直接民主制のスイスでは、国・州・自治体の各レベルでの重要な法律改訂や国民イニシアチブ案、予算などについて、一年に何度も投票が行なわれます。主な投票項目については、スイスのオフィシャルな情報サイトであるスイスインフォにて日本語で読むことができます。
http://www.swissinfo.ch/jpn/index.html
私がここで皆さんにお伝えしたいのは、先日ブログにも書いたスイスの首都ベルン市の脱原発に関する投票について。
結果から言いますと、「2039年に脱原発する」という市議会案が60.6%の賛成票を得て、可決されました。
「2030年に脱原発する」という市民イニシアチブ案は、賛成票が48.8%で、ギリギリのところで否決されました。
ということでスイスの首都では、2039年までに100%再生可能エネルギーによる電力供給が行われることに決まりました。
そして住民の半数近くが、可能ならば前倒しで脱原発したいと考えていることも明確になりました。
投票率は51.4%。ちなみにベルン市の人口は12.3万人、人口数はスイス4番目の町です。
もう1つ、サンクトガレン州の州都であるサンクトガレン市でも、昨日興味深い2つの投票が行なわれました。
人口は7.3万人、人口数はスイスで7番目の町です。
ひとつ目は、ここでも同市の脱原発の時期について。
市民側からのイニシアチブ案「原発電力のない町」は、市のエネルギー会社が原発電力の購入契約を更新したり、延長したりすることを拒むものでした。この法案への賛成票は41%で、明確に否決されました。対して、市議会の対案である「安定供給を保持しながら2050年までに脱原発する」は、61%の賛成票を得て可決されています。2050年というのはかなり先の話ですが、一応、脱原発するという決断が成されたのはエネルギー政策的に重要なことです。
ふたつ目は、深層地熱暖房・発電所の建設予算について。
サンクトガレンの市民は、1億6000万フラン(約144億円)という高額の予算を、83%もの賛成票で可決しています。同市の西部に計画されているこの設備が完成すれば、市の半分の世帯(2.5万世帯)に地域暖房による熱供給を行うことができます。
しかし、計画されている量の地熱があるかどうかは、実際に掘ってみなくては分からないとのこと。予算の半分近くを占めるボーリングコストが無駄になる可能性もあり得ます(チューリッヒ市では実際にそうなりました)。事前調査により良い結果が期待されているとはいえ、サンクトガレン市民の再生可能エネルギー増産への強い意志が感じられる決断です。(スイスの多くの都市が夢見る深層地熱暖房発電については、後日ご報告します。)
バーゼル、ジュネーブ、チューリッヒ、ベルンとスイスの4大都市が脱原発の道を選びました。今後、これらの町の決断が、スイスの他の都市にどのような影響を与えていくのか、興味深いところです。
短信
●「国際エネルギー機関IEAがピークオイルを認める」
IEA(国際エネルギー機関)が、2010年度の「ワールドエナジーアウトルックWEO」の中で、ピークオイルが達成されたことを認めている、というプレスリリースがスイスエネルギー基金より届いた。IEAはこの報告書の中で、原油産出量が2020年に一日あたり約6800~6900万バレルとなるだろうと予測。その値は2006年の最大量7000万バレルを下回る。2009年度の生産量は6790万バレルであった。ピークオイルとは、原油産出量が最高量に達しており、以後減少することを意味する。
参照:スイスエネルギー基金プレスリリース
http://iea.org/weo/docs/weo2010/weo2010_es_german.pdf(ワールドエナジーアウトルック、ドイツ語要約版)