血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

種牡馬考察 クレイドルサイアー

2019-03-17 21:40:25 | 種牡馬考察
 今回の血統徒然草は、先日とあるメディアで取り上げられていた、オグリキャップ最後のサイアーラインを継承する、種牡馬クレイドルサイアーについての考察を行いたいと思います。

クレイドルサイアー(ノーザンキャップ×マタニティパワー by スリルショー)牡・01生

Ⅰ 主:4 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:2 再:5 SP:3 ST:3 特:0
合計:(34/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M □ I △ C × L ×
ダ:S □ M △ I × C × L ×
芝適性:□ ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

〇 短評

 主導はNasrullah6・6・7×6・6・7・7及び、Flaring Top6×6の系列クロス。両者はPhalarisで結合し、当馬の血統のスピードの核となりつつ血統をリードする役目を担っている。しかしながら、結合が弱い点と両者が存在する部分が血統全体として見た際に、明確に強調された部分を作れなかった点において連合勢力とはやや言い難い。次いで影響の強い、Princequillo6×6・6、プリメロ6×6がスタミナの核を形成。スピード勢力が強い血統ではあるものの、これらは自身の血を纏める働きをしている、Northern Dancerクロスにおいて主導勢力と連動した為に、そのスタミナを上手く補給したのは、当馬の血統構成上における長所のひとつと言えるだろうか。したがって、ただの早熟スピードタイプでは無く、むしろ晩成型のスプリント~マイル向きの血統構成だと言える。また、血統全体でPharos(=Fairway)20連から来る血の流れはかなり良好で、開花後の安定感はあるタイプ。父や祖父から引き継いだこの流れこそ、当馬が抱えた限界点を表すと共に最大の長所だと言える。当馬はオグリキャップ直系のサイアーであるというだけで無く、世界的に繁栄しているMr.Prospector~Raise a NativeやAlydarを潜らない貴重なNative Dancer直系の血統であり、その意味でも全世界的に貴重なサイアーラインの一つだと言える。


 このように、非常に貴重な血統構成を持つクレイドルサイアーですが、門別競馬においてデビューを果たしたものの、2戦未勝利で引退。故郷のクレイドルファームで生産者の方の熱意もあり、種牡馬登録をされます。15年産において待望の牡馬が生まれますが(母ミフユ スリルショー4×3のほぼ単一クロスに血を集合させた配合。さほど悪い配合でもない)、残念ながら誕生後に競走馬へとなることなく、その短い生涯を終えています。その後、17年は不受胎、18年は交配無しとの事で、本年である19年も交配相手が見つかっていないそうです。優勝劣敗が競馬の常とは言え、国内競馬において祖父オグリキャップが果たした偉業、果たした役割を思い起こすとき、その儚さを思わずにはいられません。そこで、あくまでも素人の紙面上の考察でしかありませんが、種牡馬クレイドルサイアーの血統構成を踏まえた上で、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。

① 自身の主導は祖父・父の流れを継いだNasrullahだが、欧米系が入り混じる現代的な血統構成をした当馬の血統を考えた場合、主導勢力へと据えるのはかなりの無理があると言える。したがって開花率の低さを招くものの新しい主導候補を探す必要がある。具体的には自身が抱えたNorthern Dancerクロスの継続をはかりつつ、その仔や孫であるマルゼンスキー~Nijinsky、スリルショー~Northern Babyクロスが考えられるか。
② 自身の主導であったNasrullahからくるスピードを生かしたい。その為にGrey Sovereign・ロイヤルスキー~Bold Ruler、Prince Taj(母がNasrullah全妹のMalindi)等のクロスを活用したい。また、Flaring Top~Menowからくるスピードを継続するのも有効。
③ 自身のスタミナを支えた、プリメロ、Princequilloの再活用。ただし、世代がひとつ進む産駒の血統において、この両者の結合をはかるのはかなり難しく、結合がはかられない様であれば、あまり強い影響を持たせるのは避けたい。この部分も種牡馬クレイドルサイアーが抱える難しさの一つだと言える。
④ 自身は、Man o’War~Fair Play、Whisk Broomをはじめとした、祖父オグリキャップが抱えた米系をきめ細かくクロスさせ、Native Dancerの単一クロスによって、それらをNorthern Dancerへと吸い上げる事に成功した血統だが、産駒の血統においてもこのクロスは有効で、この継続は必須に近い。
⑤ また、祖父オグリキャップが持たない血ではあるが、自身の中でクロスしているTourbillon~Ksarを隠し味的に使うのであれば(上位を狙うようなきめ細かい配合を望むのであれば)、ロイヤルスキーのクロスは有効に作用する可能性がある。
⑥ このような欧米系が入り混じる血統構成を上手く纏める主導が、現時点でなかなか存在しない現状を踏まえても、当馬の血統構成はかなり混在型だと言え、明確な主導勢力を作りがたい血統構成だとは言える。自身を再現すればするほど、この部分の限界点が見えてくるが、これらを解消する為に、前面において血を集めるクロスが平均以上に必要な種牡馬だと言える。前述の通りだが、具体的にはNative Dancer・ロイヤルスキー・シルバーシャーク等。
⑦ ハイレベルな産駒を望むのであれば、Haloから来るAlmahmoudのスピードアシストは必須で、それを踏まえると主導には、父の傾向を外すものの、Northern Dancer系の系列クロスを狙いたい。非常に難しくはあるが、マルゼンスキーを系列クロスにした場合、前述の結合の難しさもある程度解消できる。

