路線検索といえば、スイスではスイス国鉄のサイト
www.sbb.ch。鉄道だけでなく、トラム・バス・船まで通しで調べられて便利だ。そのサイトに先日、新しい「環境機能」が付けられたので、早速試してみた。
選択した路線の詳細をクリックすると、時刻表の下に「環境」ボタンが出てくる。
そこをクリックすると、自動車で移動した場合と、鉄道で移動した場合のエネルギー消費量、CO2排出量、所要時間が棒グラフと表で表示される。
比較の中で面白いのが所要時間の部分。所要時間が使える時間と使えない時間に分けられており、電車に乗っている時間の大半は使える時間として計算されている。
首都ベルンと大都市チューリヒの間も調べてみる。エネルギー消費量は鉄道が2.1ℓなのに対して、自動車は12.3ℓ。CO2排出量は0.75kgなのに対して、車は24.6kg。移動時間は電車が59分でそのうち49分が「使える時間」。対して、車の移動時間は1時間18分で「使える時間」は7分だ。
出てくるコメントは「あなたの移動は自動車よりも32分1のCO2排出量で、ガソリン消費量は車より10.2リットル少ないです」。計算の条件は個別設定することもできる。
http://fahrplan.sbb.ch/bin/query.exe/dn?seqnr=1&ident=3w.019158221.1290028160&#connection_C0-0

 


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省エネ・エコ建築尽くしの一週間

2010-11-17 21:32:28 | 建築

省エネ&エコ建築視察ツアー

今週は、建築評論家の南雄三先生率いる省エネ&エコ建築視察ツアーを、東スイスの建築にご案内しました。26名という大グループでのハードスケジュールでしたが、何とか無事に視察を終えることができてほっとしているところです。ものすごい熱心さで耳を傾けて下さった参加者の皆様、オーガナイザーの皆様、スイスの建築家やお施主様、どうもありがとうございました。

今回の道中でも、日本では建築にもうすぐ省エネルギー対策が義務化されるが、まだそのレベルは決まっていない、という話が出ました。日本には、少なくとも次世代省エネ基準、できればそれよりも厳しい省エネルギーレベルに義務値を設定して、そこに向かって建設業界の教育キャンペーンを、大々的に繰り広げて行って欲しいものです。

「住宅建設・エネルギーメッセ」

スイスの側でも、先週は省エネ・エコ建築で盛り上がっていました。
まず首都のベルンで毎年の「住宅建設・エネルギーメッセ」が開催されました。この展示会は、もともと施主&地域の業界向けの「ミネルギーメッセ」として始まったもの。スイスの高度な省エネ基準であるミネルギー住宅や、省エネ改修に対応する建材、構造、建築家、再生可能エネルギー源が展示されています。メインの会場がホール2つという小さなサイズにも関わらず、展示内容が充実しており、手軽に最新情報を仕入れられるのが好評です。


Quelle: Focus Events AG

セミナー「プラスエネルギーハウスへの道」

また木曜日には、同じメッセの枠内で建設関係者向けセミナー「プラスエネルギーハウスへの道~基礎、定義、研究開発、国際的傾向」が開催されました。参加したのは建築家、国や州や市の環境やエネルギー関係の方々、エンジニアなど、国内外から240人ほど。様々なプラスエネルギーと呼ばれる建物がスイスで既に作られている他方で、プラスエネルギーの定義や方法については、まだ様々な意見の間で明確な決着がつかないことが分かりました。

また発表した建築家や技術者の間では、パッシブハウスあるいはミネルギー・Pレベルの断熱性能が安定して機能するプラスエネルギー住宅の前提だとする人たちと、それよりも断熱性能の低いミネルギーレベルでも新しい蓄熱・制御技術によりミネルギー・Pやパッシブハウスよりも少ないエネルギー消費量を達成できるとする人たちで意見が分かれていました。スイスでは前者がメインストリームのように思われます。

