すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

イスラム国事件:中心テーマは拘束日本人からヨルダン・ハシミテ王国の生き残りへ・・・・・・・・・・

2015-01-27 21:22:16 | Weblog
 イスラム国が拘束中の日本人両名の殺害ではなく、後藤さんを生かしてヨルダンに死刑囚と拘留されている女性闘士の解放を呼びかける役割を与えて以降、この事件の核は日本人の殺害警告ではなく、ヨルダンの運命を左右するものにシフトしつつある。イスラム国はたたみかけるように、投獄されている27名の関係者の解放まで要求をエスカレートしている。要するに、問題はもはや身代金うんぬんのレベルではないということだ。
 このようにこの事件が急転直下、ヨルダン問題に変容したのは、日本政府が対策本部をヨルダンに設置したからである。こんな愚行を中東課の面々が推進したのか、是認したのか、反対したが強行されたのか。。。はわからない。長い独自外交の歴史を持つ中東課の役割が終ろうとしている。
 ヨルダンはイスラム国が発展を続ける上でも、その歴史的存在、ムハンマド直系という宗教上の権威、イスラエル・パレスチナ問題そして海への開放路...のどから手が出るほどほしいものばかりだ。
 アラビアのロレンスが活躍し、アラブの反乱の結果、地中海に面するヨルダン・シリアからチグリス・ユーフラテスを抱えるイラクとは同じ国そして現在のヨルダン王家でもある預言者ムハンマドの直系子孫ハーシム家のものとなった。トランスヨルダンを経て、現在のヨルダンの正式名称は、ヨルダン・ハシミテ王国だが、その名のとおり、ムハンマドの血を引くハーシム家の国なのだ。
 このヨルダン・ハシミテ王国は極端な不安定状態にある。客観的に言って、このような国が中東に存在できていること自体不思議だ。それはこの国を潰せば周囲の国がすべて困るから生き延びているのだ。
 現在のアブドウーラ国王はそもそも国王になる予定ではなかった。フセイン前国王とイギリス人女性との間に生まれた現国王が王位継承権第一位になったのは、死を直前にひかえたフセイン前国王が後継者の弟の第一位継承権を剥奪して、強行した結果だ。その結果、アブドウーラ王子はムハンマドから43代目の指導者となった。人気のある国王も、母親そして自身の結婚相手にパレスチナ女性を選択し、そのことも様々な火種となる。
 こういう状況のなかで、アラブの春が起こった。王政や立憲君主制が打倒されることはなかったが、ヨルダンがどんなに難しい国家運営を続けているかわかるだろう。そして今、その存亡を揺るがすかもしれない巨大なエネルギーを秘めたアラブ社会復興運動が誕生した。それがイスラム国だ。いま、イスラム国がヨルダンに突きつけている難題は、どの選択肢を選んでも、国内に大規模で強烈な反発を生み出す。このチャンスを逃さず最大のドナーでもある日本を巻き込んで、イスラム国はヨルダンの体制に揺さぶりをかけているのである。もはやこの問題は拘束日本人の問題をはるかに超えたドメインに進みつつある。
はたして、日本政府にそうした大局観があるのだろうか?日本にとっても、まさに国益のかかる外交になる。


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