 このような特徴を持つ種牡馬クレイドルサイアーですが、種牡馬としての難しさの一端を垣間見る事ができるかと思います。80~90年代に国内競馬を支配したNasrullah主導型の血統構成を、30年後の今日まで引き続き継続した、頑固とも言える血統構成が当馬だと思います。つまり、現代競馬における血統的対応力自体は、低いと言わざるを得ません。それでも、7代目以降においては、きめ細かいクロスを持ち、国内においてひと時代を築いた、トサミドリ、月友、カバーラップ、セフトやプリメロ、トウルソヌル等の血を有効活用する様は、国内競馬の歴史の一端を垣間見る事ができるかと思われます。このような血を残す事が難しい現代、サイアーライン上のオグリキャップの名前を含め非常に貴重な血統だと言えるでしょう。そこで、当馬と比較的相性の良いBMSを数頭上げてみたいと思います(評価は、×~△~□~〇~◎)。また、あくまでも血統表の3/4のみの考察です。父および母父のみで語る血統評価はナンセンスです。


〇アグネスタキオン(□)2018年BMSランキング4位
 主導はAlmahmoud7・8×6の系列クロス。Native Dancerは落失するものの、ロイヤルスキーの4×4により欧米系の血を纏める事ができる配合。父内マルゼンスキーのスピード再現も良好で、芝向きのマイルタイプの輩出が可能なBMS。

〇クロフネ(□)2018年BMSランキング5位
 主導はNorthern Dancer~Nearcticの系列クロス。次いで、Bold Ruler。Native DancerがPolynesianを伴い主導の明確性を乱すものの、クロフネ内の生かし方は良く、クロフネ産駒の足かせになりやすいPago Pago内も、Blue Peter~Fairwayとクロスさせ能力参加に成功。ダート向きのマイラーの輩出が可能。

〇ダンスインザダーク(□)2018年BMSランキング6位
 主導はNorthern Dancerを伴うNijinsky5×4。次いでAlmahmoud。ダンスインザダーク内においては眠っていた、Flaring Top・Tom Foolのスピードを再現し、主導の傘下に自動的におさめる事ができる配合。軽いスピードにはやや欠けると予測されるが、芝向きの中距離タイプの輩出が可能。

〇コロナドズクエスト(□)2018年BMSランキング56位
 主導はBold Ruler6×5の系列クロス。本来主導だけで纏められないHyperion系のクロスをMy Babuクロスのアシストで結合。また、Double Jeyクロスを作成しNative Dancerと連動させるのは面白いと言える。ダート向きマイラーの輩出が可能。

〇ジョリーズヘイロー(□)2018年BMSランキング128位
 主導はAlmahmoud7・8×5の系列クロス。次いでNasrullah、Pharamond。全体の結合は弱いが、ジョリーズヘイローのスピードの再現は良好。父の影響が極端に低いものの、母の母方のアシスト次第では芝向きのマイラーの輩出が可能。


