血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

ライバル列伝-01(ウオッカ・ダイワスカーレット)

2013-05-14 18:44:26 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、競馬界におけるライバル達にスポットをあてて、彼(彼女)等を血統面からふりかえってみたいと思います。簡単にではありますがお付き合い頂ければ幸いです。では、今回はウオッカとダイワスカーレットの二頭についてです。


ウオッカ(タニノギムレット×タニノシスター-ルション)牝・04生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=196417

主:7 結:5 土:3 弱:6 影:2 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:36点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

通産成績:26戦10勝 [10-5-3-8]

主な勝鞍:阪神ジュベナイルF(G1) 東京優駿(G1) 安田記念(G1)2勝 天皇賞(秋)(G1) ヴィクトリアマイル(G1) ジャパンC(G1)

 主導は、Nashua5×6の系列クロス。次いで、Roman6・6×6、Alibhai6・7×6の系列クロスで血統をリードしている。Nashuaの父であるNasrullahが6・7×5・6・7とNashuaとの位置の悪さが多少気にはなるが、血統の4ブロックに存在したのは素晴らしい点で、血統全体を明確にリードしていると言う事ができるだろう。また、主導たるNashuaとRomanはSir Gallahad(=Bull Dog)によって、Alibhaiは母方Nasrullah内Chaucerを通じて若干弱いものの、9代目以内にきちんと結合し、ウオッカの能力形成に寄与しているのが見てとれるだろう。
 この両者は、それぞれスピードとスタミナをバランスよくNashuaへと供給し、この三者の連動がウオッカの能力の源泉であると考えて良いだろう。ただし、極めて強固にとはいかなかったのは惜しまれる点で、影響度バランスや土台構造も極めて良好であるとは言えない点も鑑みるに、安定しての全能力発揮が若干難しいとも考えられる事は指摘しておきたい部分である。また、本質的には若干スピード優位で、マイル対応可能な中距離馬であると言えるが、父系クロスのGraustark4※5やSicambre5※6が目覚めた場合、12Fの自力勝負は厳しかっただろうが、距離延長に対しての適性の兆しをみせても、不思議では無いことを付け加えておきたい。


ダイワスカーレット(アグネスタキオン×スカーレットブーケ-ノーザンテースト)牝・04生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=196467

通算成績:12戦8勝 [8-4-0-0]

主な勝鞍:桜花賞(G1) 秋華賞(G1) エリザベス女王杯(G1) 有馬記念(G1)

主:5 結:5 土:2 弱:3 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3 特:1(主導牝馬クロス Almahmoud)
合計:29+1点 クラス:2B 芝:7~10F ダ:7~9F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 主導は、Almahmoud5×5の系列クロス。次いで、Royal Charger6×5の系列の影響が強い。この両者は、当馬の血統において7連存在し影響の強いHyperion内のGainsboroughを介し強固に連動している。また、若干世代ズレ気味であるがBull Lea7×5(父方8代目は世代ズレとしてカウントしていない)が主導たるAlmahmoudと直接結合こそしないものの、Royal ChargerやHyperionを介し結合しているのは幸いで、主導の明確性には影をおとしているものの、結果的に必要なクロスとして全体の底上げに一役かっているのは指摘しておきたい。
 更に、ノーザンテースト内の欠陥を見事に解決しているのは、素晴らしい部分だが、祖母スカーレットインク内Papalonaに欠陥を生じているのは、大きなマイナスで、この分部の血統が全体から著しく古い為に生じたマイナスであると言える。この欠陥は、確かに10代目において完全に解消する内容であるが、結果的に完全開花は非常に困難な血統構成であると言え、当馬がいかなる理由において開花したかは、また別の話であるが、こういう血統構成は完全開花率が平均以上に低い事を念頭においてほしい。
 しかしながら、前述したようにHyperion~Gainsboroughを核とした血統構成でありながら、全体のクロス数を非常に少なくした部分は、個人的にはノーカウントだが、評価に値すると言うことができ、スピード優位の血統構成とあわせ、仕上がった場合に反応の鋭いタイプだと考えられる。本質的にはマイル対応可能な中距離馬だといえるだろうか。

 ここで、この希代の名牝二頭に対して敬意を表すると共に、仮想配合を考えてみたいと思う。

(ローズキングダム×ウオッカ-タニノギムレット)-・-生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/match.pl?gene=9&fdata=204811&mdata=196417

