血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

カレンチャン(高松宮記念)

2012-04-17 16:41:11 | 2012年GⅠ勝ち馬
カレンチャン(クロフネ×スプリングチケット-トニービン)牝・07生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=207042

主:6 結:5 土:4 弱:4 影:3 質[近]:1 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:33点 クラス:2B 芝:6~9F ダ:5~8F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:遅め 馬場適性:兼用 重馬場適性:□

○ 主導   (6)

 主導はNorthern Dancer5×5の系列クロス。次いで、Nasrullah(=Rivaz)6・8・8×6・7・7で血統をリード。しかしながら、トニービン内のHyperionが5代目に存在し系列クロスを形成するために、主導としては非常に明瞭にとはいかなかったのが惜しまれる。

○ 結合   (5)

 主導たるNorthern Dancerと、6代目までに存在するクロスである、Nearctic・Hyperion・Native Dancerは自身に含まれる血統の為、確実に結合を果たしている。Nasrullah(=Rivaz)はNearcoで非常に強固に結合をしているのが見て取る事ができる。しかしながら、6代目に存在するPrincequilloは9代目までに結合を果たしていない上に、7代目以降ではあるものの、混在する血統、特に米系を主導たるNorthern Dancerが統合できていない点は、やはりマイナスで全体的に高評価できる内容であるとは言い難い。

○ 土台   (4)

 土台構造は、Pharos(=Fairway)が20で形成し、Gainsboroughが11ヶでアシストしている。世代の新しい配合としては脅威的で、端的に自身の配合の方向性の正しさと、安定感を示していると考えられる。

○ 弱点   (4)

 血統全体においてこれといった弱点や欠陥は存在しない。惜しむらくは、近親度が強い点と、母方Relic内のクロスが全て米系で、血統全体の傾向から著しく離反している点で、決して高評価できるものでは無い(もしこの部分のクロスが連動していなかったと仮定すると、3点程度の評価でよいだろう)。

○ 影響   (3)

 影響度バランスは(4-5-5-4)と綺麗な天秤型を形成している。非常に安定感のある内容。

○ 質[近]  (1)

 祖父母6頭までの血の質は決して高く無く、特に母スプリングチケットが一枚落ちる。底力勝負にはあまり向かない血統構成(ただし、欧米系を混在させたスプリングチケットのおかげで、父クロフネを最低限生かしたとも言える)。

○ 質[遠]  (3)

 主導たるNorthern Dancerの血の質自体は悪くは無いが、次いで影響の強いのがNasrullah(=Rivaz)である為に、全体的には平均的だと言えるだろうか。

○ スピード (4)

 6連あるNasrullah(=Rivaz)を中核にした配合。自身の中では眠っているものの、3/4同血のRoyal Chargerが連動した為に、そのスピード要素を最大限に発揮しているのはプラスに作用していると考えられる。

○ スタミナ (3)

 主導たるNorthern Dancerは、本質的にはスタミナよりの血統構成であるが、スタミナの核としては、極めて強力にとは言えない内容である。しかしながら、母方トニービン内HornbeamのHyperionや、結合こそ果たせていないものの、Princequilloがある程度のスタミナを補給していると考えられる為に、意外と長く脚を使えるタイプになりうる。


 総合的に見ると、実質的にはノーカウントだが、世代のバランスが悪い内容で、影響度バランスや土台構造の優秀さから考えて、かなりちぐはぐな印象を受ける。更に、結合面においても前述しているが、米系が強い血統構成であるにもかかわらず、そのまとまりを欠くのは大きなマイナスで、ここが本馬の血統構成を考える上での限界点であると言えるだろう。
 しかしながら、世代の新しい配合にもかかわらず、しっかりとした土台構造を持つ事が示すように、配合の方向性としては決して間違えていないと考えて良く、繁殖としてもなかなかに面白い血統を持つと言えるのではないだろうか。

テスタマッタ(フェブラリーS)

2012-03-21 19:05:26 | 2012年GⅠ勝ち馬
テスタマッタ(Tapit×ディフィカルト-Concern)牡・06生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=202961

主:6 結:4 土:3 弱:1 影:3 質[近]:3 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:30点 クラス:2B 芝:6~9F ダ:5~8F
日本適性:□ 成長力:□ 成長型:早め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

○ 主導   (6)

 主導は、Dr.Fager6×4。非常に珍しくあるが、ほぼ系列クロスを形成し、血統をリードしている。一見強力な主導に見えるが、Raise a Native5・6×6、Turn-to8・8×6・6、Northern Dancer5×4が派生。その明瞭さはいまひとつと言える。できる事なら、Mr.Prospectorを主導とした方が、配合としては面白かったと言えるだろう。

○ 結合   (4)

 主導たる、Dr.Fagerと6代目までに存在するクロスである、Raise a Native~Native DancerはTeddyで、Turn-toはPlucky Liegeで、結合を完了している。ただし、Northern Dancer・NearcoはRaise a Native内Native Dancerを通じて結合している為、ちぐはぐな印象を受ける(ただし。10代目に存在するSpearmintが目覚めている可能性がある。その場合5点の評価でも良いと考えられる)。

○ 土台   (3)

 Bull Dog(=Sir Gallahad)が、15ヶで土台構造を形成している。単一の土台構造としては平均的だと考えられるが、Man o'Warが9ヶでサポートしているのは幸いで、なかなかに強固な状態だと言えるだろう。

○ 弱点   (1)

 近親度が強い配合にもかかわらず、母方Mirra内に欠陥を派生している。この部分は影響が強い部分なだけに、非常に惜しまれる。

○ 影響   (3)

 影響度バランスは(3-4-3-13)と圧倒的に母母であるWings of Joveを強調している。この部分に主導を含め、影響の強い血を集合させているのは、好感が持てる。

○ 質[近]  (3)

 近い世代の血の質はなかなかに優秀で、意外と底力勝負に向くタイプだと言えるだろう。

○ 質[遠]  (3)

 主導たるDr.FagerやNorthern Dancerは比較的質の高い配合だが、影響の強いRaise a NativeやTurn-toは決して質の高い配合とは言い難い。この部分がスピード面においては有利に働いているものの、惜しまれる部分ではある。

○ スピード (4)

 Raise a NativeやTurn-toを中核にした配合で、スピード面においてはかなりのよさがある配合だと言える。

○ スタミナ (3)

 主導たるDr.Fagerを中核にした配合で、Teddy系の粘りあるスタミナを発揮するタイプだと言えるが、血統全体を見渡した場合、明らかにスピード優位で、距離延長をこなせるタイプではない。


 総合的に見ると、決してバランスの良い配合とは言い難いものの、スピードという個性や、Teddy系を中核とした血の流れや、母母に血を集合させた事については、良さがある内容で、好調期にはその豊かなスピードで強い競馬を見せる事が可能なタイプだとは言える。しかしながら、欠陥の存在や明らかにスピード優位の血統構成は、配合という観点からはベストマッチとは言い難く、本質的に父母の相性はいまひとつだと言えるだろう。
 この手の配合は、自分から競馬を作れるタイプとは言い難く、過度な信頼は禁物だと考えられるだろう。

スマートファルコン(川崎記念)

2012-01-26 14:52:42 | 2012年GⅠ勝ち馬
スマートファルコン(ゴールドアリュール×ケイシュウハーブ-ミシシッピアン)牡・05生

9代血統表:http://pednet.k-ba.com/cgi-bin/ped/pedigree.pl?gene=9&data=200629

主:5 結:6 土:3 弱:3 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:31点 クラス:2B 芝:9~12F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

○ 主導   (5)

