散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

観察記録

2012-01-26 02:27:53 | 思考錯誤


今年はなんだかなりそこねた冬が徘徊している。
そんなわけでいまだにLobularia maritimaは咲き続け、金盞花は一つ二つと咲き止まず、オオアラセイトウもポツリ咲いてしまった。
これでいきなり気温が下がったら花の氷漬けが出来てしまう。
氷の中に黄色や白や赤い花が閉じ込められている様子、J・G・バラードの「結晶世界」に描かれている景色を思い浮かべて花には気の毒だけれど密かにそんな日を待っている。



朝、夢遊病者の足取りでパン屋に出かけた。
あれやこれやと幾種類のパンの名前を告げ、言われた通りに代金を払ったのち店を離れながら、何か変だな。。と思う。
でも、どう変なのかを追及する気が無い。
家に帰ってから。おっとり思い出すと私は少し多めに代金を払ってきたらしい。
こういうときは馬鹿な自分が酷く悔しいが、もう一度戻って訂正するだけの元気が無い。面倒臭さが悔しさに勝った。
私はあまり賢い頭を持っていないので、その場で幾つかの値段をちゃきちゃきと計算し、レジの打ち出す数字をチェックするなんて事が出来ないと端からあきらめているのだ。
まあいいか。。。そういえば昨日道で1ユーロ拾ったし。。。などと計算している私は酷くけち臭い。





道路をなめるように眺めながら歩いていた。
別にお金が落ちているかも知れないとかそんな理由があってのことではないし、心労に押しつぶされてうなだれていたわけでもない。
駐車場の片隅が赤く塗られていて、雨でぬれた表面に白い二連なりの家が貼り付いていた。
これは大晦日の花火の残骸で、あれからずっと貼り付いたままだ。
赤い背景に白い家はなかなか美しい。白い家が炎に包まれているようにも見える。
夕焼けに栄える二連の雪山という手もある。
カメラを向けて何枚か写真を撮っていると、脇を通りすぎる人々が不思議そうな顔で私と私の視線の先を交互に見てゆく。



棚の中から前回の帰国時に買った漉し餡の素が現れた。古くなってうまみの出るものではないから、いい加減に作って食べねばいけないとおもった。
処方箋どおり粉と砂糖と水をいれしゃもじで鍋をかき回し続けた。
今回は鍋から片時も離れない。
なぜかというとここのところ、火にかけた鍋(といっても電気調理器だから火は無い)の事を、うっかり忘れて後始末が大変という事態を2度ほど続けてしまったからだ。
煮込む料理は時間がかかる。それを圧力鍋で強引に早く決着をつけてしまおうとするわけなのだが、その短縮された時間でさえじっとできずにちょっと目を離す。
目を離すとそこに思わぬ"用事"が現われたり、気を惹くものが面前にあらわれる。
ついそういった誘惑に気を取られて、しゅうしゅう言っている鍋の存在を忘れてしまう。そしてそのうちにやっと私の鼻が煮物を思い出すのだ。
一度は豆の煮物を黒焦げにし、その後間もなく牛筋を煮込もうとして失敗した。これらの焦げたときの匂いといったらない。
しばらくしょげ返って圧力鍋には手を触れたくなかったほどだ。圧力鍋でなければ失敗は免れたかというと、それはそうとも限らない。
というわけで、片手はしゃもじ、片手には本を持ちながら(本当はこの姿勢がいけない)今回は鍋から片時も離れず何事もなく仕上がった。
漉し餡は最初の頃はまるで黒絹のように艶やかでなんとも美しかった。だんだん水分が蒸発し始めてしゃもじの軌跡がしっかり残り始めると今度は餡に指を突っ込んでなめたくなる。しかし、そんな行儀の悪いことは私はしない。すっかり出来上がってから小分けにして冷凍し、茶碗一杯分を残して無事だった鍋を洗う。
茶碗一杯の餡子は一体何に変身するかと思い巡らしながら、気が付いたら片手に持っていたスプーンで私は餡子を舐めていた。

まあ、兎に角何事もそうだが、作業は上の空ではいけない。そしてタイマーを必ず使用のこと。これは教訓である。











観察記録

2012-01-24 10:30:45 | 思考錯誤


1月19日-道中にて-
しつこい小雨が止まなかった。
乗客は少しずつ雨のにおいを連れて車内に乗り込んだ。
空いた席に私が座ると車両はぴったり満席になった。
しばらくすると近くでつぶやくような声が聞こえた。
それは眠っているかと思われた初老の男の口から立ち上っている。
句読点の無い抑揚の無い言葉が幾本かの筋状になってゆらゆらと立ち上っている。
言葉の行列は音が一つ一つに分かれてしまい、意味を掴もうと耳をそば立てたが上手く行かない。
まるでお経を読んでいるかのように音が高く低く波を作りながら拡散してゆく。
男は詩でも口ずさんでいたのだろうか?
私にとってそれは呪詛のような薄暗い独り言ではなく、明るい暖色の響きだったので、ずっと耳を澄ましていた。
私が電車を降りる頃には、車内の雨のにおいは消えていた。