主:6 結:5 土:4 弱:6 影:3 質[近]:2 質[遠]:4 SP:3 ST:4
合計:37点 クラス:3B 芝:9~12F ダ:8~10F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Never Bend6・7×5の系列クロス。次いで、Nashua6・6×7で血統をリードしている。この両馬は、連合勢力とは若干言い難いものの、血統表に11連存在する、その父Nasrullahを介し非常に強固に結合し、また連動しているといってよい。しかしながら、Native Dancerを伴うRaise a Native5×6の影響も比較的強く、この部分が惜しまれる点で、できることならこのクロスは無いほうが良かった。しかしながら、母ウオッカに若干不足したスタミナを、Graustarkの中間断絶や、LuthierやHail to Reasonの単一クロスから補給できたのは大きなセールスポイントで、12F克服は十分に可能。
 惜しむらくは、母のようなシンプルな血統構成を形成できなかった点で、重厚さもあいまって開花には相当の鍛錬が必要だと考えられる。
 また、母は父タニノギムレットにとって唯一のG1ウィナーであるが、それは血統表において存在したHyperion~Gainsboroughの影響が強かった点が理由だと個人的には考えるが、当馬も母の傾向を引き継ぎAlibhaiを内包した、Graustarkをしっかりと生かしつつ主導と連動させたのは大きなセールスポイントだと考えて良い。
 本質的には、12Fを澱みない流れで押し切れるような中~長距離馬であるといえ、底力を秘めた血統構成だと言えるだろうか。

※土台構造を5→4に訂正。それにともなって総合評価も1A→3Bへと変更。

(サクラチトセオー×ダイワスカーレット-アグネスタキオン)-・-生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/match.pl?gene=9&fdata=1301&mdata=196467

主:7 結:5 土:3 弱:4 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:4
合計:34点 クラス:3B 芝:8~12F ダ:8~10F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 主導はノーザンテースト3×3の単一クロスを呼び水にしたHyperion5・6・7・7・7×6・7・8・8・9・9・9の系列クロス及び、Almahmoud6×6・6の系列クロス。この両者は、ノーザンテースト及び、Gainsboroughを介して強固に結合し連動を果たしている。次いで、影響の強いクロスである、Nasrullah(=Rivaz)やBull Leaはしっかりと結合し、連動を果たしている。また、本来結合しにくいTourbillon~Ksarは、Rabelaisにより、ノーザンテーストへと結合をしており、この血統全体の連動性がこの配合最大の武器で、見た目の血統から非常に古臭さを感じるものの、生かされた血が連動する様は、一見の価値があると言えるだろう。
 また、生かされたスピード・スタミナ勢力は強靭で、スピードは、Almahmoud・Nasrullah(=Rivaz)にPalestine~Fair Trialの決め手を補給している。スタミナ勢力は、Bull Leaを中核に、Chanteur・Tourbillon~Ksarを生かしている。本質的には中距離馬であると言え、父を彷彿とさせる決め手ある差し脚を発揮する可能性を指摘しておきたい。


 簡単にではありますが今回はこんなところで。また、仮想配合に関しましては、決して関係者の皆様への問い合わせや、それに類する行動を取らないように願います。

13年・ヴィクトリアマイル

2013-05-14 18:43:17 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、先日行われたヴィクトリアマイルの上位馬や人気馬、及び見所がある配合馬を取り上げてみたいと思います。簡単にではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。


ヴィルシーナ(ディープインパクト×ハルーワスウィート-Machiavellian)牝・09生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=214622

主:5 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:33点 クラス:2B 芝:8~11F ダ:7~9F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はNorthern Dancer5×4。母方Natalma~Almahmoudと系列クロスを形成し、比較的明確にリードしているように見える。しかしながら、Haloが3×4・5とクロスしNorthern Dancerと同様にAlmahmoudから系列クロスを形成した為に、かなり主導の明確性を乱している。反面、結合面において、Haloが欧米系を上手く統合し、AlmahmoudやNearcoによって強固に連動している、Northern Dancerをうまくアシストしているのが見て取ることができる。この両者が連合勢力であるとは、言い難いものの上手く機能しているとも言えるだろうか。ただし、強調点がぼやけているとも言える為に、詰めは甘い血統構成だと言うのは指摘しておきたい。
 また、それぞれ中間断絶クロスであるものの、Wild Risk・Pocahontasがスタミナの核を形成したのは幸運で、粘りあるスピードを発揮可能で、牝馬にしては不利なタイプだと言えるが、本質的にはマイル~中距離馬だと考えられるが、自分で競馬を作る強靭さをもちあわせていると言えるだろうか。

ホエールキャプチャ(クロフネ×グローバルピース-サンデーサイレンス)牝・08生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=209387

