滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

「100%再生可能へ! 欧州のエネルギー自立地域」の予約販売が始まりました

2012-02-20 14:48:41 | お知らせ

前回のブログで暖冬と書いた直後に大寒波が訪れ、全館暖房による暖かい室内環境の有り難さをしみじみと感じ入った次第です。と同時に、石油価格が支払えない額になる前に、今スイスが促進している建物の省エネ改修をもっと急いで進めなければ、これは大変なことになると改めて考えさせられました。とはいえ、日本からの視察団の方々が、わずかな暖房エネルギーで家全体を快適に保てるミネルギー・Pハウスの室内環境を体験するのには、絶好のお天気でした。

■ 単行本の販売予約が始まりました

共著単行本の予約販売がアマゾンで始まりました。3月10日に発売予定です。
タイトルは 「100%再生可能へ!欧州のエネルギー自立地域」。著者は滝川薫、村上敦、池田憲明、田代かおる、近江まどか。学芸出版社からの出版になります。
どうぞよろしくお願いします!


ご予約は下記リンクからどうぞ。
http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%85%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%B8%EF%BC%81-%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E8%87%AA%E7%AB%8B%E5%9C%B0%E5%9F%9F-%E6%BB%9D%E5%B7%9D-%E8%96%AB/dp/4761525304/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1329519975&sr=8-1


この本に関しては、下記のブログでも著者一同で様々な情報更新を行っていく予定です!
http://blog.livedoor.jp/eunetwork


■ 公開講演会のお知らせ

3月14日に大阪で行う講演会は一般公開しています。先着100名だそうですので、関心のある方は下記までお申し込み下さい。
「エネルギー自立のまちづくり」
2012年3月14日(水)13時30分~16時45分
大阪大学中之島センター7階セミナー室
お申し込み先 kajikawa@civil.eng.osaka-u.ac.jp
(大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻交通システム学研究室 宛て)


■ 州主催の地域のエネルギー勉強会「エネルギーアぺロ」

スイスの多くの地域では、冬の間、州の主催でエネルギーアぺロと呼ばれる、一般公開された勉強会が実施されています。仕事の後の17~19時に街中の学校やホテルで開催され、主に省エネ建築や省エネ・再生可能エネルギー技術、エネルギー政策に関わるテーマの講演を3本ほど、その後にスポンサー企業のミニプレゼンがあります。これが終わった後にはスポンサーからワインとつまみが立食形式でふるまわれ、地域業界や市民たちがエネルギー関連の情報交換にいそしみます。スポンサーはベルン州の場合、断熱材会社や高効率ポンプメーカ、太陽光発電や太陽熱温水器のメーカや業者、その他の業界連盟などです。

参加者はエンジニア、建築家、役所関連、政治家、メーカ、一般市民など。誰でも無料で参加でき、最新の政策やプロジェクトについての情報が得られる上、講演者にも気軽に質問できる雰囲気が嬉しいところです。講演者の中には、国のエネルギー庁の長官や州のエネルギー大臣や局長なども毎年見られます。ベルン州の2012年度のエネルギーアぺロは計12回。主要なテーマをピックアップすると下記の通り。開催地も首都ベルンだけでなく、いろいろな町に分散させています。

・ 国の新しいエネルギー政策、ベルン州の未来志向のエネルギー戦略と対策
・ 再生可能エネルギーによるエネルギー効率の高い経済のための新技術
・ 未来はプラスエネルギー建築
・ 再生可能エネルギーを用いた建物の省エネ改修、手法、助成金、エネルギーパス
・ インターラーケン・ベーデリ地区のエネルギー地域計画
・ 未来の電力供給は100%再生可能
・ 産業、工業建築における持続可能な資源マネジメント

2月1日にベルンで開催されたアぺロでは、国と州のエネルギー政策のおさらいができた他、ドイツから緑の党の国会議員であるハンス・ヨゼフ・フェルさんによる講演を聞けたことが収穫でした。彼は、スイスでも良く流されているドイツの再生可能エネルギーに関する間違った情報を丁寧に正して説明し、推進コスト以上に大きなメリットをもたらしていることを伝えていました。ドイツは8基の原発を止めましたが、2011年度は5TWhの電力輸出超過であり、この冬も電力不足どころか電力を輸出している話なども興味深かったです。スイスの聴衆に対してフェルさんは、スイスの買取り制度の予算上限を除去し、太陽光発電については買取り価格を下げよ、そしてスイスの2034年の脱原発は遅すぎて経済に間違ったシグナルを送っている、との助言を与えていました。


