血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

Dawn Approach(ダウンアプローチ)

2013-08-29 23:44:00 | 海外馬
Dawn Approach(New Approach×Hymn of the Dawn-Phone Trick)牡・10生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=231907

主:8 結:5 土:2 弱:4 影:2 質[近]:2 質[遠]:4 SP:5 ST:3
合計:35点 クラス:3B 芝:7~11F ダ:7~10F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:普通 
芝適性:○ 砂適性:□ 重馬場適性:□ 距離短縮適性:○ 距離延長適性:□


○ 主導   (8)

 主導は、Nearctic5×5の系列クロス。この主導は、その父Nearcoを血統の4ブロックに散在させ、血統全体を強力にリードしている。惜しむらくは、Ⅱ・ⅣブロックにおけるNearcoが血統の7代目以降にしか存在しない点で、この部分の動き出しの遅さは当馬の血統構成上無視できない部分であると言えるだろう。また、Native Dancerを伴うRaise a Native6×5の中間断絶も、ある程度の影響力を持つのも、主導面においての評価に若干のマイナスを与えている点も指摘しておきたい。それでも、全体的にはPharos(=Fairway)系およびGainsborough系の流れが強く、両者を強力に統合するNearcticが主導であるのは、大きな幸運であると言えるだろうか。

○ 結合   (5)

 主導たるNearcticと、6代目までに存在するNearcoはその傘下に存在している。NasrullahはNearcoで非常に強固に結合している。Bull LeaはSpearmintで、War AdmiralはSwynford(=Harry of Hereford)で直接結合している。Djeddah、Raise a Native~Native DancerはBull Lea内Teddyを通じて間接的に結合を完了している。決して強固とは言い難いが、欧米系の混合された当馬の血統構成を、かろうじてであるものの、主導たるNearcticがまとめあげた点は、評価されてしかるべきだろう。

○ 土台   (2)

 土台構造はPharos(=Fairway)が12ヶで形成している。かなり貧弱だと言えるが、Hyperionが8ヶでアシストしているのは幸いだろうか。

○ 弱点   (4)

 父内Anatevkaに弱点を発生させている。9代目においてHyperion、Blandfordがクロスし、影響が少ない部分であった為に、その影響が比較的軽微だと言えるのは、当馬にとって幸いだと言えるだろうか。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(4-1-8-3)と、母父のPhone Trickを強調している。決して良好であるとは言い難いが、Phone Trick内に影響の強いクロスの殆どが存在している為に、仕上がった際の破壊力は否定できない点を指摘しておきたい。

○ 質[近]  (2)

 近い世代の血の質はかなり良好だと言える。強調されたのが決して質の高くないPhone Trickであるのが惜しまれるものの、全体的には良好な部類に入るだろう。

○ 質[遠]  (4)

 主導たるNearcticを初めとして、全体的に質の高いクロスで血統を構成している。非常に質の高い血統構成だと言える。底力勝負可能な血統構成。

○ スピード (5)

 主導たるNearctic(Nearcticは本来バランスよりのスピード血統だが、Royal Charger内のNearcoや6連存在するNasrullahから相当のスピードのアシストを受けている)を中核にRaise a NativeやBull Lea(Bull Leaがスタミナ勢力として明確に機能するためには、当馬が欠落させたPlucky Liegeのアシストが必要だと考えられる)がアシストする形態。この三者の連動は決してスムーズでは無い為、引き出しに時間はかかると考えられる上に、多少安定感にはかけるものの、開花した場合は粘りあるスピードを発揮できるだろう。

○ スタミナ (3)

 War AdmiralおよびDjeddahを中核にした血統構成。スピード勢力と比較して貧弱であるのは否めない事実だが、最低限のスタミナを確保しているとも言える。ただし、決して過信するレベルにはなく、距離延長に対しての適性は決して高いとは言い難い。


 総合的に見ると、父New Approachのイメージと異なり、圧倒的にスピード優位の血統構成だと言え、当馬の競争成績が雄弁に物語っている通り、血統構成からみた場合もスピード優位のマイラーだと言えるのは疑いの余地はない。また、最低限のスタミナも確保している為に、距離延長の適性は高いとは言い難いものの、芝10Fまでならば、Northern DancerとIcecapadeの連動によってもたらされた(当馬の場合、結果的に強調されたPhone Trickがほぼ全開になった点は無視できない事実で、Northern Dancerと≒Icecapadeの4×4だけでは、説明し難い部分もあるのは指摘しておきたい。それでも十分な相性の良さはあるが。)、質の高い血に支えられた、その豊なスピードを十二分に発揮できるだろう。
 惜しむらくは、影響度バランスの悪さや土台構造の散漫さからくる安定度の低さだと想定され、調子をくずした際にその回復には手間取る可能性が、高い点は指摘しておきたい事実である。

