血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

2019年 牝馬クラシックロード

2018-12-21 22:23:25 | 雑記・その他
 
 今回の血統徒然草は、2019年の牝馬クラシックロードにおける注目馬を何頭か取り上げたいと思います。
※後日、複数頭追加する予定です。

ダノンファンタジー(ディープインパクト×ライフフォーセール by Not for Sale)牝・16生

Ⅰ 主:5 結:6 土:3 弱:1 影:2 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(36/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C △ L ×
ダ:S 〇 M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:早め 

 主導はLyphard4×5の中間断絶を呼び水にした、Nearcticの系列クロス。次いで、Court Martial。それぞれ6代目に存在するSir Gaylord、Mahmoud、Khaled、Pharamondから、マイル~中距離向きのスピード・スタミナを補給し主導へと集合させた配合で、開花自体は早い。惜しまれるのはAlmahmoudが世代ズレをおこした点や、米系の取り込みの弱さ。また、祖母Doubt Fireの世代が新しく弱点を派生させた点で、やや信頼には欠けるか。しかしながら、開花自体は早いものの、7代目以降のクロス自体の生かし方は良く、ただの早熟タイプでも無い。多種のスピードの血が生き、実質的主導のLyphardへとしっかりと結合を果たした為に、ここの部分をしっかりと引き出せれば器用な競馬ができる可能性は秘める。早期有利のマイラータイプ。ダートはこなせる。

クロノジェネシス(バゴ×クロノロジスト by クロフネ)牝・16生

Ⅰ 主:4 結:5 土:4 弱:1 影:1 集:7 質:2 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(36/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M □ I △ C × L ×
ダ:S 〇 M □ I × C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め 

 主導は不明瞭な配合で、おそらく父系母系ともに系列クロスを形成したNorthern Dancer。次いでMr.Prospecter、Halo。近親度がかなり強く、バランスも良好だとは言い難いものの、強調された父母Moonlight’Box内に前述の三者を存在させ、Nearco及びAlmahmoudで強固に結合させた上で、血を集合させたのは幸運で近親度の高さを考慮しなければ、その生かし方はかなり良好。この部分が本馬の能力の源泉だと言える。圧倒的にスピード優位の配合で、そのスピードにかなりの良さがあるとは言えるものの、決して器用なタイプでは無く、そのスピードで押し切る競馬が本質的にはあっているか。しかしながら、明確なスタミナの核を持たないため、距離延長に対する適性や成長力は高いとは言い難い。早熟スプリント~マイルタイプ。米系の影響からダートもこなせる下地はある。土台構造からの血の流れは良好で、信頼には欠けるものの好調期には強い競馬を見せる事も。

グランアレグリア(ディープインパクト×タピッツフライ by Tapit)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:5 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:0
合計:(35/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S △ M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:普通 

 主導は、位置の関係からTurn-toの系列クロス。その仔であるSir Gaylordが母系であるSomethingroyalを取り込み、結合とスタミナのアシストを行っている。また、Turn-toのクロスでは取り込めないHyperionをNorthern Dancerが取り込んでいる。しかしながらHail to ReasonやAlmahmoudが世代ズレを起した点や、Nijinskyを主導にSecretariatをスタミナの核とした母の傾向とは著しく傾向が離反し、この父母の相性は本質的にはあっていないと言える。救いは、39と少ないクロス馬で全体を構成し、父父サンデーサイレンスのスピードを再現した事で、この部分は、全体としての血統構成を比べるべくも無いが、祖父の最高傑作であるサイレンススズカ(2A)と相似性はある。本質的には芝向きマイル~中距離タイプだが、距離延長に対する適性自体は低くは無い。

シェーングランツ(ディープインパクト×スタセリタ by Monsun)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:4 再:3 SP:3 ST:4 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:遅め

 主導はNorthern Dancerを呼び水にした、父父内Almahmoudの系列クロス。次いでHurry Onを生かしたCourt Martial。優秀な配合である姉ソウルスターリング(1A)程の迫力は無いが、ウインドインハーヘア内はRomanこそ世代ズレするものの、生かし方が良く、特にBurghclere内は、Donatelloの系列クロスがスタミナの核を形成し、MassineやSolarioのスタミナや、Fair TrialやGold Bridgeのスピード等も隠し味的にしっかりとクロスしている。Allegrettaを全開させた姉に及ぶべくも無いが、当馬のウインドインハーヘア全開もなかなか妙味があると言えるだろう。惜しむらくは、母スタセリタが抱えたドイツ系統の生かし方が弱い点だが、46という少ないクロス馬から外交的な配合ではあるものの、開花自体は晩成と言うほどには遅くなく、姉よりもシンプルな配合になっている点は言及しておきたい。本質的には芝向きの中距離タイプで、ダートは不適。距離延長に対する適性は比較的高いと言える。

タニノミッション(Invincible Spirit×ウオッカ by タニノギムレット)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:4 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め

 主導はNever Bendの系列クロス。次いで、My Babu。My BabuはDjbelによって結合を果たし、芝向きのスピードを補給している。また、前面でクロスした、Turn-toはNearcoを通じ切れ味を補給。母ウオッカ(3B)内において、一定の役割を果たしていた、Hyperionの結合の弱さは残るものの、Owen Tudorが7代目からクロスした事によって辛うじて結合したのは幸運な形態だと言えるか。惜しむらくは、中距離向きのスタミナを表現するPrincequilloは9代目までにおいて未結合である点や、母の血統内で一定の役割を果たしていた、Teddy系の結合の弱さは、端的にこの配合の限界点や母の繁殖牝馬としての難しさを表していると言える。しかしながら、Pharos=Fairwayが20連で形成する土台構造からくる、血の流れの良さはかなりのもので、この部分は当馬の大きな魅力だと言える。やや重厚な配合であるために開花まで時間はかかるだろうが、開花後の安定化のある血統だと言えるだろう。母よりは、ややスピードタイプの芝向きマイラータイプ。

クラサーヴィツァ(ハーツクライ×メジロルバート by メジロライアン)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:7 土:3 弱:2 影:2 集:6 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S △ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:早め 

 主導は、Northern Dancerを伴うLypard4×4の系列クロス。次いでAlmahmoud、Khaled。前面においてややクロスが多いものの、これらのクロスは主導内のクロスや、強固に結合するクロスでこの主導は有効。主導にNorthern Dancer系を用いた場合において、本来結合しにくいPrince Rose系のクロスであるが、Prince Chevalierが7×6とクロスし、主導内のLady Angela内のAbbots Traceを通じそのスタミナをしっかりと補給できたのは非常に妙味があると言える。血統的な質が低いノーザンテーストではあるが、当馬の配合においてそのスピードを再現するだけでなく、この結合のアシストが大きな役割を果たしていると言って良い。また、この配合の最大の見どころは、母母であるメジロラモーヌ(3B)内に血を集合させ、そのスピードを再現し全開した点にある。メジロラモーヌの血統構成は強力なスピード勢力であるTetratema~The Tetrachをクロスし、母方Khaledを強調した点に妙味があったが、当馬の血統構成はこれを良く再現している。惜しむらくはTeddy系の結合の弱さが見える点だが、全体的にはかなり良くできた配合で、BMSメジロライアンの血も良く生きており、古き良きメジロの血の生かし方に好感が持てる。本質は10F前後に向く芝向き中距離タイプ。

ラヴズオンリーユー(ディープインパクト×ラヴズオンリーミー by Storm Cat)牝・16生

Ⅰ 主:8 結:7 土:2 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:□ 


 主導はNorthern Dancerを呼び水にした、父父内Almahmoudの系列クロス。父とBMSが同じキズナ(1A)と同じように、Somethingroyal~Princequilloをクロスさせスタミナの核とした配合だが、母母内の違いから、キズナ程のスタミナや血統構成の良さは無い。しかしながら、その母母内のアシストが悪いわけでは無く、Mr.Prospector~Raise a Nativeのスピード源であるものの、質が高いとは言えないNasrullahをクロスさせずに、父内Royal Chargerとの呼応で引き出し、主導たるAlmahmoudへとしっかりと結合させた為、当馬の距離適性は10F前後を得意とするマイル~中距離タイプになった。惜しむらくは、土台構造の弱さや血の集合の散漫さだが、強調されたSrorm Cat内へひとまずの血の集合は見られる。この配合の最大の見どころは主導のAlmahmoud内の生かし方で、当馬の血統構成上、主張こそ弱いものの一定の役割を果たしている、Fair Play、Broomstick等の米系をしっかりと取り込んでいる点や、Sir Gallahad等のTeddy系もSpeamintを介し直接結合している点に良さがある。したがって当馬の主導のAlmahmoudの能力はややスタミナに良さがあるタイプへと能力変換を起こしていると考えて良い。父内の欧州系のスタミナを生かせなかった為に、クラシックディスタンスの克服はやや厳しいタイプだと考えられるが、全体的には良くできた血統構成だと言える。

