血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

種牡馬考察(クワイトファイン)

2019-11-18 20:41:12 | 種牡馬考察
 今回の血統徒然草は、現在クラウドファンディングによって種牡馬入りのへ模索が行われている、トウカイテイオー最後のサイアーラインを継承する可能性が唯一残された、種牡馬クワイトファインの可能性についての考察を行いたいと思います(クワイトファインプロジェクト様から、ブログにする許可は頂いております。また、最後に仮想配合を掲載しておりますが、関係者の方々への問い合わせ等絶対に行わないでください。これは現実のプロジェクトです、それもかなりの熱量をもったプロジェクトだと認識しております)。

クワイトファイン(トウカイテイオー×オーロラテルコ by ミスターシービー)牡・10生

Ⅰ 主:6 結:6 土:3 弱:3 影:2 集:4 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I △ C × L ×
ダ:S × M △ I × C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

〇 短評

 グランデゴール(中央1勝 3B級)半弟。主導は、Princely Gift5×5の系列クロス。次いで、Hyperion。この両者は、Nearco~Pharos(=Fairway)系と、次いで影響の強いGainsborough系の結合を、Nogaraによってしっかりと行われている為、一見かなり明瞭に見えるが、当馬の血統構成上、主導内で土台構造を形成するべきPharos(=Fairway)が13連しか無く、Blandford・Gainsboroughがそれぞれ、19連・21連と、本質的にこの主導は当馬にとっては、決してプラスとは言えない。しかしながら、中長距離向きの血統構成をしていた兄とは異なるものの、当馬の血統構成も、マイル芝向きの血を生かし、7代目Tetratema等、なかなか妙味があるといえる。ただし、当馬の抱えた最大の問題は、BMSミスターシービー内の、ソシアルバターフライが抱える、Blue Larksupr~Black Servant等をはじめとした、米系を完全に落失した点で、成長力にはやや疑問が残る血統構成であるとも言える。ただし、その部分以外は母系に代々重ねられた、ミスターシービー・シンザン・タニノムーティエの血をしっかり生かし、これぞ国産と言える、非常に手作り感のある血統構成で、個人的には大いに魅力を感じるものである。最後に、競走馬としての本質は、これといったスタミナ勢力のアシストが弱く、前述の通り芝向きのマイルタイプだと言えるだろうか。

 以上が、競走馬クワイトファインの血統構成に対する考察になります。では、現在進行中のクラウドファンディングが成功したとして、どのような配合を目指すべきなのか、種牡馬として必要な血はなにか、を考察してみたいと思います。

① 自身の主導は、Nearco系直系子孫であるPrincely Giftだが全体ではやや弱いために、それらを取り込めるテスコボーイやトウショウボーイの有効活用。特にトウショウボーイは前述の通り、ソシアルバターフライを直接内包する為に、系列クロスにするには、血の濃さが残る為疑問が残るが、中間断絶クロスや単一クロスを作成しそこに血を集合させるのは有効だと考えられる。
② また、自身に強いBlandford・Gainsborough系だが、母系から大量のNearcoを投入し三者のバランスをとる事も有効で、その場合、母系でBuchan~Sunsutar等の米系を直接とりこめるファバージを母内4代目でクロスさせ、主導とすることも有効である。
③ 自身に欠けるスタミナの補給において、Hyperionの有効活用は大前提だが、自身の中で眠っていたPlucky Liegeを有効活用したい。その為Bois Roueelや、その産駒であり、やや質は劣るもののヒンドスタンのスタミナ補給は有効。ただし、ヒンドスタン内においてシンザンのスピード源となった、Sun Worship~Sundridgeを生かした場合、スピードの補給もかなり受けるため、長距離のスタミナというより、中距離のスタミナとして機能する可能性は念頭に置いた方が良い。
④ 父父であるシンボリルドルフ内において、質の高いスタミナ勢力であるDjbel~Tourbillonのアシストが世代後退によって、再現が難しい点は注意が必要で、これらを不必要にクロスすると、全体の連動が弱くなる可能性もある為、無理に生かす必要性が弱いものの、シンボリルドルフ自身では眠っていたスタミナ勢力であるPharisや、スピード源となったPalestinの血を有効活用したい。また、できるならTetratemaのクロスも欲しい。
⑤ 父である種牡馬トウカイテイオーの難しさの一端でもあった、Nice Princess内の特殊な仏系の生かし方には考慮が必要で、世代が後退する為にそこまでの難しさは無いが、His Grace~Blandford・Becteriophage等をおさえたい。
⑥ Northern Dancerクロスはあっても良いが、系列クロスなどにして明確な主導に据えるのは、自身の血の流れから考えて、行わない方が良いと考えられる。他に明確な主導としての機能を持つクロスを存在させ、中間断絶クロスで結合のアシストを行う程度なら良い。
⑦ 相性の良い血としては、Hyperionの強いトニービンや、Graustark等を抱えるタニノギムレット。テスコボーイを主導に据える事のできる、サクラバクシンオー。呼び水の効果が良好なトウショウボーイ。Alycidonから強力なスタミナを補給できるスイフトスワロー。また、その躍進の源となったAlmahmoudを生かせるサンデーサイレンス等が考えられる。
⑧ また、逆に相性の悪い血は、米系を豊富に抱えたMr.Prospectorや、ロージズインメイ。Seattle SlewやSecretariat。また、本質的にはNorthern Dancerも相性が良くない方だと言える。ただし、⑦や⑧で述べている、これらの相性は血の位置や配置などによって、相性の良さに変化がでるものであり、基本的には米系の血を避けていれば大きな問題は生じないと考えられる。
⑨ 一番の問題は、Princely Giftの直系が国内において、かなり衰退している為に、主導を明確にするのが難しい点で、ここは大きな課題だと言える。ただし、サクラバクシンオー(1A)という国内史上稀有のスプリンターの血がサイアーラインを伸ばしつつ、ある程度繁殖牝馬側に浸透しているのが幸いで、ここをうまく使えば、コンスタントに勝ち上がる産駒は望めるだろう。


 以上が種牡馬、クワイトファインに対する簡単な考察です。こうして見ると、現代的な種牡馬として米系の生かし方や、主導の明瞭さを出すのにやや難があるものの、母系から代々重ねてきたNearco・Hyperion・Blandfordの血の豊富さは非常に魅力的で、配合にもよりますが薄く米系も保有するため、アトランダムな配合でもある程度形にはなる種牡馬だと言え、血統表上のみを見る限り、一定の可能性を秘めた種牡馬だとも言えるでしょう。似たような境遇である、ギンザグリングラスやクレイドルサイアーにも言えますが、競馬華やかなりし頃の名馬達の血を直系で残して欲しいと切に願います。ここで、自身が考えた仮想配合をいくつかアップしたいと思います。当馬の競走馬としてのキャリアや、種牡馬としての名声から考えて、手が届かないであろう繁殖牝馬との交配もアップしておりますが、少しでも多くの方の目に触れるように、あえて書き連ねてみたいと思います(関係者の方への問い合わせ等は冒頭でも述べたように絶対に行わないでください。何卒宜しくお願い致します)。


(クワイトファイン×セレブリティ by タニノギムレット)-牡・-生

Ⅰ 主:7 結:5 土:4 弱:2 影:3 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C △ L ×
ダ:S × M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

〇 短評

 主導は、トウショウボーイ4×4内、Princely Gift6×6・6の系列クロス。次いでMy Babu6・8×8。両者は弱いものの、全体で21連存在し土台構造を形成するPharos(=Fairway)で結合を果たし、そのスピードをしっかりと補給している。また、ミスターシービー内の生かし方が良く、本質的にはマイラーだが、ある程度の距離延長もこなす可能性を秘める。この配合の最大の長所は、呼び水となったトウショウボーイ内の米系であるBlue Larkspurをクロスさせる事に成功し、父母の血の流れを生かしつつ、米系の結合に一定の成果をあげている点である。実質的な異系交配である為、開花には時間がかかるだろうが、鍛えがいのある血統構成。ダートはこなせる。

(クワイトファイン×ブロンコーネ by ブライアンズタイム)-牡・-生

Ⅰ 主:8 結:5 土:4 弱:3 影:3 集:6 質:3 再:4 SP:4 ST:4 特:0
合計:(44/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I ◎ C 〇 L □
ダ:S × M × I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:× 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:低め 成長型:普通

〇 短評

 主導はファバージ5×4の系列クロス。次いでヒンドスタン、Alibhai~Hyperion。これら三者の結合は決して強固とは言えないのものの、Royal Charger等を通じ結合を果たしたのは幸運か。全体的に結合の弱い面があるものの、主張の強い血とはそれぞれを媒介として連動をはたし、父の弱点であった米血もひとまずクロスさせている。また特筆すべき点は、母系のオーマツカゼが、シンザン内第5バッカナムビューチーと呼応し、シアンモア~Buchanとクロスさせそのスタミナを主導へと直接補給した点にある。また、トニービン内Hyperionやブライアンズタイム内AlibhaiやRockfella(=Rock Goddess)等のGaindsborough系のスタミナ補給に良さがあり、質は劣るもののヒンドスタンも中距離向きのスタミナ補給に一役かっている点で、全多的にはスタミナ優位の配合だと言える。近年珍しい、質が高い芝向きの中距離タイプで、開花率は低いだろうが、血統構成は秀逸。ダートは明らかに不向き。

(クワイトファイン×オモイデサクラ by サクラバクシンオー)-牡・-生

Ⅰ 主:5 結:4 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:2 再:5 SP:5 ST:3 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:△
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M □ I × C × L ×
ダ:S 〇 M 〇 I × C × L ×
芝適性:□ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:普通 成長型:早め

〇 短評

 主導は、テスコボーイ5×4の系列クロス。次いで、Lady Angela~Hyperion。この両者の結合はかなり強固に行われ、血統全体に強い、Gainsboroughの血の流れとNearcoの血の流れを上手く主導が統合している。この配合の惜しむらくは、7代目以降に生きる血の連動性が極めて低い点と、父母が抱える米系を全く生かせていない点にある。しかしながら、欧州系の特殊な血であるFine Topをクロスさせそのスタミナを補給し、Palestineを系列クロスにし、Tetratemaを再度クロスさせ父のスピード再現に成功した点にある。米系の落失から成長力には欠けるだろうが、BMSサクラバクシンオーを圧倒的に強調し、その再現も良好。好不調の波はあるだろうが、早期有利のダート向きスプリンター。芝もなれればこなせる。


