散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

世界で最も美しい本

2005-09-03 06:14:04 | 美術関係

オランダのナイメーヘンという街はオランダで最古の街といわれる。
遺跡や資料から見ればローマ帝国はここにもかなり大きな街を築いていた様だ。いつもながらローマ人の力には驚かされる。もしもタイムマシンがあるなら是非とも飛んで見たい時空である。しかしそういうわけにもいかないから想像力を発揮して思い描くしかない。まあ一部の上層階級以外は搾り取られてモラルがどんどん低下していったようだから終いはかなりの混乱だった事だろう。
さて今回はローマ帝国の歴史に興味を持ってナイメーヘンを訪れたというわけではない。訪問の目的は世界で最も美しい本と名高いファン・リンブルク兄弟作の本であった。   
ナイメーヘンは大学街で小ぶりな雰囲気の良い活気ある街のようだ。
実はケルンロマネスク巡礼散歩中にこの展覧会のパンフレットを見つけて、釘付けになってしまい、どうしても見たくなって、休暇中の相棒をつむじ風のように巻き込んで、ここから車で一時間ほどのナイメーヘンに向った。
                          誘惑されるキリスト者。
一般的に知られていはいないかもしれないが知る人ぞ知る、中世のミニチュアールの最高峰、”世界で最も美しい本の一つ”とその筋の評論家やマニアに名の高いファン リンブルク兄弟作の本”les_Belles Heures” は普段ニューヨーク メトロポリタン美術館の図書室に収蔵されており、修復の為にファン リンブルク兄弟の故郷に帰ってきた、そのおかげで一枚ずつに解かれた頁を一同に並べて見る事が出来る事になったのだ。修復後は又製本されてメトロポリタン美術館に返されるのでこんな形でこの本を見ることは次の修復作業まで不可能になる。そういうわけで最初で最後の展覧会という謳い文句である。
パウル、ヘルマン、ヨハン ファン リンブルク3人兄弟は1400年から1416年にかけてフィリップ豪勇候の宮廷に呼ばれ、後芸術のパトロンとしても名高かったフリップの兄Jean de Berry侯爵の注文によってカトリックの時祷書、ミサ典書が創られた。このベリー侯爵は様々な美のコレクターであり莫大な金をかけて収集し、本を作らせた。
色々な作家の手になる時祷書があるが、ファン リンブルグの絵は多くの作家に影響を与えており、比較すると面白い。
                
この洒落た色使いと構成そして独特のスタイルは当時流行をもたらしたのだろう。なんといっても美しい色使いに溜息が出る。

関連サイト:de gebroeders Van Limburg             
       ミニチュアールの世界
       
ナイメーヘン散歩に続く。

追記)
カイエのLapisさんのコメントを拝見して、日本ではリンブルグ兄弟はランブール兄弟とフランス読みの名前で通っているのを知ったのでここに記す。