後者を代表するチューリッヒ工科大学のハンスユルグ・ライブウングード教授は、太陽光と熱を同時に集めるハイブリッドソーラーパネルと地中蓄熱、ヒートポンプ等の組み合わせによるCO2フリー住宅を発表していました。また彼はCO2フリー=ニュークリアフリーであり、チューリッヒ工科大学としてもそういう考えであると明言していました。

EUからは、ベルギー大学のカールステン・フォス教授が、現在進行中のネットゼロエネルギーハウスの定義について話しました。これも、どこで境界を引いてゼロとするのか、様々なエネルギー源の間での差し引きはどうするのか、といった点についてまだ決まっていないが、おそらく個々の建物ではなくネットゼロエネルギー地区、ネットゼロエネルギー都市といった方向に進むのではないか、という内容でした。

来春導入される新基準「ミネルギー・A」

それから、スイスの高度な省エネ建築を認証するミネルギー基準については、ミネルギー連盟から「ミネルギー・A」という新しい基準を来春に導入するという発表がありました。ミネルギー基準にはこれまで普及型のミネルギー、次世代型のミネルギー・P、ライフサイクルにおける環境と健康に配慮したミネルギー・エコ基準の3種類があります。現在ミネルギーは新築の25%を占めます。パッシブハウス、あるいはミネルギー・Pが随分と珍しくなくなってきた今日、間もなくミネルギーがミネルギー・Pに格上げされる予定です。

そのような中、「ミネルギー・A」(アクティブ、アドバンス)は次の次世代基準として位置づけられています。この基準では、ミネルギーの省エネ性能に加えて、建物の建設にかかるグレーエネルギーに制限値が設けられます。同時に、ようやく家電のエネルギー消費量への制限値も加わります。そして暖房・換気・給湯に関しては、再生可能エネルギーによる自給、ゼロ化が求められます。しかし家電エネルギーに関しては太陽光発電によるゼロ化は求められないといいます。大規模建築でも達成できるように、という話でしたが、真相は謎です。
最終的にミネルギー・Aがどのような基準としてデビューするのか、来春のお楽しみです。


短信

●ミネルギー・Pとパッシブハウスのオープンドアデイ
11月13~14日には、ミネルギー連盟とパッシブハウス振興会が共同開催する毎年恒例の「国のミネルギー・Pの日~オープンドアデイ」が実施された。全国各地にある830のミネルギー・P建築のうち、160棟が門戸を開放。来訪者には、施主や建築家が説明を行ない、ミネルギー・Pを気軽に体験してもらう。下のサイトからパンフを見ることができる。
http://www.toft.ch/(オープンドアの家のリスト)
http://www.minergie.ch/bildgalerie.html#tage-der-offenen-tueren(オープンドアデイの様子の写真)

●学生によるプラスエネルギーハウスの祭典~ソーラーデカトロン・ヨーロッパ
2010年夏にマドリッドで開催された、学生達がプラスエネルギー建築の性能を競う「ソーラーデカトロン」の様子が上記セミナーで報告された。予選を勝ち抜いた19の大学の学生チームが、実際にプラスエネルギーの住宅を建設し、その建物に10日間住んでいる状態で展示・評価が行なわれる。評価の対象は、エネルギーパフォーマンスやデザイン、経済性、快適性、構造、ソーラーシステム等の10項目。74㎡の2人用住居、プラスエネルギーのコンセプトが条件だという。今年第二位になったドイツ、ローゼンハイム専門大学の学生達の「IKAROS」プロジェクトは、担当者のマティアス・ワンブスガンス教授によると、10日間の間に508kWhの余剰電力を電力網に供給、そして「ベスト快適性賞」」「ベストエネルギー効率賞」「照明賞」などを獲得した。また熱いマドリッドの気候下で冷却を行ないながらの、快適性とプラスエネルギー化は大変興味深い。同教授によると、参加には最低でも120万ユーロはかかるが、2年間に渡りプロジェクトに携った55人の学生にとっては最高の学習効果があったそうだ。ソーラーデカトロンは、奇数年はワシントンで、遇数年はマドリッドで開催される。
http://solar-decathlon.fh-rosenheim.de/projektdetails/ (IKAROSプロジェクトの写真やヴィデオが見られます)


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