 上記の仮想配合を見てもわかりますが、様々なタイプを出せる種牡馬で、アトランダムな配合でも、ある程度形になるのは往年のパーソロンのようなイメージを受けます。ただし、これはクワイトファインが代々積み上げてきた、日本競馬を作り上げてきたBlandford・Hyperion・Nearcoを多量に含み、ほんのわずかに米系を含むものの、ほぼ前記の血を強く持つ内国産種牡馬の血を重ねてきた部分が非常に大きく、安易に米系等を混ぜる事無い、配合を作り上げてきた、生産者の方の努力だと思います。
 海外では、非常に良く目にすることができる独自の父系。国内においてはサンデーサイレンスがようやく、といったところではありますが、サンデーサイレンスと共に、一時代を築いたトニービンやブライアンズタイムでさえ風前の灯であると認識しており、独自のサイアーラインを作れない国が、胸を張ってパートⅠ国であるのか、とさえ考えさせられます。私自身は、特に力がない一般市民です。それを承知の上で、手前勝手な望みであるのも重々承知で、こうした血を残していける競馬を見たいと思いますし、そうした生産界を望みます。


 非常に乱筆乱文で読みにくいと思いますが、何卒ご容赦ください。今回の血統徒然草はこの辺りで筆をおきたいと思います。
 少しでも多くの方の目に留まる事を、プロジェクトの成功を心から祈ります。

種牡馬考察 クレイドルサイアー

2019-03-17 21:40:25 | 種牡馬考察
 今回の血統徒然草は、先日とあるメディアで取り上げられていた、オグリキャップ最後のサイアーラインを継承する、種牡馬クレイドルサイアーについての考察を行いたいと思います。

クレイドルサイアー(ノーザンキャップ×マタニティパワー by スリルショー)牡・01生

Ⅰ 主:4 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:2 再:5 SP:3 ST:3 特:0
合計:(34/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M □ I △ C × L ×
ダ:S □ M △ I × C × L ×
芝適性:□ ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

〇 短評

 主導はNasrullah6・6・7×6・6・7・7及び、Flaring Top6×6の系列クロス。両者はPhalarisで結合し、当馬の血統のスピードの核となりつつ血統をリードする役目を担っている。しかしながら、結合が弱い点と両者が存在する部分が血統全体として見た際に、明確に強調された部分を作れなかった点において連合勢力とはやや言い難い。次いで影響の強い、Princequillo6×6・6、プリメロ6×6がスタミナの核を形成。スピード勢力が強い血統ではあるものの、これらは自身の血を纏める働きをしている、Northern Dancerクロスにおいて主導勢力と連動した為に、そのスタミナを上手く補給したのは、当馬の血統構成上における長所のひとつと言えるだろうか。したがって、ただの早熟スピードタイプでは無く、むしろ晩成型のスプリント~マイル向きの血統構成だと言える。また、血統全体でPharos(=Fairway)20連から来る血の流れはかなり良好で、開花後の安定感はあるタイプ。父や祖父から引き継いだこの流れこそ、当馬が抱えた限界点を表すと共に最大の長所だと言える。当馬はオグリキャップ直系のサイアーであるというだけで無く、世界的に繁栄しているMr.Prospector~Raise a NativeやAlydarを潜らない貴重なNative Dancer直系の血統であり、その意味でも全世界的に貴重なサイアーラインの一つだと言える。


 このように、非常に貴重な血統構成を持つクレイドルサイアーですが、門別競馬においてデビューを果たしたものの、2戦未勝利で引退。故郷のクレイドルファームで生産者の方の熱意もあり、種牡馬登録をされます。15年産において待望の牡馬が生まれますが(母ミフユ スリルショー4×3のほぼ単一クロスに血を集合させた配合。さほど悪い配合でもない)、残念ながら誕生後に競走馬へとなることなく、その短い生涯を終えています。その後、17年は不受胎、18年は交配無しとの事で、本年である19年も交配相手が見つかっていないそうです。優勝劣敗が競馬の常とは言え、国内競馬において祖父オグリキャップが果たした偉業、果たした役割を思い起こすとき、その儚さを思わずにはいられません。そこで、あくまでも素人の紙面上の考察でしかありませんが、種牡馬クレイドルサイアーの血統構成を踏まえた上で、繁殖牝馬側に求める条件を考えてみたいと思います。

① 自身の主導は祖父・父の流れを継いだNasrullahだが、欧米系が入り混じる現代的な血統構成をした当馬の血統を考えた場合、主導勢力へと据えるのはかなりの無理があると言える。したがって開花率の低さを招くものの新しい主導候補を探す必要がある。具体的には自身が抱えたNorthern Dancerクロスの継続をはかりつつ、その仔や孫であるマルゼンスキー~Nijinsky、スリルショー~Northern Babyクロスが考えられるか。
② 自身の主導であったNasrullahからくるスピードを生かしたい。その為にGrey Sovereign・ロイヤルスキー~Bold Ruler、Prince Taj(母がNasrullah全妹のMalindi)等のクロスを活用したい。また、Flaring Top~Menowからくるスピードを継続するのも有効。
③ 自身のスタミナを支えた、プリメロ、Princequilloの再活用。ただし、世代がひとつ進む産駒の血統において、この両者の結合をはかるのはかなり難しく、結合がはかられない様であれば、あまり強い影響を持たせるのは避けたい。この部分も種牡馬クレイドルサイアーが抱える難しさの一つだと言える。
④ 自身は、Man o’War~Fair Play、Whisk Broomをはじめとした、祖父オグリキャップが抱えた米系をきめ細かくクロスさせ、Native Dancerの単一クロスによって、それらをNorthern Dancerへと吸い上げる事に成功した血統だが、産駒の血統においてもこのクロスは有効で、この継続は必須に近い。
⑤ また、祖父オグリキャップが持たない血ではあるが、自身の中でクロスしているTourbillon~Ksarを隠し味的に使うのであれば(上位を狙うようなきめ細かい配合を望むのであれば)、ロイヤルスキーのクロスは有効に作用する可能性がある。
⑥ このような欧米系が入り混じる血統構成を上手く纏める主導が、現時点でなかなか存在しない現状を踏まえても、当馬の血統構成はかなり混在型だと言え、明確な主導勢力を作りがたい血統構成だとは言える。自身を再現すればするほど、この部分の限界点が見えてくるが、これらを解消する為に、前面において血を集めるクロスが平均以上に必要な種牡馬だと言える。前述の通りだが、具体的にはNative Dancer・ロイヤルスキー・シルバーシャーク等。
⑦ ハイレベルな産駒を望むのであれば、Haloから来るAlmahmoudのスピードアシストは必須で、それを踏まえると主導には、父の傾向を外すものの、Northern Dancer系の系列クロスを狙いたい。非常に難しくはあるが、マルゼンスキーを系列クロスにした場合、前述の結合の難しさもある程度解消できる。

 このような特徴を持つ種牡馬クレイドルサイアーですが、種牡馬としての難しさの一端を垣間見る事ができるかと思います。80~90年代に国内競馬を支配したNasrullah主導型の血統構成を、30年後の今日まで引き続き継続した、頑固とも言える血統構成が当馬だと思います。つまり、現代競馬における血統的対応力自体は、低いと言わざるを得ません。それでも、7代目以降においては、きめ細かいクロスを持ち、国内においてひと時代を築いた、トサミドリ、月友、カバーラップ、セフトやプリメロ、トウルソヌル等の血を有効活用する様は、国内競馬の歴史の一端を垣間見る事ができるかと思われます。このような血を残す事が難しい現代、サイアーライン上のオグリキャップの名前を含め非常に貴重な血統だと言えるでしょう。そこで、当馬と比較的相性の良いBMSを数頭上げてみたいと思います(評価は、×~△~□~〇~◎)。また、あくまでも血統表の3/4のみの考察です。父および母父のみで語る血統評価はナンセンスです。


〇アグネスタキオン(□)2018年BMSランキング4位
 主導はAlmahmoud7・8×6の系列クロス。Native Dancerは落失するものの、ロイヤルスキーの4×4により欧米系の血を纏める事ができる配合。父内マルゼンスキーのスピード再現も良好で、芝向きのマイルタイプの輩出が可能なBMS。

〇クロフネ(□)2018年BMSランキング5位
 主導はNorthern Dancer~Nearcticの系列クロス。次いで、Bold Ruler。Native DancerがPolynesianを伴い主導の明確性を乱すものの、クロフネ内の生かし方は良く、クロフネ産駒の足かせになりやすいPago Pago内も、Blue Peter~Fairwayとクロスさせ能力参加に成功。ダート向きのマイラーの輩出が可能。

〇ダンスインザダーク(□)2018年BMSランキング6位
 主導はNorthern Dancerを伴うNijinsky5×4。次いでAlmahmoud。ダンスインザダーク内においては眠っていた、Flaring Top・Tom Foolのスピードを再現し、主導の傘下に自動的におさめる事ができる配合。軽いスピードにはやや欠けると予測されるが、芝向きの中距離タイプの輩出が可能。

〇コロナドズクエスト(□)2018年BMSランキング56位
 主導はBold Ruler6×5の系列クロス。本来主導だけで纏められないHyperion系のクロスをMy Babuクロスのアシストで結合。また、Double Jeyクロスを作成しNative Dancerと連動させるのは面白いと言える。ダート向きマイラーの輩出が可能。

〇ジョリーズヘイロー(□)2018年BMSランキング128位
 主導はAlmahmoud7・8×5の系列クロス。次いでNasrullah、Pharamond。全体の結合は弱いが、ジョリーズヘイローのスピードの再現は良好。父の影響が極端に低いものの、母の母方のアシスト次第では芝向きのマイラーの輩出が可能。


 簡単な考察ではありますが、種牡馬クレイドルサイアーが求める繁殖牝馬の血統構成やBMSとの相性について箇条書きで上げてみました。ざっと見た感じで解るかとは思いますが、現代的な欧米混在型の血統構成を持ちながら、それらを纏める血の選択肢が、非常に狭い種牡馬だというのがわかって頂けるかと思います。これは祖父オグリキャップが抱えた血統的な限界点をそのまま放置した為に、孫であるクレイドルサイアーにおいて飽和したと言い換えて構わないと思います。また、芝中距離以上の配合を望むのが非常に難しいタイプであるとも言え、父母の血統を、うまく組み合わせたとして、ゆったりと流れるマイル向きの産駒が考えられる限界点かと言えるでしょう。
 では、祖父オグリキャップを彷彿とさせる配合を望むのは難しいのでしょうか。その解答は現代的な繁殖プールにおいては非常に難しいと言わざるを得ません。しかしながら、偉大な祖父の背中を望む位置にたどり着くような配合は、可能かもしれません。あくまでも紙面上の思索でしかありませんが、以下に仮想配合を考えてみました(あくまでも個人的な紙面上の考えです。関係者に問い合わせる等それに類する行動は絶対に行わないようお願い致します。そのような方がいらっしゃるとは思えませんが)。

