血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

13年クラシックロード(牝馬)

2013-04-26 18:42:38 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、13年クラシックロードの有力馬達の血統構成を、簡単にではありますが考察してみたいと思います、お付き合い頂ければ幸いです。


アユサン(ディープインパクト×バイザキャット-Storm Cat)牝・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=233501

主:7 結:4 土:3 弱:5 影:3 質[近]:3 質[遠]:3 SP:3 ST:3
合計:34点 クラス:3B 芝:8~10F ダ:7~9F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Northern Dancer5×4の中間断絶クロス。その中のAlmahmoud5・7×6の系列クロスで実質的に血統をリード。前面に他の影響の強いクロスが存在しない事も幸いして、比較的明瞭な主導だとは言えるが、Northern Dancerに対するAlmahmoudの位置が悪いのが若干惜しまれる。加えて、主導たるNorthern Dancerが母系に強い米系をまとめられなかったのが残念であり、父のスピードの源であったTurn-toや、Court Martialが欠落したのも惜しまれる。ここが、当馬の血統から見た限界点であると言える。しかしながら、Somethingroyal~Princequilloのスタミナをかろうじて主導と結合させているのは評価に値する点で、ある程度の距離延長に対する適性を秘めているのは指摘しておきたい。更に、7代目ではあるがTetratemaの決め手も隠し味的に生きている為に、瞬発力も悪く無いと考えられる。

レッドオーヴァル(ディープインパクト×コートアウト-Smart Strike)牝・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=231981

主:6 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:4
合計:35点 クラス:3B 芝:7~11F ダ:7~9F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Northern Dancer5×4の中間断絶クロス。その中のAlmahmoud5・7×6の系列クロスで血統をリードしている。しかしながら、Turn-to5・7×6の中間断絶の影響も強く、若干だが主導の明確性に影を落としている。重ねて、似たような血統を持つアユサンと同様に、Court Martialが欠落したのも惜しまれる。しかしながら、生かされたスピード・スタミナはかなり強靭で、力強い血統構成だあると言えるだろう。従って、本質的には中距離馬であるが、距離の融通性はかなり高く、重ねて成長力も期待できるだろう。また、父の決め手の源となったTurn-toが前述したように主導の明確性を乱しているものの、再度の継続クロスを重ねた為に、決め手を秘めた血統と言う事ができるだろう。

プリンセスジャック(ダイワメジャー×ゴールデンジャック-アフリート)牝・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=232882

主:8 結:5 土:3 弱:4 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:34点 クラス:3B 芝:7~10F ダ:6~9F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 主導は、Northern Dancer4×4の中間断絶クロス。その中の、Almahmoud5・6×6及びLady Angela5・6×6の系列クロスで全体をリードしている。この両者が存在しないBMSアフリートが全体から離反しているものの、それ以外の3ブロックにおいては、非常に強力に血統全体をリードしている。また、父がNasrullahを、母がRoyal Chargerを持たない為に、この両者がクロスせず、そのスピード源だけを抽出しながら、Gainsboroughの流れを強固に保っている。近年では珍しいシンプルな配合で、それだけに豊かなスピードに恵まれた、血統構成となっている。惜しむらくは、これといったスタミナの核の確保に失敗している点で、距離延長は不利だと推測されるが、芝・ダートや重馬場を問わない全天候型の血統構成と言えるだろう。

ラトーナ(Dansili×レトⅡ-Diesis)牝・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=231962

主:8 結:5 土:3 弱:5 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:39点 クラス:1A 芝:9~15F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はNatalmaを伴うNorthern Dancer4・6×4。Almahmoudが欠落するものの、ほぼ系列クロスを形成し、非常に強力に血統をリードしている。反面、近親度がかなり強いものの、各系列はしっかりと結合をはたしている。従って、仕上がった際はかなりの破壊力を秘めていると言えるだろう。また、生かされたスピード・スタミナは非常に強靭で、特にスタミナ面はCrepello・Princequilloがクロスし、しっかりと結合を果たしている。これは、かなりのレベルで、NasrullahやTudor Minstrel等のスピード要素も強いため、本質的なステイヤーとは言い難いものの、15F克服は十分に可能。切れる脚はあまり期待できないものの、7代目のクロスを勘案するに、長く脚を使える可能性は高い。是非とも無事の開花を目指し、長い眼で鍛えて欲しい好配合である。

