血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

ヴェイロン

2010-08-18 23:19:38 | 08年生
ヴェイロン(キングカメハメハ×ヘヴンリーロマンス-サンデーサイレンス)牡・08生

主:8 結:5 土:2 弱:5 影:2 質[近]:3 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:37点 クラス:3B 芝:8~12F ダ:8~11F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

○ 主導   (8)

 主導は、五十嵐理論の原則から外れるが、Nureyev≒Sadler's Wells3×4。このニアリークロスは、その父Northern Dancerを5・5×4と血統の3ブロックにおいてクロスし、途中Nearctic・Natalmaが断絶するものの、ほぼ系列クロスを形成し血統を強力にリードしている。ただし、Nureyev≒Sadler's Wellsは実際にはクロスしている状態では無く、その父Northern Dancerが系列クロスを形成した訳では無い。従って、Nureyev≒Sadler's Wellsが効果を発揮しない場合、全体的にはやや良いといった程度(この評価はNureyev≒Sadler's Wellsを効果有りと判断している)。

○ 結合   (5)

 主導たる、Nureyev≒Sadler's Wells以外に6代目までに存在するクロスのうち、PharamondはPhalaris・Seleneによって、Specialは、Hyperion・Nasrullahによって、そのNasrullahはその父Nearcoによって、PrincequilloはGay Crusader~Bayardoを通じて、Lalunは9代目までに結合が出来ないものの、Sadler's Wellsに含まれる血統である上に、父方10代目に豊富に存在するGay Crusader・Teddyの存在によって、ひとまず結合していると判断している(実際には未結合だと言える。主導を3/4同血クロスとしているが、結合においての判断は五十嵐理論に準じている)。また、Nearco・Native Dancer・Almahmoudは、Northern Dancerに含まれる血統で確実に結合を果たしている。更に、Native DancerがDisplay~Fair Playを含んでいる為に、Man o'Warもしっかりと結合できている。決してシンプルとは言えないものの、7代目以降の結合状態も悪くは無く、血統としての連動性はひとまず保たれている。

○ 土台   (2)

 土台構造を形成するのは、Gainsboroughが12ヶとかなり貧弱だと言える。Gainsboroughをサポートしているのも、Blandfordが9ヶとかなり寂しい状況だと言え、かなり貧弱だと言える。決して安定感のある状態とは言い難い。

○ 弱点   (5)

 血統表上においてこれといった弱点や欠陥は無い。若干気になるのは、母方Tenerani内のクロスであるSardanapaleが8代目にクロスするものの、他勢力との結合が果たせていない点で、近交馬である点も考慮するとやや不満が残る。全体的には良好な部類に入るだろうが。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(8-2-4-11)と若干バランスが悪く、高評価を与える事は出来ない。しかしながら、協調された部分はNureyev≒Sadler's Wells(ひいてはNorthern Dancer)を含んでいるのは幸運か。

○ 質[近]  (3)

 母であるヘヴンリーロマンス自身の血の質は決して高くは無いが、父母3代目までに並ぶ血統は非常に血の質が高い。底力を発揮できる内容。

○ 質[遠]  (4)

 血統の根幹をなすクロスである、Nureyev≒Sadler's Wells自体の血の質は比較的良好で、クロスされた血統もPrincequilloを始め、全体的に良好だと言える。前述した質[近]を含め、かなり優秀だと言える。

○ スピード (4)

 主導たる、Northern Dancer内Almahmoudを中核に、Special5×5、Nasrullah6・7・8・8×6・8、Sickle(=Pharamond)8×6で血統のスピードをリードしている。比較的軽いスピードに良さがあるタイプで、異なる系列のスピードを生かした為、血統のイメージよりは器用なタイプ。

○ スタミナ (4)

 Princequillo7・7×6をスタミナの核に、血統を構成している。本来Princequilloは結合しにくい血統であるが、Gay Crusaderを通じ主導と結合している。また、Princequillo内は、その父Prince Roseをクロスさせるだけでなく、Papyrus~Tracery・Gay Crusaderとスタミナの血がしっかりと生かされ、よりスタミナよりの勢力へと能力変換されている。更に、Bull Dog(=Sir Gallahad)が血統の奥からスタミナを補給している。前面だけのクロスでは中距離タイプと言えるが、血統の奥に眠るスタミナの引き出しに成功したならば、芝12Fは確実にこなせる。


 総合的に見ると、ダービー馬と天皇賞(秋)馬だけでは無く、リーディング上位のキングカメハメハ×サンデーサイレンスといった期待の配合ではあるが、バランスの悪さ、主導勢力の不安定さ、土台構造の散漫さ、等といった不満要素は残る配合だと言える。しかしながら、生かされたスピード・スタミナ勢力はなかなかに強靭で、完全開花した場合、破壊力を秘めた配合だとは言える。また、血統を構成する血やクロス馬は全体的に質が高く、底力勝負は可能だと言うことができるだろう。
 スタミナの引き出しに成功した場合、中距離以上の早い流れにおいて真価を発揮するタイプだと言え、自分から競馬を作る方が良いだろう。しかしながら、父キングカメハメハ・母父サンデーサイレンスと言うことで、ローズキングダムと似たようなイメージで捉えられやすいだろうが、全体的にはローズキングダムの方が上位だろう。
 ただし、魅力的な部分もしっかりと秘めた配合形態で(日本の芝への適性、という部分においてはローズキングダムより上位だと考えられる)、長い眼で鍛えて欲しい好配合だと言える。無事な開花を期待したい。