 主導は、Royal Charger6×5の系列クロス。その父Nearcoを血統の4ブロックに散在させ強力に血統をリードしているのを見て取ることができる。しかしながら、Vaguely Noble5×3が中間断絶であるものの、スマートファルコンの血統内においては、かなり影響が強くなったのはマイナスで(Nearcoで強固に結合したのは幸いだと言える)、更にPharamond・Mahmoud・Sir Gallahad(=Bull Dog)・Admiral Drake等、系統が異なるクロスも同程度の影響を行使するクロスも存在するのは明らかに主導の明確性においてマイナスだと考えられる。したがって、決して良好であるとは言い難い。

○ 結合   (6)

 主導たるRoyal Chargerと、6代目に存在するクロスであるNative Dancer・PharamondはPhalaris・Chaucerで、Vaguely NobleはNearcoで、Mahmoud・HyperionはGainsborough・Chaucerで、Bull Dog・Admiral DrakeはSpearmintで結合を完了している。また、主導の明確性を乱しているVaguely NobleがGainsborough系、Blandford系、Pharos(=Fairway)系を参加に収めているため、結合の面においてはプラスに作用しているのが見て取ることができる。7代目以降は多少雑多なクロスを生じているが、総合的にはかなり良好であると考えられる。

○ 土台   (3)

 Gainsboroughが17ヶで形成。比較的良好で悪くはないレベルだと言える。また、Phalarisが14ヶでサポートしたのも幸いして、決して良好であるとは言い難いが、平均からやや良いと言える内容となっている。

○ 弱点   (3)

 母方Bella内に弱点を派生させているが、9代目において主導勢力であるPolymelusをクロスしたのは幸いだと言える。全体的に大きな欠陥は生じてはいないが、かろうじて…という部分が多く存在するのは確かで、決して良好であるとは言い難い。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(3-4-9-5)と、かなりバランスがとれてはいるが、強調された部分であるミシシッピアンには、主導たるRoyal Chargerは存在しない点が惜しまれる。ただし、安定感はある内容だと言える。

○ 質[近]  (2)

 父ゴールドアリュールの血統はやや良いといった程度だが、母方ケイシュウハーブ、ミシシッピアン、キョウエイシラユキと見た目の血統構成よりも、はるかに良好だと言える。

○ 質[遠]  (3)

 主導たるRoyal Chargerの血の質は決して良好とは言い難いが、Vaguely Noble・Mahmoud・Sir Gallahad(=Bull Dog)・Admiral Drakeと影響の強い血はかなり質が高く、完全開花した場合ある程度の底力勝負に対応可能だと言える。惜しむらくはRoyal Chargerの質の低さだろうか。

○ スピード (3)

 主導たるRoyal Chargerを中核に、Mahmoudの中距離向きのスピードを補給した配合。また、Pharamondも強い影響を持ちながら、主導と強固に結合している。したがって短~中距離向きのスピードに良さがある。全体的に見ると比較的良好だと言える。

○ スタミナ (4)

 Vaguely Nobleを中核に、Plucky Liegeを核としたSir Gallahad(=Bull Dog)・Admiral Drakeの重厚なスタミナを補給した配合。7代目以降においては若干スタミナ優位といった程度の為、決してステイヤーと言えるレベルではないが、国内においては十分に重厚な配合だと言える。かなり良好だと考えられる。


 総合的に見ると、明らかに芝向きの配合内容で、本質的には芝の中~長距離で真価を問いたい配合内容だと言える。しかしながら本馬の場合、Sir Gallahad(=Bull Dog)等の米系の影響も強く、Mahmoud等の馬力型のクロスも多いためダートを主戦場としているものと考えられる。ただし、軽いスピードも多少なりと生きている為に、芝での走りを見たいタイプであるのは確かで、欧州の芝でも対応可能な配合内容である。重ねて言えば、主導が不明瞭かつ重厚な配合の為、非常に開花しにくいタイプであるのも確かだろう。
 総合的な評価としては、あと一押しの何かが必要だと考えられるものの、こういったタフなタイプである配合馬が、頭角を現すことは中々に珍しく、そういった観点からは貴重なサラブレッドだと言えるだろう。