(クレイドルサイアー×ベッラバンビーナ by スマートファルコン)-・-生

Ⅰ 主:7 結:8 土:3 弱:1 影:2 集:5 質:2 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

〇 短評

 母は地方1勝 主導は、Nijinsky~Northern Dancerと継続したマルゼンスキー4×4の系列クロス。この主導は父母に強い欧米系を良く取りまとめ、主導として明確に機能している。従って、マルゼンスキーに血を集合させる事は当馬にとって都合が良いと言える。また、Native Dancer・シルバーシャークの単一クロスによって結合をアシストし、主導と比較的強固に連動させているのが見て取ることができる。さらに仏系のTourbillon~Ksarもクロスさせ、My Babuの中間断絶によりPharos・Blandfordを通じ主導と連動したのは、妙味があると言える。極端な距離延長に対する適性は高くは無いが、芝・ダート兼用のマイル~中距離タイプの内容で、祖父には届かないものの、かなり良くできた血統構成であるとは言える。適性からくるイメージは祖父を彷彿とさせる内容と言って良い。

(クレイドルサイアー×ルミナスポイント by アグネスタキオン)-・-生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:2 影:3 集:6 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C △ L ×
ダ:S □ M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

〇 短評

 母は中央5勝 主導は、Northern Dancer5・6×5の系列クロス。その母Natalmaから系列クロスを形成。比較的明瞭な主導と言えるが、混在する欧米系や、当馬の血統構成においてNearco~Pharos系が強い点を鑑みると、血統全体をとりまとめる主導としては、5代目に存在するNorthern Dancerはやや不満が残る。当馬の配合はその部分を、ロイヤルスキー4×4の単一クロスによって補い、血を取りまとめる事に成功している。明確なスタミナの核の作成には失敗しているものの、マイル向きのスピードにはそれなりの良さがある内容で、安定感のある影響度バランスや、血の集合の強さから見て開花した場合、安定感のある走りを見せる可能性が高いタイプだと言えるか。本質は、ゆったりと流れる芝向きのマイルタイプ。


 以上、種牡馬クレイドルサイアーの考察でしたが、他にも相性のよさそうな牝馬は数頭います(具体名としては、ファルファラ、ワンモアミーチュー等。これら牝馬の血統構成を見るとわかりますが、マルゼンスキーのクロスは当馬の血を取りまとめるのに非常に有効です)。ただし、アトランダムな配合に終始した場合、国内において芝対応が非常に難しく、またスピードに欠ける産駒が多くなりがちなのも、また事実だと考えられます。当馬が抱えた血統構成は、それだけ欧米系が混在したものであると言え、片方だけを立てると必ず産駒の血統は不完全な物になると言えるでしょう。
 針の穴に糸を通すような非常に少ない確率で、限りなくゼロに近い祖父オグリキャップからのサイアーラインの継承ですが、当馬が生きて種牡馬登録をされている限り、ゼロではありません。80年代からの日本競馬を彩った国内のサイアーライン、そのほとんどが断絶した今だからこそ、そのような奇跡が起こることを願わずにはいられません。あくまでも素人による紙面上の考察でしかありませんが、偉大な祖父オグリキャップ(2A)へ手向けになればと思い、今回は筆をとりました。


 相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください。本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。

2019年 新種牡馬考察

2019-02-05 18:24:27 | 種牡馬考察
 今回の血統徒然草は、2019年に産駒をデビューさせる新種牡馬について簡単に考察を行いたいと思います。またその産駒の中で面白いと個人的に思える産駒を紹介したいと思います(注目の産駒は血統評価が優秀という基準ではありません。どちらかと言えば血の生かし方が面白いと個人的に思った配合です。また、関係者の方々への、それら産駒に対する問い合わせ等絶対になさらないようお願い申し上げます)。
 ※後日、数頭追加する予定です。

キズナ(ディープインパクト×キャットクイル by Storm Cat)牡・10生

Ⅰ 主:6 結:8 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I ◎ C 〇 L 〇
ダ:S × M △ I 〇 C □ L □
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:普通

 主な勝ち鞍:2013年 日本ダービー(G1) ニエル賞(G2) 京都新聞杯(G2) 2014年 産経大阪杯(G2)

 主導は、Northern Dancer5×4の中間断絶を呼び水にした、Almahmoud5×6・7及びDonatello6×5の系列クロス。実質的にNorthern Dancer主導。父内ウインドインハーヘアと、母内パシフィカスが呼応し、質の高いスタミナを確保。また母内Northern Dancerが4代目に位置した為、主導と親和性の高い、Aurora~Hyperion、Donatelloだけではなく、Somethingroyal~Princequilloが直接結合した為に、スタミナに良さがある配合で、本質的には芝向きの中~長距離タイプ。また、主導としての明確性はやや不満が残るものの、全体の結合が非常に良好で、安定感のある血統構成。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、芝向きもダート向きの産駒も出すものの、スピードに劣る産駒が多くなると想定され、結果的にダートを使われる産駒が多数になると考えられる。父は重厚なスタミナに良さがある配合だが、産駒の血統においても、自身のスタミナ要素を再現する、Aurora~Hyperion、DonatelloやSomethingroyal~Princequilloは、国内では比較的メジャーな血である為、父同様にスタミナ型が多くなると考えられる。反面、父父であるサンデーサイレンスの世代が後退した為に、そのスピードの再現は比較的容易でも、前面で強い影響を持たせる事は難しく、母内Storm CatやSecretariatの影響を強くすると、ダート向きの産駒を輩出すると考えられる。スピードに良さを出しつつ、父を再現するのであれば、Northern Dancerを主導に据え、それを母方Natalmaからの系列クロスにするのが最も現実的であるとは言える。また、父の傾向をややはずすものの、Haloをクロスさせ血を集合させた場合も、スピードに良さは出せるが、開花率や成長力にはやや不満が残る可能性が生じやすい点を指摘しておきたい。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Almahmoud、Pharamond=Sickle、Nasrullah~Nearco、Turn-to
バランス系:Northern Dancer
スタミナ系:Crepello~Doatello(Clarissimus)、Acropolis~Aurora~Hyperion、Djebel~Tourbillon、Princequillo(Papayrus)、Lavendula
その他:Hail to Reason(結合のアシストとして)、Bull Lea~Bull Dog(=Sir Gallahad)~Teddy(Plucky Liege)、Man o’War~Fair Play、Blue Larkspur

〇注目の産駒
 プリティメイズの17
 主導はNorthern Dancerの系列クロス。Bold Ruler~Nasurullah、Turn-toからスピードを、Acropolis=Alycidonの系列クロスからスタミナを補給。全体的にはスタミナ優位の血統で、Man o’WarやBlue Larkspur等の米系や、Djebel~Tourbillon等の仏系との主導勢力との結合の弱さは残るものの、PocahontasがTeddy系の結合をアシストする等、かなり良くできている血統構成。本質は、晩成型の芝向きの中~長距離タイプ。開花には相当の鍛錬と時間が必要なタイプの血統構成だが、父母の再現は良好。血統構成的に父キズナの一般的な産駒とは言い難いが、父を超える可能性を秘める(アライ・グマ様ありがとうございます)。


エピファネイア(シンボリクリスエス×シーザリオ by スペシャルウィーク)牡・10生

Ⅰ 主:8 結:6 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I 〇 C □ L △
ダ:S × M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:早め

 主な勝ち鞍:2012年 R-NIKKEI杯2歳S(G3) 2013年 菊花賞(G1) 神戸新聞杯(G1) 2014年 ジャパンカップ(G1)

 主導は、Hail to Reason4・7×5・6の系列クロス。父母内は位置の関係で動き出しが遅いものの、血統の4ブロックに存在し全体を強力にリードしている。反面、結合力は全体としては悪くは無いものの、父方6代目Gold Bridgeが完全に離反した点は無視できず、ここが当馬の血統構成を考える上で限界点となるだろうか。しかしながら、世代ズレを抱えたバランスの悪い配合であった、父シンボリクリスエスの配合として、その補正に成功したのは大きなセールスポイントで、国内向きのスピードは、母の主導であるAlmahmoudこそ欠落するものの、総合的には非常に豊かな配合で、自在性のあるマイル~中距離タイプだと言えるだろう。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、自身がHail to Reasonの系列クロスを主導とした配合で、その継続はHalo~サンデーサイレンス及び、Roberto~ブライアンズタイムが浸透した国内においては比較的たやすい為、産駒は総じて開花が早いタイプが多いと考えられる。また、自身のスピード・スタミナを形成した血も、それら主導候補と相性が良く、自身の能力再現は比較的たやすい。主導によって大きく変わるが、芝向きもダート向きもだす可能性を秘める(Halo~サンデーサイレンス強調なら芝向きの、Roberto強調ならダート向きになる可能性が高い。ただし、Sadler’s Wells(Nijinsky)~Northern Dancerを強調した場合は、スピードに不安が残り開花も遅くなると想定される)。また、サンデーサイレンスクロスを用いた場合や、その部分を強調した場合のサンデーサイレンスの母方にほぼ弱点を生じる為、上位レベルの産駒を望むのであれば、この部分にも注意は必要である。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Turn-to~Royal Charger、Nasrullah~Nearco、Mumtaz Begum~Mumtaz Mahal、Tom Fool~Menow、Occupy、Almahmoud
バランス系:Hail to Reason、Blue Eyed Momo~War Admiral
スタミナ系:Bull Lea~Bull Dog(=Sir Gallahad)~Teddy(Plucky Liege~Speamint)、Princequillo(Papyrus~Tracery)
  その他:Northern Dancer(結合のアシストとして)、Pretty Ways等Wishing Well内のクロス(サンデーサイレンス内の弱点を補正する為。)

〇注目の産駒
 ブロードピークの17
 主導は父母の傾向を引き継ぎ、サンデーサイレンス4×3の中間断絶を呼び水にしたHail to Reason5・6・7・8×5・6の系列クロス。次いで、Sir Gaylord6×7。この両者は血統全体で10連存在する、その父Turn-toによって非常に強固に結合し、父内では世代ズレをおこしていた、Princequilloを補正し、その母SomethingroyalからSir Gaylordが取り込んだのは妙味がある。また、土台構造からくる血の流れも、Pharos(=Fairway)16連、Bull Dog(=Sir Gallahad)17連と、なかなか強固なレベルだと言えるだろうか。惜しむらくは、実際に強調されたサンデーサイレンス内の血の流れ(Mahmoud主導)がやや弱い点と、前述した父内サンデーサイレンスの弱点が補正できなかった点か。サンデーサイレンスクロスの実績はこれからあらわになっていくが(アシストや生かした血の内容、またはクロスの形態にもよるが、芝向きの中距離型が基本だと考えられる。切れ味というより持続するタイプのスピード・スタミナを再現すると予測)、当馬の血統から見た場合においては、ひとまず有効に機能していると言える。本質は、マイル~中距離向きの芝・ダート兼用タイプ。


