Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

リチャード二世感想

2014-02-07 13:29:00 | その他の映画・ドラマ・舞台
このチラシ、ふたつに畳んでバッグに入れたため折りジワができてしまい、それを直そうとアイロンをかけたら蒸気を出す穴のためにボコボコになってしまいまして(涙)見苦しくてすみません。



初イオンシネマ体験として「リチャード二世」のためディズニーランドを越えて遥々遠征したら、エレベーター扉はホビットだし、RUSHのカキワリはあるし、グッズ売り場にはロキちゃんバスタオルあるし、とてもメジャーなシネマ空間でした。182席のスクリーンに観客は20~30人。。。ちょっと寂しい。

「シェイクスピア演劇」は実は私は初めてだったんです。オペレッタ、バレエ、映画、ドラマなどシェイクスピア原作の舞台や映像はあったけど、シェイクスピアの書いた台詞そのまま舞台で俳優が喋る・・・それを、映画とはいえ本家ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーによるストラドフォードの劇場収録が初とは運がいい。

作品についてはWikiこちら

さて、始まって嬉しい驚きだったのは、本編前と休憩後に、司会者がスタッフやキャストのインタビューを交えてRSCと作品、今回の上映の歴史的な意味を解説してくれることでした。いつもは映画やドラマの舞台裏は自分で探して見るものなのに、なんて親切な!つまり、由緒正しき歴史的演劇を、一部の演劇ファンだけでなく広く一般に本気で発信しているのです。どうりで私のような者にまで届いたはずです。実は私はいっさい予習しないで観ました。戯曲原作を読む気にもならなかったし、歴史は好きな方でも英国の歴史も中世以前はぼーっとしかわからない。それでも大画面の解説のおかげで、ぱぱっと最低限の予習ができてしまうのですよ。

そして休憩中も暗くなった舞台とお客さんがまばらになった客席はスクリーンに映され続けています。まさにライブでした。

本編は、上のリンクの解説にあるとおり、シェイクスピアの中でも珍しい全編韻文です。つまり役者が詩の台詞をしゃべるので普通の劇に比べて長くて字幕を読むのはちょっと大変です。でも、韻文ですから、英語の音でないと違うものになってしまうので、ここは目と頭が忙しくても字幕に大変感謝するところです。

私は文学に疎く、詩という芸術もいったい何が良いのかさっぱりわからなかったのですが、ストーリーを知りたい、と思って聞いたとたんに意味のある台詞となり、それが舞台だと、メロディのないミュージカルみたいに、メロディのかわりに役者の演技が入り、演技がうまいと聞いてる詩もダイレクトにわかるという体験ができました。これは目からうろこです。

主人公は10歳で王位についたイングランド王リチャード二世。劇でもその凡人とは違う良くも悪くも浮き世離れした存在が、神々しい存在ではあるけれど戦争で疲弊した1国を担う器はない危うさが、ロングヘアと白いローブで、そしてディヴィッド・テナントの顔と魂で表現されてました。

ところで王の悲劇は、側近の財産をとりあげたり追放したりしたことから始まるのですが、お恥ずかしいことに、私は当時の王様の権力がどの程度で、王様と言えども許されないことの境界線がわかりません。しかし、中世以前の野蛮なヨーロッパでも、もっともらしい理由もないのに権力を使うのは、他の側近からの信頼を欠く行為だったようで、そんなこととは気づかない生まれついての王リチャードは諸候を敵にまわし、自分が追放した従兄弟に退位を迫られロンドン塔に幽閉されその後あちこちたらい回しにされ囚われの身で劇中ではドラマチックな最後を遂げました。

在位中は言いなりになる側近だけ侍らせて、頭が良さそうではないけどスター性のある王様だったので、今みたいに観光収入としてのシンボル王家だったら、なかなかいい仕事をしたかもしれません。しかも彼のスター性は、退位を迫られるあたりから増々輝く。惨めな立場のはずが、地をはっていても気高さは消えないのです。さすが悲劇の王。

追放から戻って下克上した従兄弟がヘンリー四世なのですが、この劇で見る限りスター性はないけど、王様になったらやっていることは前王と同じ。結局持てる者数名で、国という分け前の取り合いで戦争をし続け、税金を払わされる下々の者にとっては頭が誰でも結局大差はありません。

ところどころで眠ってしまったとは言え、頑張って聞いて読んだ台詞がよかったんです。英語圏で聖書の次に引用が多く、ラジオ「Desert Island Discs」でも自動的にシェエクスピア全集がついてくる・・・以下省略。人間のやること考えていることは時空を越えて大差ないのだと思いました。イングランドという国を思う時、海に囲まれた島国として日本と似ている。この頃からウェールズやスコットランド、アイルランドはほぼ身内のように、たぶん江戸時代以前の日本にとっての蝦夷のような感覚だたのでしょうか。

その台詞がいくつか上のリンク先(Wikiじゃない方)に載ってます。これを詩で読めと言われたら絶対無理。でもこうして言葉のプロの役者さんが物語として語ってくれるのが演劇だったんですね。

RSCでは来月から続編の「ヘンリー四世パート1」が始まります。
てことはあのスター性のない王様が主人公?うーむ。シェイクスピアにせっかく開眼したんだから、脇を華やかな俳優さんで固めてもらってもいいのよ。