トーセンソレイユ(ネオユニヴァース×ウインドインハーヘアー-Alzao)牝・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=234006

主:6 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:4 ST:5
合計:39点 クラス:1A 芝:8~15F ダ:8~12F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はAlmahmoud5×6の系列クロス。次いでHyperion6・7・7・8・9×6・7・7で血統をリードしている。この両者は強力に結合を果たし、一般レベルでは優秀だと考えて良いものの、半兄であるディープインパクトほどの明確性は保てなかったのが惜しまれる。また、父の世代が一世代後退した為に、その結合力も若干低下してしまっている。従って、兄ほどの軽快さは無いと考えてよい。しかしながら、母父のポインテッドパスが、母ウインドインハーヘアーと呼応し、その重厚なスタミナを上手く引き出しているのは大きなセールスポイントで、この部分では兄を上回ると考えて良い。また、父父サンデーサイレンスのスピードを上手く引き出しているのも兄と同様で、完全開花した際には重厚かつ反応の良いスピードを見せる事ができるだろう。また、血統全体でこれといった弱点や欠陥は存在せず、非常に安定感のある血統構成。開花には相当の鍛錬が必要だと考えられるが、ウインドインハーヘアーの血を繋ぐ意味でも、是非とも無事に開花をして欲しい。


 今回は13年の牝馬クラシックロードにおいて血統的に見所がある配合と、桜花賞の上位馬を取り上げてみました。簡単にではありますが、今回はこんなところで。

13年クラシックロード(牡馬)

2013-04-24 00:16:53 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、13年クラシックロードの有力馬達の血統構成を、簡単にではありますが考察してみたいと思います、お付き合い頂ければ幸いです。

ロゴタイプ(ローエングリン×ステレオタイプ-サンデーサイレンス)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=233037

主:5 結:5 土:4 弱:5 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:33点 クラス:2B 芝:7~10F ダ:7~9F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 主導は、Hail to Reasonを伴うHalo4×3の中間断絶。この主導は中間断絶ではあるものの、母方Almahmoudが系列クロスを形成し、当馬の中で一定の影響力を行使している。しかしながら、Northern Dancer5×5の中間断絶や、Bold Ruler6×5・6の系列クロスの影響も強く、明確にとはいかなかったのが惜しまれる点である。反面、近親度が強いものの、血統全体の結合力は強固で、実質的主導であるAlmahmoud内Blenheimを中核とし(自身の土台構造もPharos・Gainsboroughと共に形成)、影響の強い前述した三者を連動させているのは幸いである。この結合の強固さをもってすれば、仕上がった際の破壊力はなかなかのものだと考えてよい。しかしながら決してシンプルとは言い難い血統構成の為、脆さも同居しているのは指摘しておきたい。

コディーノ(キングカメハメハ×ハッピーパス-サンデーサイレンス)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=232411

主:7 結:6 土:2 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:35点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はAlmahmoud7・7×5の系列クロス。キングカメハメハ産駒にありがちなNorthern Dancerクロスは無く、同父産駒としてはシンプルな形態を形成しているのが最大の長所。また、6代目以内に生じたクロスとはGainsboroughを核として結合し、かなり強固な状態だと言え、影響度バランスも良好な為、安定感のある血統構成。反面、土台構造はかなり散漫で、血統の字面ほどの成長力は期待しづらいとも言えるだろう。それでも、国内向きのスピードの血はかなり豊富で、最低限のスタミナを確保している為、12Fを自力で克服するのは難しいだろうが、10F前後でなら自力勝負は十分可能。主導の明確性と結合の強さから考えて、決め手のある早期有利な国内向きの中距離馬だと言えるだろう。

エピファネイア(シンボリクリスエス×シーザリオ-スペシャルウィーク)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=233298

