ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 12ページ目 美しい切子のワイングラス

2012-09-21 22:43:03 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【12ページ】

「店員がすぐテーブル拭きとビニール袋と紙袋を持って駆け寄ってきました。

彼は、私の上着をビニール袋に入れ、それを紙袋に入れて手渡してくれました。

その後、テーブルをキレイに拭きました。」


鯵元社長は、上着を着なおすと再び話を続けた。


「テーブルの女性は、私に感謝の言葉を述べ、財布の中のお札をすべて取り出し、

私にスーツ代ですと手渡そうとしました。」

「お金を受け取ったのですか?」


和音は、笑いながら訊いた。


「いや、男としてそんなことはできません。」


鯵元社長は、右手を振りながら否定した。


「『これは、私が勝手にやったことですから』と言ってお金を受け取らず、その場を

立ち去りました。」

「シャトー・ラトゥールがまだ出てきませんね?」

「この後の話に出てきます。

私が下見の食事を済ませ、レジで代金を支払おうとした時、『お代金は頂いています』

と店員が言うのです。『誰に?』と聞くと、『テーブルでワインのボトルを倒された方です』

と教えてくれました。そして紙袋を手渡してくれたのです。」

「それは彼女が用意したもので、中身はシャトー・ラトゥールでしょう?」

「その通りです。

そしてメモ用紙が入っていて、感謝の言葉と彼女の名前と住所と電話番号が

記入されていました。

私は、その晩お礼の電話をかけました」