https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170609-00050218-jbpressz-asiaから抜粋
今、フィリピンでも犯罪とは無縁と思われていたその美しい秘境が、日本人を巻き込んだ殺人事件の舞台に“豹変”し、国内外で衝撃が走っている。
■ 4月にも日本人殺害の事件が発生
大手メディアは、フィリピンで横行する日本人殺害事件の多くを報道していない。世界には多くの危険地帯があるが、日本人の殺害事件が最も発生しているのは、ここ、フィリピンなのだ。
過去10年でも、公表されているだけで40件ほどの日本人殺害事件が発生し、この数は海外で日本人が巻き込まれる殺人件数総数の4割近くに上り、フィリピンが世界最悪となっている(外務省海外法人援護統計など)。
■ 日本で報道されない殺人事件も多い
そもそも、海外の在留邦人数(外務省公表、2016年10月現在)で、フィリピンは16位の約1万7000人ほど。
1位の米国は約42万人、2位の中国は約12万9000人、最近、政治不安やIS(イスラム国)関連のテロなどが勃発している3位のタイは約7万1000人、14位のインドネシアは約2万人と、いずれもフィリピンよりはるかに在留邦人の割合は多いが、殺人件数(邦人比率とも)ではフィリピンが断トツの1位だ。
ちなみに、国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、銃による殺人事件は、人口10万人当たりで「フィリピンが9件」で、米国(3件)の3倍というから、その高さに驚くばかりだ。
フィリピンでは、貧困のため現金や宝石など金銭がらみの強盗殺害が多いが、個人的な恨みを買うことで殺害される場合もある。
■ わずか100ドルで殺しが依頼できる
米国植民地時代以来の銃社会で、密造の短銃は1万ペソ(約2万2000円)から簡単に手に入るなど、銃保持が合法化されていることにもよるが、殺害がいとも簡単に決行できる背景には、前述のヒットマン(プロの殺し屋)の存在が大きい。
その暗殺方法のほとんどが、頭を撃ち抜くという射殺方式だ。
フィリピンの邦人の間では「日本人だから、ということで安易に信じてはいけない」というのが常識のようだ。
■ 日本人同士のいさかいが殺人に発展
これまでにも、日本人がフィリピン人のヒットマンを雇い、1億円の保険金を狙った事件があり、2016年5月、日本人を殺害した容疑で日本人3人が逮捕されている。ほかにもこの種の事件は多い。
日本人同士のトラブルは、ビジネスでの軋轢や利害関係、さらには個人的憎悪に関する場合が多いという。
さらに、前出のフィリピン在住の日本人企業経営者は、「在留邦人の多くは、日本よりはるかに小さいガチガチの日本人コミュニティの中で生きていかないといけない。日本人村社会でのさまざまな競争や見栄の張り合い、さらには掟に従えなかったりで、メンツを潰され、最終的にやっていけなくなる人も出てくる」と話す。
つまり、「殺害しているのはフィリピン人だが、依頼しているのは日本人」で、「日本人を殺しているのは日本人」(同上)という場合が増えているという。
また今回、フィリピンの最後の秘境と日本でも持ち上げられていたパラワン島周辺は、かつて、太平洋戦争中に旧日本海軍の艦船の停泊地として利用され、大戦末期、米軍の攻撃で沈んだ沈没船が何隻もある戦禍の傷跡が残る土地だ。
親日国と言われるが、個人レベルでは戦時中の植民地支配に対し、感情的になるフィリピン人がいないわけではない。
大型モールなどで簡単に手に入るし、ホテルや銀行といった公共の場では、米国と同様、「銃は日常」なわけだ。
経済成長で格差社会が一層拡大し、麻薬常習犯や犯罪が増加する中、「お金のためなら、何でもする」(フィリピン在住の商社ビジネスマン)という一種の社会的風潮が、「フィリピンの銃社会のリスクを高めても、一掃することはない」、と肝に銘じておかないといけないということだろう。