フィリアプーラ(ハービンジャー×プリンセスカメリア by サンデーサイレンス)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:3 集:6 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

 主導は、父の傾向を引き継ぎNorthern Dancer5・5・6・7×5の系列クロス。Northern Dancer内のAlmahmoudがBMSサンデーサイレンス内において、5代目でクロスした為に、その明確性にやや影を落としたのが惜しまれる。できる事なら、母内Northern Dancerが4代目でクロスした方が良ったとは言える。また、BMS内Hail to Reason~Turn-toが世代ズレを起こし、Teddy系や影響が非常に弱いもののMan o’War、Blue Larkspurを取り込めなかったのが惜しまれる。この世代ズレに付随して弱点を父方内に2か所抱えたのも全体的な世代の問題から生じている点も、当馬の血統構成を考える上で致命的では無いものの、無視できない問題ではある。しかしながら、当馬の血統構成上の魅力は母母である、ラトラヴィアータ(サクラバクシンオー全妹 1A)を全開にした点や、BMSサンデーサイレンスの抱えるスピードも引き出している点である(父ハービンジャー 母父サンデーサイレンスは世代の問題を残すもののスピードの引き出しに良さが出る)。従って、同父産駒の中ではかなりスピードに良さがあるタイプで、血統全体においてBay Ronaldの流れを汲むHyperionが強く、同様に強いParos系の血の流れもしっかりと主導内へ取り込んだのが最大の長所。父のイメージ程に距離延長に対する適性は欠けると予想されるが、44という少ないクロス馬からくる、切れ味や反応の良さは見込めるか。本質は芝向きのマイルタイプで、ノーザンテーストの影響から重はこなす可能性を秘める。

アクアミラビリス(ヴィクトワールピサ×アクアリング by Anabaa)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:3 影:3 集:4 質:4 再:5 SP:4 ST:4 特:1(主導牝馬クロス)
合計:(41+1/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L △
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

 クイーンズリング(3B)半妹。主導はNatalma6×5・7の系列クロス。その母Almahmoudを血統の4ブロックに存在させ非常に明確に見えるものの、5代目に存在するNatalmaでは、欧米系の混在する当馬の血統を明確にリードするに至らなかったのが惜しまれ、この部分では姉に劣る(姉は5代目Almahamoud主導。Spearmintを介し米系の血を上手く取り込んだ。特にBanish Fearを介しての米系の連動に妙味がある)。しかしながら、当馬は母母シーリング内の欧州系のスタミナ要素であるSicambreを系列クロスにし、9代目Rabeleisを介しWild Riskと連動。そのWild Risk内Blandfordを通じ、主導たるNalalmaと連動させた点は現代的な血統ではなかなか見られない部分で、ハイハット内Hyperionと並び、当馬のスタミナの核として機能している。また、スピードはNasrullah、Turn-toから補給し、スピード・スタミナに関してはかなり優秀なレベルにあると言えるだろう。Teddy系やTourbillon系またはMan’o WarやBlue Larkspurなどの欧米系の結合の弱さから見て(9代目までは未結合。10代目において米系は結合を果たす。当馬は、近年珍しい5代アウトクロスの完全異系交配であり、10代目で結合を果たしたとしても不思議は無い。この評価は結合を9代目で切っているが、10代目を追った場合、もうワンランク上の評価もありえる)、ゆっくりと成長し、競馬ぶりもややもどかしいタイプになると予測されるが、全体的な血統レベルは優秀。また、本質的には芝の10F以上での走りを見てみたい配合である。


 本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。

ヤマニンパラダイス

2018-12-07 21:56:22 | 私的名馬
ヤマニンパラダイス(Danzig×Althea by Alydar)牝・94生

Ⅰ 主:8 結:8 土:3 弱:3 影:3 集:5 質:5 再:6 SP:5 ST:3 特:0
合計:(49/60)点 クラス:2A 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M ◎ I 〇 C □ L △
ダ:S 〇 M 〇 I 〇 C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:晩成

〇 主導      (8)

 主導はNearcoの系列クロス及び、War Admiralの系列クロス。両者はそれぞれ4代目に存在し、互いに連動を果たしているものの、決して万全の体制とは言えない。しかしながら、両者が母母Courtly Dee内に存在したのは幸運で、連合勢力と言える形態にはある。

〇 結合      (8)

 2系統の主導勢力であるNearco及びWar Admiralの両者は、Speamint・St,Simonを介し連動を果たしている。他の強い影響を持つクロスである、HyperionはChaucerを通じて、BlenheimはSwynfordを通じてSir GallahadはSpeamintを通じて、Native DancerはPhalarisを通じて、それぞれ主導と結合を果たしている。また、Native Dancerは欧米系のクロスをしっかりとまとめているのが見て取れ、単一クロスではあるが当馬の血統構成上不可欠な働きをしている点を指摘しておきたい。

〇 土台・血の流れ (3)

 土台構造は、St,Simon(17連)で形成している。連数的には普通程度だと言えるが、全体の血の流れの良さがあり、Bay Ronald(8連)、Speamint(13連)の流れもしっかりと前面のクロス馬に流れている点は評価できる。

〇 弱点・欠陥   (3)

 特に無し。5代目を基準とした各ブロックにおいてしっかりと主導勢力に関するクロス馬が配置されている。4代目から系列クロスが始まる近親配合であるが、7代目においてクロスが存在しないヶ所ですら3ヶ所しかないのは、なかなか見られない形態である。

〇 影響度バランス (3)

 影響度バランスは(14-3-5-14)と両親のバランスが取れている。ややいびつではあるが、Vagurely Noble‐Alleged型だと言える。また強調された父父及び母母内に主導勢力がバランスよく配されているのもプラス。

〇 血の集合    (5)

 全体的な血の集合は、母母Courtly Deeにおいて見られる。若干惜しまれるのが、影響度バランス上でわかるように、父父Northern Dancer内の影響が同程度に強くなりながら、War Admiralが存在しない点で、非常に優秀な配合ではあるものの、血の集合に関しては明確だとはやや言い難い部分が残る点か。

〇 質       (5)

 血統全体において血の質の高いクロスを生かすだけでなく、War Admiral(1A)・Never Bend(1A)・Alydar(3A)と重ねた母の血の質が高い。底力勝負可能な血統構成。

〇 再限度     (6)

 父の主導であったNearcoと母の主導であったMan o’warの仔であるWar Admiralを主導とし、父母に強いTeddy系の流れをSir Gallahadのクロスにより引き継ぐだけでなく、特に母に強い米系を再度クロスさせNative Dancerの元に統一させた妙味ある形態。それだけ米系が濃い配合で、当馬が時代を先取りした血統であると言えるのだが、この米系の濃さが当時の国内の種牡馬プールが適応できなかった点は指摘しておきたい。

〇 スピード    (5)

 主導たるNrarcoを中核に、Nasrullahをクロスさせずそのスピード源となっている母方のMumtaz Mahalを父母共にクロスさせそのスピードを再現している。特にThe Tetarch~Lady Josephineとクロスさせる形態は、近年においても国内向きのスピード再現として非常に有用である。また、Sir Gallahadの系列クロスがPlucky Liegeを欠落させた為、スピード勢力として機能している点も、スピード面においては有用だと考えられる。

〇 スタミナ    (3)

 もう一方の主導である、War Admiralを中核とし、影響は弱いもののSon-in-Lowの中間断絶がスタミナをアシスト。父方Hyperionはその仔である、Lady Angelaの影響から、明確なスタミナ源としての機能が弱い点が惜しまれるが、平均点にはあるか。

〇 特別配点    (0)