主:8 結:5 土:2 弱:4 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:34点 クラス:3B 芝:8~11F ダ:8~10F
日本適性:◎ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導はHail to Reason4・7×5・6の系列クロス。父母内(Ⅱブロック)は位置の関係で若干動き出しがおそいものの、血統の4ブロック全てに存在し全体を強力にリードしている。反面、結合力は全体としては悪くは無いものの、父方6代目Gold Bridgeが完全に離反している点は非常に気になる点で、ここが当馬の血統構成を考える上で、限界点だと言えるだろうか。しかしながら、世代ズレを抱えたバランスの悪い配合であった、父シンボリクリスエスの配合として、その補正に成功したのは大きなセールスポイントで、国内向きのスピードは、母の主導であるAlmahmoudこそ欠落するものの非常に豊かな配合で、自在性のあるマイル~中距離馬だと言えるだろう。

キズナ(ディープインパクト×キャットクイル-Storm Cat)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=231960

主:6 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:38点 クラス:1A 芝:8~12F ダ:8~11F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 主導は、Northern Dancer5×4の中間断絶クロス。その中のAlmahmoud5×7・6で実質的に血統をリードしている。決して明瞭とは言い難いものの、ひとまずNorthern Dancerに血が集合している事と、血統全体でGainsboroughの流れが強く、父母から継続しその維持が出来たのは大きなセールスポイントで、仕上がった際には非常に迫力のある内容だと言う事ができるだろう。また、血統全体の結合力は、やや間接結合に頼る部分はあるものの、ひとまず完了しているのも見て取ることができる。更に生かされたスピード・スタミナ勢力は強靭で、スピードは主導たるAlmahmoudを中核に、Pharamond(=Sickle)。スタミナは更に強靭で、Aurora~Hyperion・Donatello・Somethingroyal~Princequilloと隙が少ない。惜しむらくは父の決め手の源となったTurn-toや、スタミナを支えたCourt Martialの欠落だが、全体的には非常に良くできた血統構成。是非、無事な開花を望みたい。

ラストインパクト(ディープインパクト×スペリオルパール-ティンバーカントリー)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=233855

主:7 結:6 土:3 弱:4 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:5
合計:38点 クラス:1A 芝:9~15F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 主導はNorthern Dancer5×3の中間断絶クロス。その中のAlmahmoud5・7×5の系列クロスで実質的に血統をリードしている。血統的に近いキズナと比較的似たような血統だが、主導の明確性は当馬のほうが圧倒的に上だと言えるだろう。また、血統全体の結合力も強固で、土台構造は平均的なレベルであるものの、血統の背骨を構成する部分は非常に良くできていると言えるだろう。また、この部分もキズナと同様だがTurn-toや、Court Martialの欠落が惜しまれる点であるものの、全体的な血統レベルはキズナと甲乙つけ難いレベルである。更に、スタミナ値は非常に優秀で、完全なステイヤーというわけでは無いが15Fの克服は十分に可能。長い眼でみた鍛錬を望みたい、好素質馬である。

ヘミングウェイ(ネオユニヴァース×シェルシーカー-Machiavellian)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=232238

主:7 結:6 土:3 弱:5 影:3 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:37点 クラス:3B 芝:7~10F ダ:7~9F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 主導はHalo3×4の中間断絶クロス。その中のAlmahmoud5×6・6・6の系列クロスで実質的に血統をリードしている。父及び母父まで同一のヴィクトワールピサと非常に良く似た血統構成だが、母の母方内のスタミナがネオユニヴァースと呼応しなかった為に、血統レベルはほぼ同一ながら、当馬の距離適性はマイル~中距離が対応範囲となった。しかしながら、国内向きのスピードにはかなりの良さがある内容で、ある意味で正解だといえる配合であるのは指摘しておきたい。完全開花した場合、マイル~中距離を自分で押し切れる力強さのある血統構成で、距離に限界はあるものの7代目以降のスタミナの目覚め方如何によっては、息の長い末脚を見せる事も可能だろう。


 今回は13年の牡馬クラシックロードにおいて血統的に見所がある配合と、皐月賞の上位馬を取り上げてみました。簡単にではありますが、今回はこんなところで。

追悼・ブライアンズタイム

2013-04-11 17:46:52 | 雑記・その他
長らく諸所の事情で更新を怠っておりました。まずは、閲覧者の皆様申し訳ありませんでした。楽しみにしていただいている方がいらっしゃれば、謹んでお詫び申し上げます。

唐突ですが、今回筆を取ったのは、先日28年の生涯を終えた、平成の大種牡馬ブライアンズタイムへの追悼記を書いてみたかったからであります。種牡馬ブライアンズタイムと、その名声を支えた産駒達について、つたない文章ではありますが振り返ってみたいと思います。最後までお付き合い頂ければ幸いであります。

ブライアンズタイム(Roberto×Kelley's Day-Graustark)牡・85生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=29

主:7 結:4 土:5 弱:6 影:3 質[近]:2 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:39点 クラス:1A 芝:8~12F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 主導はSir Gallahad(=Bull Dog)の5・5・7×5の系列クロス。その父Teddyがクロスしないものの、母Plucky Liegeがクロスを継続し、主導を形成すると共に、スタミナの核として機能している。ただし、この主導は決して万全ではなく、父Robertoを生かす意味としては非常に有効だが、母Kelley's Day内においてはたった一連しか無く、また6代目までに存在するクロスの結合もいまひとつである。ここが、GⅠ馬でこそあるものの(フロリダダービー・ペガサスH)本番のクラシック競争では詰めの甘さを見せた、競走馬としてのブライアンズタイムの限界を端的に示している。
 しかしながら、血統全体を見てみると質の高い父Robertoを強調し、これといった弱点を作らず、Sundridgeを中核とした素軽いスピードや、Man o'Warのスタミナとバランスが良く、また土台構造も9代目が大多数であるものの、St.Simon(=Angelica)が24ヶと非常に堅牢である。当馬の競走成績がそれを雄弁に物語っているが、安定してこそいるものの突き抜ける強さを発揮するのが難しい血統構成と言い換える事も出来るだろうか。

 ここでブライアンズタイムの種牡馬としての特徴を捉えてみたいと思う。

①当馬はSir Gallahad(=Bull Dog)が主導となっているが、母方においては不備となっている。この部分を補正していく必要がある。
②当馬の血統において眠ったままのNasrullah~NearcoやHyperionは国内においては非常にメジャーな血である。したがって当馬の産駒は父とは違う傾向を持つ可能性が高く、結果その能力の開花まで時間のかかる可能性が高い。
③米系が濃い血統構成で、それらのクロスは最低限必要。具体的には、Blue Larkspur・Man o'War・Teddy等。
④当馬の土台構造を形成した、St.Simon(=Angelica)が産駒の血統においては、その大多数が10代目以降に存在するため、土台構造の再構築は念頭におく必要がある(しかしながら、90年代後半においてはこれはほぼ無理)。
⑤スタミナ勢力の確保として、当馬の主導となったSir Gallahad(=Bull Dog)~Plucky Liegeを再度クロスさせ、またMan o'WarやBlenheimも同様。
⑥スピードの確保としてMumtaz Mahal等を再利用したい。ただし、NasrullahやRoyal Chargerはできるだけクロスさせない方が質の維持においては望ましい。
⑦欧米系が混在する血統となるために、主導はそれらを上手くまとめる必要がある。

 こうして並べていくと、意外と難しい種牡馬のように見えるが、当馬にとって大きな救いだったのは、国内でメジャーだったNasrullahをアトランダムな配合でも、明確な主導にしやすかっただけでなく、国内において当馬が必要とした、米系が根付き始めた点は指摘しておきたい。つまり時代が必要な血を内包した種牡馬であったと言えるだろう。

 以下に当馬の産駒において、競争成績では無く血統構成的に上位に位置した配合馬と、簡単な血統紹介をおこなってみたい。

ナリタブライアン(ブライアンズタイム×パシフィカス-)牡・91生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=3663

主:9 結:6 土:4 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:5 SP:4 ST:5
合計:45点 クラス:2A 芝:9~16F ダ:9~12F
日本適性:△ 成長力:◎ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 言わずと知れたシャドーロールの怪物。平成の三冠馬にして、ブライアンズタイムの最高傑作。主導はNearco6・6×4・6の系列クロス。次いでHyperionで血統を非常に明確にリードしている。スピードはNearcoとMahmoudで、スタミナはHyperionやBlenheimから。これらが圧倒的に強調されたNorthern Dancerが見事に傘下に収めている。惜しむらくは、父の主導となったSir Gallahad(=Bull Dog)~Plucky Liegeが欠落した点だが、強調されたのがNorthern Dancerである為に、さほどのマイナスとはならなかった。したがって父とは傾向が異なるために、ブライアンズタイムの交配例としてはやや異質だが、血統構成的には最高峰である事は疑いの余地は無い。

