金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ノンバンクがバンクになる日

2008年12月25日 | 社会・経済

ノンバンクとは銀行でない金融機関で、クレジット・カード会社やリース会社などを指す。ノンバンクの良いところは銀行のように金融庁の規制を受けないので、自己資本比率などの点で気楽なところだ。問題は金融が逼迫した時である。特に今日のようにコマーシャルペーパーを含めて、資本市場から資金を調達することが困難になると、預金という資金調達手段を持っていないノンバンクは大変だ。

そんな時ウルトラCの技が出た。といってもアメリカの話であるが、ノンバンクが銀行免許を申請してバンクになるという大技が流行っている。一番新しい例はGMACだ。GMACはヨタヨタのGMの系列会社(今はサーベラスというファンドが筆頭株主だが)で、GM系ディーラーやGM車の購入者にファイナンスを行っている。その他住宅ローンも行ってこちらで大損を出している。

このGMACが商業銀行に転換する申請を出していたところ、連銀委員会で投票があり賛成4反対1で可決されたという記事がニューヨーク・タイムズに出ていた。承認理由は「非常事態なので、特別対応する」ということだ。銀行になると、公的資金による資本注入を得られるし、連銀の特別貸付を受けることもできる。勿論銀行としての規制も受けることになるが。

米国ではリーマンブラザースの破綻の後、ゴールドマン、モルガンスタンレー、が銀行になり最近ではアメリカン・エクスプレスも銀行に転換した。もう銀行だらけである。

アメリカの銀行の定義って何なのだろう?という疑問が沸いてくる。将来「連銀から貸付を受ける資格を得た金融業者を銀行と呼ぶ」という定義が行われるかもしれない。

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「日米開戦と東条英機」を見た

2008年12月25日 | テレビ番組

昨日(24日)ビートたけしが東条英機を演じるテレビドラマ「日米開戦と東条英機」を見た。太平洋戦争の開戦是非を巡る陸海軍省・統帥部・外務省等の首脳陣による議論の場が主な舞台である。これを見ると今更ながら「日本には軍服を着て威張ったおっさん達は沢山いたが、兵学を真面目に勉強した人はいなかったなぁ」という思いがする。

兵学とは武器の使い方や戦闘隊形の組み方を勉強することではない。戦争をする・しないという判断を学ぶことである。その最高のテキストは「孫子の兵法」である。如何に当時の日本軍首脳が孫子の兵法の原理原則から外れていたかをざっと振り返ってみよう。

孫子の兵法の大原則は「戦争を回避する」ということである。謀攻編に「用兵の法は国を全(まっと)うするを上(じょう)となし、国を破るはこれに次ぐ」という言葉がある。軍略というものは国を傷つけずに勝つのを上策として相手の国を破るのはその次だという。そもそも自ら仕掛ける戦争とは何らかの「外交的目的」を達成するために行うもので、その目的を戦争以外の目的で達成することができるならばそれを優先するべきである。何故なら戦争は勝つにしろ国民の命を奪い、財産を無駄に費し国力を消耗するからだ。

孫子は「用兵の害を知らなければ用兵の利をも知ることはできない」と戦争のもたらす害を強調している。

次に戦争以外に自国の利益を主張する方法がないとして敵国と自国の強弱を冷静に判断しなければならない。そして相手が強いことが分かればどうするか?孫子は「若(し)からざれば能(よ)くこれを避く」という。つまり相手に勝てないと思う場合はおとなしくして避けていなさいというのだ。

孫子の考えは理詰めで戦闘能力・指揮命令・兵站を含めた兵力に大きな差がある場合、強い方が必ず勝つという。従って兵力が明らかに劣後するものは戦争を回避するしかないという結論になる。このような場合軍をあずかるものは「戦道勝たずんば、主は必ず戦へというも戦う無くして可なり」という。

どういうことかというと軍司令官は「勝つ見込みがない場合は、国主が戦えといっても戦わなくて良い」ということだ。ところがドラマを見ていると昭和天皇が参謀総長や軍令部長に「勝算はあるのか?」と質問されても、彼等の答は「十分な勝算がなくても、座して滅ぶより戦うべきです」というものだった。これは全く亡国の論理である。

彼等は「国と国民の目的を自分の目的に利用している」のである。多額の国民の税金を使い、高給を取り、国民には「帝国陸海軍は無敵だ」と豪語してきた彼等は今更「アメリカには勝てませんから戦争はやめます」と言えなくなっている。そんなことをいうと右翼や下級将校がテロを起こすだけでなく、重税や統制に喘ぐ国民からも石を投げつけられる。だから彼等は勝算がないまま、緒戦で勝てばアメリカに厭戦気分が広がるなどという根拠のない希望に一縷の望みを託して戦争に突入した訳だ。あるいはアメリカの仕掛けた罠に嵌って奇襲をかけさせられたというべきだ。