 特に無し。

〇 短評

 94年の阪神3歳牝馬ステークス(G1)を、デビューから3連勝で制したヤマニンパラダイスの血統面からの考察をおこなってみました。当馬の血統構成は、母方に強いTeddy系、Fair Play系をはじめとした米系を切り捨てる事無く、しっかりと生かした当時としては異端の血統構成であります。再限度の項目でも触れましたが、当時の国内の血統プールからすれば異端である米系を生かした配合は、まさに〇外と言えますが、それだけに当時の種牡馬群との配合では生かしきれなかった、名血統であったと言えるでしょう。唯一、サンデーサイレンスが対応できたとも言えますが、サンデーサイレンス自身はBay Ronaldの血の流れを強く持った血統構成で、当馬の配合相手としては決してベストとは言えない部分はありました(※一番仔 ヤマニンセラフィム(3B)新馬から母と同じく3連勝を記録)。
 結果的に、直仔で母の血統を生かし切った配合を見る事はかないませんでしたが、当馬の持つ米系の価値は代が進むに連れその輝きを増していくと個人的には予測しています。いずれ、当馬の名を高める子孫が出ることを心待ちにしています。
 では、ヤマニンパラダイスの当代配合としては、どうした形態がよかったのでしょうか。個人的に考えた配合をいくつか挙げてみたいと思います(あくまでも紙面上の、個人的な考えに基づいています。また関係者の方々への問い合わせ等は絶対に行わないでください。あくまでも仮想の思索でしかありません。そのような方がいらっしゃるとは思いませんが)。

(エイシンワシントン×ヤマニンパラダイス by Danzig)-・-生

Ⅰ 主:7 結:6 土:2 弱:3 影:3 集:6 質:4 再:6 SP:4 ST:4 特:0
合計:(45/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:◎ 
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I ◎ C 〇 L □
ダ:S × M 〇 I ◎ C □ L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:晩成

 主導は、母の傾向を引き継ぎ、War Admiral及びNearcoの系列クロス。父の主導であったSickleからスピードを、父母内では眠っていた、DjebelやHyperionからスタミナを補給。父のスタミナ源となった、Princequilloの欠落は惜しまれるが、欧米系が入り混じる血統でありながら、しっかりと血の結合が完了している点と、母母を強調した血の集合、更に父母の再限度にかなりの良さがある。父母共に距離に壁があるイメージから当馬もスプリント~マイル向きと見られるかも知れないが、生きている血からはむしろ10F前後に適性を示すと考えられる。父母共に質が非常に高く、底力ある中距離タイプ。

(オグリキャップ×ヤマニンパラダイス by Danzig)-・-生

Ⅰ 主:6 結:7 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:5 SP:5 ST:3 特:0
合計:(41/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M ◎ I 〇 C × L ×
ダ:S 〇 M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

 主導は父の傾向を引き継ぎNasrullah。次いで、War Admiral、Fair Trial。主導勢力とそれらサポート血脈で母母を強調し血の集合をはかっている為、スピード競馬への対応は比較的早期から可能。半面スタミナ勢力が弱く、本質的には芝向きのマイラータイプ。また、Native Dancer3×5の単一クロスからくる結合のアシストは、父母が強く持つ米系対応へのひとつの解答だと言える。やや底力には欠けるが、父の配合としては比較的良くできている。

 天才少女だったヤマニンパラダイスは、本日26年の生涯を終えました。当馬の全姉であるAuroraからアルビアーノが出たように、ヤマニンパラダイスの子孫が鮮烈な輝きを放つ事を期待して、今回は筆を置きたいと思います。
 相変わらずの乱筆乱文をご容赦ください。

アーモンドアイ

2018-12-02 18:09:18 | 15年生
アーモンドアイ(ロードカナロア×フサイチパンドラbyサンデーサイレンス)牝・2015生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:7 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M ◎ I 〇 C □ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

〇 主導      (6)

 主導はNorthen Dancerを伴うNureyev5×3。次いで、Almahmoud、Menow~Pharamond。この両者は、Northen Dancer内において存在する為、そのスピードを明確に補給すると共に、しっかりと連動を果たしている。従って当馬の配合においてはNureyevの主導は明確であると考えて良い(ただし当馬の血統において、7代目以降において存在する米系の先導役としては、その為のアシストも無い為、手放しで高評価するものでも無い)。

〇 結合      (5)

 主導たるNureyevと6代目までに存在するクロスである、Almahmoud、Menow~Pharamondは、前述の主導の項目でも述べたが、直接結合を果たし比較的強固な連動性を維持しているのは当馬のスピード能力の源泉とも言え、その結合力は申し分無い。また、Alilbahi、Native Danverも直接結合を果たしている。しかしながら、7代目以降に存在する、Discovery、Man o’War、Blue Larlspur、Bull Dog等の米系のクロスの連動の弱さが残る為に、極めて強固にと言えるほどの内容では無いのが惜しまれる(Discoveryのみ父内Native Dancerを通じてかろうじて結合)。

〇 土台・血の流れ (3)

 土台構造を形成するのは、Nearco(14連)~Pharos=Fairway(15連)。次いで、Hyperion(13連)。連数としては平均的だが、血の流れ自体は良好。父母の世代間の問題が残る配合の為、決して高い評価を下すものでもないものの、一定の水準は満たしていると言って良い。それだけに、父母の世代間の問題が惜しまれる。

〇 弱点・欠陥   (1)

 父内、Pasadolbe内に弱点を派生。9代目においてAlibhaiが存在するものの、極めて欠陥に近い状態だと考えて良く、また自身の血統内において主導たるNureyevが存在するブロックである点も加味すると、決して無視出来ないと考えられる。

〇 影響度バランス (2)

 影響度バランスは(5-2-4-12)と祖父母のうち一頭を強調している。また、その強調された母母内に主導たるNureyevを存在させたのはプラス。ややバランスが悪いものの、Sassafras型と見て良い。

〇 血の集合    (7)

 当馬の血統構成を考えるにあたって、血の集合は非常に強力である。強調された母母内ロッタレース内に主導勢力だけでなく、全面でクロスして強い影響を発揮した血の全てを集合させている。ここまで血のバランスと集合を高い次元で作成できる配合は極めて稀で、Sex Appeal自身は6×3と世代ズレを起こしているものの、その内部の血はしっかりと生き、その意味でもプラスだと考えて良い。

〇 質       (3)

 母フサイチパンドラ(1A)、父ロードカナロア(3B)共、自身の血の質は比較的高く、特に曾祖母Sex AppealからBuckpasser(3A)、Nureyev(3B)、サンデーサイレンス(2A)と重ねた血の質の高さは評価に値する。父方の強さはそれにはやや劣るものの、牝馬としてはこの形態が好ましいか。

〇 再限度     (5)

 当馬の祖父母4頭までの再限度を考えると、比較的良好な部類にはいると考えられる。祖父母のうち父母レディブラッサムは米系が強く、やや傾向を外すものの、全体的には平均点にあるか。おそらく当馬の配合を考えた際に、スピードの発揮の観点から無い方が良かったかもしれないが、His Majestyの落失はやや惜しまれる(その中のAlibahaiは生きている為、致命的に悪いというわけでは無く、むしろシンプルさの一助になった可能性は否定できない)

〇 スピード    (4)

 当馬の主導であるNureyevは本来マイルタイプのスピードを発揮する血で、当馬の血統内においてもスピードの柱としてしっかりと機能はしている、やや惜しまれるのが、Special内の生かし方が弱い点で、Gold Bridgeの落失が惜しまれる。しかしながら、主導と親和性の高い、AlmahmoudやMenowのスピードアシストは、当馬の発揮するスピードの源泉だと考えて良い。また、7代目以降におけるNasrullah、Khaledのアシストも良好。クロスしてはいるものの、8×5と世代的な問題を抱えているTurn-toがクロス判定としては微妙なものの、当馬の実際の走りを鑑みるに、生きていても不思議は無い(その場合スピードの評価は5点と考えられる)。

〇 スタミナ    (3)

 当馬の血統内においてこれといったスタミナの核は存在しない。強いて言えば6代目Alibhaiだが、本質的にAlibhaiは明確なスタミナとしての機能は弱く、当馬の距離適性において、終始ハイペースで走り続ける12F以上のレースやスタミナ要求度の高い重馬場や欧州的な馬場は不適だと考えて良い。

〇 特別配点    (-)

