血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

種牡馬考察 ノヴェリスト

2019-01-14 22:21:08 | 種牡馬考察

 今回の血統徒然草は、独競馬の至宝とも言え、鳴り物入りで国内に導入されたものの、種牡馬として伸び悩んでいるノヴェリストに対する考察をおこないたいと思います。
 ※血統評価は以前に行っておりますが、評価基準が変わっていますので、再度掲載しておきたいと思います。


ノヴェリスト(Monsun×Night Lagoon by Lagunas)牡・09生

Ⅰ 主:8 結:8 土:3 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:0
合計:(44/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

〇 短評

 主導は父母の血の流れをある程度維持した、Birlhahn5×5・7・8を伴うLiterat4×4の系列クロス。途中Alchimistで断絶するものの、血統全体でBay Ronald系の流れが強く、極めて明確にとはいかなかったものの、血統全体を強力にリードしている。また、6代目までに存在するクロスは、Donatelloを除き主導たるLiteratと直接結合を果たし、DonatelloもSwynfordを経由しToradoによって連動を果たしている。反面、7代目以降のTeddy系をはじめとした米系の結合の弱さが残るものの、全体で少数派である点を踏まえると、強固な結合力を持っていると判断してよいだろう。惜しむらくは、前述の米系の生かし方の弱さや、その副産物としてNijinsky内のFlaming Pageなどに弱点を派生させている点や、スピード源としてのMahmoudやBlue Peterの欠落だが、明確な主導勢力に導かれた血統構成は非常に魅力的で、Hyperion、Tourbillon、Donatelloを中核とした質の高いスタミナの強靭さは、近年では非常に貴重な血統で、これぞ独血統の結晶と言える妙味のある血統構成だと言えるだろう。本領発揮は、ハイペースでの12F以上の芝の長距離戦だと言え、仮にこの血統が国内でデビューした場合、スピード不足のレッテルを貼られ、勝ち上がりにさえ苦労すると予測されるだろう。
 また、独土着の血統を明確な主導勢力とした血統は、国内で言えばテスコボーイ~トウショウボーイ~ミスターシービーや、パーソロン~シンボリルドルフ~トウカイテイオー、メジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンを系列クロスにし、主導へと据えるのと同様の行為であり、このような血をしっかりと生かす、独生産界への深い畏敬の念を抱くものです。


 このような血統構成を持つ、ノヴェリストですが国内の種牡馬成績は期待を大きく裏切るものとは言わないまでも、やや不満が残る現状と言えるでしょうか。2018年の種牡馬成績は総合で47位、AEIは0.74となっています。決して、致命的に悪いとは言えませんが、父の記録した競争成績や、そのイメージからくる重厚さとはややかけ離れた産駒が多く、2勝目をあげるのに苦労する産駒が大部分です(父の種牡馬としてのイメージと産駒を比してとの意味です。国内競馬において、中央で1勝をあげる事は非常にハイレベルな事だと認識しています。また19.1.14に産駒のラストドラフト(2B)が、自身産駒としての初重賞制覇を成し遂げました)。では、種牡馬ノヴェリストとして、自身の血統を踏まえた上で、繁殖牝馬にはどのような血を求めるのかを考察してみたいと思います。

①  自身の血統構成のほぼ全てである、独血統を牝馬側で抱えている事。具体的にはTicino、Literat~Birkhahn~Alchimist~Heroldなどに代表される、独土着の血統。
②  スタミナの確保の為に、自身の中で重要な役割を果たしたHyperion、Tourbillon、Donatello(Mieuxce~Massine)等の再利用。もしくは、その直系子孫であるCrepello、Aureole等を利用したい。
③  自身は極めてスタミナ的な配合で、それゆえの欧州12F戦線での好成績でしたが、国内向きの産駒を考える場合、スピードの再現は必須だと言えるでしょう。具体的には、自身が欠落させたMahmoudや、その仔や孫であるAlmahmoudやNatalma。もしくはNijinsky内のMenowや、国内で比較的多いCaro~フォルティノ~Grey Soveregin~Nasrullah。または、自身がHyperionの強い血統なので、その仔であるLady Angelaなどが考えられます。ただし主導勢力との結合を考えての取捨選択は必要だと言えるでしょう。
④  自身はNijinsky内の米系である、Bull Dog等のTeddy系やBlue Larkspur~Black Servantを欠落させているが、国内では米系の浸透が進んだために、かなりメジャーな血となっている。その為に産駒の血統においては、ほぼ自動的にクロスするが、これらの血はノヴェリスト自身の血統において、わずか1連しか存在しない為、これらの血を中核に据えるのは避けたい。
⑤  主導勢力として考えられるのは、AlmahmoudやCrepello~DonatelloもしくはNijinsky~Northern Dancerが、多数派に考えられる。自身の主導勢力であったLiteratは、国内においては非常に少数派の為、アトランダムな配合においては自身を強調する産駒よりは、母方を強調する産駒が多いものと考えられる。また、前面において多種のクロスを作るような配合はおそらく少数派で、産駒はシンプルな構成になりやすいという利点はある。
⑥  ハイレベルな産駒を望む場合、繁殖牝馬側に独系統の血を豊富に抱える事は必須で、それだけに現代の国内の繁殖プールは当馬にとって逆風であると言え、この部分を欠落させた産駒は早期の勝ち上がりや、シンプルさからくる短距離的なスピードを見せる事はあっても、父のイメージ程の成長力や、距離延長に対する適性を見せる可能性は極めて低いと考えられる。