チョウカイキャロル(ブライアンズタイム×ウイットワタースランド-Mr.Prospector)牝・91生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=8438

主:8 結:6 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:5 SP:4 ST:4
合計:42点 クラス:2A 芝:9~15F ダ:8~12F
日本適性:△ 成長力:◎ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 ナリタブライアンの同期にして、優駿牝馬。女王ヒシアマゾン(3B級)に唯一迫った、ただ一頭のライバル。主導はNashua4×4の中間断絶。その中のNearcoの系列クロスで実質的に血統をリード。次いで、父の傾向を引き継ぎ、Sir Gallahad(=Bull Dog)の影響も強く、父のキーホースをおさえている。したがって、ナリタブライアンと異なり、父と同様に父父のRobertoを圧倒的に強調している。ナリタブライアンと異なるものの、血統レベルはほぼ同一で、その質の高いスタミナはナリタブライアンをも凌駕する。ブライアンズタイムの目指すべき交配としての優秀な指標のひとつで、ナリタブライアンと並ぶ最高峰のひとつである。

マヤノトップガン(ブライアンズタイム×アルプミープリーズ-Blushing Groom)牡・92生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=18871

主:7 結:7 土:4 弱:5 影:3 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:5
合計:41点 クラス:1A 芝:8~15F ダ:8~12F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:兼用 重馬場適性:□

 GⅠ4勝を成し遂げた、夏の上がり馬。栗色の撃墜王。主導はNasrullah5×4の系列クロス。次いで、Alibhai、Sir Gallahad(=Bull Dog)の影響が強く、主導としてのNasrullahの明確性に若干影を落としている。しかしながら、この三者の結合力は極めて強固で、この連動性が引き絞った弓を放つような競馬を可能とした、能力の源泉であったと言える。また、ブライアンズタイムの産駒としては、かなりスピードに恵まれた配合で、天皇賞(秋)では惜敗したものの、血統構成的には十分に守備範囲内であった事を付け加えておきたい。

ヒダカブライアン(ブライアンズタイム×ミスマーベラス-マルゼンスキー)牡・94生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=20221

主:7 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:4
合計:38点 クラス:1A 芝:9~12F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:兼用 重馬場適性:◎

 戦績は僅か3勝に止まったものの、父の血統をもっとも良く再現した一頭。主導はBull Lea5×5・6の系列クロス、次いでNasrullahの系列クロスの影響が強い。このNasrullahクロスはスピードの補給としては上手く機能しているものの、主導の明確性をかなり乱しており、両者の連動性もまた、決して強固とは言えない。ここが当馬の限界を端的に示しているだろう。とは言え、前述したように父の再現性は良好で、底力も期待でき、配合的にも優秀であった。また、ブライアンズタイム×マルゼンスキーはニックスと言える相性の良さで、ブライアンズタイムが必要とする血は、全てマルゼンスキーでまかなう事が可能である。ブライアンズタイム×マルゼンスキーだけでは、スピードに関しては不安が残る事は否めない為、あまり結果の出なかった配合ではあるが、もっと試されてしかるべきであった。

エリモダンディー(ブライアンズタイム×エリモフローレンス-イルドブルボン)牡・94生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=19956

主:8 結:5 土:4 弱:5 影:3 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:5
合計:40点 クラス:1A 芝:9~15F ダ:8~12F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 有馬記念馬シルクジャスティス(3B級)の同厩馬にして、幻の天皇賞(春)馬。主導はNasrullah5×6の系列クロスで明確。次いで、Bull LeaとHyperionで血統をリード。これらの連動は悪くないが、主導たるNasrullahは米系をまとめるには不十分で、結合力の弱さがこの配合の最大のウィークポイント。とは言うものの、Nasrullahが主導でありながらスタミナは非常に強靭で、ステイヤーとしての資質は十分。サニーブライアンとの比較では明らかに当馬のほうが上で、これからといった時の夭折は非常に残念であった。

