ドルの影響力が低下している。その支配を脅かす4つの力を米シンクタンクが指摘(海外)
9/4(水) 8:10配信
BUSINESS INSIDER JAPAN
Getty Images; Chelsea Jia Feng/BI
ドルの優位性は将来、重要な課題に直面するとブルッキングス研究所の研究者が述べた。
同研究所は、ドルの魅力を低減させかねない4つの要因について指摘した。
【全画像をみる】ドルの影響力が低下している。その支配を脅かす4つの力を米シンクタンクが指摘
世界の外貨準備金におけるドルの割合は、過去数十年間で徐々に減少している。
ブルッキングス研究所(Brookings Institution)の研究者によると、金融市場においてドルが支配的地位にある状態には、多くの課題がある。
最近の報告書で、このシンクタンクは、過去数十年間にわたり米ドルの使用が着実に減少しており、世界の金融市場における米ドルの地位が変化していると指摘した。国際通貨基金(IMF)の試算によると、世界の中央銀行の準備金で依然としてドルは多いが、ドルの割合は1999年の71%から2024年は59%に減少した。
一方、これまでなかった通貨の割合がわずかに高まっている。IMFのデータによると、オーストラリアドル、スイスフラン、中国元などが2024年初頭の全中央銀行の準備金のうち11%を占め、1999年から2%増加した。
この傾向によって、金融市場でドルがトップの地位から落ちかねないという懸念が、一部の投資家の間で広がっている。
大半の専門家はすぐに起こることはないとしているが、ブルッキングス研究所はドル優位の状態が重要な課題に直面していると述べ、特に4つの要因について指摘している。
1. アメリカの制裁
2022年にロシアがウクライナに侵攻を開始してから、アメリカはロシアとその同盟国に制裁を行ってきた。これによりロシアやBRICSでは脱ドル化の動きが活発になり、西欧諸国の貿易制裁に対する反応として、ドル離れの検討について示唆してきた。
特にロシアは同国の経済での脱ドル化への措置を強め、中国元-ロシアルーブルの為替レートを採用し、ドルに競合する通貨を提案し、ドルに依存しない代替決済プラットフォーム構築の指揮を執っていると報じられている。
先日、アメリカ財務省から2度目の制裁を受けた中国でも、ドル離れの兆候が見られ、代替通貨として中国元を推している。
「アメリカが制裁を気まぐれに実施し、一方的に行動し、経済的な国家運営の原則を確立できない場合、ドルは王座を奪われる可能性がある」と、ブルッキングス研究所の研究者はジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官の発言を引用して述べた。
9/4(水) 8:10配信
BUSINESS INSIDER JAPAN
Getty Images; Chelsea Jia Feng/BI
ドルの優位性は将来、重要な課題に直面するとブルッキングス研究所の研究者が述べた。
同研究所は、ドルの魅力を低減させかねない4つの要因について指摘した。
【全画像をみる】ドルの影響力が低下している。その支配を脅かす4つの力を米シンクタンクが指摘
世界の外貨準備金におけるドルの割合は、過去数十年間で徐々に減少している。
ブルッキングス研究所(Brookings Institution)の研究者によると、金融市場においてドルが支配的地位にある状態には、多くの課題がある。
最近の報告書で、このシンクタンクは、過去数十年間にわたり米ドルの使用が着実に減少しており、世界の金融市場における米ドルの地位が変化していると指摘した。国際通貨基金(IMF)の試算によると、世界の中央銀行の準備金で依然としてドルは多いが、ドルの割合は1999年の71%から2024年は59%に減少した。
一方、これまでなかった通貨の割合がわずかに高まっている。IMFのデータによると、オーストラリアドル、スイスフラン、中国元などが2024年初頭の全中央銀行の準備金のうち11%を占め、1999年から2%増加した。
この傾向によって、金融市場でドルがトップの地位から落ちかねないという懸念が、一部の投資家の間で広がっている。
大半の専門家はすぐに起こることはないとしているが、ブルッキングス研究所はドル優位の状態が重要な課題に直面していると述べ、特に4つの要因について指摘している。
1. アメリカの制裁
2022年にロシアがウクライナに侵攻を開始してから、アメリカはロシアとその同盟国に制裁を行ってきた。これによりロシアやBRICSでは脱ドル化の動きが活発になり、西欧諸国の貿易制裁に対する反応として、ドル離れの検討について示唆してきた。
特にロシアは同国の経済での脱ドル化への措置を強め、中国元-ロシアルーブルの為替レートを採用し、ドルに競合する通貨を提案し、ドルに依存しない代替決済プラットフォーム構築の指揮を執っていると報じられている。
先日、アメリカ財務省から2度目の制裁を受けた中国でも、ドル離れの兆候が見られ、代替通貨として中国元を推している。