また、以下に国内におけるメジャーなBMSとの相性を記載しておきたいと思います(評価は、×~△~□~〇~◎の5段階としています)。また、あくまでも血統表の3/4のみの考察です。血統は全体を見るもので、父および母父のみで語る血統評価はナンセンスです。

〇サンデーサイレンス(△)2018年BMSランキング1位

 主導はAlmahmoud7・8×5の系列クロス。母父であるサンデーサイレンスの再現自体は良好で、世代ズレも存在しない。父産駒としてはスピードに恵まれたマイルタイプ。ただし父母の持つイメージからくる成長力を見せる為には、母の母方のアシストが必要不可欠で、やや片手落ちの血統構成。

〇フレンチデピュティ(△)2018年BMSランキング2位

 主導は中間断絶ながら、Northern Dancer5・6×5。Nasrullahは世代ズレを起こしている。フレンチデピュティ自身は米系が強い配合で、相性が良いとは言えないものの、TornadoがTourbillonを伴いクロスし、仏系の生かし方自体は悪くは無い。

〇キングカメハメハ(□)2018年BMSランキング3位

 主導は、Northern Dancerを伴うNijinsky4×6。この時点では、父産駒として比較的可能性を秘める配合だとは言えるが、産駒はスピードに欠けがち。しかしながら、父内独系が壊滅的となるのは他の種牡馬と変わらないものの、Djebel~Tourbillonをおさえ、世代のバランスも良好。母の母方次第で優駿排出は可能だが、スピードの引き出しが課題となる産駒が多くなりがち。

〇ブライアンズタイム(×)2018年BMSランキング10位

 主導はBull Lea8×6の系列クロス。この主導はブライアンズタイムとしては都合が良いが、ノヴェリスト内には一連しかなく、その意味でも両者の血統的な相性は良いとは言えない。また、Nasrullahが世代ズレを起こし、スピードに欠ける産駒が大多数となりやすい。

〇ディープインパクト(□)2018年BMSランキング14位

 主導は、Northern Dancerを呼び水にした、Almahmoud7・8×6・8及びCrepello6×6の系列クロス。両者をスピード・スタミナの柱とする血統構成だが、父内独系統は壊滅的。父サンデーサイレンスを配した場合より距離は持つが、自身を彷彿とさせるステイヤーの輩出は母母方のアシストが必要。相性自体は悪くは無い。

〇トニービン(□)2018年BMSランキング15位

 主導はHyperion7・7・8・8・9・9×5・7・7の系列クロス。他に前面で強い影響を持つクロスは無く、Hyperionは自身に強い血でもあったのでこの血を主導に据える事自体は悪くは無い。また、Grey Sovereginが8×6と続きスピードには比較的良さが出る。ただ、父内の生かし方は弱く、ここが課題。

〇マンハッタンカフェ(□)2018年BMSランキング19位

 主導は、Almahmoud7・8×6の系列クロス。Northern Dancerのアシストが無い為、主導勢力のみで血統をまとめる事が困難ではあるものの、マンハッタンカフェ内の、Santa Lucianaが自身と呼応し、不完全ながらも自身の血統を再構築できる。母の母方次第では優駿排出が可能なBMSで、サンデーサイレンス系の中では相性が良い方。


