隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1086.赤いランドセル

2010年08月16日 | サスペンス
赤いランドセル
読了日 2010/7/22
著者 斎藤澪
出版社 角川書店
形態 文庫
ページ数 384
発行日 1985/5/25
ISBN 4-04-159702-1

 

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者の横溝正史賞受賞後の第1作だ。そうと知って買ったわけではないが、タイトルからデビュー作の「この子の七つのお祝いに」と、同様の惹きつけられるものを感じて、手に入れた。
サイトを検索してみたら、斎藤氏は受賞して後に、執筆活動に専念してたくさんの著書を著しているようだが、僕はタイトルと云い内容と云い、いかにも横溝正史氏の世界を彷彿させるデビュー作に惹かれていたにもかかわらず、その後の著者の作品にはあまり縁がなかった。
僕の気まぐれのなせる技だが、本当にしばらくぶりの斎藤氏の世界に触れて、少しずつ作品を読み起こそうという気になったのである。





本書を手に入れてから、遅まきながら斎藤氏が今までにどんな作品を発表しているのだろうと、ネットで検索してみた。これから読み継いでいこうと思ったからだ。
それによれば、タイトルだけで惹きつけられるような作品も、幾つかあって、先行き楽しみが増えた感じだ。

 

さて、本書は受賞第1作にしては、だいぶ時間がかかって受賞後15ヶ月後だそうだ。(巻末・郷原宏の解説による)ずいぶんと想を練ったのであろう?
その結果としてのストーリーは、高級マンションの地下に設置されたコインランドリーから始まる。
4台並んだ洗濯乾燥機の内の作動している1台に、幼女の死体が投げ込まれていたという事件が発端だ。
最近は、新聞、テレビ等でも毎日のようにどこかで起こる子供への虐待事件が報道されているが、何度同じような事件の報道を目や耳にしても、こればかりは慣れることがない。小説やドラマと違って現実の事件には、その痛ましさに胸のつぶれる思いだ。
異常な状態で発見された死体は、そのマンションに住む市原俊之・寿代夫妻の次女・加代5歳だった。猟奇的な犯罪に見える事件にテレビ局は色めき立つ。奥様モーニングニュースのスタッフは、プロダクション33に事件の取材を依頼する。そして、プロダクション33の社長・野々村からから指名されたのはフリーライターの浅見恭介だった。

 

れっ子のファッションコーディネーター・真美という恋人をもちながら、うだつの上がらない雑文屋の浅見恭介という男を主人公としたストーリーは、この男の暗い過去などを暗示しながら、被害者である市原加代の家族の複雑な事情も交錯させて、浅見の取材は思わぬ方向へと発展する。だが、浅見の取材も警察の捜査にも、事件の真相はなかなかその姿を現さない。
デビュー作にも劣らず、渾身の気迫を込めたという印象の1篇である。読み終わってから、冒頭にも伏線と思われる記述がなされていることに気づき、驚かされる。

 

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