金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

欲をかきすぎたゼル

2008年12月09日 | 社会・経済

米国の有力新聞の持株会社トリビューンが昨日チャプター11を申請した。トリビューン社はシカゴ・トリビューン、ロスアンゼルス・タイムス、バルティモア・サンの三紙の他20局以上のテレビ・ステーションを持っている。他に野球のシカゴ・カブス(Cubsはカブズと発音されるようだが、日本ではカブスということが多いのでそれに従った)を持っている。カブスはチャプター11の対象外で、売却対象だ。

トリビューン社は昨年サミュエル・ゼルという富豪がレバレッジド・バイアウトを行い彼の指導の下、新しい新聞事業モデルを模索中だったが、不況下で広告収入が減り会社更生を申請した次第だ。詳細はその内日本の新聞でも報道されるから、省略して我々は二つの教訓を学ぶべきだろう。

一つはゼルが欲張りすぎてチャンスを失った可能性があるということだ。もう一つは米国で起きていることは数年後には日本で起きるので、日本でも破綻する新聞社が出てくるので、新聞社への与信は慎重にするべきということだ。

ゼルは米国の不動産ファイナンスに興味にある人なら良く知っている名前だ。彼は1990年代初めに商業用不動産市場が総崩れした時に、底値で物件を買い漁り巨額の富を作った。それで「墓場のダンサー」とあだ名された。

ファイナンシャル・タイムズは「ゼルは今年の夏シカゴ・カブスを8億ドルで売却する可能性があったが、売値を10億ドルに拘ったため、チャンスを失った可能性がある」という業界通の話を紹介している。

「天井買わずの底売らず」というのは相場の格言だが、底値を拾って財を成した投資家でも売り時は難しいということだろう。

未だに「紙ベース」に固執してネット紙面を充実させていない日本の新聞とネット紙面が充実して、ネット広告収入の依存度合いが高まっている米国の新聞を今時点で同一視するのは少し乱暴かもしれない。しかし大きなトレンドは米国の後を追随するだろう。団塊の世代のリタイア以後、日本の新聞の経営環境が急速に悪化することは間違いない。

コメント
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