ファレノプシス(ブライアンズタイム×キャットクイル-Storm Cat)牝・95生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=22414

主:8 結:5 土:3 弱:6 影:2 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:4
合計:38点 クラス:1A 芝:8~12F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 偉大なる叔父ナリタブライアンと3/4同血にして、牝馬GⅠ3勝のターフに咲く可憐な胡蝶蘭。主導は叔父と異なりNasrullah5×6の系列クロス。したがって、牝馬としては重厚で底力もあるが、スピードよりの中距離馬となった。本質的にはナリタブライアンと似て父母のキーホースをおさえており、優秀な配合ではあるが、叔父に大きく劣るのは否めない。反面、国内向きのスピードは明らかに叔父を凌駕しており、アベレージを高めるといった、配合の方向性としては正しい側面も持っている事は指摘しておきたい。

タニノギムレット(ブライアンズタイム×タニノクリスタル-クリスタルパレス)牡・99生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=108690

主:8 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:4
合計:39点 クラス:1A 芝:8~12F ダ:8~10F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 カントリー牧場血統の結晶にして日本優駿馬。ブライアンズタイム最後の優駿。主導はブライアンズタイムの産駒にしてはかなり珍しい、Roman5×5の系列クロス。次いで、Nasrullah5×6で血統をリード。したがって、マヤノトップガンとは異なるものの、当馬もかなりスピードに恵まれた配合で、芝・ダート兼用で本質的には10F前後に最も適性を示す。かなり柔軟性のある血統構成であると言え、非常に優秀な血を内包する祖母タニノシーバードを生かしきった内容であるとは言い難いものの、十分に優秀な血統構成。この優秀な血が愛娘ウオッカ(3B級)の中でも生きており、また連綿と繋がっていくことを期待してやまない。

アスカロン(ブライアンズタイム×パムシ-Mr.Prospector)牡・02生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=183405

主:8 結:5 土:3 弱:6 影:3 質[近]:3 質[遠]:5 SP:3 ST:5
合計:41点 クラス:1A 芝:10~16F ダ:9~12F
日本適性:△ 成長力:◎ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

 屈腱炎でわずか4戦の競争生活だったものの、煌く才能の輝きを見せてくれた、幻の名馬。主導はNashua4×4の中間断絶クロス。その中のNearcoの系列クロスで実質的に血統をリード。父とBMSまで同じである、チョウカイキャロルと非常によく似た血統構成で、甲乙つけ難い内容である。また、ブライアンズタイム産駒としてはかなり珍しく、Hyperionの影響が非常に強い。ここが33秒台前半の上がりを見せ付けられる、ブライアンズタイム産駒らしからぬ能力の源泉であったと言える。また、血統全体の質も極めて高い。無事の開花が見たかった一頭で、その片鱗も十分見せていただけに、早いリタイアが大変残念である。


 ここまで、ブライアンズタイムの産駒の優駿(1A級以上)について見てきましたが、実はまだまだ名馬は存在します(3B級上位以上)。それだけアベレージも最高到達点も高い種牡馬だったと言えますが、ブライアンズタイムの前にはいつもサンデーサイレンスという、歴史的大種牡馬が存在していました。
 常にサンデーサイレンスの後塵を拝していたブライアンズタイムは、はたして不幸だったのでしょうか?これは各人の主観に任せたいと思いますが、ここで、ブライアンズタイムの名誉の為に付け加えておきます。
 ブライアンズタイムの種牡馬としてのポテンシャルは、決してサンデーサイレンスに劣っていたわけではありません。サンデーサイレンス産駒は、スピードに良さがあるタイプが殆どですが、ブライアンズタイムのストロングポイントはそれと異なります。つまり重厚なスタミナに裏打ちされたスピードが当馬の産駒達の最大の武器だったのです。五十嵐理論というフィルターを通して血統をみると、破壊力は圧倒的にブライアンズタイムの方が上で、サンデーサイレンスはむしろ小粒に見えるぐらいです。
 最後に、駄文ではありましたが、こんな文章でも、日本競馬を色鮮やかにしてくれた、ブライアンズタイムへの手向けになれば、幸いであります。また、最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。