彼女の笑顔に僕の心は華やいだものの、その理由を考え、席に着くなり、髪を撫でた。一応、鏡ではチェックしたものの、木枯らしにやられて、また寝ぐせが息を吹き返したのではないかと不安になったのだ。どうやら、それで笑われたのではないらしい。僕は少し安堵した。安堵したら眠くなった。しばらく細腕を枕に寝ようと思う。ここ半月ほど深夜1時過ぎまで受験生らしくしているのだ。
10月頃までは受験生とは名ばかりだった僕が、秋が深まり突然、勉強を始めたのは何故だろう?いよいよ受験が迫ってきた焦りからか?いや、違う。何がきっかけだったかは分からない。テレビ、ラジオか紙媒体か、よく思い出せない。ただ、人の心理に興味を持ったのだ。もしかしたら、藤沢孝志や矢野有紗の心の内側を、眺めてみたいと思ったのかもしれない。
不思議とそうした興味が、僕をこれまで向かわなかった机に向わせ、閉ざされていた教科書やノートを開かせた。どこの大学に進学したいというより、心理学を学びたい。漠然としていた目標が、具体的になった事が大きかった。
そんな事を考えているうちに、僕は眠りに落ちていたようだ。
「コラ、起きろ」
肩を強く叩かれ、僕は飛び起き、辺りを見回した。そのリアクションが面白かったのだろう。
「アハハハ」
僕の後方から藤沢の笑い声がした。
「よく寝てたぞ、誠」
すでに1時間目の授業は終わり、休み時間のようだった。
「いびき、かいてなかった?」
「かいてたよ、教室中に響くような」
「嘘だろ?」
僕は不安げに右隣の彼女をちらりと見た。
「この人、ウソばっかり。全然、大丈夫。でも気持ちよさそうに寝てたよ」
真実を右隣から優しい声が教えてくれた。
10月頃までは受験生とは名ばかりだった僕が、秋が深まり突然、勉強を始めたのは何故だろう?いよいよ受験が迫ってきた焦りからか?いや、違う。何がきっかけだったかは分からない。テレビ、ラジオか紙媒体か、よく思い出せない。ただ、人の心理に興味を持ったのだ。もしかしたら、藤沢孝志や矢野有紗の心の内側を、眺めてみたいと思ったのかもしれない。
不思議とそうした興味が、僕をこれまで向かわなかった机に向わせ、閉ざされていた教科書やノートを開かせた。どこの大学に進学したいというより、心理学を学びたい。漠然としていた目標が、具体的になった事が大きかった。
そんな事を考えているうちに、僕は眠りに落ちていたようだ。
「コラ、起きろ」
肩を強く叩かれ、僕は飛び起き、辺りを見回した。そのリアクションが面白かったのだろう。
「アハハハ」
僕の後方から藤沢の笑い声がした。
「よく寝てたぞ、誠」
すでに1時間目の授業は終わり、休み時間のようだった。
「いびき、かいてなかった?」
「かいてたよ、教室中に響くような」
「嘘だろ?」
僕は不安げに右隣の彼女をちらりと見た。
「この人、ウソばっかり。全然、大丈夫。でも気持ちよさそうに寝てたよ」
真実を右隣から優しい声が教えてくれた。
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