血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

種牡馬考察 ノヴェリスト

2019-01-14 22:21:08 | 種牡馬考察

 今回の血統徒然草は、独競馬の至宝とも言え、鳴り物入りで国内に導入されたものの、種牡馬として伸び悩んでいるノヴェリストに対する考察をおこないたいと思います。
 ※血統評価は以前に行っておりますが、評価基準が変わっていますので、再度掲載しておきたいと思います。


ノヴェリスト(Monsun×Night Lagoon by Lagunas)牡・09生

Ⅰ 主:8 結:8 土:3 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:0
合計:(44/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

〇 短評

 主導は父母の血の流れをある程度維持した、Birlhahn5×5・7・8を伴うLiterat4×4の系列クロス。途中Alchimistで断絶するものの、血統全体でBay Ronald系の流れが強く、極めて明確にとはいかなかったものの、血統全体を強力にリードしている。また、6代目までに存在するクロスは、Donatelloを除き主導たるLiteratと直接結合を果たし、DonatelloもSwynfordを経由しToradoによって連動を果たしている。反面、7代目以降のTeddy系をはじめとした米系の結合の弱さが残るものの、全体で少数派である点を踏まえると、強固な結合力を持っていると判断してよいだろう。惜しむらくは、前述の米系の生かし方の弱さや、その副産物としてNijinsky内のFlaming Pageなどに弱点を派生させている点や、スピード源としてのMahmoudやBlue Peterの欠落だが、明確な主導勢力に導かれた血統構成は非常に魅力的で、Hyperion、Tourbillon、Donatelloを中核とした質の高いスタミナの強靭さは、近年では非常に貴重な血統で、これぞ独血統の結晶と言える妙味のある血統構成だと言えるだろう。本領発揮は、ハイペースでの12F以上の芝の長距離戦だと言え、仮にこの血統が国内でデビューした場合、スピード不足のレッテルを貼られ、勝ち上がりにさえ苦労すると予測されるだろう。
 また、独土着の血統を明確な主導勢力とした血統は、国内で言えばテスコボーイ~トウショウボーイ~ミスターシービーや、パーソロン~シンボリルドルフ~トウカイテイオー、メジロアサマ~メジロティターン~メジロマックイーンを系列クロスにし、主導へと据えるのと同様の行為であり、このような血をしっかりと生かす、独生産界への深い畏敬の念を抱くものです。


 このような血統構成を持つ、ノヴェリストですが国内の種牡馬成績は期待を大きく裏切るものとは言わないまでも、やや不満が残る現状と言えるでしょうか。2018年の種牡馬成績は総合で47位、AEIは0.74となっています。決して、致命的に悪いとは言えませんが、父の記録した競争成績や、そのイメージからくる重厚さとはややかけ離れた産駒が多く、2勝目をあげるのに苦労する産駒が大部分です(父の種牡馬としてのイメージと産駒を比してとの意味です。国内競馬において、中央で1勝をあげる事は非常にハイレベルな事だと認識しています。また19.1.14に産駒のラストドラフト(2B)が、自身産駒としての初重賞制覇を成し遂げました)。では、種牡馬ノヴェリストとして、自身の血統を踏まえた上で、繁殖牝馬にはどのような血を求めるのかを考察してみたいと思います。

①  自身の血統構成のほぼ全てである、独血統を牝馬側で抱えている事。具体的にはTicino、Literat~Birkhahn~Alchimist~Heroldなどに代表される、独土着の血統。
②  スタミナの確保の為に、自身の中で重要な役割を果たしたHyperion、Tourbillon、Donatello(Mieuxce~Massine)等の再利用。もしくは、その直系子孫であるCrepello、Aureole等を利用したい。
③  自身は極めてスタミナ的な配合で、それゆえの欧州12F戦線での好成績でしたが、国内向きの産駒を考える場合、スピードの再現は必須だと言えるでしょう。具体的には、自身が欠落させたMahmoudや、その仔や孫であるAlmahmoudやNatalma。もしくはNijinsky内のMenowや、国内で比較的多いCaro~フォルティノ~Grey Soveregin~Nasrullah。または、自身がHyperionの強い血統なので、その仔であるLady Angelaなどが考えられます。ただし主導勢力との結合を考えての取捨選択は必要だと言えるでしょう。
④  自身はNijinsky内の米系である、Bull Dog等のTeddy系やBlue Larkspur~Black Servantを欠落させているが、国内では米系の浸透が進んだために、かなりメジャーな血となっている。その為に産駒の血統においては、ほぼ自動的にクロスするが、これらの血はノヴェリスト自身の血統において、わずか1連しか存在しない為、これらの血を中核に据えるのは避けたい。
⑤  主導勢力として考えられるのは、AlmahmoudやCrepello~DonatelloもしくはNijinsky~Northern Dancerが、多数派に考えられる。自身の主導勢力であったLiteratは、国内においては非常に少数派の為、アトランダムな配合においては自身を強調する産駒よりは、母方を強調する産駒が多いものと考えられる。また、前面において多種のクロスを作るような配合はおそらく少数派で、産駒はシンプルな構成になりやすいという利点はある。
⑥  ハイレベルな産駒を望む場合、繁殖牝馬側に独系統の血を豊富に抱える事は必須で、それだけに現代の国内の繁殖プールは当馬にとって逆風であると言え、この部分を欠落させた産駒は早期の勝ち上がりや、シンプルさからくる短距離的なスピードを見せる事はあっても、父のイメージ程の成長力や、距離延長に対する適性を見せる可能性は極めて低いと考えられる。

また、以下に国内におけるメジャーなBMSとの相性を記載しておきたいと思います(評価は、×~△~□~〇~◎の5段階としています)。また、あくまでも血統表の3/4のみの考察です。血統は全体を見るもので、父および母父のみで語る血統評価はナンセンスです。

〇サンデーサイレンス(△)2018年BMSランキング1位

 主導はAlmahmoud7・8×5の系列クロス。母父であるサンデーサイレンスの再現自体は良好で、世代ズレも存在しない。父産駒としてはスピードに恵まれたマイルタイプ。ただし父母の持つイメージからくる成長力を見せる為には、母の母方のアシストが必要不可欠で、やや片手落ちの血統構成。

〇フレンチデピュティ(△)2018年BMSランキング2位

 主導は中間断絶ながら、Northern Dancer5・6×5。Nasrullahは世代ズレを起こしている。フレンチデピュティ自身は米系が強い配合で、相性が良いとは言えないものの、TornadoがTourbillonを伴いクロスし、仏系の生かし方自体は悪くは無い。

〇キングカメハメハ(□)2018年BMSランキング3位

 主導は、Northern Dancerを伴うNijinsky4×6。この時点では、父産駒として比較的可能性を秘める配合だとは言えるが、産駒はスピードに欠けがち。しかしながら、父内独系が壊滅的となるのは他の種牡馬と変わらないものの、Djebel~Tourbillonをおさえ、世代のバランスも良好。母の母方次第で優駿排出は可能だが、スピードの引き出しが課題となる産駒が多くなりがち。

〇ブライアンズタイム(×)2018年BMSランキング10位

 主導はBull Lea8×6の系列クロス。この主導はブライアンズタイムとしては都合が良いが、ノヴェリスト内には一連しかなく、その意味でも両者の血統的な相性は良いとは言えない。また、Nasrullahが世代ズレを起こし、スピードに欠ける産駒が大多数となりやすい。

〇ディープインパクト(□)2018年BMSランキング14位

 主導は、Northern Dancerを呼び水にした、Almahmoud7・8×6・8及びCrepello6×6の系列クロス。両者をスピード・スタミナの柱とする血統構成だが、父内独系統は壊滅的。父サンデーサイレンスを配した場合より距離は持つが、自身を彷彿とさせるステイヤーの輩出は母母方のアシストが必要。相性自体は悪くは無い。

〇トニービン(□)2018年BMSランキング15位

 主導はHyperion7・7・8・8・9・9×5・7・7の系列クロス。他に前面で強い影響を持つクロスは無く、Hyperionは自身に強い血でもあったのでこの血を主導に据える事自体は悪くは無い。また、Grey Sovereginが8×6と続きスピードには比較的良さが出る。ただ、父内の生かし方は弱く、ここが課題。