ブラウンワイルド

2010-08-11 22:13:29 | 08年生
ブラウンワイルド(ワイルドラッシュ×ブラウンシャイン-ヤマニンゼファー)牡・08生

主:7 結:4 土:4 弱:3 影:2 質[近]:1 質[遠]:4 SP:4 ST:3
合計:32点 クラス:2B 芝:6~9F ダ:6~8F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:芝 重馬場適性:□

○ 主導   (7)

 主導は、Nearcoの仔Danteが5×7とクロスするものの、位置配置の関係からNearco5・6・8×6・7・8・8・8・8の系列クロス。次いで、Hyperion5・6・7・8×7・7・7・8・8の系列クロスと、Clovelly5×7の系列クロスで血統をリードしている。一見するとかなり不明瞭に見えるが、この3者は、Chaucer・Gainsboroughで連動している上に、血統全体でPharos(=Fairway)系が強くNearcoを先導役として血統全体を比較的強力にリードしている。

○ 結合   (4)

 主導たるNearcoと、6代目までに存在するクロスである、HyperionはChaucerを通じて、EclairはPolymelusを通じて、Sir Gaylord・Danteは直父系であるNearcoへと通じ、Owen TudorはPharosを通じ、Missy BabaはSpearmintを通じ(Spearmintを介しての結合は、若干弱い為やや疑問)、直接結合を果たしているものの、血統内において影響の強いClovellyは、Gainsboroughを介してHyperion内Chaucerによって間接的に結合を果たしている。この影響の強いクロスをNearcoがまとめきれなかったのは若干マイナスだと言える(ClovellyはCanterbury Pilgrimを9代目に配するが、母方においてCanterbury Pilgrimが10代目以降に存在するため、直接結合出来なかった。これは、世代間のバランスの悪さがもたらしたマイナス要素だと言える。10代目において、Canterbury Pilgrimは豊富に存在するため、さほどのマイナスではないかもしれないが)。しかしながら、ぎこちなさを残しながらも結合が完了しているのは幸運だろう。

○ 土台   (4)

 土台構造は、Pharos(=Fairway)が22ヶと世代間のバランスの悪さを抱えた配合としては脅威的で、非常に安定感がある内容となっている。若干惜しまれるのは、Nearco内においてPharos(=Fairway)をサポートする血が少ない点であるが、十分に合格点だと言えるだろう。

○ 弱点   (3)

 世代のバランスが悪い配合のわりに大きな欠陥は無い。しかしながら、父方Native Dancer内のアメリカ系や(厳密にはSickle~Phalarisとクロスする為、弱点では無い)、Bold Irishがやや弱い(Sir GallahadがクロスするもののSpearmintが母方に1ヶしか存在しない為、結合がやや曖昧)。ブラウンワイルドは圧倒的に父方の影響が強い為に、若干不満が残る。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(16-6-1-5)と圧倒的に父方が強く、その中でも父父Wild Againが強い。かなりバランスが悪いと言えるが、Wild AgainがNearco・Hyperion・Clovellyと影響の強い3者を含んでいるのは幸運か。

○ 質[近]  (1)

 父母共に、決して血の質が高いとは言い難い。母方にはヤマニンゼファー・マルカートと悪くは無いものの、強調されたのが父方の為、かなり不満が残る。

○ 質[遠]  (4)

 クロスされた血は、主導たるNearcoやHyperionと血統を構成する背骨にあたるクロスは質の高い血で構成されている。また、Princequillo・Sir Gaylord等もクロスした為、全体的には高いレベルだと言える。

○ スピード (4)

 Missy Baba・Owen Tudor・Dante(Rosy Legend~Dark Legendの欠落からスピード勢力となっている)を中核に血統全体をリードしている。また、これらのクロスはOwen Tudor・Danteは主導勢力と直接結合し、Missy BabaはBlandfordで間接的にではあるが結合している。従って、そのスピードは確実に主導へと補給されブラウンワイルドのスピード源となっている。また、血統の奥にあるもののMenowがしっかりと結合できたのもプラス。

○ スタミナ (3)

 血統の前面においては、スタミナ勢力が少ないものの、強調されたWild Again内Hyperionを中心に、Princequilloを加えスタミナの核を形成。そのPrincequilloを生かした、Sir Gaylordがスタミナをアシスト。また、7代目以降においてもSon-in-Law・Court Martial(Hurry Onが生きスタミナタイプに能力変換)・Sir Gallahad(=Bull Dog)(Plucky Liegeを生かしスタミナタイプ)と、本質的にはマイラーだと言えるが、前述のスタミナの影響から、距離適性の幅が広いタイプに成り得る。


