Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

土門拳を見る・読む(7)

2010年06月05日 21時16分12秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
倉敷 いぐさ 1962


 土門拳の風景・古寺巡礼の写真作品の中から好きなもの掲載してきたが、最後に近づいた。
 本日は晴れていたが夕刻外に出ると静かに音もなく雨が降っていた。すぐにやんだが、いやしのような雰囲気の雨であった。
 この写真などは本日横浜に降った雨よりは多い雨だと思うが、厭わしい雨、嫌な感じの雨ではない。不安になる雨どはない。気持ちにもゆとりをもたらしてくれる雨である。そんな撮影者の気持ちがひとつひとつの滴にこもっているような写真に見えないだろうか。
 空の光は決して明るくはないが、背後の明るさや水滴の光の具合からこれから晴れていく時間が想定できるのではないだろうか?
 生命は水に癒される。いぐさという細い植物もこの水滴を受け、そのあとの日光を受けて成長を遂げる。その水の循環の知識がなくとも、人は、いや動物全体は、体内に取り込めそうなきれいな水のサイクルの一過程を見ることで癒されるのであろう。そんな気持ちにさせてくれる写真であると思う。
 多くの方はいぐさの明暗、水滴の散らばり方などが好ましいといわれる。私も同感だが、同時に背景のほどよい明るさが好きだ。これがこの写真の価値のような気がする。