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伊東良徳の超乱読読書日記

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夢を与える

2007-04-16 07:32:37 | 小説
 子役から清純派美少女タレントになっていく少女の成長と破綻を描いた小説。
 でもテーマは結局、人の心は無理矢理つなぎ止めることはできないということ。無理してつなぎ止めようとした人が去っていっても残った(残ったんでしょうね・・・)母や父とこれから何かを築いていこうという様子も描かれない突き放されたようなエンディング。なんか、ニヒルな読後感です。
 長いスパンの話なんで「蹴りたい背中」のたらたらした進行とは感じが違いますし、唯一「蹴りたい背中」風に登場する「多摩」くんも当然、芸能界の絵の具に染まって疲れたところで帰りつく故郷として出る布石と思ってたら空振りだし。
 それにしても、高2にして自分を商品として冷静に見つめ、「大学も芸のうちなのよ。普通の子と同じように勉強して、まじめに大学4年間通ったっていう、阿部夕子のシナリオが必要なんだよ」(182頁)なんて大学受験も自己の商品価値を高めるためと言い切った人が、売れないストリートダンサーに言い寄って取り巻きの不良少年とバカ騒ぎした挙げ句にビデオの前でセックスしてそのビデオを売られ、それでもなおその男と会いたがるって、短期間にそこまで思考力失う?そういう壊した終わり方が、冒頭の母親の無理強いと重なって、なんか因果応報、救いなしって感じがして、どうも元気が出ない作品ですね。そう思うとタイトルがとても皮肉っぽい。


綿矢りさ 河出書房新社 2007年2月28日発行
コメント
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