Novellist(ノヴェリスト)

2013-08-05 17:40:00 | 海外馬
Novellist(Monsun×Night Lagoon-Lagunas)牡・09生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=232473

主:8 結:6 土:3 弱:3 影:2 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:5
合計:37点 クラス:3B 芝:10~16F ダ:9~12F
日本適性:× 成長力:○ 成長型:遅め 
芝適性:○ 砂適性:△ 重馬場適性:□ 距離短縮適性:△ 距離延長適性:○


○ 主導   (8)

 主導は途中Alchimistが断絶するものの、Birkhahn5×5・7・8を伴うLiterat4×4の系列クロス(8代目Birkhahnは位置的に微妙だが、血統全体でBay Ronald系の流れが強く、かろうじてクロスしていると判断している)。この主導は、比較的明瞭で、極めて強力にとはいかなかったものの、当馬の血統を上手くリードしていると言えるだろうか。

○ 結合   (6)

 主導たるLiteratと6代目までに存在するクロスである、OlympはLiteratに含まれ、NearcoはPhalarisで、Neckar(=Naxos)~Ticino、OlympはArjaman~Heroldで、Tornadoはその父Tourbillonで、Donatelloは直接結合をしないものの、Swynfordを経由してTornadoによって主導と結合をはたしている。7代目以降においても、Teddy系などの一部の米系を除き、かなり強固に結合をはたしている。かなり優秀だと考えて差し支えないだろう。

○ 土台   (3)

 土台構造は、Heroldが13ヶで形成している。決して強固とは言えないが、Phalarisが8ヶでサポートしている点と、Heroldが5代目を基準とした各ブロックにほぼ存在する点を考えると平均点にはあるか。

○ 弱点   (3)

 母方、Flaming Page及びWindy Answerに弱点を発生させている。比較的影響の弱い部分であるのは幸いだが、決して無視できるものでもない。当馬の血統構成を考えるに、非常に惜しまれる点であると言える。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは、(10-7-6-2)と決して良好とは言えない。出来ることなら父父方の影響をもう少しおさえた形が望ましかったか。やや安定感に欠ける血統構成だと考えられる。

○ 質[近]  (3)

 父母の血統構成は比較的優秀だと考えてよい。底力勝負可能な血統構成。惜しむらくは母方より父方が優秀な点だが、総合的には優秀な部類に入ると言えるだろう。

○ 質[遠]  (4)

 主導たる、Literatをはじめとして、優秀な独血統のクロスで血統を構築。前述の質[近]とあわせ、かなり優秀な血統構成である。完全開花した際には、自ら競馬を作れる内容だと考えられる。

○ スピード (3)

 Nearcoを中核にした配合。若干スピードが不足気味だと考えられるが、7代目以降においてRelic等が隠し味的にスピードを補給している。引き出しに苦労すると考えられるタイプで、鍛錬が必要以上に大切な血統構成であると言える。Mahmoud及びBlue Peterの欠落が惜しまれる。

○ スタミナ (5)

 Hyperion及びTourbillon・Donatelloを中核にした配合。それぞれが主導たるLiteratへと質が高く、非常に強靭なスタミナを確実に補給しているのが見て取れる。本来、主導たるLiteratはバランス型の血統構成であるが、前述したスタミナ勢力のアシストも受けている為に、スタミナ型へと能力変換をおこしていると考えて良い。近年まれに見るレベルで、ステイヤーといって差し支えないレベルで、本領発揮は12F以上必要だと考えられるか。


 総合的に見ると、質の高いスタミナを血統の背骨に全体の骨格を構成しており、古きよきステイヤーのたたずまいを見せている。若干、スピードに欠ける点が惜しまれるが、重厚なスタミナは、その弱点を補って余りある内容である。
 惜しむらくは、弱点を2ヶ所抱えた事で、この部分さえ無ければもうワンランク上の評価もありえただけに、重ねて惜しまれる点だと言える。更に、影響度バランスや土台構造なども鑑みると、安定感には劣る可能性は指摘しておきたい。爆発力はあるが、不可解な敗戦を喫するタイプであるとも言える。
 それでも、スタミナという質実剛健な武器をしっかりと確保した内容で、近年珍しいステイヤーだと言えるだろうか。
 それだけに、仮に国内でデビューした場合、勝ち上がりにすら苦労する血統構成であるのは確かで、ここまでの成績を収めるに至った、関係者の方々の努力にささやかながら敬意を表したいと思います。