 簡単な考察ではありますが、種牡馬ノヴェリストが求める繁殖牝馬の血統構成を箇条書きで上げてみました。ざっと見た感じで解るかとは思いますが、クラシックディスタンスで古馬以降において活躍する産駒を輩出するのが、極めて難しい種牡馬だと言えるでしょう。これはノヴェリスト自身の問題と言うよりは、それに対応できる繁殖牝馬群の希少さの方に大きな課題があると言えるでしょうか。それだけノヴェリスト自身の血統構成は素晴らしいものです。これだけの名血を国内に連れてきた以上は、しっかりと継続させ、かつ世界に還元する必要があるのではないでしょうか。
 では、種牡馬ノヴェリストの優駿を国内で望むのは難しいのでしょうか。あくまでも紙面上ではありますが、国内に繋養されている繁殖牝馬との仮想配合を考えてみました。以下に記載したいと思います(あくまでも紙面上の事ですし、関係者に問い合わせる等またそれに類する行動を決してしないでいただきたいと思います)。

(ノヴェリスト×フィオドラ by Lord of England)-・-生

Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:2 影:3 集:5 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:1(主導牝馬クロス)
合計:(45+1/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L ◎
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父の傾向を引き継ぎLiranga4×4の系列クロス。次いで、Northern Dancerを伴うNijinsky。この両者で、父母を強調し血を集合。この配合の最大の見どころは、Crepello内でMiuxce~Massineとクロスさせ、そのスタミナの裏付けをより強固にしたうえで、それを主導であるLirangaが丸々抱えこみ、明確なスタミナの核とすると共に、主導勢力とすることを同時に成し遂げた点にある。また、自身に弱くはあるものの存在するTeddy系やBlue Larkspurを、Nijinsky内でクロスさせBlandfordを通じ結合。主導勢力をアシストした点にも非常に妙味がある。近年、国内どころか世界的に見る事が出来なくなった真正ステイヤーの血統で、父の再現をほぼ成し遂げている。課題は、AlmahmoudやMenowの落失からくるスピード不足だが、Djebel~Tourbillonの仏系まで、きめ細かく血をおさえ血統構成は非常に優秀。完全開花した場合、欧州の12Fでも自ら競馬を作れるほどの質実剛健な配合。上記配合はあくまでも仮想配合ですが、母は実在します。おそらくノヴェリストが独国内に残った場合、こうした配合馬を輩出することは国内よりはたやすかったでしょう。事実、母は2014年ディアーナ賞(独オークス 芝11F)の勝ち馬です。父は前述したように独血統の結晶で、こうした種牡馬を国内に連れてきた以上は、その血をしっかりと還元できる国内生産界であって欲しいと願います。

(ノヴェリスト×ファインセラ by サンデーサイレンス)-・-生

Ⅰ 主:7 結:5 土:3 弱:2 影:1 集:6 質:3 再:4 SP:3 ST:4 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M △ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父母の傾向と異なり、Northern Dancerを伴うNijinsky5×4。次いで、Almhamoud、Pharamond。この主導勢力やアシストする血、更には影響度バランス(0-5-4-7)でわかるように、父を生かした配合では無く、どちらかと言えばBMSサンデーサイレンスの孫という趣のある血統構成をしている。しかしながら、父内の独系が母の母ビワハイジ内のSanta Lucianaと呼応し、父内の血をしっかりと能力参加とまではいかなくとも、再現しているのは見て取ることができる。惜しむらくは、これらの血を主導勢力たるNijinskyがまとめられなかった点だが、母内の米系を生かし主導内へと取り込んだのは幸運。本質的には、父のイメージ通り(中身は全く異なるものの)、芝の10F以上に向く。また、BMSサンデーサイレンスのスピードを再現し、それを主導勢力に取り込んだため、国内の芝レースへの対応力を一応は備えていると考えて良い。祖母であるビワハイジをはじめとしたアグサン系は、Santa Lucianaを含むため(マンハッタンカフェとも相性が良いのはこの為)、基本的に相性が良いのは指摘しておきたい。ただし、父の国内での種牡馬としての限界が見える配合である点もまた確かか。

 血統構成から見て非常に難しい種牡馬ではありますが、自身が競馬場で見せたハイパフォーマンス(2013年におけるキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(アスコット 芝12F)において5馬身差で圧勝し、勝ちタイム2分24秒60のレコード)を再現できる産駒の登場を願ってやみません。


 相変わらずの乱筆乱文をご容赦ください。本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。


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