 簡単な考察ではありますが、種牡馬クレイドルサイアーが求める繁殖牝馬の血統構成やBMSとの相性について箇条書きで上げてみました。ざっと見た感じで解るかとは思いますが、現代的な欧米混在型の血統構成を持ちながら、それらを纏める血の選択肢が、非常に狭い種牡馬だというのがわかって頂けるかと思います。これは祖父オグリキャップが抱えた血統的な限界点をそのまま放置した為に、孫であるクレイドルサイアーにおいて飽和したと言い換えて構わないと思います。また、芝中距離以上の配合を望むのが非常に難しいタイプであるとも言え、父母の血統を、うまく組み合わせたとして、ゆったりと流れるマイル向きの産駒が考えられる限界点かと言えるでしょう。
 では、祖父オグリキャップを彷彿とさせる配合を望むのは難しいのでしょうか。その解答は現代的な繁殖プールにおいては非常に難しいと言わざるを得ません。しかしながら、偉大な祖父の背中を望む位置にたどり着くような配合は、可能かもしれません。あくまでも紙面上の思索でしかありませんが、以下に仮想配合を考えてみました(あくまでも個人的な紙面上の考えです。関係者に問い合わせる等それに類する行動は絶対に行わないようお願い致します。そのような方がいらっしゃるとは思えませんが)。

(クレイドルサイアー×ベッラバンビーナ by スマートファルコン)-・-生

Ⅰ 主:7 結:8 土:3 弱:1 影:2 集:5 質:2 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

〇 短評

 母は地方1勝 主導は、Nijinsky~Northern Dancerと継続したマルゼンスキー4×4の系列クロス。この主導は父母に強い欧米系を良く取りまとめ、主導として明確に機能している。従って、マルゼンスキーに血を集合させる事は当馬にとって都合が良いと言える。また、Native Dancer・シルバーシャークの単一クロスによって結合をアシストし、主導と比較的強固に連動させているのが見て取ることができる。さらに仏系のTourbillon~Ksarもクロスさせ、My Babuの中間断絶によりPharos・Blandfordを通じ主導と連動したのは、妙味があると言える。極端な距離延長に対する適性は高くは無いが、芝・ダート兼用のマイル~中距離タイプの内容で、祖父には届かないものの、かなり良くできた血統構成であるとは言える。適性からくるイメージは祖父を彷彿とさせる内容と言って良い。

(クレイドルサイアー×ルミナスポイント by アグネスタキオン)-・-生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:2 影:3 集:6 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C △ L ×
ダ:S □ M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

〇 短評

 母は中央5勝 主導は、Northern Dancer5・6×5の系列クロス。その母Natalmaから系列クロスを形成。比較的明瞭な主導と言えるが、混在する欧米系や、当馬の血統構成においてNearco~Pharos系が強い点を鑑みると、血統全体をとりまとめる主導としては、5代目に存在するNorthern Dancerはやや不満が残る。当馬の配合はその部分を、ロイヤルスキー4×4の単一クロスによって補い、血を取りまとめる事に成功している。明確なスタミナの核の作成には失敗しているものの、マイル向きのスピードにはそれなりの良さがある内容で、安定感のある影響度バランスや、血の集合の強さから見て開花した場合、安定感のある走りを見せる可能性が高いタイプだと言えるか。本質は、ゆったりと流れる芝向きのマイルタイプ。


 以上、種牡馬クレイドルサイアーの考察でしたが、他にも相性のよさそうな牝馬は数頭います(具体名としては、ファルファラ、ワンモアミーチュー等。これら牝馬の血統構成を見るとわかりますが、マルゼンスキーのクロスは当馬の血を取りまとめるのに非常に有効です)。ただし、アトランダムな配合に終始した場合、国内において芝対応が非常に難しく、またスピードに欠ける産駒が多くなりがちなのも、また事実だと考えられます。当馬が抱えた血統構成は、それだけ欧米系が混在したものであると言え、片方だけを立てると必ず産駒の血統は不完全な物になると言えるでしょう。
 針の穴に糸を通すような非常に少ない確率で、限りなくゼロに近い祖父オグリキャップからのサイアーラインの継承ですが、当馬が生きて種牡馬登録をされている限り、ゼロではありません。80年代からの日本競馬を彩った国内のサイアーライン、そのほとんどが断絶した今だからこそ、そのような奇跡が起こることを願わずにはいられません。あくまでも素人による紙面上の考察でしかありませんが、偉大な祖父オグリキャップ(2A)へ手向けになればと思い、今回は筆をとりました。


 相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください。本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。