フェノーメノ(ステイゴールド×ディラローシェ by デインヒル)牡・09生

Ⅰ 主:6 結:7 土:4 弱:3 影:3 集:5 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M □ I □ C □ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:〇

主な勝ち鞍:2012年 青葉賞(G2) セントライト記念(G2) 2013年 天皇賞・春(G1) 日経賞(G2) 2014年 天皇賞・春(G1)

 主導は、Northern Dancer5×4の系列クロス。このNorthern DancerクロスはBMSデインヒルと呼応してのもので、Natalmaがクロスし、Bay Ronald系の血の流れが強い当馬の血統構成をリードしている。しかしながら、当馬の血統構成上、主導勢力が2ブロックにしか存在しないのは惜しまれる点で、また母母内Nearcoの影響が強すぎるのも、主導の明確性という観点からはマイナスだと考えられる。反面、血統全体の結合力は比較的強固で、6代目までに存在するクロスは全て主導へと直接結合し、7代目以降のクロスも比較的連動性が高い。さらに血統を底支えする土台構造は強固で、そこからくる血の流れも良好で安定感のある血統構成。本質的には、芝向きの中距離タイプ。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、自身がNorthern Dancerの系列クロスを主導とした配合である為、その再現はかなりたやすいと言える。また、Northern Dancerを二連しか持っていない為、位置に気を付ける必要はあるが、父同様にシンプルな配合になりやすく、産駒の開花自体は早いタイプだと考えられる。父自身は、天皇賞・春を二連覇しているものの、母が持つRibotを欠落させた為に、そのイメージ程にスタミナ優位という訳では無く、産駒にもその傾向があると考えられる。また、Northern Dancerを引き続き主導とした場合に、血統全体の結合がかなり弱くなる為、Hail to Reasonクロスを作成し、結合のアシストをする事は産駒にとっては有用だと言える。主導候補として、ノーザンテースト、Danzigとなる確率が高いと考えられ、その意味でも産駒の適性は芝向きのマイル~中距離タイプが基本型だと言えるだろうか。母内RibotやCourt Martial(Hurry On)を再現した少数の産駒が中~長距離への適性を秘める。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Turn-to~Royal Charger、Mumtaz Begum~Mumtaz Mahal、Natalma~Almahmoud~Mahmoud、Pharamond、ノーザンテースト(Danzig)~Lady Angela
バランス系:Northern Dancer
スタミナ系:Bull Lea~Bull Dog(=Sir Gallahad)~Teddy(Plucky Liege~Speamint)、Ribot、Court Martial(Hurry On)
  その他:Hail to Reason(結合のアシストとして)

〇注目の産駒
 オリオンオンサイトの17
 主導は、父母の傾向を引き継ぎDanzig4×4の系列クロス。母であるオリオンオンサイトは、その父グラスワンダー産駒として非常に良くできた配合でスタミナ優位のステイヤー(特に、祖母内に存在するフィディオンの生かし方は、その代表産駒であるメジロデュレンを彷彿とさせる)。この両者の交配では、父に不足したスタミナを、Hurry Onを生かしたCourt MartialやHis Majesty~Ribotのクロスで補い(Ribot内の生かし方は弱いものの、その仔His Majestyの母系に存在するHyperion・Beau Pere~Son-in-Lawで補強できている)、母に不足したスピードを、Natalma~AlmahamoudやNasrullahで補っている。また、Hail to Reasonの単一クロスによって、米系の結合アシストをする形態で、血の濃さは残るものの両者の相性は良好。また、きめ細かく血を生かした配合で、特殊な仏系であるTorando~Tourbillon~Ksarをしっかりと抑えたのは好感が持てる。惜しむらくは、全体の結合だけでなく前述した仏系を含む7代目以降の血の結合が弱い点で、スタミナ優位の血統構成である事も相まって、開花には時間がかかると予測される点か。本質は、父のイメージ通り芝の中~長距離で真価を問いたい血統構成だと言える。ダートはこなせる程度。蛇足だがフェノーメノ×グラスワンダーは完璧では無いものの、かなり相性が良い事は指摘しておきたい。


リアルインパクト(ディープインパクト×トキオリアリティ― by Meadowlake)牡・08生

Ⅰ 主:5 結:5 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:0
合計:(35/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M □ I △ C × L ×
ダ:S 〇 M 〇 I △ C × L ×
芝適性:□ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:早め

主な勝ち鞍:2011年 マイルCS(G1) 2013年 阪神カップ(G2) 2014年 阪神カップ(G2) 2015年 ジョージライダーステークス(G1)

 主導は、非常にわかりにくいがMahmoud6・7・8・8×7の系列クロス。次いで、Pharamond(=Sickle)6・8・8×8。この両者で父父サンデーサイレンスのスピードを再現したのは見て取ることができる。この配合の最大の見どころは、Nothirdchance5×5の中間断絶が、Blur Larkspur・Sir Gallahad・Man o’Warなどの米系を内包し、スタミナの核となると共に、9代目に存在するSwynfordを通じ、主導たるMahmoudへと結合し能力参加できた点にある。また、血統全体として世代の問題を抱えてはいるものの軽微で、大きな欠陥が無いのは幸運。本質的にはマイル前後のダート向きと考えられるが、生きたスピードの血を考えると、芝対応への可能性は秘めていると言える。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、自身の配合が米系主体となっている為に、自身やその父ディープインパクトのイメージと異なり、芝向きのタイプを出す可能性はかなり低い。反面、強い影響を出すほどにメジャーだとは言えない、Nothirdchance内米系の血を再現しHail to Reasonの傘下におさめる事が自動的に出来るのは、種牡馬としては大きなセールスポイントだと考えられる。また、自身は父内の主要な血である、Almahmoud~MahmoudやHyperionの生かし方が弱いものの、国内においては非常にメジャーな血で、産駒の血統においては、この血の取り込みは必須だと言え、その為にNorthern Dancerのクロスを使うのは産駒においては有用だと考えられる(ただし、主導に据えるのは避けたい)。自身を再現する為に有用な主導候補はNothirdchanceを伴うHail to Reasonが第一候補かと考えられるが、母内に存在するRaise a Nativeに着目し、そのスピードを再現しつつ主導候補とする事も考えられるか。産駒の大部分はダートのマイル前後に向くタイプが多いと考えられるが、Lypardを活用する事で芝向きの産駒を出す可能性を残していることは指摘しておきたい。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Almahmoud~Mahmoud、Pharamond(=Sickle)、Nasrullah~(Mumtaz Begum~Mumtaz Mahal)~Nearco
バランス系:Native Dancer、Blur Larkspur、Man o’War
スタミナ系:Princequillo(Papyrus~Trecery)、Sir Gallahad~Teddy(Plucky Liege)
  その他:Hail to Reason~Nothirdchance(結合のアシスト、主導候補として)、Northern Dancer(結合のアシストとして)

〇注目の産駒
 スーヴェニアギフトの17
 主導は父母の傾向とは異なるものの、Raise a Native5×4の系列クロス。次いで、Tur-to・Nothirdchanceを伴うHail to Reason。父母に強い、米系を主導勢力へとしっかりと結合し、Hyperion等の欧州系のクロスもNorthern Dancerの中間断絶を通じ能力形成に参加しているのが見て取れる。また、本来結合しにくいCount Fleetだが、Prince Johnが系列クロスを形成した為、そのスピードを間接的に主導へと補給。さらに、きめ細かくクロスを作成した配合でDjebel(Torando)~Tourbillon~Ksarとクロスさせ、Gay CrusaderからPrince Johnを通じてそのスタミナを主導へと結合させたのは非常に妙味がある。本質的には、やや晩成型のダート向きのマイル~中距離タイプだと考えられる。血統構成は秀逸。



マジェスティックウォリアー(A.P.Indy×Dream Supreme by Seeking the Gold)牡・05生

Ⅰ 主:7 結:7 土:2 弱:1 影:1 集:7 質:4 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I △ C × L ×
ダ:S △ M 〇 I 〇 C □ L △
芝適性:△ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:早め

主な勝ち鞍:2007年 ホープフルステークス(G1)

 主導は、Secretariat3×4の系列クロス。その父Bold RulerからPolymelusまで連続でクロスし、またその母SomethingroyalがPrincequilloを伴い、父系・母系共に強い影響を示している。またSecretariat内部のDiscovery・Fair PlayやPomrey~Sun Briar~Sundridgeをしっかりと生かし、父母共に強い米系をしっかりと取り込むと共に、スピードを補給しているのを見て取ることができる。また、次いで影響の強いBuckpasserの中間断絶が、スタミナを補給するとともに、War AdmiralやBusinesslikeが系列クロスを形成し、結合の肝となっているのが見て取れる。この両者で名牝Weekend Surpriseに血を集合させたのが最大の長所で、スタミナタイプの配合でありながら早期の活躍ができた要因だと考えられる。反面、Hyperionをはじめとした欧州系の血がことごとく欠落したのも当馬の血統的特異性であり、血の濃さとバランスの悪さも相まって(影響度バランス 6-23-7-10)、潜在的な成長力は秘めていると想定されるものの、突然の不調や故障に注意が必要な血統構成だとも言えるだろう。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、国内でも比較的浸透しているBold Rulerを継続的に利用しつつ、自身に強い米系をBuckpasserクロスによってまとめる事が比較的たやすいとは言える。また、Mr.Prospector内の血の生かし方は悪くなく、この血を利用するのも一つの手であるだろうか。前面で強い影響を持ちやすい血がSecretariat・Buckpasser・Mr.Prospecter程度で、産駒の血統が比較的シンプルになりやすいのも指摘しておきたい。また、自身が切り捨てた欧州系のHyperionやMahmoud等は国内で非常にメジャーな血である為に、産駒においてはクロスするのがほぼ確実だが、これらの血を纏める為にNorthern Dancerのクロスは有用。ただし、自身の血統構成から見て強い影響を持たせるのは避けたい。以上の様な理由から、産駒の大多数はダートの中距離タイプだと考えられる。芝対応可能な産駒を望むのはかなり難しいだろう。ある意味、国内でなかなか見られない個性的な種牡馬である。

 産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Bold Ruler~Nsurullah、Tom Fool~Menow
バランス系:Native Dancer、Blur Larkspur、War Admiral~Man o’War
スタミナ系:Somethingroyal~Princequillo、Sir Gallahad~Teddy(Plucky Liege)、Buckpasser
  その他:Northern Dancer(結合のアシストとして)、Secretariat(主導候補として)

