11月に大統領選挙をむかえる米国。選挙の行方を左右する中所得層の意識に関心が高まっている。ピューリサーチはThe lost decade of the middle classというレポートで、収入・資産面で痛手を受け、さらにその数自体が減少している中所得層の実態を描写している。
米国の人口調査上中所得層とは「全家計所得の中央値の67%から200%に入る層」とし、200%以上を高所得層、67%以下を低所得層としている。ピューリサーチはこれを参考にしながら、自ら中所得層であると認める人の意見を聞いている。まずこの層の85%は10年前に較べて生活レベルを維持するのがより困難になってきた、という
2001年の中所得層の年間所得の中央値は72,956ドルだったが、2010年には69,487ドルに低下した。純資産額については、2001年に129,582ドルだった純資産額はリーマンショック前には、152,950ドルに上昇し、2010年には93,150ドルに減少した。この額は90年代初め頃と余り変わらず、更には1983年の数字が91,056ドルだったことを見ると、30年前に較べてほとんど増えていない、といえる。
中所得層の純資産が過去10年間で減少しているのに比べ、高所得層においては、2001年に569,905ドルだった純資産額は2010年には574,788ドルへと増加している。これは中所得層の純資産の大きな部分が、自宅であったことによる。住宅市場の崩壊で中産階級は大きな痛手を受けた。
ピューリサーチによると、中所得層の人の62%は、問題の責任は議会にあると感じ、54%の人は銀行と金融機関にあると感じている。また47%の人は大企業に責任があると感じ、39%の人は外国企業との競争が問題だと感じている。ブッシュ政権に責任があると感じている人は44%で、オバマ政権に責任があると感じている人は34%だった。
中所得層でオバマが政権をとる方が自分たちの助けになると感じている人は52%でロムニーが助けになると見ている人42%を大きく上回っている。
中所得層の比率は40年前の61%から2011年現在の51%に10%も減少している。その分高所得層と低所得層の比率が増え、貧富の差が拡大しているといえる。中所得層の苦境はどのように政治地図を変えるのだろうか?