〇マンハッタンカフェ(□)2018年BMSランキング19位

 主導は、Almahmoud7・8×6の系列クロス。Northern Dancerのアシストが無い為、主導勢力のみで血統をまとめる事が困難ではあるものの、マンハッタンカフェ内の、Santa Lucianaが自身と呼応し、不完全ながらも自身の血統を再構築できる。母の母方次第では優駿排出が可能なBMSで、サンデーサイレンス系の中では相性が良い方。


 簡単な考察ではありますが、種牡馬ノヴェリストが求める繁殖牝馬の血統構成を箇条書きで上げてみました。ざっと見た感じで解るかとは思いますが、クラシックディスタンスで古馬以降において活躍する産駒を輩出するのが、極めて難しい種牡馬だと言えるでしょう。これはノヴェリスト自身の問題と言うよりは、それに対応できる繁殖牝馬群の希少さの方に大きな課題があると言えるでしょうか。それだけノヴェリスト自身の血統構成は素晴らしいものです。これだけの名血を国内に連れてきた以上は、しっかりと継続させ、かつ世界に還元する必要があるのではないでしょうか。
 では、種牡馬ノヴェリストの優駿を国内で望むのは難しいのでしょうか。あくまでも紙面上ではありますが、国内に繋養されている繁殖牝馬との仮想配合を考えてみました。以下に記載したいと思います(あくまでも紙面上の事ですし、関係者に問い合わせる等またそれに類する行動を決してしないでいただきたいと思います)。

(ノヴェリスト×フィオドラ by Lord of England)-・-生

Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:2 影:3 集:5 質:4 再:5 SP:3 ST:5 特:1(主導牝馬クロス)
合計:(45+1/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎
Ⅲ 距離適性
芝:S × M × I 〇 C ◎ L ◎
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父の傾向を引き継ぎLiranga4×4の系列クロス。次いで、Northern Dancerを伴うNijinsky。この両者で、父母を強調し血を集合。この配合の最大の見どころは、Crepello内でMiuxce~Massineとクロスさせ、そのスタミナの裏付けをより強固にしたうえで、それを主導であるLirangaが丸々抱えこみ、明確なスタミナの核とすると共に、主導勢力とすることを同時に成し遂げた点にある。また、自身に弱くはあるものの存在するTeddy系やBlue Larkspurを、Nijinsky内でクロスさせBlandfordを通じ結合。主導勢力をアシストした点にも非常に妙味がある。近年、国内どころか世界的に見る事が出来なくなった真正ステイヤーの血統で、父の再現をほぼ成し遂げている。課題は、AlmahmoudやMenowの落失からくるスピード不足だが、Djebel~Tourbillonの仏系まで、きめ細かく血をおさえ血統構成は非常に優秀。完全開花した場合、欧州の12Fでも自ら競馬を作れるほどの質実剛健な配合。上記配合はあくまでも仮想配合ですが、母は実在します。おそらくノヴェリストが独国内に残った場合、こうした配合馬を輩出することは国内よりはたやすかったでしょう。事実、母は2014年ディアーナ賞(独オークス 芝11F)の勝ち馬です。父は前述したように独血統の結晶で、こうした種牡馬を国内に連れてきた以上は、その血をしっかりと還元できる国内生産界であって欲しいと願います。

(ノヴェリスト×ファインセラ by サンデーサイレンス)-・-生

Ⅰ 主:7 結:5 土:3 弱:2 影:1 集:6 質:3 再:4 SP:3 ST:4 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M △ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、父母の傾向と異なり、Northern Dancerを伴うNijinsky5×4。次いで、Almhamoud、Pharamond。この主導勢力やアシストする血、更には影響度バランス(0-5-4-7)でわかるように、父を生かした配合では無く、どちらかと言えばBMSサンデーサイレンスの孫という趣のある血統構成をしている。しかしながら、父内の独系が母の母ビワハイジ内のSanta Lucianaと呼応し、父内の血をしっかりと能力参加とまではいかなくとも、再現しているのは見て取ることができる。惜しむらくは、これらの血を主導勢力たるNijinskyがまとめられなかった点だが、母内の米系を生かし主導内へと取り込んだのは幸運。本質的には、父のイメージ通り(中身は全く異なるものの)、芝の10F以上に向く。また、BMSサンデーサイレンスのスピードを再現し、それを主導勢力に取り込んだため、国内の芝レースへの対応力を一応は備えていると考えて良い。祖母であるビワハイジをはじめとしたアグサン系は、Santa Lucianaを含むため(マンハッタンカフェとも相性が良いのはこの為)、基本的に相性が良いのは指摘しておきたい。ただし、父の国内での種牡馬としての限界が見える配合である点もまた確かか。

 血統構成から見て非常に難しい種牡馬ではありますが、自身が競馬場で見せたハイパフォーマンス(2013年におけるキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(アスコット 芝12F)において5馬身差で圧勝し、勝ちタイム2分24秒60のレコード)を再現できる産駒の登場を願ってやみません。


 相変わらずの乱筆乱文をご容赦ください。本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。

2019年 牡馬クラシックロード

2019-01-02 17:33:46 | 雑記・その他
 今回の血統徒然草は、2019年の牡馬クラシックロードにおける、注目馬を何頭か取り上げたいと思います。
※後日、複数頭追加する予定です。

アドマイヤマーズ(ダイワメジャー×ヴィアメディチ by Medicean)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:4 土:3 弱:1 影:1 集:4 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(34/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:△
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M 〇 I □ C × L ×
ダ:S 〇 M □ I × C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:〇 成長型:早熟

 主導は、Northern Dancerの系列クロス。最前面でクロスしたHaloはHail to Reasonが世代ズレを起こした為に明確な主導勢力としての機能は無く、Almahmoudにより主導と結合をし、主に米系のクロスを取りまとめるアシストとしての役割が強くなったのは、シンプルさという面から見て幸いだと言えるだろう。とは言うものの、質の高い血を抱えた母の血統を生かした配合では無く、それらを上手く生かした、半兄フレッチア(1A 父Dansili)から見ると数段劣る配合だと言え、過度な成長力に対する期待や、距離延長に対する適性は低いと考えられる。救いは、Blenheim14連からくる血の流れの良さで、好調期のスピードにはかなりの良さを持つ。また、父ダイワメジャー産駒や、広義的にNasrullahを持たないサンデーサイレンス系列の種牡馬のスピードの引き出し方のひとつのセオリーとして、Nasrullahをクロスさせずに、3/4同血のRoyal Chargerとの呼応によって引き出す方法があるが、当馬もこれに該当する。早期有利のスプリント~マイルタイプで、ダートはこなせる。また、重馬場に対する適性を秘める点は指摘しておきたい。

サートゥルナーリア(ロードカナロア×シーザリオ by スペシャルウィーク)牡・16生

Ⅰ 主:5 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(37/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C □ L △
ダ:S × M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

 主導は位置の関係からNorthern Dancerの中間断絶を呼び水にしたAlmahmoud及びNearcoの系列クロス。前述の位置の関係からNijinskyクロスが結合のアシストをしてはいるものの、明確な主導勢力となれなかった点が非常に惜しまれる。また、前面のクロスの煩雑さが残る血統で、もどかしいタイプになりがちだとは言える。しかしながら、生かされた血には良さがあり、Northern Dancerが4代目からクロスした為に、Somethingroyalが実質的主導のNorthern Dancerと、ひとまず結合できたのは幸いで、決して長距離タイプのそれでは無いものの、距離延長に対する適性は比較的高い。また、結合自体は弱いが7代目以降の血の生かし方は良く、成長力を秘めるとも言える。また、血が濃いために高評価するものでも無いものの、これと言った弱点は無く安定感はある血統。本質は、ゆったりと流れる芝向きの中距離タイプ。

ワールドプレミア(ディープインパクト×マンデラ by Acatenango)牡・16生

Ⅰ 主:8 結:7 土:4 弱:2 影:3 集:5 質:4 再:4 SP:4 ST:4 特:0
合計:(46/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I ◎ C 〇 L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

 主導は、Northern Dancerを呼び水にした、Almahmoudの系列クロス。位置的にやや不満が残るものの、母母Mandellictへと血を集合させ、そのスピード・スタミナを再現している。この配合の最大の見どころは、Donatelloを系列クロスにするだけでなく、その内部のClarissimusやMieuxceをクロスしそのスタミナの裏付けを更に強固にした点で、この構造はなかなか見る事が出来ない。また、母内Tetratemaが6代目でクロスしThe Tetrachを通じ、その決め手を主導へと直接結合出来たのは非常に妙味があると言える。更に、PharamondのスピードやHyperionのスタミナを、前面に存在するNorthern Dancerを通じて補給できたのもまた、見どころがある。血統全体でBay Ronald系の流れにかなりの良さがあり、前述したスピードの血の生かし方から、スピードや決め手に良さのあるタイプではあるが、決してマイラーのそれでは無く、本領発揮は芝の10F以上。惜しむらくは、母内独系や父内米系の生かし方にやや弱さがある点だが、逆に言えばシンプルな配合を作り上げる一助にはなっている。血統構成的には世代トップレベルだと言え、是非とも無事な開花を願いたい。

ブーザー(マンハッタンカフェ×マンドゥラ by Danehill Dancer)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:3 影:3 集:6 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S × M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導は、Almahmoud及び、Tudor Minstrelの系列クロス。この両者は、近い世代でGainsboroughを共有し連動している上、母内Be My Guest内において共存する為に、連合勢力と言って良い。母のマンドゥラはNorthern Dancer主導の配合だが、当馬の場合、父であるマンハッタンカフェがNorthern Dancerはおろか、Natalmaも持たない為に、非常にシンプルな配合となった。次いで影響の強いPharamondやNearcoはAlmahmoud単体で取り込むのが難しい血であるが、Tudor Minstrelの母系に存在する、Pharos~Phalarisがしっかりとこれらの血を取り込み、その能力を補給している。この部分が当馬の配合を考える上で最大の長所だと言え、質の高い血を生かした妙味のある配合と言えるだろうか。また、父の種牡馬としての難しさを端的に表現している、独系のSanta Lucianaだが、当馬の場合母母内のMandelaugeと呼応した為に、TicinoがしっかりとクロスしDark Ronaldを通じて、主導勢力と結合を果たしたのも非常に良好で、この部分の構造には一見の価値がある。惜しむらくは、明確なスタミナの核を作れなかった点で、父のイメージ程の距離延長適性に欠ける点だが、ただの早熟マイラーでは無く、芝のマイル~中距離で自力勝負可能な重厚な配合。

クラージュゲリエ(キングカメハメハ×ジュモー by タニノギムレット)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:6 土:4 弱:2 影:2 集:6 質:3 再:4 SP:4 ST:4 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I ◎ C 〇 L □
ダ:S × M □ I 〇 C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 主導はNorthern Dancerを伴うNureyev4×4。父に強い米系の取り込みに弱さが残るため、極めて強力にと言える内容では無いものの、全体のリード役としてしっかりと機能はしており、この主導は有効。次いで、Nashuaの系列クロスで血統全体をリード。このNashuaクロスによって米系である、Sir Gallahad~Teddyをしっかりと取り込めた上にこの両者で父父のKingmanboを強調し、血を集合させている。また、BMSタニノギムレットにおいてスタミナの補助や結合のアシストとなったGraustarkを再度クロスさせ、その内部の血である、Alibhai、Beau Pere、Boudoir、Papyrusをきめ細かくクロスし、スタミナの核としたのも非常に妙味があると言える。これら、スタミナ勢力のアシストのお陰で、本来はマイル向きのスピードを再現する主導のNureyevだが、中距離向きのスピード勢力に能力変換を起こしていると考えて良い。半兄であるプロフェット(3B)とは、またタイプが異なるものの、迫力のある血統だと言える。本質的には自力勝負に向く芝向きの中距離タイプで、決してステイヤーのそれでは無いものの、12Fの克服は可能。7代目以降の血の生かし方からゆっくり成長するタイプ。

フォッサマグナ(War Front×River Belle by Lahib)牡・16生

Ⅰ 主:5 結:7 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M 〇 I □ C × L ×
ダ:S □ M 〇 I × C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

 主導は、わかりにくいものの、Nasrullah~Nearco。次いで、Fair Traial・Mahmoudの系列クロス。これらを傘下におさめたNorthern Dancer3・6×4の中間断絶が実質的主導。前面のクロスが多可気味の配合で、前述のNorthern Dancerの中間断絶をはじめForli・Count Fleet・Warfareの中間断絶や、Princequilloを伴うRound Tableが存在し、このクロスの多さからかなり煩雑な血統構成だと言える。しかしながらこれらクロスは、不安定ながら主導とみなせるNorthern Dancerへと結合し、本来結合しにくいRound TableやCount Fleetが前者はForli内のPapyrusを通じ、後者がNasrullah内のThe Tetrachを通じて能力参加しているのが見てとれる。その上で、Forli及びNasrullahとNorthern Dancer結合が非常に強固に行われているのは幸運か。祖父母のバランスの悪さを補正できたのは妙味があるか。全体的にはスピードに良さがあり、キレるタイプでは無く粘りある芝向きマイルタイプ。

ラストドラフト(ノヴェリスト×マルセリーナ by ディープインパクト)牡・16生

Ⅰ 主:5 結:4 土:4 弱:1 影:2 集:5 質:3 再:3 SP:3 ST:3 特:0
合計:(33/60)点 クラス:2B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I □ C △ L ×
ダ:S × M × I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:△
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

 主導はNorthern Dancer5・6×6・6の中間断絶を呼び水にした、Almahmoud及びCrepelloの系列クロス。この両者は、Blenheimを通じ結合し、実質的主導であるNorthern Dancerへとスピードとスタミナを補給しており、この両者の相性自体は悪くは無い。この配合の最大の問題点は、父自身の主導であるLiterat等をはじめとした、特殊な独系統をことごとく欠落させた点にある。父自身の血統はこれら特殊な独系統を満遍なく生かした、非常に妙味ある配合だったが(ノヴェリスト 1A)、産駒ラストドラフト内はこれらを全く生かせておらず、父とは違う血統を構成している。しかしながら、Djebel~Tourbillon~KsarやHyperion、Bahram等を生かした点は、他のノヴェリスト産駒より良さはある。また影響は弱いもののGrey SovereignやDanteのスピード・スタミナを隠し味的に生かしたのは面白い点だろう。また43という少ないクロス馬で構成された血統で、開花の早さや反応の良さは見込める配合。前述の不備から、父ほどの長距離適性や成長力は望めないだろう。早期有利の中距離タイプで、ダートは不適。

ヴェロックス(ジャスタウェイ×セルキス by Monsun)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:5 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(37/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S × M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S × M 〇 I □ C × L ×
芝適性:□ ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

 主導は、位置の関係からNearctic5・7×6・6の系列クロス。その父、Northern Dancerが結合をアシスト。次いで、影響の強いAlmahmoud、Dante、Hyperionはしっかりと主導と連動し、そのスピード・スタミナを補給している。この連動させた血を、父母内のシビルに集合させたのが、当馬の最大の長所だと言えるだろう。しかしながら、この連動性を備えつつも当馬の最大の問題点は、母父Monsunが豊富に抱える独系の血を全く生かしていない点で、弱点や欠陥を生じており、米系の結合力の弱さも相まって、成長力に対しては疑問が残る血統構成だと言える。しかしながら、Bay Ronaldの流れを汲むHyperion系の流れにはかなりの良さがあり、前述した血の集合力と、49という少ないクロス馬から見て開花自体は早いものの、ただの早熟タイプでも無い。早期有利の芝向きマイル~中距離タイプ。

ランフォザローゼス(キングカメハメハ×ラストグルーヴ by ディープインパクト)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:5 土:4 弱:2 影:3 集:5 質:3 再:5 SP:3 ST:4 特:0
合計:(41/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:遅め

 ドゥラメンテ(3B)7/8同血。主導は、ドゥラメンテと同じくHornBeam6×5の系列クロス。次いで、Lady Angela、Almahomud。主導の明確性においてドゥラメンテと比較すると、サンデーサイレンスが一代後退した事により、Almahmoudの影響が弱まったのがプラスに作用している。反面、サンデーサイレンス内のスピードの再限度はほぼ同様であるものの、その血が一代後退した事により影響力が弱まり、ドゥラメンテ程のスピードは持ち合わせてはいない。しかしながら、母父内のウインドインハーヘアの細かいスタミナの血であるMieuxceや、父内Gold Bridge等隠し味的な血の生かし方にかなりの良さがある。Princequillo系の結合やKsar等の仏系のクロスの連動が非常に弱く、また、ドゥラメンテにおいて弱くはあるものの、Almahmoud内Fair Playにより主導勢力と連動させたMan’o War等の米系が、当馬の配合では完全に離反し、この部分は大きく劣る。この結合の弱さが当馬の血統上の限界点と言える。とは言うものの、総合的にはかなり良くできた内容で、芝12Fの克服も十分に可能。前面のクロスがHyperionの流れを汲むものが多く、上位レベルにおいては、切れ味には劣るものの長く脚をつかうタイプ。本質は芝向きのクラシックディスタンスに向いた血統構成。

ロジャーバローズ(ディープインパクト×リトルブック by Librettist)牡・16生

Ⅰ 主:6 結:6 土:3 弱:2 影:3 集:5 質:3 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C □ L ×
ダ:S × M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:普通

 主導は、Northern Dancerを伴う、Lyphard4×4・6。主導内仏系の生かし方がかなり良く、Hurry On・Ksarをおさえ、ある程度は血統全体をリードしているものの、母父内Northern Dancerの位置が4代目と主張が強く、血の集合がやや散漫になったのが惜しまれる(この部分は近親であるジェンティルドンナ(3B)と同様)。反面、父母が抱える欧米系をAlmahmoud内Speamint・Fair Playを介しBanish Fear・Man o’Warを連動し、Pocahontasを介しPrincequilloを主導勢力と辛うじて連動させたのは当配合の長所で、Hail to Reasonに頼らずにある程度連動させた点も評価に値する。全体として見ると、今一つ詰めの甘さを感じる血統構成で、父のイメージの様なキレは望めない配合。本質は、ゆっくりと成長する芝向き、中距離タイプの血統構成。

ラクローチェ(ハービンジャー×ウインデンファーレ by ダンスインザダーク)牡・16生

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:3 影:2 集:6 質:4 再:6 SP:3 ST:5 特:0
合計:(45/60)点 クラス:1A
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M △ I 〇 C ◎ L 〇
ダ:S × M × I □ C □ L △
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:△ 成長型:晩成

 主導は、Nijinsky6×4の系列クロス。この主導はかなり明瞭で、欧米系が入り混じる現代的な血統構成から考えるとNijinskyの母方が抱える米系を直接主導内へ取り込める点で、可能性を秘める主導だと言える。次いで、Turn-toを伴うHail to Reasonの影響が強く、米系を取りまとめ、結合をしっかりとアシストしている。生かされたスタミナ勢力は強靭で、His Majesty=Graustark、Aureoleが明確にスタミナの核を形成。また、7代目以降においてもきめ細かくスピード・スタミナを生かしており、仏系の結合の弱さは残るものの全体的には良くできた血統構成。反面、スピード勢力はやや弱く、現代的なキレ勝負では不利だと言え、自力勝負が向くタイプ。血統全体で強調されたダンスインザダーク(1A)を再現するだけで無く、その部分に血の集合をはかり、完全開花した際には破壊力ある血統構成。本質は、芝向きのステイヤーだと言え、よどみない流れの中長距離戦において、真価を発揮するタイプ。蛇足だが、ハービンジャー×ダンスインザダークは、ハービンジャーが欲する血をそこだけで賄える相性の良さがある為、古典的なニックス配合だと言える。古典的と評するのは、現代日本競馬が必要とするスピードの主張が弱くなるためであり、この部分を母母方で補える配合であれば優駿輩出の可能性を秘めていると言えるだろう(現三歳世代までにおいては、この母母のスピードアシストが強い配合は存在しない)。


 本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。