〇注目の産駒
 ウエスタンダンサーの17
 主導は、父の傾向を引き継ぎSecretariat4・5×4の系列クロス。Northern Dancerの中間断絶で結合をアシスト。4代目に存在するSecretariatでは、結合が弱くなりがちなTeddy系をHail to ReasonやTom Foolのアシストもあり、比較的強固に結合が果たされたのは幸運。また、結合こそ果たされていないものの、My Babuが7代目から系列クロスを形成するなど、欧米系が入り混じる血統でありながら、意外ときめ細かい血統とも言えるか。血の集合は父父であるA.P Indyにはかられており、好調期には強い競馬を見せる可能性は秘める。惜しむらくは、母方において弱点を存在させている点で、安定性には欠ける可能性を否定できない点と、デヒア内にも存在する弱点よりも、母母内Colorspinが完全に離反した事が、能力の限界を招くか。本質はダート単距離タイプで、芝適性には欠ける。


エスケンデレヤ(Giant’s Causeway×Aldebaran Light by Seattle Slew)牡・07生

Ⅰ 主:5 結:7 土:3 弱:3 影:2 集:3 質:3 再:6 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M □ I △ C × L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:△ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:〇 成長型:普通

主な勝ち鞍:2010年 ウッドメモリアルS(G1) ファウンテンオブユースS(G2)

 主導はやや不明瞭だが、Bold Ruler5・6×5の系列クロス。次いで、Cosmah6×5の系列クロス。また、Polynesianを伴うNative Dancer6×5・6の影響もかなり強い。また、これら三者の血の流れが異なる上に、特定の部分への集合が図られていない為、これらを連合勢力とは認めがたく、主導としては不明瞭だと言える。しかしながら、この三者の結合は比較的強固に行われ、最前面で配された、Northern DancerやHail to Rasonが結合のアシストを行いつつ、主導勢力と連動している。また、PrincequilloがPapyrus~Treceryとクロスし、Northern Dancerの中間断絶を通じて連動したのは、非常に妙味がある。この連動性が、競走馬エスケンデレヤの能力形成に大きな寄与を果たしていると言って良い。血の集合は前述の通り散漫なものの、父母の傾向をほぼ引き継いだ為、開花率は比較的高く、開花速度も比較的早いと予測される。全体的には米系の影響が強く、本質的にはダートマイル前後向きの血統構成だと言える。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、国内でも比較的浸透しているBold Ruler・Hail to Reason・Northern Dancerが引き続きクロスし前面で影響を持つ配合が基本だと考えられるが、一番可能性が高いのは自身が5代目にHaloを抱え、その母Cosmahから系列クロスを作成している為、サンデーサイレンス由来のHalo主導が多数派となると予測される。その意味でサンデーサイレンスの血とは相性が良いものの、BMSにサンデーサイレンスを配した場合Haloが6×3と世代ズレを起こす点には注意が必要(ただし、その場合でもサンデーサイレンスのスピードを再現する事はでき、その意味でハービンジャーと似たような部分を持つ)。また、自身ではそのスピードを再現したものの、眠っているAlydar~Raise a Nativeに着目し、自身と同じようなダート向きマイラーを出すことも可能で、長距離向きのタイプは厳しいものの、芝・ダート共に国内向きのスピードに良さがある産駒を出す可能性は、比較的高い種牡馬だと言える。ただし、前面でStorm CatやRoberto、Secretariatを持つため、シンプルな配合になりにくいという側面もあり、前面のクロスをある程度選定する必要が高い種牡馬だとも言え、基本はダート向きの種牡馬か。また、あまり見られないが、BMSダンスインザダークとは一定の相性の良さがあることを指摘しておきたい。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Coamah~Almahomoud、Bold Ruler~Nasrullah、Raise a Native、Lady Angela
バランス系:Native Dancer~Polynesian、Discovery~Display、Blue Larkspur
スタミナ系:Sir Gallahad~Teddy(Plucky Liege)、Princequillo(Papyrus~Trecery)
  その他:Halo~Hail to Reason(主導勢力及び結合のアシストとして、ただしSecretariatと共存させるのは避けたい)、Northern Dancer(結合のアシストとして)、Secretariat(主導勢力として、ただしHaloと共存させるのは避けたい)

〇注目の産駒
 ニホンピロシュラブの17
 主導はHalo6×4の系列クロス。次いで、Lady Angela7・7×6・7・8。この両者で、BMSデュランダルを強調し、父母の持つスピード要素を再現している。父の主導であったBold Rulerは欠落するものの、その内部の血は生きており、さほどのマイナスでは無いと考えられる。また、その部分以外においては良く父母を再現し、デュランダルを強調した点も相まって、国内向きのスピードに良さがあるマイルタイプ。父とデュランダルの相性はかなり良好で、デュランダルの能力の一端を担ったHeliopolis等、デュランダル内は、きめ細かく血を再現できる。また、母母内マルゼンスキーの血が自身と連動しBull PageのスタミナやMenowのスピード等がしっかりと生き、主導と直接結合した点も指摘しておきたい。惜しむらくは、父の数少ないスタミナ源であったPrincequilloの結合が10代目になった点で、距離延長に対する適性は低いと考えられる。本質的には、BMSデュランダルのイメージと似て芝向きのスプリント~マイルタイプ。開花は早いと考えられるが、ただの早熟タイプでも無い。


ウインバリアシオン(ハーツクライ×スーパーバレリーナ by Storm Bird)牡・08生

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:3 影:2 集:5 質:3 再:6 SP:3 ST:3 特:0
合計:(41/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I □ C □ L ×
ダ:S × M □ I □ C × L ×
芝適性:□ ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:普通 成長型:早め

主な勝ち鞍:2011年 青葉賞(G2) 2014年 日経賞(G2)

 主導は、Northern Dancer5×3・5を呼び水にした、Almahmoud5・7×5・7の系列クロス。次いで、Nearco7・7・8・9・9×5・7・8。実質的に強調されたBMSのStorm Bird内Northern Dancerが主導。強調されたStorm Bird内の生かし方は非常に良好で、この部分が競走馬ウインバリアシオンの能力の中核だと言える。また、父内に存在するトニービン・ビューパーダンスが抱える、欧州系のスタミナ勢力の再現も良好。惜しむらくは、父母の抱える欧米系のクロスを満遍なく抑えたが、クロス馬の種類66が表しているように、全体の結合がやや間接的で、一息もどかしい血統構成だと言え、父の様なシンプルな配合にはならなかった点である。とは言うものの、母内Northern Dancerが3代目に存在する点と、Revoked・Precpitecの結合アシストにより、欧米系のクロスをNorthern Dancerと連動させた点には見どころがある。血統構成的には芝・ダート共にこなせる下地はあるものの、ややどっちつかずとも言えるか。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、父同様にNorthern Dancerをクロスさせる産駒が大多数だと考えられるが、その場合、強調されやすいStorm Birdが比較的ダート向きになりやすい点は注意が必要か。また、Lypardクロスを作成するのも、父の再現や芝対応力を上げる点において非常に有効だが、Northern Dancerとの位置に問題を残すため、現実的な選択肢としてはやや疑問が残る。また、欧米系が入り混じる血統構成を持つが、自身の血統でそれらを取りまとめる事ができたのは、Northern Dancerが3代目からクロスをした点が大きく、産駒の血統において同様にクロスを作成したとしても、その部分の再現が困難になる点は考慮する必要がある(最も、これはウインバリアシオンだけが抱える問題では無く、むしろ比較的解決しやすい血統である部類ではある。)。以上の点を考慮すると、産駒の大多数は父同様に芝・ダートとも適性を秘める産駒の輩出が多くなると考えられるが、父をよく再現した場合、クロス種類の多さも引き継ぐ可能性が高く、スピードの引き出しに時間がかかる可能性が高くなりがちで、父同様に詰めの甘いタイプが多くなると考られる。また、産駒の血統において大きな弱点ができそうな箇所が少ない点も加味すると、じわじわと力をつける、やや晩成型の産駒が多数派を占めると考えられる。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Almahmoud~Mahmoud、Sickle(=Pharamond)、Nasrullah、Khaled
バランス系:Blur Larkspur、War Admiral~Man o’War
スタミナ系:Court Martial(Hurry On)、Bull Lea~Bull Dog(=Sir Gallahad)~Teddy(Plucky Liege~Speamint)、Revoked・Precpitec
  その他:Storm Bird~Northern Dancer(主導候補として)、Hail to Reason(結合のアシストとして。他の種牡馬よりその存在は重要だと考えられる。)

〇注目の産駒
 ダーティダンシングの17
 主導は、Northern Dancer4・6・6×5の系列クロス。次いで、Rockefella、Nasrullah。この両者によって、スタミナとスピードをバランスよくアシスト。また、父自身をよく再現しているものの、雑多に存在する欧米系のクロスをHail to Reason及び、Damascusの単一クロスによりしっかりと主導と連動させたのが最大の長所。特に、Damascus内は、Sun Agein・Djebel・Blue Larkspur・Sickle(=Pharamond)・Tetratema・Fair Playときめ細かくおさえている。Damascusは、現代的なサラブレッドが抱える欧米系を持ち、Hail to Reasonと似たような働きをする。その浸透度の低さからあまり見られないものの、非常に有効なクロスとなりうる可能性が高いと言え、当馬の血統内においても欠かせない働きをしている点は指摘しておきたい。惜しむらくは、母母内のVaguely Nobleが抱えるスタミナ勢力の再現が弱い点だが、国内においては有利か。本質的には芝向きの中距離タイプだが、ダートも一応はこなせる下地がある。血統構成的には十分妙味がある内容。


クラグオー(クラキングオー×クラシャトル by ワカオライデン)牡・10生

Ⅰ 主:6 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:2 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(37/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C □ L ×
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:晩成

主な勝ち鞍:14年 ステイヤーズカップ(H1)