■ 今月のフクシマ効果


3週間くらい前に、郵便箱にベルン州の警察・防衛局からの大きな封筒が入っていました。中にはポケットのついたプラスチックケースとパンフレットが、ドイツ語とフランス語でそれぞれ2種類ずつ。それから地図が一枚。ドイツ語の説明を読んでみると、「ミューレベルグ原発に万が一のことが起こった時のための20㎞圏内住民のためのセット」、であることが分かりました。これを家の良く見える場所に保管するように、とあります。

一つ目のパンフは行動チェックリスト、二つ目のパンフは原発事故に際する防護対策が質疑応答形式で短くまとめてあります。これをプラスチックケースの小さなポケットに入れるように、とあります(写真左)。地図の真ん中はミューレベルグで、そこからゾーン1と2が赤い線で囲ってあります。20㎞圏内には、首都ベルン市も、隣町のフリブールやビールも、ノイシャテル湖東岸もかぶります。そして一番大きなポケットは、ヨード剤の箱を保管しておく場所です。ヨード剤は私の住む地域(ミューレベルグ原発南10㎞)では、普段から各家庭に配布されています(写真右)。

ミューレベルグ原発に限らず人口密集地に原発が立つ小国スイスでは、こんな袋が必要な事態となれば国の存在が危ぶまれるわけですが、フクシマの教訓の一つとして住民への情報提供・啓蒙に努めている点は評価したいと思います・・。



フクシマニュース2月号
スイスエネルギー財団のウェブサイトでドイツ語のニュースを書いています。2月号はこちらから。
http://www.energiestiftung.ch/aktuell/archive/2012/02/06/februar-news-aus-fukushima.html

★ 3月11日のスイスでの脱原発デモ
3月11日にスイスではデモ行進Menschenstromが実施されます。ギュンメネン駅 からミューレベルグ原発に向かって7㎞行進し、目的地ではスピーチなどが予定されています。私は帰国しているため行かれないのですが、できるだけ沢山の日本人の方に参加して頂きたいと願っています。在住日本人の参加団についてのお問い合わせはこちらのサイトへ→ http://ameblo.jp/save-children-zug/ 

★ 7割のスイス人が脱原発派
スイスの生協Migrosの新聞(2月13日号)のアンケート調査によると、原発利用に関して2011年にスイス住民の17%が即時の脱原発に賛成、52%が新設・建替え反対と答えており、約7割が原発のフェードアウトを望んでいるとのこと。この割合は2008年には43%でした。また「節電のために国は20%の節電税を課税すべきか」という問いに対して、2011年にスイス住民は39%が賛成、12%が分からない、49%が反対と答えています。2008年には賛成者はたった15%でした。
出典:MigrosMagazin 13.2.2012

 ★ ミューレベルク原発は運転継続できるか?
2月10日にベルン州では住民イニシアチブ案「ミューレベルグ原発を即時停止せよ」が十分な署名数1.5万筆を得て、成立しました。とはいえ老朽したミューレベルグ原発は、住民投票に持ち込まれる前に、保安院と法廷により止められる可能性もあります。同原発を運転するベルン州電力は、3月31日までに同原発が地震と上流にあるダムの崩壊においても安全を保てることを保安院に証明しなくてはなりません。それができない場合、同原発は3月末に運転停止されることに。もしも証明が提出された場合は、保安院が夏までにそれを審査。不適切と判断されたらやはり運転停止です。また、同原発が国から無期限の運転許可を得ていることに対して、住民が連邦行政法廷に上訴しています。この裁判で住民側が勝てば、同原発の運転許可は年末に無効になります。いづれにしても、ベルン州電力はこの秋までに安全対策への追加投資の経済性がとれるかどうか、決断を行うということです。
参照:DerBund新聞

★ ドイツの経済新聞で「原子力時代後の暮らし」特集
先週末ドイツを訪れた時に、ドイツの経済系新聞(Handelsblatt)の週末号で「原子力時代後の暮らし」という特集が組まれていたのを目にしました。表紙全面+6ページくらいを割いて、脱原発に関わる多様な側面に関する50の質問を設定し、それに対してバランスのとれた視点から答えていて、これは読者にも勉強になると思いました。原発推進派に偏ったスイスの経済・産業新聞では、このような企画・視点は残念ながらまだあり得ないと思います。
リンク : www.handelsblatt.com


