ただの備忘記録

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東野圭吾「パラドックス13」

2009年12月17日 | コラム
パラドックス13
東野 圭吾
毎日新聞社

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これまで読んだ東野作品はミステリー作品でしたが、今回はSF作品です。

1月13日13時13分13秒、地上は荒廃した無人の世界に変わってしまう。東京ではわずかに限られた人間だけが生き残っていた。
警察官の兄弟、看護師、老夫婦、女子高生、会社員など11人が集まり、災害が治まらない東京を彷徨う。
政府は事前にその影響を懸念して極秘裏に対策を指示していた。残された人は何が起こったのか知るすべもなく、また、なぜ他の人が消失し、自分たちが残ったのかも判らない。
共同生活をしながら、生きることの意味、死ぬことの意味をそれぞれに問いながら、新しい秩序の下で生死すら選択しなくてはいけない状況になる。
街は日に日に崩壊し、地震や水害も収まらない。神の与えた天罰が地球を襲っているのだろうか・・・。
自然の驚異に立ち向かったとき、彼らは現代文明のありがたみを知ると同時に、行きすぎた文明に後悔を覚える。現代の社会問題もあらわにするような表現がいくつかあって面白かった。
一ヶ月後、世界は滅びるのか、残された人々はどうなるのか、そしてP-13とは何だったのか、消失した人々には何が起きたのか、ラストは激しさから静かなモノローグへと滑り込みます。

相変わらず読みやすい語調で、バイオレンス的な描写はないので、誰でも安心して読み進められます。
ラスト近くでようやく原因がわかり、今後の問題も発生します。ラストはハッピーエンドに近いと思いますが、割と淡々とした感じにはなっています。
全体として、仲間が増えたり減ったり、また東京を移住しながらサバイバルしている様子は臨場感があって楽しめました。
もちろん、他人の共同体ですから様々な問題も発生します。その解決方法も思いがけないもので、既成概念を壊さないと生き抜けない世界だと判らされます。
P-13はSF要素そのものですが、そこは数学的なパラドックスになぞらえているところが東野作品ですが、実のところはミステリーのような展開であり、社会問題を提示するような作品になっていると思います。