「アメリカが制裁を気まぐれに実施し、一方的に行動し、経済的な国家運営の原則を確立できない場合、ドルは王座を奪われる可能性がある」と、ブルッキングス研究所の研究者はジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官の発言を引用して述べた。
2. アメリカの債務
アメリカの債務残高が増大すると、特にアメリカが期限までに返済できないかもしれないという懸念がある場合には、ドルの保有者はますます警戒する。
アメリカの債務残高はまだ持続不可能な水準には達していないが、政府の急速な支出ペースは市場の落ち込みを緩和するものではない。例えば、フィッチ(Fitch)は2023年、「統治水準の着実な悪化」を理由にアメリカの格付けを引き下げた。
「歳出をめぐる議論で、議会は政府を何度も閉鎖した。さらなる政治不安はドルに対する投資家の信頼を失いかねない」と研究者は述べた。
3. 決済技術の進化
決済技術の進化によって、従来よりも異なる通貨への交換が簡単になった。このことも、これまでは最も魅力的な交換手段だったドルの需要を圧迫している。
「そのような通貨をドルに、またはその逆に交換することは、簡単で安価だった。だが、例えば中国とインドでは交換のために一旦ドルに交換する必要はなくなるだろう。人民元からルピーに直接換える方が安いからだ。その結果、『媒介通貨』としてのドルへの依存は低下するだろう」とブルキングス研究所の上級員、エスワル・プラサド(Eswar Prasad)は以前の報告書で述べている。
4. 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
中央銀行が発行するデジタル通貨も、ドル以外の非伝統的な通貨がより簡単かつ安価に利用できる可能性をもたらすかもしれない。中国はCBDCを開発しており、中国の国際銀行間決済システムであるCIPSは過去数年間で「急速に成長」しているとシンクタンクは指摘した。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は即時決済ネットワークを構築したが、パウエル議長は2023年にそのようなデジタル通貨は議会の承認が必要になると示唆し、CDBCを作るために動いていない。米国はデジタル決済技術が急速に発展している他国に遅れをとるリスクがあるとブルッキングスの研究員は指摘する。
だが、こうした警告にも関わらず、通貨の専門家のほとんどは、脱ドル化が短期的にアメリカやドルの脅威にはならないとみている。現時点では、金融市場において脱ドル化を行う競合国はいない。そして、金融市場においていずれかの方法で脱ドル化を試みる国は、成長の鈍化や投資価値の喪失など、経済リスクを招くリスクがあるとある専門家はBusiness Insiderに語っている。
Jennifer Sor
アメリカの債務残高が増大すると、特にアメリカが期限までに返済できないかもしれないという懸念がある場合には、ドルの保有者はますます警戒する。
アメリカの債務残高はまだ持続不可能な水準には達していないが、政府の急速な支出ペースは市場の落ち込みを緩和するものではない。例えば、フィッチ(Fitch)は2023年、「統治水準の着実な悪化」を理由にアメリカの格付けを引き下げた。
「歳出をめぐる議論で、議会は政府を何度も閉鎖した。さらなる政治不安はドルに対する投資家の信頼を失いかねない」と研究者は述べた。
3. 決済技術の進化
決済技術の進化によって、従来よりも異なる通貨への交換が簡単になった。このことも、これまでは最も魅力的な交換手段だったドルの需要を圧迫している。
「そのような通貨をドルに、またはその逆に交換することは、簡単で安価だった。だが、例えば中国とインドでは交換のために一旦ドルに交換する必要はなくなるだろう。人民元からルピーに直接換える方が安いからだ。その結果、『媒介通貨』としてのドルへの依存は低下するだろう」とブルキングス研究所の上級員、エスワル・プラサド(Eswar Prasad)は以前の報告書で述べている。
4. 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
中央銀行が発行するデジタル通貨も、ドル以外の非伝統的な通貨がより簡単かつ安価に利用できる可能性をもたらすかもしれない。中国はCBDCを開発しており、中国の国際銀行間決済システムであるCIPSは過去数年間で「急速に成長」しているとシンクタンクは指摘した。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は即時決済ネットワークを構築したが、パウエル議長は2023年にそのようなデジタル通貨は議会の承認が必要になると示唆し、CDBCを作るために動いていない。米国はデジタル決済技術が急速に発展している他国に遅れをとるリスクがあるとブルッキングスの研究員は指摘する。
だが、こうした警告にも関わらず、通貨の専門家のほとんどは、脱ドル化が短期的にアメリカやドルの脅威にはならないとみている。現時点では、金融市場において脱ドル化を行う競合国はいない。そして、金融市場においていずれかの方法で脱ドル化を試みる国は、成長の鈍化や投資価値の喪失など、経済リスクを招くリスクがあるとある専門家はBusiness Insiderに語っている。
Jennifer Sor