滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

ドイツ随一の再生可能エネルギー企業家の著書、翻訳刊行予定

2013-11-04 09:15:51 | お知らせ

スイスは紅葉も終盤となり、窓から見える山は白ばみ、柿や栗の美味しい季節となりました。 本の翻訳と次の共著本のための取材取材、エネルギー視察・レクチャーに埋もれて、ブログの更新を2か月もお休みしてしまいました。

10月上旬のMITセミナーはお陰様で大好評で終了し、日本から12名の企業家の方々を中心にご参加頂きました。今回は、南ドイツの様々な再生可能エネルギー事業体やエネルギー自立地域を一週間に渡り、レクチャーを交えながら視察致しました。参加者の皆様、そして訪問先のパイオニアの皆様、どうもありがとうございました。2014年10月5日~11日にも同様のテーマの一般募集型のセミナーを開催する予定です。ご関心のある方は、MITエナジーヴィジョン社のホームページに後日プログラムをアップしますので、ご覧下さい。
 www.mit-energy-vision.com

今回、様々なエネルギー自立地域のパイオニアたちのプレゼンを聞くの中で、印象に残った言葉がいくつかあります。その一つが、ソーラーコンプレックス社の社長であるベネ・ミュラーさんのプレゼンの中で聞いた「オイルパリティ」という言葉です。屋根からの太陽光発電の電力の価格が、一般消費者のコンセントからの電力価格よりも安くなることを「グリッドパリティ」と言い、ドイツではとうに達成されています。その先の展開として、太陽光発電で作る熱が、灯油で作る熱の価格よりも安くなることを「オイルパリティ」と呼ぶんだそうです。で、南ドイツではこのオイルパリティが達成されたので、太陽光で自家発電した電気を建物の中の電気機器で自家消費した後、それでも残る電力で蓄熱タンクにお湯を作って貯めておくことが経済的な選択肢になってきました。そうすると暖房や給湯の熱源としていて使っていた灯油やガスを節約できるというわけです。過去10年で石油代は4倍になったといいますから、今後の高騰を考えると、賢い再生可能な余剰電力の使い方です。

その間、スイスやドイツでエネルギーの民主主義化に関しても興味深い動きがありました。例えば、スイスのグラウビュンデン州では9月22日の住民投票で、州の電力供給会社リパワーが(イタリアの)石炭発電建設へ出資することを禁止する法案が可決されました。同日にドイツのハンブルクでは住民投票により、地域のエネルギー供給網(熱、電力、ガス)を、大手エネルギー会社から自治体の所有に買い戻すことが可決されています。またスイスでは9月頭にやっと、昨冬のパブコメ成果を反映させたバージョンのエネルギー戦略2050と第一対策パッケージを内閣が発表し、秋の国会で審議されています。また最近は、スイスの世界最古のオンボロ原発3基への投資と廃炉時期を巡ってひと騒ぎありましたが、これについてはまた別の機会に報告しましょう。

最後になりますが、今日は、ここ数か月に渡り携わっている翻訳本について紹介したいと思います。7月のブログでも紹介しましたが、ドイツでは有名な再生可能エネルギーの開発会社juwiの設立者で所有者のマティアス・ヴィレンバッハ―さんの著書です。現役の企業家がドイツのエネルギー政策の真実と進むべき道を示した稀な本で、ドイツではこの夏のベストセラーになりました。邦題は「メルケル首相への提案~ドイツのエネルギー大転換を成功させよ!」です。ドイツでまかり通っている「エネルギーシフトの嘘」を暴き、どのようにすれば電力・熱・交通を2020年までに完全に再生可能エネルギーにできるのか、そしてなぜ100%再生可能エネルギーが市民と国民経済の立場からドイツ社会にとって最良の選択肢であるのかが、実践者ならではの説得力を以て、分かり易く、面白く説明されています。日本の若手企業家の皆さんに是非読んで欲しい一冊です。ちなみに翻訳は村上敦さんとの共訳、いしずえ出版社からの刊行になります。
年末頃に日本で刊行できるよう、製作チーム一同頑張っておりますので、こうご期待を!





お知らせ


●2013年10月末ビオシティ誌刊行~連載欧州中部のビオホテル探訪
持続可能な地域創造・環境総合誌のビオシティNo.56 (ブックエンド社)が刊行されました。今回はWWFジャパン監修ナンバーで、特集は「地球にちょうどいい生き方の指標~エコロジカル・フットプリント」。エコロジカル・フットプリントの考え方を分かり易く紹介した、非常に勉強になるナンバーになっています。私の連載「欧州中部のビオホテル探訪」では、今回はオーストリアチロル州のビオホテル・シュヴァイツァーを紹介しています。

http://www.bookend.co.jp/biocity/

●2013年9月スイスエネルギー財団「フクシマニュース」
ドイツ語圏の人びとにドイツ語で福島原発第一事故の影響・その後をお知らせする季刊ショートニュースです。9月号が下記に掲載されています。
http://www.energiestiftung.ch/aktuell/fukushima/

 ●スイスの冊子「100%再生可能エネルギー電力ミックス」、ダウンロード版刊行
スイス在住日本人の有志による脱原発社会を目指す会「アジサイの会」が、スイスの原発情報とエネルギー情報を発信していくためのホームページを開設されました。そのページに、スイスの環境団体が数年前に刊行した冊子「100%再生可能エネルギー電力ミックス」のシナリオの日本語訳が掲載されています。要約版、そして全文版(ダウンロード要)を無料で読む事ができます。翻訳されたのは同サイトの企画・管理・デザインを行う戸田敦子さんと、下・トゥート・葉子さん。私も微力ながら監修に参加させて頂きました。是非ご覧ください。
http://swissenergyinfos.jimdo.com/


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