ニューヨーク・タイムズは昨日(11月4日)米国のバーナンキ連銀議長が「住宅ローンのデフォルトから競売が増え、実体経済を脅かしている。政府が主導してローンの条件の緩和やリファイナンス策を講じるべきである」と述べたと報じている。また同紙は「財務省が新規に住宅ローンを取得する人のために30年間4.5%の固定金利住宅ローンを提供することを検討している」と報じている。現在の30年固定ローンの金利は5.58%まで下落しているが、新しいプランはそれよりも1%低い金利だ。20万ドルを4.5%固定金利で借りると毎月の支払額は1,013ドルで5.58%で借りると1,146ドルだ。30年間の支払利息は4.5%が6万5千ドル弱で、5.58%が11万2千ドル強になる。
財務省は低金利ローンで住宅購買意欲を刺激する案を練っている。だが新規住宅購入者だけに低利ローンを提供して、既に住宅ローンを借りている人の借換を認めないのは不公平だという反論も強い。
これについては米国の住宅ローンは「固定金利ローンでも金利が下がって借り替える時にペナルティなしで借り替えることができる」という一般ルールを理解しておく必要がある。
ついでに米国でどうして住宅の競売が多いか?ということをちょっと考えておこう。米国の住宅ローンはリコースなのか、ノンリコースなのか?という点についてだが、基本的にリコースである。つまり借り手は住宅を手放しても債務を免れることはできない(「2009年日本はこうなる」東洋経済には「カリフォルニアなど少なくとも一部の州では、債務者は担保の住宅を放棄すればローンの返済を免れること(ノン・リコース)ができる」という説明があるが、あくまで例外と考えるべきだ)。
しかし米国では住宅ローンでデフォルトを起こした債務者が、その他の資産を保有しているケースは極めて少ないので、住宅を引き渡した債務者にそれ以上の弁済を求めることは実務上ほとんどないと言われている(訴訟費用が高いので)。ということで大雑把にいうと契約上はリコースだが、実態的にはノンリコースと金融機関は考えていると言えるだろう。
住宅価値が簡単に回復しないほど下落したと判断した場合、返済が苦しくなった債務者は自宅を放棄して、立ち去る場合が多い。よって銀行に担保物件が滞留し、これを一斉に売りに出すので、住宅市場を低迷するのである。従って政府主導であらたな買い手を作り出す超低金利ローンの導入はかなり有効な施策といえる。
今米国の10年国債の利回りは史上稀に見るほど低い2.7%まで低下しているから、30年4.5%というローンも不可能ではないように見える。
ところで仮に固定金利7%で20万ドル借りている人が4.5%に借り替えると毎月の返済額は250ドル程度減る計算だ。財政負担は増えるが、個人消費を刺激する妙案かもしれない。
いずれにせよ、低金利住宅ローンを政府が検討しているというニュースが伝わったので、これを求める声が高くなるだろう。これは注目しておく材料だ。