アメリカが罠を仕掛けたとしてもそれを卑怯といういには当たらない。孫子がいうように「兵は詭道(騙しあい・駆け引き)」である。戦争で大事なのは血を流す戦闘行為ではなく、その前段階の諜報活動なのだ。こちらの暗号は筒抜けで、相手の情報は得られない日本は戦う前から大幅に遅れを取っていた。孫子は諜報活動の重要性を繰り返し強調する。例えば「爵禄百金を惜しみて敵の情を取らざるものは不仁の至りなり」という。費用を惜しんで敵の情報を取らないものが何故不仁なのか?というと、情報不足で兵士の無駄死を起こすからである。兵士の損傷を惜しむヒューマニズムを持つ将軍であれば、敵の情報入手に費用をかけるはずだということだ。

この話、随分長くなったが最後は「彼を知らずして己を知らざれば戦う毎に必ず敗る」という言葉で締めくくろう。アメリカは戦前から日本の専門家を置いて日本のことを研究していた。しかし日本は「アメリカは歴史が浅く、臆病だ」などという根拠のない情宣を国民に行う内に軍の中枢部まで自分がはいた妄言に麻痺してしまったのである。

戦前軍事に淫した日本は戦後は軍事をタブーとしてしまった。振り子が180度逆に振れたがこれはどちらも間違いである。国を守るためには必要な国防軍を持つとともに、正しい兵学思想をあるレベル以上の国民がコモンセンスとして共有することが必要だと私は考えている。

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日米、電子書籍の違い

2008年12月25日 | 本と雑誌

24日のニューヨーク・タイムズにE-books start to take holdという記事が出ていた。Take holdとは「定着する」というイディオムで「電子書籍が定着し始めた」という記事だ。米国で電子書籍が本格的に売れ始めたのは昨年の11月にアマゾンがキンドルKindleという電子書籍用携帯端末を発売してからだ。この端末価格は発売当時より少し値下げされ現在359ドル(1ドル90円として3万2千円強)で販売されている。アマゾンは販売実績を発表していないが、業界関係者の推測では、26万台から100万台位売れているのではないかということだ。

ソニーも似たような読書用端末を発売している。名前はリーダーReader(最新モデルの名前はReader700)で、ソニー関係者によると2006年の発売開始以来30万台売れたそうだ。

因みにキンドルで電子書籍を購入するには1冊9.99ドル、ソニーのリーダー版は11.99ドルだ。

コデックスという書籍マーケッティング会社によると、アマゾンのキンドルは55歳から64歳の層に一番人気がある。ランダム・ハウスなどの出版会社によると、電子書籍(PC等各種のディバイスに対応するものをまとめて)の現在のシェアは1%以下だ。しかし過去1年で電子書籍の売上は3倍から4倍程度伸びている。またEdgar Sawtelle物語というベストセラーについてはアマゾンが売るこの本の2割は電子版だという。

電子書籍がどれ程伸びるかについてはっきりした予測はない。強気な予想としてはハーレクイン出版の電子版責任者は電子版はやがて紙版に拮抗するか凌駕すると期待している。

またアップルのiPhoneを使った電子書籍の販売も伸びていてソニーのリーダー版と拮抗するところまできている。

一方日本の電子書籍の状態はどうかというとソニーが2004年からリブリエ(米国のリーダーと同じ仕様)という書籍端末を販売していたが、07年5月に販売を取りやめ電子書籍端末から撤退した。

ではどうしてアメリカでは離陸しそうな電子書籍が、日本では頓挫しているのだろうか?理由は単純ではないが以下私の勝手な推測を上げてみよう。

  • 米国の方が本の単価が高い。日本では新書や文庫で良い本がかなり安く読める。
  • 米国の本好きは休暇に沢山の本をもってリゾート地に行き、読書をする習慣がある。彼等・彼女等にとって重い本を持ち運びするより電子書籍の方が便利。
  • 日本では本の流通経路が複雑で出版社が電子化に積極的でない。

まあざっとこのような理由を思いついた。もっとも最近は漫画本などをPCやiPhoneなどで読むこともできるそうなので(やったことはない)、日本でも電子本が普及する日がくるかのしれない。

不況の昨今、日米とも引きこもって読書やゲームを楽しむ人が増えているようなので、この分野は数少ない明るいスポットというべきだろう。

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