里芋を買った。
昔は里芋を手に入れることはなかなかできず、たまにアジア系食料品店で見つけても高値の花だった。
それで長いこと里芋は食べることもなく、里芋の姿は徐々に記憶の奥底に沈んでいった。
最近どういう経路か手ごろな値段で里芋を入手できる。そんなわけで度々アジア系食品店へ出かけては
里芋を5,6個ずつ買ってくる。
里芋の煮ころがしや、蒟蒻無しのけんちん汁などを作ってにんまりしながら食べている。
ある日その芋のうちの一つからうっすら青い芽が育っているのを見つけたのでコップに活けると白い根がぐんぐんと伸びて
コップの底にとぐろを巻き始めた。
すると芽もぐんぐん伸びはじめ、やがて青い水水しい葉がぱらっと開いた。
美しい形と色に感心しながらよく見ると葉の先端にはいつも一粒の水滴が現れて、放っておくと葉の足元に小さな水溜りが出来ている。
芋がコップの中の水をじりじりと吸い上げて余分を排出しているということなのだろうか?
今朝気が付くと、一本きりかと思っていた葉の根元から、もう一本茎が伸びていて二枚目の葉をほどき始めている。
芋の葉の露で墨を磨り七夕の短冊に願いを書くと叶うという話を聞いたことがある。
里芋の水栽培を増やし、今年の七夕には芋の葉露で墨を磨り、とっておきの願いを書こうと決めた。






ぬばたまを満たした椀の中に指先を差し込むとざくざくと音が回る。
丸く漆黒の弾丸のような種の中には鮮やかなオレンジ色が眠っている。
この美しい贈り物は北海道のYさんが選んでくださったものだ。
楽しいしおりや手漉き紙の封筒、縮緬の和紙も美しい。
自然をこよなく愛しいつくしみながら丁寧に生きているYさんの心遣いを一つ一つに感じながら机の上に乗せて眺めている。
色々な思いを馳せ、ぬばたまの茶碗に指先を入れてはその音を聞いている。

訂正:この美しい黒い種は黒千石という黒大豆だそうだ。ぬばたまはほんの少し小さい種で艶やかな黒だった。↓







ふくろうがやってきた。
白とブルーのデルフト色に染まったふくろうだ。
なんだか怒っている。
ふくろうが怒っているので、私は笑ってしまう。
君はどうしてそんな顔をしているの?
顔を見るたびに
「今日は何で機嫌が悪いんだい?」と話しかける。
寝起きが悪くて機嫌が悪いとか、
美味そうなねずみを取り逃がして怒っているとか、
背中が痒いとか、そんなことらしい。
“不機嫌ふくろう”は友人のAからのプレゼントだ。



“OZMO”というシリーズではがき大の板の上にシンプルなドローイングを描き始めた。
鉛筆の線はなるべくぎこちなく。
習字で紙に筆をおくときのような息で描く。



去年の北日本大震災の揺れは半時間後にヨーロッパにも届いていたという記事を読んだ。
ケルンの大聖堂が上下に1cmほどの揺れを起していたそうだ。
実のところケルンの大聖堂の地盤は砂地で危うい。地震ばかりか嵐や突風でも揺れ、共振現象が起こる可能性があるようだ。
もしもマグニチュード6,5ほどの地震が来た場合倒れる危険があるという。
大きな地震はごく稀なドイツではあるけれど、全く無いわけではない。
あの建物が密集している場所で、ケルンの大聖堂が崩れ落ちたら、と思うと恐い。
「想定外」という言葉を吐かずとも良いよう研究者は大聖堂を支えて欲しいものだ。


















今日のメモ

2012-01-19 09:25:11 | 思考錯誤







1月13日金曜日。
DMSG ドイツ多発性硬化症ソサエティーへの寄付のためにドローイングの販売展示会があった。
私は他用にて行くことが出来なかったが、人出は多かった様子。
少しでも役に立てれば嬉しいのだけれど、結果がどうなったのかはまだ報告が無いのでわからない。