 特に無し。

〇 短評

 以上が、先日3歳牝馬ながら、牝馬三冠に加えジャパンカップにおいて驚異的なレコードを記録し完勝した、アーモンドアイに対する血統面から見た評価です。
 当馬の血統構成を考えた時に、まず目につくのはSex Appealの世代ズレをはじめとした世代のバランスの悪さでしょう。このクロス自体はおそらく当馬の中では眠ったままの状態だと言え、仮にここが目覚めた場合、ややちぐはぐな成績を残す事が予測でき、全兄弟においても、能力に差が出やすい血統構成だと考えています。
 しかしながら、当馬の内容を細かく見ていくと、土台構造を形成するNearco、Hayperionからの血の流れの良さや、それらをアシストしているNasrullah、Alibhai、Khaled等の直系の子孫が大きな役割を果たしているのがわかるかと思います。この血の流れの良さ、祖母ロッタレースへの血の集合が、本当の意味での当馬の能力の源泉だと考えております。
 前述したように、スタミナの核の作成に失敗した点や、強い影響は持たないものの米系のクロスを切り捨てた配合は、決してA級の物であるとは言えませんが、こと国内向きのスピードに関しては理にかなった血統構成だとも言えるでしょう。今後の成長に関して紙面上の血統構成から考えるに、さらにワンランク上の能力を見せるかは、個人的にやや疑問ではありますが、良い意味でその評価を裏切る活躍を期待したいと思います。
 また、気が早いかもしれませんが、近い将来繁殖牝馬になる事が予測されますが、その際に簡単に求める種牡馬の持つ血のイメージを記載しておきます。
①  主導は血の流れを考慮して引き続きNureyevを使いたい。
②  スピードのアシストの為、Menowの継続を考えTom Foolのクロス。もしくはスピードが劣るもののスタミナと血の質の高さ、結合のアシストとしてのBuckpasser。
③  スタミナのアシストの為、当馬の中では眠ったままだがAlibhaiを含む、His Majestyのクロス(眠ったままではあるものの、Aibhai、Beu Pere~Son-in-lawがしっかりと生きている。これらを吸い上げたい )。
 非常に簡単ではありますが、ざっとした必要条件はこの3点かと思います。もちろん細かい血の合わせ方によって、これらが種牡馬側に存在するからと言って、簡単にA級の配合とはなりませんが、概要としてはこのような血を持つ種牡馬が好ましいと考えられます。
 個人的に、何頭かの国内共用種牡馬と血を合わせてみましたが、どれも今一つな配合が多くなり、国内だけの血統プールを考えると難しい繁殖牝馬だと言わざるを得ません(あくまでも現時点の種牡馬群との相性ですし、現実はやすやすと想定を凌駕してくる場面を何度も見ています)。
 そこで、海外共用種牡馬で考えていましたが、個人的に尊敬する方が考えたのが、Cracksmanです。また、個人的にはSiyouniも面白いと思います。どちらの配合も、母の傾向を引き継ぎNureyev主導。Buckpasser・His Majestyがクロスするという前述の条件を満たしていますので、JBIS等で血統表をご覧になれる方は一度見てみると面白いかもしれません(おそらく当代の配合としては、Specialがしっかりと生きるCraksmanの方が上位だと言えるでしょう。それでも自分がSiyouniを押すのは産駒の4代目にNureyev、Danzigが並ぶという一点において、繁殖的な作りやすさを見たからです)。
 以上、アーモンドアイの血統に関する考察でした。相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください

距離適性評価基準に対する変更

2018-12-02 15:45:18 | 血統評価基準
 評価基準に対する変更のアナウンスです。

 距離適性に関しまして、従来のハロン表記を変更したいと思います。
今後は、S M I C L の5段階に対して表記を行います。また、芝・ダートの区分を残します。

  S=スプリント 6F前後の適性
  M=マイル 8F前後の適性
  I=インターミディエイト 10F前後の適性
  C=クラシック 12F前後の適性
  L=ロング 14F前後の適性

 これに×~△~□~〇~◎の5段階評価を行います。
また、これに伴い距離短縮適性及び、距離延長適性の項目を削除します。

 今後とも、変更がある場合はアナウンスさせて頂きたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。