血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

フリオーソ(川崎記念)

2011-01-26 20:55:15 | 2011年GⅠ勝ち馬
フリオーソ(ブライアンズタイム×ファーザ-Mr.Prospector)牡・04生

主:7 結:6 土:3 弱:6 影:2 質[近]:2 質[遠]:4 SP:3 ST:4
合計:37点 クラス:3B 芝:9~12F ダ:8~11F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 フラッテローザ全兄

 フリオーソの血統において前面でクロスしているのは、Hail to Reason3×5及びNashua4×4になっている。前者は途中2世代断絶する単一クロスの為、主導はNashua4×4の系列クロス。その父Nasrullahを3ブロックに配し、フリオーソの血統を強力にリードしている。但し、父母Kelley's Day内にはNashua~Nasrullahが存在せず、Romanの影響が強い為、総合的にはやや良いといった程度になった。

 また、結合面においてはHail to Reasonの単一クロスを有効に作用させ、また主導たるNashuaがSir Gallahad(=Bull Dog)を内包する為、Romanの流れも上手く結合させている。残念なのはHyperionの系列の結合がやや弱く、主導内においては、9代目Chaucerで結合が終わる点であるが、総合的には強固な部類に入るだろう。

 生かされた血の質は全体的に高く、そのスピード・スタミナを上手く主導に結合させた点が最大の長所で、重厚で国内の芝ではキレ負けする可能性が大。

 本質的には、米血の比率が高いうえRoman~Sir Gallahad(=Bull Dog)の影響が強い為ダート向きだとは言えるが、鍛錬を積めば芝対応も可能な血統構成。ただし、スピードにはやや欠けるきらいがある為に、結果的にダートを主戦場とする可能性は高い。

 長い眼で鍛えて欲しい、好素質の配合。

Workforce(ワークフォース)

2011-01-09 18:24:19 | 海外馬
Workforce(King's Best×Soviet Moon-Sadler's Wells)牡・07生

主:5 結:6 土:2 弱:5 影:2 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:5
合計:35点 クラス:3B 芝:9~15F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

○ 主導   (5)

 主導は、Northern Dancer3×5の中間断絶クロス。比較的強力な主導に見えるが、単一クロスではあるものの、Special5×4や、Native Dancer5・7×5等の影響も強く、決して明確な主導であるとは言い難い。また、エルコンドルパサーやヴェイロンと異なり、Nureyev≒Sadler's Wellsを主導と捉えないのは、その父であるNorthern Dancerがそれぞれの父以外として存在しない為である。近親度の強さは弱まるだろうが、個人的には4代目程度の位置に両者以外の父として、Northern Dancerが存在しないのが惜しまれる(公式評価的には存在しない方が正解に近いだろうが)。ただし、BMSであるSadler's Wellsを圧倒的に強調し、血の流れもSadler's Wellsへと見られるのは、幸いだろうか(その意味ではエルコンドルパサー・ヴェイロン等と類似点は見られる)。

○ 結合   (6)

 主導たるNorthern Dancerと、6代目までに存在するクロスである、Native Dancer・Nearco・Hyperion・Mahmoud・Sister Sarah・PharosはNorthern Dancerに含まれる血統である為に確実に結合を果たしている。また、AlchimistはBay Ronaldで、Princequillo~Prince RoseはBayardoで、NasrullahはNearcoで、RibotはPharosで、SpecialはNasrullah~Nearco、Hyperion~Gainsboroughで、それぞれ直接結合を果たしている。惜しむらくは、Count Fleetが9代目以内に結合を果たせていない点で、系列クロスを、5代目から持つ近交馬であるにもかかわらず、かなり不満が残ると言わざるを得ない。しかしながら、逆に7代目以降のクロスに関してはかなりの連動性があり(Northern Dancerが3代目からクロスしているのも、幸いしている)、その意味では比較的、良好な形態を保っていると考えられる。

○ 土台   (2)

 土台構造を形成するのは、Pharosが12ヶで単体の土台構造としてはかなり貧弱であると言わざるを得ない。また、サポートするのもSwynford(=Harry of Hereford)が12ヶと、かなりさびしい内容となっている。決して良好であるとは言い難い。

○ 弱点   (5)

 血統表全体で大きな不備は見当たらない。若干気になるのが、父方母方双方において6代目にクロスしているNative Dancerであるが、9代目においてPhalaris・Fair Play等がクロスしている為に、さほど大きなマイナスであるとは言えない。それ以外の各ブロックにおいては、殆どにおいて主導勢力である血統が配されている。近交馬ではあるものの非常に良好であると言えるだろう。

○ 影響   (2)

 (8-3-15-2)と決して良好なバランスであるとは言い難い。しかしながら、強調されたSadler's Wellsへの血の流れが比較的良好である点と、生かし方が良好なのは幸いだろうか。

○ 質[近]  (2)

 全体的に質の高い血を連ねた配合で、父母3代目までに並ぶ血統も比較的優秀な血を集めている。底力勝負可能な血統構成。

○ 質[遠]  (4)

 主導たる、Northern Dancerを初め、影響の強いクロスである、Native Dancer・Nearco・Hyperion・Princequillo~Prince Rose・Ribot・Specialなども質が高い配合で、前述した質[近]と併せ欧州系の血統が上手く生かされている為に、かなり良好な部類に入るだろう。

○ スピード (3)

 これといった際立ったスピード要素が少ない血統構成ではあるが、NasrullahとMahmoudを連動させ、主導たるNorthern Dancerへと確実に補給しているのは見て取ることができる。また、Specialの単一クロスもスピード寄りだと判断できる。したがって、軽いスピードと言うよりは、中距離向きのスピードに良さがあるタイプ。やや物足りないのは確かだが、平均点にはあるか。

○ スタミナ (5)

 Princequillo~Prince RoseとRibotの相性の良さ(ニックスだと言えるレベル)をいかし、中~長距離向きのスタミナを確保した配合。更に、Alchimist・Hyperionと全体的にスタミナ優位。本質的なステイヤーと言い切れるレベルではないものの、12F前後を最も得意とするタイプ。更に、7代目以降においてもBull Dog(=Sir Gallahad)・Man o'War等が生き、しっかりと結合を完了している為に、長く良い脚を使えるタイプ。かなり重厚な血統構成。


 総合的に見ると、決してシンプルでは無い血統構成で、超一流と言えるような内容では無い。それでも、Sadler's Wellsへの血の集合力、代々重ねられてきた血統の質の高さ、クロス馬の優秀さ、など見るべき点も多い。したがって、血統構成(芸術的な意味において)自体はそれほど優秀ではないものの、底力を備えた内容で、かなりちぐはぐな印象を受ける。本馬の場合、戦績が安定しない理由を血統面から考察した場合、こういった理由を考える事ができる。
 しかしながら、前述したようにスピードよりもスタミナに相当の良さがある血統構成は欧州の伝統的な息吹を感じる事ができる内容で、仮に国内でデビューした場合、勝ち上がりにも苦労する内容だと考えられ、その意味においては後世に遺すべき内容の血統の一つだと言えるだろうか。成長力も秘めた配合でもあるので、今季の活躍も期待したい。