ウオール・ストリート・ジャーナルに男の健康問題に関する見解が出ていた。何故男の寿命は女よりも短いか?ということを多角的に分析していて中々興味深い。これは米国の話であるが、大部分日本にも当てはまるだろう。
ウオール・ストリート・ジャーナルはまず医療行政の面からスタートする。
- 1990年に政府は女性健康局(Office of Women's Health)を作り、7億5千万ドルをかけて乳がん等の研究プログラムをスタートさせた。さらに議会は2002年から2006年にかけて、乳がんと卵巣がんの研究のために778百万ドルの予算措置を講じたが、前立腺がん研究には360百万ドルの予算措置を取った。乳がんを軽視する訳ではないが、男性の大きな死亡要因である心臓病、前立腺がん、怪我、自殺等に対する予算措置が不足しいているという懸念が高まっている。
もっとも女性の健康問題に多くの予算が投じられる様になったのは、比較的新しいことで歴史的には男性の健康問題に多くの予算が投じられている。しかし今なお多くのことについて答が出ていない。例えば「何故男性は健康上もっとも好ましくない腹部の脂肪が蓄積するのか?」「男性は何故女性よりHDLつまり良性コレステロールが多いのか?」「何故男性の方が若い時から心臓病にかかりやすいのか?」といった問題である。
腹部の脂肪Abdominal fatは内臓脂肪のことだろう。これは日本ではリンゴ型体形と呼んでいるものだ。ところでこの記事にもお腹周りのサイズが健康の目安になると書いているが、危険ゾーンは40インチつまり約100㎝と言っている。面白いのは「ズボンのサイズを当てにするな」と言っていることだ。何年もズボンのサイズが変わっていないから太っておらず大丈夫という人がいるが、ズボンをずらしておなかの下でベルトを締めることでサイズを調整していると言う訳だ。
- 男性より女性の方が倍程定期的な検診を受けている。また調査結果女性の9割はホームドクターを持っているが、男性の場合は三分の二が持っているに過ぎない。
この米国の事情と日本の事情は少し異なる様な気がする。自分の経験をベースに判断すると一定年齢を過ぎると会社が健康診断を受ける様に手配しているので男性の方が定期健診を受ける比率が日本では高いのではなかろうか?ということだ。
- 女性が婦人科にかかる時、医者は婦人病だけを診断するのではなく糖尿病、血圧、うつなどを診断する。ところが男性に関しては同じ様な仕組みがない。男性の健康全般をチェックする仕組みが必要だ。
ここでウオール・ストリート・ジャーナルはバイアグラを投与する勃起不全の診断がその一つの機会だろうと言う。勃起不全は心臓病の最も初期的な警告だという研究がある。昨年の研究では4千人近いカナダの勃起不全の男性の半分以上は糖尿病またはメタボリック・シンドロームと診断された。
コロンビア大学のShabsigh助教授は「セックス面の健康は男性の健康のポータル(入り口)である」と言う。
ところでこの記事の中で目新しいことは「男性と女性ではストレスに対する対応が異なるのあろう」というところである。
- ストレスに対する典型的な反応は「戦うか逃げるか」であり、ストレスがかかると我々の身体はエネルギーを戦時動員し、筋肉にグルコースを搬送し、鼓動と血圧を高める。ストレス対応は危機から我々を守る点で有効だが、ストレスが持続するとダメージを引き起こす。
- 最近の研究で女性もストレスがかかると「戦うか逃げるか」モードを取るが、同時に「オキシトシン」というホルモンを分泌する。
オキシトシンホルモンは子宮収縮ホルモンとして知られるが、脳内では「社会行動を促進するホルモン」として知られている。例えば古代の村落が外敵から襲われたケースを想像すると、男性は戦う準備を整えなければならないが、女性にとって最良の戦術は子供を身の回りに集めて他の女性達と一塊になっていることだろう。オキシトシンはこの様な活動を促進する。
このようなメカニズムにより女性の方が男性よりも健康である理由の一部を説明できると言う。
以下は感想だ。
男は古来より「戦うをこと」「強くあること」を求められてきた。このため感情をあらわにして泣くことや肩を寄り添わせて他人と恐怖を分かち合う様な習慣を持たず、悲しみや苦しみを酒で紛らわせてきた。少なくともストレスと飲酒が男性の寿命を女性より短くしているという説明は成り立ちそうだ。
酒は百薬の長というが、過度の飲酒が健康に悪いことは言うまでもない。ウオール・ストリート・ジャーナルも過度の飲酒の太り過ぎに注意すると男性はもっと健康になり長生きできると言っている。
例えば週末の午前中にスポーツクラブに行くと8割方は女性だ。男性はパチンコでもしているだろうか?