日銀、インフレ圧力持続の可能性を示唆する論文2本を公表
藤岡徹
2024年8月20日 17:16 JST
更新日時 2024年8月20日 18:30 JST
日本銀行は20日、インフレ圧力が持続する可能性を示唆する2本の論文を公表した。
これらの論文は、日本の慢性的な人手不足が賃金に与える潜在的な影響や、サービス業における企業の価格設定行動の変化に注目している。いずれも日銀調査統計局の職員がまとめたものであり、慣例として、見解は執筆者に帰属し、必ずしも日銀の公式スタンスを反映するものではないという標準的な免責事項が付されている。
サービス価格に関する論文では、「賃金上昇圧力が高まるなかで、企業の価格設定行動も変化してきている」と指摘。包括的な分析によってこうした現象がさらに広がるかどうかを調査することが重要であるとしている。
両論文の結論は日銀のこれまでの情報発信に沿うものだが、植田和男総裁が先月タカ派的なシグナルを発したことが8月上旬の世界的な金融市場の下落につながった後でも、利上げはなお検討に値するということを改めて意識させるものだ。植田総裁は23日に衆参両院で開催される閉会中審査に出席し、7月31日の利上げ決定の背景となった考え方や、インフレ見通しについて説明する見通しだ。
内田真一日銀副総裁は、市場の混乱を受けて明らかにハト派的なトーンを打ち出し、年内の再利上げがまだ可能かどうかという点について市場関係者を懐疑的にさせた。内田副総裁は、市場が不安定な状況で利上げは行わず、「当面」は現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると述べた。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方
内田副総裁の講演で、日銀がハト派に転じたと受け取ってはいけない。政策金利が実質的には「かなり低い水準」だと強調し、経済や物価が日銀の見通しに沿って展開すれば調整していくと改めて発言しているからだ。
木村太郎シニアエコノミスト
次回9月19、20日の日銀金融政策決定会合は現状維持との見方が大勢を占めているが、今月上旬にブルームバーグが実施した調査では、エコノミストの多くが年内の10月または12月か、来年1月の追加利上げを予想している。
人手不足の影響に関する論文によれば、国内の労働市場における構造変化が強調されており、労働者の賃上げ要求に影響が及ぶ可能性がある。労働市場の流動性に変化が出始めていることや、従来は異なる仕組みで決まってきた正社員とパートの賃金が相互に連関して上昇するメカニズムが働き始めているとみられるなど、「企業の賃金設定行動が一段と積極化する可能性がある」と分析している。
原題:BOJ Research Notes Indicate Rate Hike Is Still on Table (1)(抜粋)
(5段落目以降を追加して更新しました)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます