血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

アーモンドアイ

2018-12-02 18:09:18 | 15年生
アーモンドアイ(ロードカナロア×フサイチパンドラbyサンデーサイレンス)牝・2015生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:7 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M ◎ I 〇 C □ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

〇 主導      (6)

 主導はNorthen Dancerを伴うNureyev5×3。次いで、Almahmoud、Menow~Pharamond。この両者は、Northen Dancer内において存在する為、そのスピードを明確に補給すると共に、しっかりと連動を果たしている。従って当馬の配合においてはNureyevの主導は明確であると考えて良い(ただし当馬の血統において、7代目以降において存在する米系の先導役としては、その為のアシストも無い為、手放しで高評価するものでも無い)。

〇 結合      (5)

 主導たるNureyevと6代目までに存在するクロスである、Almahmoud、Menow~Pharamondは、前述の主導の項目でも述べたが、直接結合を果たし比較的強固な連動性を維持しているのは当馬のスピード能力の源泉とも言え、その結合力は申し分無い。また、Alilbahi、Native Danverも直接結合を果たしている。しかしながら、7代目以降に存在する、Discovery、Man o’War、Blue Larlspur、Bull Dog等の米系のクロスの連動の弱さが残る為に、極めて強固にと言えるほどの内容では無いのが惜しまれる(Discoveryのみ父内Native Dancerを通じてかろうじて結合)。

〇 土台・血の流れ (3)

 土台構造を形成するのは、Nearco(14連)~Pharos=Fairway(15連)。次いで、Hyperion(13連)。連数としては平均的だが、血の流れ自体は良好。父母の世代間の問題が残る配合の為、決して高い評価を下すものでもないものの、一定の水準は満たしていると言って良い。それだけに、父母の世代間の問題が惜しまれる。

〇 弱点・欠陥   (1)

 父内、Pasadolbe内に弱点を派生。9代目においてAlibhaiが存在するものの、極めて欠陥に近い状態だと考えて良く、また自身の血統内において主導たるNureyevが存在するブロックである点も加味すると、決して無視出来ないと考えられる。

〇 影響度バランス (2)

 影響度バランスは(5-2-4-12)と祖父母のうち一頭を強調している。また、その強調された母母内に主導たるNureyevを存在させたのはプラス。ややバランスが悪いものの、Sassafras型と見て良い。

〇 血の集合    (7)

 当馬の血統構成を考えるにあたって、血の集合は非常に強力である。強調された母母内ロッタレース内に主導勢力だけでなく、全面でクロスして強い影響を発揮した血の全てを集合させている。ここまで血のバランスと集合を高い次元で作成できる配合は極めて稀で、Sex Appeal自身は6×3と世代ズレを起こしているものの、その内部の血はしっかりと生き、その意味でもプラスだと考えて良い。

〇 質       (3)

 母フサイチパンドラ(1A)、父ロードカナロア(3B)共、自身の血の質は比較的高く、特に曾祖母Sex AppealからBuckpasser(3A)、Nureyev(3B)、サンデーサイレンス(2A)と重ねた血の質の高さは評価に値する。父方の強さはそれにはやや劣るものの、牝馬としてはこの形態が好ましいか。

〇 再限度     (5)

 当馬の祖父母4頭までの再限度を考えると、比較的良好な部類にはいると考えられる。祖父母のうち父母レディブラッサムは米系が強く、やや傾向を外すものの、全体的には平均点にあるか。おそらく当馬の配合を考えた際に、スピードの発揮の観点から無い方が良かったかもしれないが、His Majestyの落失はやや惜しまれる(その中のAlibahaiは生きている為、致命的に悪いというわけでは無く、むしろシンプルさの一助になった可能性は否定できない)

〇 スピード    (4)

 当馬の主導であるNureyevは本来マイルタイプのスピードを発揮する血で、当馬の血統内においてもスピードの柱としてしっかりと機能はしている、やや惜しまれるのが、Special内の生かし方が弱い点で、Gold Bridgeの落失が惜しまれる。しかしながら、主導と親和性の高い、AlmahmoudやMenowのスピードアシストは、当馬の発揮するスピードの源泉だと考えて良い。また、7代目以降におけるNasrullah、Khaledのアシストも良好。クロスしてはいるものの、8×5と世代的な問題を抱えているTurn-toがクロス判定としては微妙なものの、当馬の実際の走りを鑑みるに、生きていても不思議は無い(その場合スピードの評価は5点と考えられる)。

〇 スタミナ    (3)

 当馬の血統内においてこれといったスタミナの核は存在しない。強いて言えば6代目Alibhaiだが、本質的にAlibhaiは明確なスタミナとしての機能は弱く、当馬の距離適性において、終始ハイペースで走り続ける12F以上のレースやスタミナ要求度の高い重馬場や欧州的な馬場は不適だと考えて良い。

〇 特別配点    (-)

 特に無し。

〇 短評

 以上が、先日3歳牝馬ながら、牝馬三冠に加えジャパンカップにおいて驚異的なレコードを記録し完勝した、アーモンドアイに対する血統面から見た評価です。
 当馬の血統構成を考えた時に、まず目につくのはSex Appealの世代ズレをはじめとした世代のバランスの悪さでしょう。このクロス自体はおそらく当馬の中では眠ったままの状態だと言え、仮にここが目覚めた場合、ややちぐはぐな成績を残す事が予測でき、全兄弟においても、能力に差が出やすい血統構成だと考えています。
 しかしながら、当馬の内容を細かく見ていくと、土台構造を形成するNearco、Hayperionからの血の流れの良さや、それらをアシストしているNasrullah、Alibhai、Khaled等の直系の子孫が大きな役割を果たしているのがわかるかと思います。この血の流れの良さ、祖母ロッタレースへの血の集合が、本当の意味での当馬の能力の源泉だと考えております。
 前述したように、スタミナの核の作成に失敗した点や、強い影響は持たないものの米系のクロスを切り捨てた配合は、決してA級の物であるとは言えませんが、こと国内向きのスピードに関しては理にかなった血統構成だとも言えるでしょう。今後の成長に関して紙面上の血統構成から考えるに、さらにワンランク上の能力を見せるかは、個人的にやや疑問ではありますが、良い意味でその評価を裏切る活躍を期待したいと思います。
 また、気が早いかもしれませんが、近い将来繁殖牝馬になる事が予測されますが、その際に簡単に求める種牡馬の持つ血のイメージを記載しておきます。
①  主導は血の流れを考慮して引き続きNureyevを使いたい。
②  スピードのアシストの為、Menowの継続を考えTom Foolのクロス。もしくはスピードが劣るもののスタミナと血の質の高さ、結合のアシストとしてのBuckpasser。
③  スタミナのアシストの為、当馬の中では眠ったままだがAlibhaiを含む、His Majestyのクロス(眠ったままではあるものの、Aibhai、Beu Pere~Son-in-lawがしっかりと生きている。これらを吸い上げたい )。
 非常に簡単ではありますが、ざっとした必要条件はこの3点かと思います。もちろん細かい血の合わせ方によって、これらが種牡馬側に存在するからと言って、簡単にA級の配合とはなりませんが、概要としてはこのような血を持つ種牡馬が好ましいと考えられます。
 個人的に、何頭かの国内共用種牡馬と血を合わせてみましたが、どれも今一つな配合が多くなり、国内だけの血統プールを考えると難しい繁殖牝馬だと言わざるを得ません(あくまでも現時点の種牡馬群との相性ですし、現実はやすやすと想定を凌駕してくる場面を何度も見ています)。
 そこで、海外共用種牡馬で考えていましたが、個人的に尊敬する方が考えたのが、Cracksmanです。また、個人的にはSiyouniも面白いと思います。どちらの配合も、母の傾向を引き継ぎNureyev主導。Buckpasser・His Majestyがクロスするという前述の条件を満たしていますので、JBIS等で血統表をご覧になれる方は一度見てみると面白いかもしれません(おそらく当代の配合としては、Specialがしっかりと生きるCraksmanの方が上位だと言えるでしょう。それでも自分がSiyouniを押すのは産駒の4代目にNureyev、Danzigが並ぶという一点において、繁殖的な作りやすさを見たからです)。
 以上、アーモンドアイの血統に関する考察でした。相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください