金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

4.5%ローンで住宅市場を救済か?

2008年12月05日 | 社会・経済

ニューヨーク・タイムズは昨日(11月4日)米国のバーナンキ連銀議長が「住宅ローンのデフォルトから競売が増え、実体経済を脅かしている。政府が主導してローンの条件の緩和やリファイナンス策を講じるべきである」と述べたと報じている。また同紙は「財務省が新規に住宅ローンを取得する人のために30年間4.5%の固定金利住宅ローンを提供することを検討している」と報じている。現在の30年固定ローンの金利は5.58%まで下落しているが、新しいプランはそれよりも1%低い金利だ。20万ドルを4.5%固定金利で借りると毎月の支払額は1,013ドルで5.58%で借りると1,146ドルだ。30年間の支払利息は4.5%が6万5千ドル弱で、5.58%が11万2千ドル強になる。

財務省は低金利ローンで住宅購買意欲を刺激する案を練っている。だが新規住宅購入者だけに低利ローンを提供して、既に住宅ローンを借りている人の借換を認めないのは不公平だという反論も強い。

これについては米国の住宅ローンは「固定金利ローンでも金利が下がって借り替える時にペナルティなしで借り替えることができる」という一般ルールを理解しておく必要がある。

ついでに米国でどうして住宅の競売が多いか?ということをちょっと考えておこう。米国の住宅ローンはリコースなのか、ノンリコースなのか?という点についてだが、基本的にリコースである。つまり借り手は住宅を手放しても債務を免れることはできない(「2009年日本はこうなる」東洋経済には「カリフォルニアなど少なくとも一部の州では、債務者は担保の住宅を放棄すればローンの返済を免れること(ノン・リコース)ができる」という説明があるが、あくまで例外と考えるべきだ)。

しかし米国では住宅ローンでデフォルトを起こした債務者が、その他の資産を保有しているケースは極めて少ないので、住宅を引き渡した債務者にそれ以上の弁済を求めることは実務上ほとんどないと言われている(訴訟費用が高いので)。ということで大雑把にいうと契約上はリコースだが、実態的にはノンリコースと金融機関は考えていると言えるだろう。

住宅価値が簡単に回復しないほど下落したと判断した場合、返済が苦しくなった債務者は自宅を放棄して、立ち去る場合が多い。よって銀行に担保物件が滞留し、これを一斉に売りに出すので、住宅市場を低迷するのである。従って政府主導であらたな買い手を作り出す超低金利ローンの導入はかなり有効な施策といえる。

今米国の10年国債の利回りは史上稀に見るほど低い2.7%まで低下しているから、30年4.5%というローンも不可能ではないように見える。

ところで仮に固定金利7%で20万ドル借りている人が4.5%に借り替えると毎月の返済額は250ドル程度減る計算だ。財政負担は増えるが、個人消費を刺激する妙案かもしれない。

いずれにせよ、低金利住宅ローンを政府が検討しているというニュースが伝わったので、これを求める声が高くなるだろう。これは注目しておく材料だ。

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メリル、オイル価格25ドルもあると予想

2008年12月05日 | 社会・経済

石油価格が低下している。昨日原油はほぼ4年ぶりに1バレル44ドルという低価格になった。ファイナンシャルタイムズによると、メリルリンチのコモディティ・リサーチのヘッド・Blanch氏は「来年の石油価格のメインシナリオは平均では50ドルだが、世界的な景気後退が中国に及ぶと一時的に25ドル以下に落ちる可能性がある」と述べた。彼の見通しは「短期的には銀行が個人・法人向けの与信を縮小を続けるので世界的に石油需要が低迷し、来年前半が石油価格のボトムになるだろう。そして6月から緩やかに上昇し始めるだろう」というものだ。

米国のガソリンは卸売りベースで1ガロン1ドルを切ってきた。これは今年7月につけたピークの3.63ドルから7割下落している。政府データによると小売ベースでは全国平均1ガロン1.81ドル。これもピークの4.114ドルから56%下落。小売需要が低迷しているから小売価格はまだ下がるだろう。

車社会の米国ではガソリン価格の下落が一般財の消費を押し上げる効果は大きい。景気回復にはプラス材料だ。

また為替を考えると、数年前から「原油高・ドル安・ユーロ高← →原油安・ドル高・ユーロ安」という組み合わせで動いている。為替レートは様々な要素で動くので、余り単純化して考えると危険だが、当面ドル高・ユーロ安を加速する材料の一つと見ておいて良いだろう。

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