。。。と、書きかけて放っていたら、間もなく誕生日がやってきて、贅沢に料理と味見に一日を費やしたのは数日前の話になった。

そして昨日はひょんなことからコンピューターのウィルス検索除去を調べている内に泥沼にはまり、
眼がしょぼしょぼになるまでコンピューターに張り付いたまま日が暮れてしまった。
(ホームページの書き直しをしなければと思うのに、腱鞘炎の手が治らないのではじめる気にならないのだ。
そんなことを言いながらもポツポツこうしてキーボードを叩いているから治らない)
いや、実は私は壊れた洗濯機の修繕屋がやってくるのを待っていたのだ。
約束の時間丁度に現れはしない事は99,99%確実だったが指定の時間から待機していた。
それが一時間経っても二時間経ってもブザーがならなければ、電話も来ない。
私は厄介な作業を始めてしまっていたので待っている事自体をしばらく忘れていたのだが、気が付けばもう三時間過ぎていた。
仕方ないので営業所に電話をかけてみると、あっさりと"留守だったので仕方なく帰った”というのだ。
良くある話だから、驚きはしないが気が抜けた。いくら面倒なことに取り組んで神経と眼を酷使していたとは言え私の耳はふさがってはいなかったのだから、
「一日待って時間を浪費したのはこちらの方だ」と思わず声が大きくなって
相手の言い訳をさえぎり新しい約束を取り付ける。
昨日はなんだかややこしい電話が立て続きに入ったり、妙な日だったが、しかしコンピューターの問題点はめでたく解決し、かなり気を取り直した。
まあ、終いが良ければ全てよし。。。。かな。

今朝はもう10時30分というのに外は暗い。
気温はあまり下がらないが雨が多い冬だ。
寒くても良いから青空と太陽が喉から手が出るほど欲しい。

それでも、外に出しっぱなしの夾竹桃やカラモンディンは時折寒そうに見えるが元気らしいし、畑ワサビの水水しい青い葉が小さな鉢から立ち上がっている。この鉢はもう三年目なので、大分根元が太ってきているのが頼もしい。
畑ワサビは擂って味噌と合わせておくとなかなか美味しいそうだから、楽しみにしているのだがそれまでに一体何年かかるのだろうか?
気の長い話。

(だけれど気の長い話って、私は好きだ)



ところで、
そろそろ今月末締め切りの展示会用に小品を仕上げなければいけない。
これは参加を承知してしまっているので、気長に放っておくわけには行かない。
気軽に買えるような物を並べるということで、広告、宣伝が主旨らしい。
出来る時にはなんでも一応参加をしておくことにしている。 ↓






 











1月15日:一日料理中

2012-01-16 08:26:26 | 飲食後記



驚いたことにまだテラスで咲いている花を少しだけ摘んで飾る。



 生牡蠣1ダース9,90ユーロ。街にあるポルトガル人経営魚レストランでは注文しておけば日曜日でも魚を買えるので嬉しい。牡蠣は美味しいね。


 

新鮮なエビはエビのカルパッチョ。頭と殻はさっと焼いて煮て出汁を取りクリームを加えて味を調えスープに。
最近新鮮な海鮮物が買えるようになって嬉しいのです。

 エビのカルパッチョ。
マリネソースはレモン、オレンジ、オリーブオイル、薔薇胡椒、白胡椒、石榴のシロップ、エストラゴン、塩。




ラムのステーキにはズッキーニ、トマト、ナスの付け合せ。あおかびペコリーノチーズとマルメロの砂糖煮、胡椒を合わせたものを添える。





誕生日メニューです。

朝から相棒と二人でメニューについて真剣に考え、実験を重ねて、料理を中心にあっという間に誕生日は過ぎました。

良い一日でした。












届いたもの。。。

2012-01-09 17:00:37 | 思考錯誤


(写真中央に青鷺がとまっている)





今日、郵便受けを開けると、黄色いカードが入っていた。
郵便の不在配達証だった。
差出人は日本の友人からで、楽しみでポケットを膨らませて早速郵便局に引き取りに出かけた。
係員が水色と白の縞テープで止められている30x25x7cmの茶色紙で包まれた箱を探し当てた。

部屋に戻って「遠いところをよく来たね」と箱に話しかける。
私の右手ははさみを握り水色のテープを切り包みを開ける前に
私の鼻は「あ、切干大根だ!」といった。
箱を開くと期待に背かず切干大根の袋が現れる。
友人の作品のドキュメントが入ったDVD、楽しそうな本、チョコレート、
インスタントの名古屋名物味噌仕込みうどんだのほうじ茶が並んでいる。
なんだかクリスマスが戻ってきたみたいだ。
チョコレートを食べながら、DVDを見たり、本をつまみ読んだり

楽しい「ひと時」が届いた。

ありがとう。