Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん」を読んで

2005-02-23 19:56:01 | 読書録(その他)
ネットに接続できるようになって初めてやったこと。
それは、古本屋関係のHPを探すことだった。
すぐにEasyseekにも登録し、探している本にまつわる情報が届くのを心待ちにしていた、そんなある日。

何の前触れもなく著者から探求書に関するメールが届いた。
早速、送金して本を購入したことは言うまでもない。
変わった名前だったから今でもよく覚えている。
確か1999年の冬の出来事だった。

前置きが長くなったが、自分が本を購入した当時、著者のサイト「杉並北尾堂」も立ち上がったばかりであったことを本書で知った。お互い試行錯誤の中で出会い、本を売買していたことになる。

本書には著者がオンライン古本屋を立ち上げるプロセス、ノウハウが全て詰まっているといっても過言ではない。
店を立ち上げたきっかけが「本棚がいっぱいになった、これを何とかしよう」と思ってネット古書店を作ってしまうあたり、何と思い切りのいい人だと思う。
その原点から、仕入れ、在庫管理、利用者へのPR等々に奮闘する姿は非常に面白く読めた。
「奮闘」といっても著者自身は肩に力を入れている訳でない(ように自分には思えたが、内心はかなり苦労されたに違いない)。何か趣味の延長線上でやっているように思えた。
副業としてネット古書店を営むなら、自分が楽しまなければ長続きしない、という事をこの本は教えてくれた。

最近(というか今も)増加し続けるネット古書店。
ブックオフの台頭で「せどり」(この言葉、最近あっというまに一般化したような気がする)がやりやすくなったこともあって、ちょっとでも関心があれば誰でも参入しやすくなった。
しかし、本の現物を確かめることができないことが何よりのネックだが、それを補おうとする店の個性が見えなくなってきたように思う。どのネット古書店を見ても品揃えに個性が見えなくなってきたような気がする。もっとも、これは自分の探し方が拙い点は否定できないのだが。
そんなこともあって、逆にネット古書店から足が遠のいてしまった。

その意味からも本書で描かれている出来事は参考になる。
安価な仕入れと、適切な在庫管理。頻繁なHPの更新とPR。何だ、結局は商売の基本を守っているに過ぎないじゃないかと思うが、それを実行し続けるというのは凄いというほかはない。

副業としてのネット古書店には興味がない訳ではないが、どうも自分で購入した本を手放すのが辛い性格なので、ついつい手元に置いてしまうので、どうにもネット古書店を営むには向いていないかもしれないと思うようになった。
人はそれを「貧乏性」というかもしれないが。

<データ>
「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん」北尾トロ ちくま文庫
価格780円(本体)

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