伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

みずうみ

2007-04-27 08:25:07 | 小説
 第1章は時々増水し村に豊穣をもたらす不思議な湖と湖とつながり水をはき出しつつ語る眠り人や湖と鯉を守る人などが醸し出す幻想的な小説。第2章、第3章は時と場所が違う舞台で錯綜する細かいエピソードの中に第1章の湖や登場人物との関連が示唆され、時空が相対化され輪廻・転生がイメージされますが、明確な展開や方向性は示されず、そういう感覚の提示に終わっていると思います。第1章が「文藝」で発表され、第2章・第3章が書き下ろしで追加されていますが、第2章・第3章は物語が続くわけでもなく、第2章は第1章の幻想的な雰囲気を壊していますし、第3章まで読み通しても(はっきり言って読み通すのはけっこう辛い)そうだったのかと納得するわけでもありません。第1章の幻想的な物語だけで終わっておいた方がよかったと、私は思いました。


いしいしんじ 河出書房新社 2007年3月30日発行

追伸:朝日新聞が4月29日付で書評掲載
第3章は作者の体験を反映していたんですね。知りませんでした。
でも、それが物語としてうまくいったかというと私にはやはり疑問。
コメント
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