 主導は、父母の傾向を引き継ぎNasrullah6・8×5・6・7の系列クロス。次いで、Persian Gulf6×5及びFlaring Top6×6の系列クロス。この両者によってバランスよくスピードとスタミナを補給し、極めて明確にとはいかなかったものの、Nasrullahの主導を良くアシストしている。また次いで影響の強い、War Admiral、月友、プリメロ(=アスフォード=Harina)からスタミナを補給しており、見た目の血統よりも良さがあると言えるだろう。また、自身の血統を構築する上で重要な血の大部分を、強調した母母クラネバダンサーに集合し、血統全体をリードしているのも、評価に値するだろう。惜しむらくは、全体的に外交的な配合である事も相まって、Native Dancerがそのアシストをするものの結合の弱さが見られる点で、開花には時間のかかるタイプだと言える点だろうか。しかしながら、結合が弱いとは言うものの、7代目以降の血の生かし方も良く、じわじわと力をつけていく晩成タイプ。生きた血を追った場合、本質的には芝向きだが、米系の影響も強い為、ダートもこなせると考えられ、距離適性の幅は比較的広いタイプ。極めて良好とは言えないものの、親子2代のステイヤーズカップ制覇も頷ける血統構成ではある。
 アトランダムな配合において想定される産駒の特徴は、前面において主導候補となりえる血が自身の主導となったNasrullah直系である、Never Bend、Bold Ruler、Never Say Dieを同位置に抱えたため、自身の継続は比較的たやすいと考えられるものの、主導とするのはこのうちの一つを選ぶ形態が好ましい。また、自身のスピードをアシストしたFair TrialがCourt Martialの父として存在する為、この血を主導とするのも好ましいとは言える。しかしながら、これらを主導に据えたとしても、自身が抱える欧米系の血を取りまとめるのはかなり困難で、結合のアシストとして、血統全体が重くなるのを承知の上で、自身も活用したNative Dancerや眠ったままのNorthern Dancerクロスは必須だと言える。また、視点を変えて、マルゼンスキーの生かし方が良い点を利用し、マルゼンスキー~Nijinskyを主導に据えるのも面白くはある。これらクロスが存在しない場合、産駒の限界点は低くなりがちで、この部分は、2010年生でありながらNasrullahを主導とした当馬が、種牡馬として抱える問題点の一つだとは言えるだろうか。これらを考慮すると、芝向きもダート向きの産駒を出せる下地があるものの、開花に時間がかかるタイプが多くなりがちな上に、産駒の成長力はやや欠けるタイプが大多数になると予測される。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Nasrullah、Flaring Top~Menow、Fair Trial、Sun Worship~Sundridge、Tetratema~The Tetrach
バランス系:War Admiral、Persian Gulf
スタミナ系:月友、プリメロ(=アスフォード=Harina)、Tourbillon、Bull Lee~Bull Dog(=Sir Gallhad)~Teddy(Plucky Liege~Speamint)
  その他:Native Dancer(結合のアシストとして)、マルゼンスキー~Nijinsky ~Northern Dancer(主導候補及び、結合のアシストとして)、Never Bend、Bold Ruler、Never Say Die(それぞれ主導候補、もしくはスピードアシストとして)

〇注目の産駒
 ポンデュガールの17
 主導は、父母の傾向を引き継ぎ、Never Bend5×5の系列クロス。次いで、Lady Angela。父同様にNative Dancerが米系の結合をアシストし、父では眠っていたNorthern Dancerの中間断絶が結合をアシスト。主導内は、Djebel~Tourbillonだけでなく、Black Toney、Blue Larkspurがクロスし、非常にきめ細かいのが最大の長所。また、Ribotが7×5とクロスしスタミナの核となり、そのスタミナを裏付けるPapyrusをクロスさせるだけで無く、このPapyrusを通じて、本来結合しにくいPrincequillo~Prince Roseがそのスタミナを補給し、間接的にでも主導と連動しているのは注目に値する。惜しむらくは、Teddy系をはじめとした結合が弱い点と、血の集合が散漫な点で、開花には時間がかかると予測される点か。しかしながら、見た目の血統よりはるかに良さがある内容で、本質は芝の中距離向きタイプ。当馬の所属がどこになるかは不明だが、親子三代ステイヤーズカップ制覇の資格は十分。国内唯一となった、貴重なマルゼンスキー直系の血をつなげる活躍を切に望みたい。


ゴールドシップ(ステイゴールド×ポイントフラッグ by メジロマックイーン)牡・09生

Ⅰ 主:5 結:6 土:3 弱:3 影:1 集:4 質:2 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(36/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

主な勝ち鞍:2012年 皐月賞(G1) 菊花賞(G1) 有馬記念(G1) 共同通信杯(G3) 2013年 宝塚記念(G1) 阪神大賞典(G2) 2014年 宝塚記念(G1) 阪神大賞典(G2) 2015年 阪神大賞典(G2) 天皇賞・春(G1)

 主導は、Princely Gift5×5の系列クロス。次いで、Northern Dancerを呼び水にしたAlmahamoud5・7×7。Lady Angela6・7×7。この3者をスピードの核として、日本的スピードに非常に恵まれた血統構成となっている。また、血統全体で欧米系が入り混じった配合ではあるものの、Hail to Reasonの単一クロスでこれを結合しており、わりとありふれた内容ではあるものの理にかなった血統構成だと言える。また、影響度こそ0であるもののBMSメジロマックイーンのスピード・スタミナは再現されており、弱点の無い血統構成と相まって安定感はある血統構成(ステイゴールド×メジロマックイーンの相性の良さは、メジロマックイーンの再現が良好になる為。ただし、影響が極めて弱い為手放しでニックスとまでは言えない)。
 アトランダムな配合においては、主導をとりやすい血がノーザンテースト、The Minstrel程度しか無く、自身の傾向を産駒に引き継ぎやすい点は、種牡馬としての大きなセールスポイントで、この部分においては父とBMSまで同じ配合であるオルフェーヴルよりは上だと想定される。また、それら主導候補で血を纏めるのが困難な為、Hail to Reasonのアシストは必須に近い。ただし、前面でスタミナを補給する血の少なさがネックの為、父ほどの長距離適性を持つ産駒は少数だと考えられるが、メジロオーロラを上手く生かせば父を彷彿とさせる産駒を望めるか。前述した、ノーザンテーストとThe Minstrelの呼応でダート向きの産駒も出せる点は指摘しておきたい。また、勝ち上がり自体は早い産駒が多いと考えられるが、そこから伸び悩む産駒が多数派になると予測される。また、主導をどれにするかにもよるが、ディクタスやシェリルのクロスで結合のアシストをする形態も考えられるか。

産駒において、おさえておきたいキーホースは以下の通りです(これらすべてをおさえれば優駿と判断するものでもありません)。
スピード系:Princely Gift~Nasrullah、Almahmoud、Lady Angela
バランス系:Mahmoud
スタミナ系:Prince Chevalier、リマンド~Alcide~Alycidon、ヒンドスタン~Bois Rouseel
  その他:ノーザンテースト(The Minstrel)~Northern Dancer(主導候補として)、Hail to Reason(結合のアシストとして。ただしサンデーサイレンス~Haloをクロスさせて強い影響を持たせるのは避けたい)

〇注目の産駒
 ウッドシップの17
 主導はNorthern Dancer6・6×6・4の系列クロス。このクロスはBMSクロフネと呼応してのもので、その父Nearcticから系列クロスを形成。4代目にあるNorthern Dancerはこの世代の産駒としては珍しく、明確に主導として機能している。また主導で拾えないクロスを、血の流れが異なるものの、Hail to Reason5・7×7を伴うRoberto6×6が結合をアシストしつつ、明確では無いもののスタミナの核として機能している。また影響こそ弱いもののメジロマックイーンの再現も良好。惜しむらくは、血の集合がやや散漫な点と、強調された母母内フィリップオブスペインに弱点を派生させた点。ややムラのある中距離タイプで芝・ダート共にこなす下地はある。また、蛇足だが父とBMSクロフネはかなり相性が良く、母母次第で優駿が狙える可能性がある事を指摘しておきたい(本質的には、ステイゴールド産駒とクロフネの相性が良い)。


相変わらずの乱筆乱文ですが、どうかご容赦ください。今回の血統徒然草は、このあたりで筆を置きたいと思います。

種牡馬考察 ノヴェリスト

2019-01-14 22:21:08 | 種牡馬考察

 今回の血統徒然草は、独競馬の至宝とも言え、鳴り物入りで国内に導入されたものの、種牡馬として伸び悩んでいるノヴェリストに対する考察をおこないたいと思います。
 ※血統評価は以前に行っておりますが、評価基準が変わっていますので、再度掲載しておきたいと思います。


ノヴェリスト(Monsun×Night Lagoon by Lagunas)牡・09生

Ⅰ 主:8 結:8 土:3 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:0
合計:(44/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

〇 短評

 主導は父母の血の流れをある程度維持した、Birlhahn5×5・7・8を伴うLiterat4×4の系列クロス。途中Alchimistで断絶するものの、血統全体でBay Ronald系の流れが強く、極めて明確にとはいかなかったものの、血統全体を強力にリードしている。また、6代目までに存在するクロスは、Donatelloを除き主導たるLiteratと直接結合を果たし、DonatelloもSwynfordを経由しToradoによって連動を果たしている。反面、7代目以降のTeddy系をはじめとした米系の結合の弱さが残るものの、全体で少数派である点を踏まえると、強固な結合力を持っていると判断してよいだろう。惜しむらくは、前述の米系の生かし方の弱さや、その副産物としてNijinsky内のFlaming Pageなどに弱点を派生させている点や、スピード源としてのMahmoudやBlue Peterの欠落だが、明確な主導勢力に導かれた血統構成は非常に魅力的で、Hyperion、Tourbillon、Donatelloを中核とした質の高いスタミナの強靭さは、近年では非常に貴重な血統で、これぞ独血統の結晶と言える妙味のある血統構成だと言えるだろう。本領発揮は、ハイペースでの12F以上の芝の長距離戦だと言え、仮にこの血統が国内でデビューした場合、スピード不足のレッテルを貼られ、勝ち上がりにさえ苦労すると予測されるだろう。
 また、独土着の血統を明確な主導勢力とした血統は、国内で言えばテスコボーイ~トウショウボーイ~ミスターシービーや、パーソロン~シンボリルドルフ~トウカイテイオー、メジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンを系列クロスにし、主導へと据えるのと同様の行為であり、このような血をしっかりと生かす、独生産界への深い畏敬の念を抱くものです。


 このような血統構成を持つ、ノヴェリストですが国内の種牡馬成績は期待を大きく裏切るものとは言わないまでも、やや不満が残る現状と言えるでしょうか。2018年の種牡馬成績は総合で47位、AEIは0.74となっています。決して、致命的に悪いとは言えませんが、父の記録した競争成績や、そのイメージからくる重厚さとはややかけ離れた産駒が多く、2勝目をあげるのに苦労する産駒が大部分です(父の種牡馬としてのイメージと産駒を比してとの意味です。国内競馬において、中央で1勝をあげる事は非常にハイレベルな事だと認識しています。また19.1.14に産駒のラストドラフト(2B)が、自身産駒としての初重賞制覇を成し遂げました)。では、種牡馬ノヴェリストとして、自身の血統を踏まえた上で、繁殖牝馬にはどのような血を求めるのかを考察してみたいと思います。