 総合的に見ると、やはり父ワイルドラッシュのバランスの悪さを引き継いだ配合だと言え、決して一流の配合だとは言えない。反面、バランスの悪さを抱えながらも、必要な部分をきっちりと押さえた配合で、土台構造も堅牢な状態を作り出している。これはかなり驚異的な状態だと言え、総合評価こそ2Bではあるものの、配合の方向性としては決して間違えてはいない。また、生かされたスピードの血は日本向きで、クロスの少なさを鑑みるに切れ味鋭いスピードを見せる事が予想される。
 前述した世代のバランスの悪さがある為に、決して過信は禁物だがキラリと光る部分を持つ。仮に10代目に眠る血を目覚めさせる事が出来たならば、結合や弱点、またはスタミナに対するマイナス要素が、かなり軽減されるため(やや異なるものの、ダイワスカーレットもそういったタイプだった)、もうワンランク上の活躍を見せる可能性は、頭の片隅においておきたい血統構成だと言えるだろうか。

ヒラボクインパクト

2010-08-06 20:38:55 | 08年生
ヒラボクインパクト(ディープインパクト×ドリームカムカム-メジロライアン)牡・08生

主:6 結:6 土:4 弱:5 影:3 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:36点 クラス:3B 芝:9~12F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

○ 主導   (6)

 主導は、中間断絶になるがNorthern Dancer5×4・5。このNorthern Dancerは、系列クロスを形成し、影響の強いAlmahmoud5・7×6・7、及びLady Angela7×6・6・7を内包し、血統をリードしている。従って、Almahmoudが5代目から系列クロスを形成してはいるものの、Northern Dancerは主導として機能している。但し、Northern DancerとAlmahmoudの世代のバランスの悪さや、主導勢力が中間断絶である点は明らかにマイナスで、総合的はやや良いといった程度。

○ 結合   (6)

 主導である、Northern Dancerを除いた6代目までに存在するクロスである、Almahmoud・Lady Angela・NearcoはNorthern Dancerに含まれている為、確実に結合している。また、DonatelloはBlandfordで、Court MartialはPharos(=Fairway)で、Admiral DrakeはSpearmintによって直接結合を果たしている。Admiral Drakeの結合が9代目である点と、7代目のクロスがやや雑多である為、その分が若干のマイナスではあるものの、総合的にはかなり強固。

○ 土台   (4)

 Gainsboroughが19ヶで形成。また、Blandfordが10ヶでサポートしている。世代が新しい配合にしてはかなり強固な土台構造だと言え、安定して能力を発揮できるタイプ。

○ 弱点   (5)

 これといって大きな弱点や欠陥は無い。ノーザンテーストが4代目に後退したため、Victoria Parkの欠陥の影響も少ない。但し、母方スノッブ内は9代目にBlandford・Nearcoを配するものの、8代目までに結合できるクロスが無い点が気にはなる。主導勢力を含む為、さほど大きなマイナスでは無いと思われるが。

○ 影響   (3)

 影響度バランスは(3-4-3-7)とかなり良好。強調された、ドリーミングガール内に、主導勢力であるNorthern Dancerが含まれた点もプラス。

○ 質[近]  (2)

 ディープインパクト・サンデーサイレンス等、父方の血の質は非常に高いものの、母であるドリームカムカム自身の血の質は平均的といった程度。極めて良好とまでは言えない。

○ 質[遠]  (3)

 主なクロス馬である、Northern Dancer・Nearco・Admiral Drake・Donatello等は自身の血の質も高い優秀な配合馬であるが、より強力に主張するAlmahmoud・Lady Angelaの血の質は決して高いとは言えない。しかしながら、7代目以降のクロス馬を鑑みるに比較的良好だと言えるか。

○ スピード (3)

 Almahmoud・Lady Angelaといった軽いスピードを中心にした配合で悪くは無い。但し、父の決め手となったTurn-toや、スピード源となったPharamond(=Sickle)の欠落(6代目Pharamondは世代ズレと判断)、母のスピード源となったNasrullahの欠落はマイナスだと言える。しかしながら、NasrullahとRoyal Chargerの呼応で血統の奥にあるスピードをある程度再現出来たのは幸運。

○ スタミナ (4)

  Donatello・Court Martial(Hurry Onを伴う)・Admiral Drake(Plucky Liegeを伴う)の3者によってスタミナの核を形成。この3者は主導と確実に結合し、スタミナをしっかりと補給している。また、7代目以降においてもSir Gallahad(=Bull Dog)・Princequillo~Prince Roseと非常に重厚な配合。距離延長に適性を見せながら、長く脚を使えるタイプ。


 総合的にみると主導が不明瞭のうえ、決して父のようなシンプルさを持った配合では無いものの、父方ウインドインハーヘアと母方メジロライアンが呼応したために、生かされたスタミナ勢力はかなり強靭で、芝12Fは優に克服可能で国内の芝でなら15Fもこなせる血統構成になっている。反面スピード要素には若干不安が残り、速いペースでこそ持ち味が生きるタイプ。完全に父を生かした配合とは言えないが、父ディープインパクトに対する配合の一つの回答ではあると思う。
 国内では条件級に埋もれやすいタイプだが、無事に開花を果たし、欧州のようなタフなコースでの走りを見てみたい配合である。