眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

夢の時間

2008-01-16 | 
古い友人に連絡をとった。
最後に彼に電話した日は、たしか彼の母親の葬式の翌日だったと憶えている。電話越しの彼の声は時折混じる呻くような泣き声と、あきらかに泥酔しているおぼつかない言葉で、全く会話にならなかった。彼は、ずっと音楽をやっていて、何よりも歌うことを大事にしていた。仕事も定職という訳ではなく、だから母親にたいする後悔の念も多分あったのだろう。その嗚咽は、僕も味わったことがあるから分かるような気がした。
バンドもギターが抜けて、結局のところ解散した。自主制作版のCDが一枚残った。
それから数年たって、彼の彼女から連絡があった。

 十一月に結婚式挙げるんですけど、先輩これますか?
  行きたいけどさ、おいらも親父亡くしたばっかりだしね・・・。
   そういえば、あいつどうしてる?
 今、法律事務所で働いてますよ、がんばってますよ

そうか、そうだな。時間が経つってこういうことなんだな。僕は奇妙に納得して、少しばかりやりきれない想いをウィスキーで飲み干した。
時間は流れるのだ。
それはレノンにも、ジャニスにもディランにも止められない。
やがて、十一月がやって来た。僕は風邪をこじらせ、病院で点滴をうち寒さがすこしばかり身に染みるようになった。ふと、思い出して僕は彼に電話をかけた。すぐに
懐かしい声が聴こえた。元気そうだった。
  
  sherbet元気かい?
    そっちこそ、結婚おめでとう
   アリガトな。俺、入場のときから大泣きだった。
  みんな来てたか?
 来てくれたよ。

仕事は?
 慣れてきたよ。バンドも忙しいしね。
   バンド?
  おう、あたらしいギター入れてやっとうよ。これがないとね、生きてる気がせんちゃね~
 
   僕は何故か嬉しくて嬉しくてしかたなかった。
  おいらもサ、まだギターかついでるよ
 暇ができたら出てこいよ、荷物なんかいらんけん、飲もう
  来たら、なんとかなるさ
    ギターかついできーよ

それからひとしきり音楽の話をして電話をきった。
 
   わずか15分間の夢の時間

    嬉しかった


コメント
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