①  自身の血統構成のほぼ全てである、独血統を牝馬側で抱えている事。具体的にはTicino、Literat~Birkhahn~Alchimist~Heroldなどに代表される、独土着の血統。
②  スタミナの確保の為に、自身の中で重要な役割を果たしたHyperion、Tourbillon、Donatello(Mieuxce~Massine)等の再利用。もしくは、その直系子孫であるCrepello、Aureole等を利用したい。
③  自身は極めてスタミナ的な配合で、それゆえの欧州12F戦線での好成績でしたが、国内向きの産駒を考える場合、スピードの再現は必須だと言えるでしょう。具体的には、自身が欠落させたMahmoudや、その仔や孫であるAlmahmoudやNatalma。もしくはNijinsky内のMenowや、国内で比較的多いCaro~フォルティノ~Grey Soveregin~Nasrullah。または、自身がHyperionの強い血統なので、その仔であるLady Angelaなどが考えられます。ただし主導勢力との結合を考えての取捨選択は必要だと言えるでしょう。
④  自身はNijinsky内の米系である、Bull Dog等のTeddy系やBlue Larkspur~Black Servantを欠落させているが、国内では米系の浸透が進んだために、かなりメジャーな血となっている。その為に産駒の血統においては、ほぼ自動的にクロスするが、これらの血はノヴェリスト自身の血統において、わずか1連しか存在しない為、これらの血を中核に据えるのは避けたい。
⑤  主導勢力として考えられるのは、AlmahmoudやCrepello~DonatelloもしくはNijinsky~Northern Dancerが、多数派に考えられる。自身の主導勢力であったLiteratは、国内においては非常に少数派の為、アトランダムな配合においては自身を強調する産駒よりは、母方を強調する産駒が多いものと考えられる。また、前面において多種のクロスを作るような配合はおそらく少数派で、産駒はシンプルな構成になりやすいという利点はある。
⑥  ハイレベルな産駒を望む場合、繁殖牝馬側に独系統の血を豊富に抱える事は必須で、それだけに現代の国内の繁殖プールは当馬にとって逆風であると言え、この部分を欠落させた産駒は早期の勝ち上がりや、シンプルさからくる短距離的なスピードを見せる事はあっても、父のイメージ程の成長力や、距離延長に対する適性を見せる可能性は極めて低いと考えられる。

また、以下に国内におけるメジャーなBMSとの相性を記載しておきたいと思います(評価は、×~△~□~〇~◎の5段階としています)。また、あくまでも血統表の3/4のみの考察です。血統は全体を見るもので、父および母父のみで語る血統評価はナンセンスです。

〇サンデーサイレンス(△)2018年BMSランキング1位

 主導はAlmahmoud7・8×5の系列クロス。母父であるサンデーサイレンスの再現自体は良好で、世代ズレも存在しない。父産駒としてはスピードに恵まれたマイルタイプ。ただし父母の持つイメージからくる成長力を見せる為には、母の母方のアシストが必要不可欠で、やや片手落ちの血統構成。

〇フレンチデピュティ(△)2018年BMSランキング2位

 主導は中間断絶ながら、Northern Dancer5・6×5。Nasrullahは世代ズレを起こしている。フレンチデピュティ自身は米系が強い配合で、相性が良いとは言えないものの、TornadoがTourbillonを伴いクロスし、仏系の生かし方自体は悪くは無い。

〇キングカメハメハ(□)2018年BMSランキング3位

 主導は、Northern Dancerを伴うNijinsky4×6。この時点では、父産駒として比較的可能性を秘める配合だとは言えるが、産駒はスピードに欠けがち。しかしながら、父内独系が壊滅的となるのは他の種牡馬と変わらないものの、Djebel~Tourbillonをおさえ、世代のバランスも良好。母の母方次第で優駿排出は可能だが、スピードの引き出しが課題となる産駒が多くなりがち。

〇ブライアンズタイム(×)2018年BMSランキング10位

 主導はBull Lea8×6の系列クロス。この主導はブライアンズタイムとしては都合が良いが、ノヴェリスト内には一連しかなく、その意味でも両者の血統的な相性は良いとは言えない。また、Nasrullahが世代ズレを起こし、スピードに欠ける産駒が大多数となりやすい。

〇ディープインパクト(□)2018年BMSランキング14位

 主導は、Northern Dancerを呼び水にした、Almahmoud7・8×6・8及びCrepello6×6の系列クロス。両者をスピード・スタミナの柱とする血統構成だが、父内独系統は壊滅的。父サンデーサイレンスを配した場合より距離は持つが、自身を彷彿とさせるステイヤーの輩出は母母方のアシストが必要。相性自体は悪くは無い。

〇トニービン(□)2018年BMSランキング15位

 主導はHyperion7・7・8・8・9・9×5・7・7の系列クロス。他に前面で強い影響を持つクロスは無く、Hyperionは自身に強い血でもあったのでこの血を主導に据える事自体は悪くは無い。また、Grey Sovereginが8×6と続きスピードには比較的良さが出る。ただ、父内の生かし方は弱く、ここが課題。

〇マンハッタンカフェ(□)2018年BMSランキング19位

 主導は、Almahmoud7・8×6の系列クロス。Northern Dancerのアシストが無い為、主導勢力のみで血統をまとめる事が困難ではあるものの、マンハッタンカフェ内の、Santa Lucianaが自身と呼応し、不完全ながらも自身の血統を再構築できる。母の母方次第では優駿排出が可能なBMSで、サンデーサイレンス系の中では相性が良い方。


 簡単な考察ではありますが、種牡馬ノヴェリストが求める繁殖牝馬の血統構成を箇条書きで上げてみました。ざっと見た感じで解るかとは思いますが、クラシックディスタンスで古馬以降において活躍する産駒を輩出するのが、極めて難しい種牡馬だと言えるでしょう。これはノヴェリスト自身の問題と言うよりは、それに対応できる繁殖牝馬群の希少さの方に大きな課題があると言えるでしょうか。それだけノヴェリスト自身の血統構成は素晴らしいものです。これだけの名血を国内に連れてきた以上は、しっかりと継続させ、かつ世界に還元する必要があるのではないでしょうか。
 では、種牡馬ノヴェリストの優駿を国内で望むのは難しいのでしょうか。あくまでも紙面上ではありますが、国内に繋養されている繁殖牝馬との仮想配合を考えてみました。以下に記載したいと思います(あくまでも紙面上の事ですし、関係者に問い合わせる等またそれに類する行動を決してしないでいただきたいと思います)。

(ノヴェリスト×フィオドラ by Lord of England)-・-生

Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:2 影:3 集:5 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:1(主導牝馬クロス)
合計:(45+1/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L ◎
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父の傾向を引き継ぎLiranga4×4の系列クロス。次いで、Northern Dancerを伴うNijinsky。この両者で、父母を強調し血を集合。この配合の最大の見どころは、Crepello内でMiuxce~Massineとクロスさせ、そのスタミナの裏付けをより強固にしたうえで、それを主導であるLirangaが丸々抱えこみ、明確なスタミナの核とすると共に、主導勢力とすることを同時に成し遂げた点にある。また、自身に弱くはあるものの存在するTeddy系やBlue Larkspurを、Nijinsky内でクロスさせBlandfordを通じ結合。主導勢力をアシストした点にも非常に妙味がある。近年、国内どころか世界的に見る事が出来なくなった真正ステイヤーの血統で、父の再現をほぼ成し遂げている。課題は、AlmahmoudやMenowの落失からくるスピード不足だが、Djebel~Tourbillonの仏系まで、きめ細かく血をおさえ血統構成は非常に優秀。完全開花した場合、欧州の12Fでも自ら競馬を作れるほどの質実剛健な配合。上記配合はあくまでも仮想配合ですが、母は実在します。おそらくノヴェリストが独国内に残った場合、こうした配合馬を輩出することは国内よりはたやすかったでしょう。事実、母は2014年ディアーナ賞(独オークス 芝11F)の勝ち馬です。父は前述したように独血統の結晶で、こうした種牡馬を国内に連れてきた以上は、その血をしっかりと還元できる国内生産界であって欲しいと願います。

(ノヴェリスト×ファインセラ by サンデーサイレンス)-・-生

Ⅰ 主:7 結:5 土:3 弱:2 影:1 集:6 質:3 再:4 SP:3 ST:4 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M △ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父母の傾向と異なり、Northern Dancerを伴うNijinsky5×4。次いで、Almhamoud、Pharamond。この主導勢力やアシストする血、更には影響度バランス(0-5-4-7)でわかるように、父を生かした配合では無く、どちらかと言えばBMSサンデーサイレンスの孫という趣のある血統構成をしている。しかしながら、父内の独系が母の母ビワハイジ内のSanta Lucianaと呼応し、父内の血をしっかりと能力参加とまではいかなくとも、再現しているのは見て取ることができる。惜しむらくは、これらの血を主導勢力たるNijinskyがまとめられなかった点だが、母内の米系を生かし主導内へと取り込んだのは幸運。本質的には、父のイメージ通り(中身は全く異なるものの)、芝の10F以上に向く。また、BMSサンデーサイレンスのスピードを再現し、それを主導勢力に取り込んだため、国内の芝レースへの対応力を一応は備えていると考えて良い。祖母であるビワハイジをはじめとしたアグサン系は、Santa Lucianaを含むため(マンハッタンカフェとも相性が良いのはこの為)、基本的に相性が良いのは指摘しておきたい。ただし、父の国内での種牡馬としての限界が見える配合である点もまた確かか。

 血統構成から見て非常に難しい種牡馬ではありますが、自身が競馬場で見せたハイパフォーマンス(2013年におけるキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(アスコット 芝12F)において5馬身差で圧勝し、勝ちタイム2分24秒60のレコード)を再現できる産駒の登場を願ってやみません。


 相変わらずの乱筆乱文をご容赦ください。本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。

種牡馬考察 キズナ

2018-09-09 00:10:08 | 種牡馬考察
種牡馬考察 キズナ

今回の血統徒然草は、2013年の日本ダービー馬キズナの種牡馬としての可能性を簡単に考察してみたいと思います。

 まず、キズナ自身の血統評価ですが自己診断で以下の様に判断しています(以前の診断項目とは異なり、新項目を用いての評価になります。従ってやや評価が異なっています)。

Ⅰ 主:6 結:8 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 芝:8~12F(10) ダ:8~11F(9)
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅲ 開花率:△ 成長型:普通 距離短縮適性:□ 距離延適性:〇