■ ニュース

●スイス : エグリザウ河川発電所、リパワリングで25%増産
ドイツとスイスの国境をなすライン川では、ラインフェルデンの河川発電所に続き、エグリザウの河川発電所でも、リパワリングと再自然化事業が進められている。スイスの環境交通エネルギー通信省は、バーデン・ビュルテムベルク州の行政との了承の下、1920年に建設されたエグリザウ発電所の容量増設に対して建設許可を与えた。同発電所の運営を行うエグリザウ‐グラットフェルデン株式会社には、1998年に2046年までの水利用権が与えられた。その際に、発電所の容量を増やし(毎秒400立方メートルから500立方メートルへ)、水系の自然環境の回復対策を行うことが条件となった。改修により発電出力は43MWとなり、年306GWhを生産。以前より発電量は25%増える。
参照:連邦環境交通エネルギー通信省

 ●スイス:チーズ工場のチップボイラーから地域暖房
ザンクトガレン州でチーズ工場を運営するツゥーガーフリッュケーゼ社では、工場の熱源をチップボイラーに交換した。この熱源はチーズ工場だけでなく、工場地帯にある周辺の産業にも地域暖房網で熱を供給する。また同工場に牛乳を納入する地域の農家は、牛乳だけでなく、チップも納入できるようになった。これにより同社は年1260トンのCO2を削減する。このプロジェクトは300万フランのコストがかかったが、スイスの企業団体が作る気候財団から25万フランの助成金を得て実現された。この財団は、銀行や保険会社といったサービス業界の企業がCO2税の還付金を寄付し、それを財源にして中小企業の省エネ・再生可能エネルギー対策を助成する活動を行っている。
参照:EE-News

●スイス : 照明分野では電力消費量を半減できる
スイスエネルギー効率機関(SAFE)の照明統計によると、スイスでは照明分野で、年4TWhの省エネポテンシャルがあることが分かった。これは、スイスの現在の電力消費量の7%に相当する。このポテンシャルの70%はオフィス、工業、産業、街灯の分野に、そして30%が家庭の分野にある。同機関では、全般的に照明へのエネルギー消費量は現在の技術で半減させられるとしている。暖房・換気設備のメーカとして知られるツェンダーグループ社では、実際に、工場2棟とオフィスの照明をミネルギー基準(スイスの省エネ基準)を満たすものに切り替えた。また日中光に合わせた制御も取り入れた。それにより照明への電力消費量を740MWhから290MWhに減らし、同時に照明の質を上げることに成功した。
参照:EE-News

 ●ドイツ : 2011年、太陽光発電の発電量、記録的に
ドイツソーラー経済連盟によると2011年度、ドイツにある太陽光発電は18TWh以上の電力を生産した。発電量は、前年度よりも60%増えており、510万世帯の一年間の電力消費量に相当する。また太陽光発電により需要ピーク時の電力生産が増えたため、2011年に電力取引市場での電力価格が10%まで低下し、また正午時には40%まで低下した、という調査結果を、未来エネルギーシステム研究所(IZES)が発表した。
出典:ドイツソーラー経済連盟BSW-Solar

●ドイツ : 再生可能エネルギーで節約できた燃料輸入額は110億ユーロ
ドイツの再生可能エネルギー連盟によると、2011年度、ドイツでは再生可能エネルギーにより、110億ユーロの燃料輸入を節約し、90億ユーロの外部コスト(非再生可能エネルギーにより生じる健康環境への害を取り除く費用)を節約することができた。また、1,27億トンのCO2をこれにより削減した。2011年度のドイツのエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は11,9%である。
出典:Sonnenseite.com

●ドイツ : 2011年の風力設置出力は2007MW
ドイツの風力研究所(DEWI)の調査によると、2011年にドイツでは風車895基、出力2007MW分が新規に設置された。前年度比で30%の成長になる。また出力123MWを持つ170基の古い風車を、出力238MWを持つ95基の新しい風車と交換した。オフショアでは、2011年には108MWが新規設置された。設置出力を合計すると29GWとなる。2011年度、ドイツの風力は48TWhの電力を生産した。興味深いことに、新規設置出力のナンバーファイブには、ドイツ南部のバイエルン州とラインランド・プファルツ州が新たに入っている。また電力消費に占める風力の割合が一番高いザクセン・アンハルト州では、風力の電気が48%を占める。
参照:ドイツ風力連盟


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