主:5 結:4 土:2 弱:4 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3 特:1(主導牝馬クロス Almahmoud)
合計:29+1点 クラス:2B 芝:5~8F ダ:5~7F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 主導はAlmahmoud7×5の系列クロス。次いで、Hail to Reason6×4の中間断絶で血統をリードしている。両者の相性はGainsborough・Fair Playを共有するが、近い世代での連動性は低く、決して良好とは言い難いのが惜しまれる。また、両者と傾向が全く異なるBlue Moon(=Blue Grotto)が5×7と中間断絶ながら、かなり強い影響を持ったのは当馬の血統構成を考える上で明らかにマイナスで、The Tetrarchで結合こそするものの、できるならこのクロスは無い方がよかった。
 また、血統の奥ではあるものの、5連存在するMan o'Warを筆頭に、米系統が強い血統構成で、これら米系のクロスは、主として間接的にではあるが主導たるAlmahmoudへと結合している為に、ダートや重馬場は得意とする血統だと考えて良い。
 しかしながら、これといったスタミナの核の形成には失敗している為、距離は伸びれば伸びる程不利だと考えて良く、マイル適応がギリギリ可能な芝・ダート兼用のスプリンターだと言えるだろうか。

マイネイサベル(テレグノシス×マイネレジーナ-サンデーサイレンス)牝・08生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=209672

主:6 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:34点 クラス:3B 芝:9~12F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はNorthern Dancer4×5の中間断絶。その中の、Almahmoud6×5・7及びLady Angela5・6×7の系列のクロスで実質的に血統をリードしている。この主導は比較的明瞭な主導で、父母共にGainsboroughの流れが強い、当馬の血統を上手くリードしている。
 また、この日本向きの素軽いスピードをNasrullah・Tom Foolの系列クロスがスピードをアシストし、Prince Roseを伴うPrincequillo6×6がそのスタミナをアシストするなど、血統全体の連動性もかなり良好で、この部分が当馬の能力の源泉だと考えて良い。
 従って、父ほどのシンプルな血統構成では無い為、差し脚によさがあるタイプだとは言えないものの前述したPrincequilloの生かし方は、これ以上無いほど素晴らしく、本質的には中距離馬だと考えてよいものの、12F克服は十分に可能。更に、血の質自体は決して高く無いものの、自力勝負可能な血統構成だと言え、ある程度の成長力も期待できるだろう。

ジョワドヴィーヴル(ディープインパクト×ビワハイジ-Caerleon)牝・09生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=215093

主:6 結:6 土:4 弱:5 影:2 質[近]:2 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:37点 クラス:3B 芝:8~12F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Turn-toを伴うHail to Reason4×5及び、Sir Gaylord6×4。この両者は、その父Turn-toによって強固に結合し、連合勢力と言える明確性は無いものの、協力に血統をリードしている。ただし、当馬の血統においてはAlmahmoud5・7×6やCourt Martial6・7×5の影響が強く、極めて明瞭にとはいかなかったのが惜しまれる点である。
 しかしながら、生かされたスピード・スタミナ勢力は非常に強靭で、スピードはAlmahmoud・Pharamond(=Sickle)・Fair Trial。スタミナは、Princequillo・Court Martial・Hyperion・Feolaと隙が少ない。牝馬としては非常に重厚で、開花には時間を要すると考えられるものの、完全開花した場合、相当の迫力を見せる事ができるはずで、自ら競馬を作れるタイプだと言えるだろう。
 また、半姉のブエナビスタ(2B級)と比較した場合、当馬の方が複雑な血統構成をしている為に開花率自体は低いと考えられるが、純粋な血統構成面からの考察では当馬の方が、圧倒的に上であることを付け加えておきたい。

アドマイヤセプター(キングカメハメハ×アドマイヤグルーヴ-サンデーサイレンス)牝・08生

主:6 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:35点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は若干不明瞭ながら、Hornbeam6×5の系列クロス。次いで、Almahmoud7・7×5・7で血統をリード。更に、中間断絶ではあるが、Northern Dancer5・5・7×5も作成された為、かなり不明瞭に見えはするものの、Gainsborough系の流れが血統全体でよく生かされており、その意味においてもHornbeamが主導だと考えられる。惜しむらくは、前述したNorthern Dancerクロスの派生で、結合面から見たときには決して不要とは言い難いものの、出来ればこのクロスは作成しない方が良かった。
 生かされたスピード・スタミナ勢力はなかなかに強靭だが、本来強烈なスタミナ勢力として機能するHornbeamは、当馬の血統構成上8連存在するNasrullah(=Rivaz)から相当のスピードをアシストされている為に、スタミナ勢力としての機能がやや減少していると考えられるのが惜しまれる。しかしながら、これといった弱点が無い点や、良好な影響度バランスから推察するに、開花した場合の能力発揮を安定しておこなえるタイプだと言えるだろう。
 また、本質的には中距離馬であるものの、スピードの引き出しに成功すればある程度の距離短縮に対応できると考えられる事を指摘しておきたい。


 今回の血統徒然草は、先日行われたヴィクトリアマイルにおいての上位馬と人気馬、及び見所のある血統構成馬を取り上げてみました。簡単にではありますが、今回はこんなところで。