 主導はNorthern Dancer5×4の中間断絶を呼び水にした、Almahmoud5×6・7及び、DonatelloⅡ6×5の系列クロス。実質的にはNorthern Dancerがひとまず主導と考えてよい。従って決して明瞭では無く、結果的に強調された母母Pacfic Princess内はDonatelloⅡの主張が強く、その意味でもやや評価を下げざるをえない。しかしながら、血統内の血を集めているNorthern DancerがAlmahmoudを内包していること。次に影響の強いDonatelloⅡも、その父Blenheimを通じてその傘下に収まったのは幸運。また本来結合しにくいSomethingroyalも母内のNorthern Dancerが4代目に存在するため、9代目Polymelusで直接結合を果たしているのは、非常に幸運だと考えてよい(この部分は父ディープインパクト、母父にStorm catを配すると自動的に作成される形態で、この2頭の相性の良さの根源だと言えます。しかしながら、位置的な問題まで考えると決してバランスが良いとは言えず、個人的には一定の相性の良さを認めるものの、ニックスまでとは言えないと思います)。
 結合面においては6代目までにおける影響の強いクロスはSun Againを除き、実質的主導のNorthern Dancerへと直接結合を果たし、Sun AgainもSir Gallahad内Spearmintを通じAlmahmoudと連動を果たしている。7代目以降におけるMan o’WarやBlue Larkspurに代表される米系の取り込みが弱いものの前面に配されたクロスの連動性は高いと考えて良い。
 スピード・スタミナ勢力においては非常に強靭で、スピードは主導たるAlmahmoudを中核にPharamond(=Sickle)。スタミナ勢力はさらに強靭で、DonatelloⅡ・Aurora~Hyperion・Somthingroyal~Pincequilloと非常に隙が少ない。惜しむらくは、父の決め手の源となったと考えられるTurn-toや、スタミナ勢力となりうるCourt Martialの欠落だが、全体的には妙味のある血統構成で開花率が高いとは言えないものの、底力のある芝向き中~長距離タイプ。

 この血統を踏まえて、キズナが種牡馬となった際に、どのようなタイプの種牡馬になるか考察を行いたいと思います。

①  自身の主導はNorthern Dancerを呼び水にしたAlmahoudだが、現代の繁殖牝馬プールを考慮すると、その継続は比較的たやすい。しかしながら、そのままNorthern Dancerを継続した場合、結合の弱さを招きやすく、血が濃くなるマイナスを考慮しても、その子LyphardもしくはStorm Birdを使う事も念頭においた方が良い。ただし位置の関係においてLyphardを用いる場合はStorm cat内Northern Dancerの影響が強くなるのはマイナスで、母となる繁殖牝馬内においてLyphardの位置(できるならば母内3代目に配し母方を強調する構成を作る)を考慮する必要がある。
②  Northern Dancerを主導に据えた場合において、血の濃さのマイナスを回避できるものの、結合面の弱さを解消する必要がある。その際において父内Hail to Reasonの単一クロスを利用したい。間接的な結合になるものの、父キズナ自身のウィークポイントの一つでもあった米系のMan’o War・Blue Larkspur・Sir Gallahad等を取り込む事ができるのは、血統が1世代進むキズナ産駒において、有用なクロスだと考えられる。
③  前面において主導となりやすい血は、前述したNorthern Dancer・Alzao~Lypard・Storm cat~Storm Birdの他は、サンデーサイレンス~Halo~Hail to Reason、Secretariat~Bold Ruler、Acropolis~DonatelloⅡだと考えられるが、自身の傾向を引き継ぐ意味や抱えた血の内容からSecretariat~Bold Rulerの影響を強くするのはあまり得策とは言えない。またサンデーサイレンス~Haloクロスも当馬の血統において眠ったままの血であるため、傾向を引き継げないのは考慮した方が良い。Acropolis~DonatelloⅡの血を使うのは決して悪くないものの、米系の結合の弱さが残る点とスタミナ優位の構成になりやすく、相当のスピードの援護を考える必要がある(質や傾向の引き継ぎの意味において、決してマイナスでは無いものの勝ち上がりにさえ苦労するタイプになると想定される)。
④  前述したように、キズナの血統構成は、欧米系が入り混じった血統構成である。割合として6:4程度と、非常に現代的な血統構成をしていると言えるものの、この血の散漫さを解消する必要は、上位レベルの配合を望むのなら必要である。具体的には、米系のMan’o War・Blue Larkspur・Sir Gallahad(=Bull Dog)だけでなく、仏系のKsar・Court Martial(Hurry On)をクロスさせ前面で作る主導へと結合させる必要がある。
⑤  忠実に自身の再現を試みた場合、スタミナ優位の血統構成になると考えられるが、これをサポートするスピードの血を主導勢力と連動させる必要がある。自身はPharamond(=Sickle)のアシスト(希代のスピード馬サイレンススズカの主導)によりスタミナ優位の血統でありながらスピードも兼備した血統構成を作り出したが、この部分を再度再現する必要がある。
⑥  スタミナの再現の為に、自身の血統内において主張が強かったDonatelloⅡ・Aurora~Hyperionの再利用を考える事が好ましく、主導となりやすいNorthern Dancerとの連動の強固さを考えても、このスタミナ源を使う事が理想的。
⑦  自身において散漫であった血の集合や主導勢力の明確性を解消する為に、産駒の4代目程度に主導を配する事が望ましい。これはキズナ自身の血統で解消する事は非常に難しく、上位レベルを望むのであれば、ある程度母を選ぶ種牡馬であると言える。
⑧  主導勢力の部分でも述べたが、自身の血統構成を考えた場合、国内に浸透したサンデーサイレンスクロスや、ブライアンズタイムによるHail to Reasonを主導、もしくは強い影響を持たせる事は決して好ましいとは言えない(サンデーサイレンスのクロスを作り、該当の血統内において5代目以内に余分なクロスを作らなければ、可能性はあるものの極めて稀だと考えられる。Haloクロスに血を集合させたヴィクトワールピサの様な血統)。
⑨  国内外において想定されるBMSとの相性として、良好な部類に入ると言えるのは(あくまでも父とBMSまでの相性ですので、当該の配合を見たとしても母母内の血によって当然異なります)、Sadler’s Wellsに血を集合させやすいGalileoやMontjeu。ハービンジャー等のNorthern Dancerを系列クロスにできるデインヒル系(ただし、ハービンジャー牝馬を母に配した場合、Lyphardの位置の悪さとCrepelloのクロスによる日本適性の低下に注意が必要)。また同じデインヒル系であるRedoute’s Choiceは相性がかなり良好(BMSに配された場合は芝向きの血統を作りながらSomthingroyal~Pincequilloを再利用できる)。
逆に相性が万全とは言えないBMSとしては、血の再現としては悪くないものの主導や血の集合が不明瞭になりやすいキングカメハメハ。Bold Rulerが主導となり、産駒がダート向きとなりやすいフレンチデピュティ。ある程度の相性はあるものの、Hail to Reasonが自動的にTurn-toを伴う為、主導が不明瞭となりやすく産駒がダート向きになりやすい、ブライアンズタイムやクロフネ(クロフネ牝馬としてリュシオルは比較的相性が良いが、母母の血が良い為でクロフネとの相性の良さがあるわけではない)。Hail to Reasonが系列クロスを形成するものの、自身に強いHyperion・Blandford系の取り込みが非常に弱くなるシンボリクリスエス。Northern Dancerが系列クロスを形成するものの前面でサンデーサイレンスクロスが作成され、血の集合が不明瞭になるアドマイヤムーン。Haloを呼び水にする形態を作れるものの血の集合や再限度に不満がのこるMachiavellianやバゴ。ただ、この相性が万全と言えないBMSを持つ繁殖牝馬でも、スピードの引き出しに良さがあるタイプや、ダート向きになるものの迫力の出せる牝馬は確かに存在し、あくまでも祖父母4頭の相性を見るべきではあるだろう。

 かなり大雑把な考察ではありますが、種牡馬キズナの課題や可能性を血統面からいくつかあげてみました。多分に難しい部分を持つ種牡馬ではあるものの、キズナ自身がそうであったように、スタミナ優位の血統構成を作れる、国内において非常に珍しいステイヤーを出せる種牡馬であると考えています。
そこで、現実に配合された17年産の産駒を見てみたところ、これは…というような配合は非常に少ない印象を受けました(すべて見た訳では無いので見落としはあるかと思います)。また、その産駒群においてざっと見た限り、ややスピードに欠ける産駒が多く見うけられ、初年度産駒は苦戦するかもしれません。
 そこで、父キズナとしてのこうした配合ならと思える仮想配合を記載しておきます。

(キズナ×メイビー-Galileo)-・-生

Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:2 影:3 集:6 質:5 再:5 SP:4 ST:5 特:0
合計:(48/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎ 芝:9~15F(11) ダ:8~12F(10)
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅲ 開花率:△ 成長型:普通 距離短縮適性:△ 距離延適性:〇

 主導は父母の傾向を引き継ぎNorthern Dancerの系列クロス。父母の血の再現も比較的良好で、6代目までに存在するクロスの連動性も高い。母は2018年英2000ギニー馬Saxon Warrior(3B)の母として国内でも有名だが、キズナとの配合においては、よりスタミナ優位の欧州向きの配合となっている。また父内Pacific Princessにあるスタミナの血の再現は、シャドーロールの怪物と言われた三冠馬ナリタブライアンを彷彿とさせる。スタミナ優位の中~長距離タイプ。

(キズナ×ラトーナ-)-・-生

Ⅰ 主:7 結:9 土:3 弱:2 影:3 集:4 質:5 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(46/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇 芝:8~12F(10) ダ:8~11F(9)
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅲ 開花率:□ 成長型:遅め 距離短縮適性:△ 距離延適性:〇

 主導は、父母の傾向を引き継ぎ、Northern Dancerの系列クロス。この配合は前面のクロスすべてがBlandford系の血の流れを持ち、スムーズに主導へと血の流れを維持したのが最大の長所。従ってスタミナ優位の配合でありながら、ある程度の反応の良さや開花率の良さが見込める血統構成だと言える。惜しむらくは血の集合が散漫になった点で、開花まではある程度の時間や鍛錬を要すると予測される点か。

(キズナ×リュシオル-クロフネ)-・-生

Ⅰ 主:8 結:6 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□ 芝:7~10F(9) ダ:6~9F(8)
芝適性:□ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅲ 開花率:□ 成長型:普通 距離短縮適性:〇 距離延適性:□

 主導は母内Northern Dancerの系列クロス。次いでHail to Reason・Bold Ruler。主導により圧倒的に母母を強調し、同牝系のヒシアマゾンと同様そのスピードを再現。父のスタミナ勢力の再現は非常に弱く、父の傾向を引き継いだとは言えないものの、芝ダート兼用のスピード型配合と言える。

 かなり簡単な考察ではありますが、個人的に好きなタイプの血統構成をしている種牡馬で、ぜひとも後継を出して欲しいと、願ってやまないキズナの種牡馬としての考察をおこなってみました。失礼な文面や相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください。今回の血統徒然草はこのあたりで筆を置きたいと思います